『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
英稟が戻った翌週、ヴァンダリア帝国の使節が遠海領に入った。
律也が報告に来たのは昼過ぎだった。
「符侯様。ヴァンダリアから使節が着きました。ヴァンシュタイン家の——碩学貴族の娘だそうです」
「一人か」
「いえ、もう一人。……連れ、と言うべきか。式符と言うべきか、判然としない女が一人います」
「案内しろ」
「はい」
律也が出ていった。
(来た)
早い。遠海領が英稟の不調で揺れていた時期に合わせて動いたとすれば、ヴァンダリアの情報網はかなり細かい。それとも、英稟の回復を待って来たか。
どちらにせよ——来た以上、受ける。
────
応接間に通した。
扉が開いた。
最初に入ってきたのは、若い女だった。
十代の後半だろう。背が高い。肩まで届く茶髪。丸眼鏡をかけている。ヴァンダリアの学術衣——碩学貴族の徽章が胸元にある。整った顔立ちだが、表情が薄い。感情を外に出すことに慣れていない顔だった。
その後ろに、もう一人。
(——)
俺は一瞬、言葉を止めた。
後ろの女は、人間ではなかった。
外見は人間に近い。しかし——耳が長い。髪が白銀。肌が透き通るように白い。目が、エメラルドグリーンだ。そして——動きが、違う。歩き方に迷いがない。迷いがないのではなく、迷うという回路が存在しない歩き方だった。
視線が動いていない。前だけを見ている。生きているが——生きていない何かに近い。
(式符化か)
ヴァンダリアの技術で魂を砕かれた存在。話には聞いていたが、実物を見るのは初めてだった。
俺の斜め後ろで、ルクシエルが小さく息を呑んだ。
情報役として同席させていた。海の向こうの使者を、この天使の目でも見ておきたかった。
「世一様」
声が硬い。いつもの、蜜を含んだ甘さがなかった。
「あれは——神秘存在です。だった、と言うべきでしょうか」ルクシエルの金の目が、アイウェリンデから離れなかった。「魂が、砕けています。……あんなに細かく。誰かが、わざと」
俺は答えなかった。
天使には、俺に式符化としか見えないものが、別の重さで見えている。同じ神秘存在の、砕かれた姿として。
眼鏡の女が俺の前で止まった。
一礼した。丁寧だが、どこか計算通りすぎる礼だった。
「ヴァンシュタイン家、リタニアと申します。ヴァンダリア帝国学術院より、符侯 式世一殿への技術協力の提案を携えて参りました」
声は落ち着いていた。年齢の割に、緊張がない。
「座れ」
「はい」
リタニアが座った。アイウェリンデが、その横に、命令なしに座った。座るように訓練されているのだろう。
俺はリタニアを見た。
「ヴァンダリアからここまで、遠かったか」
「片道で三週ほどです。復路の日程も、すでに確保しています」
(なるほど)
感想を聞いたのだが、報告が返ってきた。世間話の回路が薄い。
「手土産の書状を見せろ」
「こちらです」
リタニアが書状を差し出した。俺はそれを受け取った。
内容は予想通りだった。ヴァンダリア帝国からの技術協力の提案。神符帝国の式符技術とヴァンダリアの符術技術の交換。聖教問題における外交的牽制役。そして——附記として、「研究協力のための人材の提供」。
(人材の提供、か)
「人材というのは、彼女のことか」
俺はアイウェリンデを見た。
アイウェリンデは俺を見た。
初めて——目が動いた。
リタニアに向いていた視線が、俺の方を向いた。ただそれだけだったが、俺はその目の奥に何かを見た。
消えかけているが——消えていない何かを。
「はい」とリタニアが言った。「アイウェリンデは、黒い森先住民族の末裔です。ヴァンダリアの式符化技術によって、その身を複数の式符に分けられ、いまは符叢に組み込まれた使役式として運用されています。ただ——」
リタニアが少し間を置いた。
「帝国学術院の研究では説明のつかない現象が、彼女には起きています。正確に言えば——特定条件下において、式符化によって分割された自我の断片が、一時的に統合される兆候が観測されています」
「特定条件下とは」
「霊的上位者との交合、です」
直接的だった。
俺は少し間を置いた。
「そういう提案を、碩学貴族の娘が自分で持ってくるのか」
「私が最も適任だったので」
「なぜ」
「観測者として、現象に最も近い位置に立てるからです。アイウェリンデに何が起きるかを記録するためには、その場に私がいる必要があります。かつ——」
リタニアが俺を、眼鏡越しに、真っ直ぐ見た。
「私自身も、霊的上位者との交合の影響を受けることで、陽気支配の霊理を直接体験できます。理論と実測値を同時に取得できる。これ以上に効率的な観測方法はありません」
俺は少し考えた。
(自分の体を実験台に使う気で来ている)
羞恥も恐怖も、この女の計算には入っていない。純粋に——研究として、ここに来ている。
「お前が陽気支配を受けることも、計算の内か」
「はい。それによって私の思考がどのように変化するかも、観測対象に含めています」
「観測できなくなったらどうする」
リタニアが少し間を置いた。
「……その段階に至ったデータは、体験者本人には取得が困難だと考えています。ただ——それ自体が一つの結論です。観測不能状態への移行プロセスは、事前に記録できます」
(自分が溶けていく過程を、自分で記録するつもりでいる)
俺は少しの間、リタニアを見た。
顔が整っている。眼鏡が似合っている。表情が薄い。感情が計算の外に出てこない——今のところは。
「一つだけ、先に共有すべき問題があります」
リタニアが手帳を開いた。細かい字が頁に詰まっていた。
「アイウェリンデ本人の同意が、確認できません」
「……」
「式符化された彼女には、諾否を表明する言語機能が残っていません。学術院はこれを『同意能力の不在』と処理して、所有権者の承認で施術の根拠を代替しています。ですが——」
リタニアが、隣のアイウェリンデを見た。
「自我の断片が統合される兆候がある、と申し上げました。断片でも自我があるなら、彼女の内側には『嫌だ』と思う余地が残っています。それを確認する手段のないまま施術を行うことの是非を、学術院は検討していません。検討する枠組みそのものが、存在しないのです」
「お前はどう考える」
「未解決です」と、リタニアは即答した。「ただ、施術の過程で言語機能が部分的に戻るのであれば——戻った時点で、本人に問うべきだと考えます。問うて、彼女が否と言えば、そこで中止する。観測者に設計できる、最低限の手続きです」
「拒否されたら、お前の研究は止まるが」
「止まります」リタニアの声に、揺れがなかった。「拒否できない相手から取ったデータには、その者が本当に選んだのかを検証する術がありません。学術的な価値が一段落ちます。……倫理の話に聞こえるかもしれませんが、半分は、研究の質の話です」
(半分は、と言ったな)
残りの半分が何かは、聞かなかった。
「わかった。話は受ける」
「ありがとうございます」
一礼した。計算通りの礼だった。
「今夜、お前一人で来い」
リタニアが俺を見た。
「……アイウェリンデは」
「明日以降だ。最初はお前だけでいい」
リタニアが少し間を置いた。
「……わかりました。記録道具を持参してよいですか」
「好きにしろ」
「では、夜に伺います」
計算通りの返答だった。
────
夜半。
リタニアが来た。
手帳と羽ペン。やはり持ってきた。
「……では、観測を開始します。記録を取りながら進めることをご容赦ください」
「その手帳を貸せ」
「——」
リタニアが、一瞬固まった。
「……記録が」
「後で返す。始めるぞ」
リタニアが手帳を差し出した。
俺はそれを机の上に置いた。
「脱げ」
リタニアが衣を脱いだ。従順だった——しかし目が、部屋の隅々を走っていた。脱ぎながら光量を確認している。
「何を見ている」
「……室内環境の初期値を記憶しています。後で手帳に——」
「それもやめろ」
「……はい」
リタニアが目を閉じた。
白い肌が出た。胸は小ぶりだが形が良い。腰の細さに比べて腰回りに丸みがある。研究漬けで日に焼けていない、透き通るような白さだった。
俺はリタニアをベッドに押し倒した。
「あ——」
仰向けにして、まず両脚を開かせた。秘裂が、まだ固く閉じている。処女の証拠だった。
「痛みを与える前に、十分に開かせてやる」
「……それは、処女膜破裂の痛覚軽減のための事前処置ですか」
「そうだ」
「……合理的です」
俺は人差し指を秘裂の外側に沿わせた。
そこは、乾いていた。
当たり前だ。まだ何もしていない。
指の腹で、外側をゆっくりと擦り始めた。割れ目の輪郭を辿るように。秘核の上を、軽く、繰り返し。
「……っ」
「黙っていていい」
「……はい」
リタニアが口を閉じた。
擦り続けた。焦らずに。割れ目全体を、丁寧に温めるように。
しばらくして——じわ、と濡れてきた。
「……っ……」
リタニアの腰が、かすかに動いた。無意識だった。
「……体が、勝手に……」
「それでいい」
指先が湿り始めた。ぬちょ、と小さな音。リタニアの眉が、わずかに寄った。
もう少し強く。秘核を指の腹で押し潰すように擦る。
「んっ……!」
リタニアが短く声を上げた。初めての声だった。
「……っ……今の刺激は……」
「喋るな」
「……はい」
俺は秘核への刺激を続けながら、もう片方の手で乳首を摘んだ。
「——ひっ……! んぁっ……!」
リタニアの背中が浮いた。
「……っ……両方同時に……っ……これは……っ」
「黙れ」
「……っ♡……ごめ……んなさ……い……っ♡……黙れませんでした……っ♡」
指の速度を上げた。くちゅ、くちゅ、くちゅ、と音が響く。リタニアの蜜が指に絡みつき、腿の内側を伝い始めた。
「……っ♡……あ……っ♡……なんで……こんな……っ♡……音が……っ♡」
「お前の体から出ている音だ」
「……っ♡!……は、恥ずかしい……です……っ♡……研究で……こういう音が出るとは……っ♡……」
俺は秘核への刺激を止めず、そのまま陽気を一気に流し込んだ。
「——っ♡♡♡!!!!」
リタニアの体が、大きく跳ねた。
「あ……っ♡♡……あぁ……っ♡♡……な……なんですか……これ……っ♡♡……!!」
秘裂から白い蜜がどっと溢れた。指を濡らし、腿を伝い、シーツに広がっていく。
「……っ♡♡……あ……あ……っ♡♡……!」
「出ているぞ」
「……っ♡♡……わかって……ます……っ♡♡……止まらない……です……っ♡♡……!!」
リタニアの腰が浮き、内腿が震えた。びしょびしょになりながら、リタニアは達し続けた。
「あ……あ……っ♡♡♡……!!……あぁ……っ♡♡♡……!!!」
頂点で——リタニアの思考が、白く飛んだ。
体から力が抜けた。
静かになった。
────
しばらく、動かなかった。
(気絶したか)
想定の範囲内だった。
俺はリタニアのおでこに手を当てた。体温は高い。呼吸はある。ただ——意識が飛んでいる。
数分後、リタニアの目がゆっくりと開いた。
「……」
天井を見ていた。
「……気を失っていましたか」
「そうだ」
「……初めての経験です」
「そうか」
リタニアが体を起こそうとした。足に力が入らなかった。
「……腰が、動きません」
「まだ続く。横になっていろ」
「……続き、ますか」
「今度はゆっくりやる」
リタニアが少し間を置いた。
「……わかりました」
「手帳を返してやる」
リタニアの目が、少し動いた。
「……今度は、使っていいですか」
「使え。ただし」
「ただし、何ですか」
「書けなくなった時に、それが最終的なデータだ」
リタニアが、少し考えた。
「……了解しました」
俺は机から手帳と羽ペンを取り、リタニアに渡した。
リタニアがうつ伏せに体勢を変え、手帳を枕元に置いた。ペンを持った。
「……記録を再開します。第一フェーズ:強烈な陽気注入により、約三分で意識喪失。回復後、感覚過敏が持続している模様——」
俺はリタニアの後ろに回った。
「……え、あの……後ろから、ですか」
「そうだ」
「……記録、しながらでいいですか」
「いい」
俺はリタニアの背中から、ゆっくりと手を滑らせた。首筋から肩、背骨に沿って腰まで。
「……っ……背中への接触……っ……先ほどより……皮膚感度が……上昇している……っ」
手帳に何かを書こうとしていた。
腰の丸みを両手で包んだ。そのまま、秘裂の外側を再び指で辿り始めた。先ほど潮を吹いた場所だ。まだ蜜が残っている。
「……っ♡……記録……します……っ♡……外性器への……再刺激……っ♡……前フェーズの……残余感が……あり……っ♡……」
ペンが動いていた。
俺は焦らなかった。ゆっくりと、割れ目の外側だけを擦り続けた。中には入れない。内腿を手のひらで温め、腰の内側を親指で押し、時々秘核を軽く触れて離す。
「……っ♡……焦らし……ですか……っ♡……集中すると……っ♡……感覚を……客観化できる……ので……っ♡……」
「その客観化が、これから崩れる」
くちゅ、くちゅ、と音が続く。リタニアの蜜がまた指に絡み始めていた。腰が、少しずつ俺の指に押しつけられてくる。意識していない動きだった。
「……っ♡……腰が……勝手に……動いて……います……っ♡……」
「気づいているか」
「……気づいて……います……っ♡……でも……止められ……ない……です……っ♡」
俺は指を一本、秘裂の中に沈めた。
「ひぁっ……!!♡」
リタニアの体が跳ねた。ペンが止まった。
「——っ♡♡……中……です……っ♡……中に……指が……っ♡」
「処女か」
「……はい……っ♡……です……っ♡……研究に……集中していたので……っ♡……機会が……なかった……です……っ♡」
指を動かした。ぬちゅ、ぬちゅ、と音が立つ。リタニアの内壁が指を締め付けた——緊張と、快感の両方で。
「……っ♡♡……記録……します……っ♡……膣内への……指挿入……っ♡……想定より……っ♡……異物感が……強く……っ♡……しかし……痛みは……まだ……なく……っ♡♡……」
手帳にペンが走っていた。字が乱れていた。
指をもう一本加えた。
「あ……っ♡♡!……二本……っ♡……中が……っ♡……広げられて……っ♡……」
「どうだ」
「……っ♡♡……思ったより……っ♡……いい……です……っ♡……痛くない……です……っ♡……むしろ……っ♡♡……」
「むしろ何だ」
「……奥を……触られると……っ♡……頭が……熱く……なって……っ♡……研究より……っ♡……先に……感覚が……来る……っ♡♡……」
二本の指で内壁を丁寧に擦りながら、親指で秘核を押し潰した。
「ひぁっ……!!♡♡……あ……っ♡♡……ペンが……っ♡……動かせ……なく……っ♡♡……!!」
「書けなくなってきたか」
「……っ♡♡……書けて……います……っ♡……まだ……書け……て……っ♡♡……」
手帳を見た。字が崩れていた。走り書きだった。それでもまだ書こうとしていた。
(たいした執念だ)
俺は指を抜いて、腰を合わせた。
「……っ……」
リタニアが息を止めた。
「今から入れる」
「……はい……っ……覚悟……して……います……っ……痛みが……」
「陽気で和らげる」
「……ありがとう……ございます……っ……」
先端を秘裂に当てた。
ゆっくりと、体重をかけた。
ぐ……っ、と、初めての圧力が処女の入り口を押し広げていく。リタニアの指先が、シーツを掴んだ。
「……っ……痛い……っ……でも……っ……思ったより……っ……」
「陽気を流している」
「……っ♡……はい……っ♡……熱い……っ♡……奥が……熱く……て……っ♡……痛みが……薄れて……く……っ♡……」
薄膜が、破れた。
「——ひぁっ!!♡♡」
「大丈夫か」
「……っ♡♡……大丈夫……です……っ♡……痛い……けど……っ♡……熱い方が……勝って……います……っ♡♡……」
完全に収まった。
リタニアの中は——締め付けが強かった。処女の緊張と、陽気への反応が混ざった締め付けだった。
「……っ♡♡……入ってる……っ♡……世一様が……奥まで……っ♡……」
俺はゆっくりと動いた。
くちゅ……くちゅ……と、処女の蜜と陽気が混ざった音が立つ。
「……っ♡……あ……っ♡……動くと……っ♡……奥が……っ♡……擦れて……っ♡……」
「手帳は」
「……っ♡……書けて……います……っ♡……まだ……書けて……っ♡……」
見た。
手帳の字が、完全に崩れていた。記録ではなく、感嘆符と省略が続いていた。
「……あ……っ♡♡……世一様……っ♡……奥……っ♡……もっと……奥を……っ♡♡……」
「欲しいか」
「……っ♡♡!……欲しい……です……っ♡……研究者として……っ♡……ではなく……っ♡♡……ただ……っ♡……欲しい……っ♡♡……」
俺は腰を深く打ち込んだ。
「ひぁっ……!!♡♡♡——っ♡♡……!!……あ……っ♡♡……あぁ……っ♡♡♡……!!」
リタニアが達した。
処女を散らしたその夜に、すぐに。
シーツに処女の血と白い蜜が広がった。リタニアの内壁が激しくひくついた。
そこに——俺は陽気を込めた精を叩き込んだ。
通常の何倍もの濃さで。
「——っ♡♡♡!!!!……熱い……っ♡♡……熱い……っ♡♡♡……!!……いちばん奥まで……っ♡♡……届いて……っ♡♡♡……!!!」
リタニアの体が、波打ち続けた。
絶頂が重なった。
陽気が魔力回路の底まで流れ込んでいくのを、リタニアの体が全力で吸い込んでいた。
やがて——リタニアから、力が抜けた。
うつ伏せに崩れた。
手帳が、床に落ちた。
「……」
しばらく、動かなかった。
「リタニア」
「……っ……はい……っ」
声が、かすれていた。
「手帳が落ちたぞ」
「……あ……」
リタニアが手を伸ばした。手帳を拾い上げた。ペンを探した。
(まだ書こうとしている)
「……世一様」
「何だ」
「……もう少し……世一様が……欲しい……です……っ」
「研究か」
リタニアが少し間を置いた。
「……研究……だと……思い……ます……っ……でも……研究じゃないかも……しれない……です……っ」
「正直だな」
「……陽気支配が……進んでいる……と思います……っ……自分の動機の……分類が……できなく……なっています……っ」
俺はリタニアの顎を持ち上げた。
「奉仕しろ」
「……はい……っ」
リタニアが体を起こした。膝立ちになった。
怪しげな手つきだった。慣れていない。しかし——躊躇はなかった。
リタニアが俺のものに舌を伸ばした。
「……っ……こうですか」
「もっと深く」
「……っ……はい……っ」
リタニアが含んだ。不慣れだが、真剣だった。研究者の集中力で——奉仕した。
「れろ……っ……こう……ですか……っ……ちゃんと……できていますか……っ」
「できている」
「……よかった……です……っ」
研究の合否を確認するような聞き方だった。
(この女は最後まで研究者だ)
もっとも——眼鏡は外れて、目が潤んで、口の端から唾液が垂れていたが。
────
翌朝。
リタニアが机に向かっていた。
手帳が開かれている。羽ペンが動いている。
「書いているか」
「……はい。昨夜の観測記録を整理しています」
「見せろ」
リタニアが手帳を差し出した。
俺はそれを受け取って、読んだ。
書いてあった。
「陽気注入、第一波——想定を大幅に超える強度。意識喪失。意識回復後、感覚過敏の持続を確認。第二フェーズ——世一様が、世一様の、世一様……」
途中から、記録ではなかった。
「世一様の陽気は、これまでの文献に記された一切の事例を超えている。世一様だけが、この世界の——」
その先は、文章として成立していなかった。
「これが昨夜のデータか」
「……はい」
「記録として機能していないが」
「……わかっています」
リタニアが少し間を置いた。
「……でも、私の主観としては、正確だと思います」
「そうか」
俺はリタニアの手帳を机に戻した。
「もう一度やる」
「……今から、ですか」
「そうだ」
リタニアが一瞬、手帳の方を見た。
「……記録は」
「終わった後でしろ」
リタニアが俺を見た。眼鏡をかけ直した。それから——頷いた。
「……わかりました」
俺はリタニアをベッドに押し倒した。
今度は表から。
仰向けにして、脚を開かせた。昨夜の血がわずかに残っている秘裂に——指を這わせた。
「……っ♡……昨夜より……っ♡……入り口が……素直です……っ♡」
「慣れてきたか」
「……っ♡……体が……覚えて……います……っ♡」
ぬちゅ、と指を沈める。すぐに蜜が溢れてきた。
「……っ♡♡……世一様の指が……っ♡……すぐ……分かります……っ♡……昨夜から……体が……覚えて……いて……っ♡♡……」
二本目の指を加えながら、秘核を舌で擦った。
「ひぁっ……!!♡♡♡……!!……舌が……っ♡♡……そこに……っ♡……舌が……っ♡♡……!!」
くちゅくちゅ、と指が動き、舌が秘核を圧迫する。リタニアの腰が浮き上がり、白い蜜が溢れ、太腿を伝ってシーツを濡らした。
「……っ♡♡……いき……そう……っ♡♡……まだ……ちゃんと……始まってないのに……っ♡♡……!!」
「出せ」
「……っ♡♡!!……出ます……っ♡♡……また出ます……っ♡♡♡……!!!!」
びしょびしょになりながら、リタニアが達した。俺は止めなかった。二度目は舌の上で。三度目は俺の指を深く収めたまま、内壁を波打たせて。シーツが白い蜜でぐっしょりだった。
「……っ♡♡♡……!!……世一……様……っ♡♡……もう……頭が……っ♡♡……」
リタニアが、ふるふると震えながら、俺を見上げた。
眼鏡が、涙と汗で曇っていた。
「……っ……世一様……っ……中に……っ……欲しい……です……っ」
「研究か」
「……っ……研究……じゃない……です……っ……ただ……欲しい……です……っ」
俺はリタニアの中に収めた。
ぐちゅ……っ、と音が立った。昨夜より、遥かに素直に俺を迎え入れた。
「……っ♡♡……世一様……っ♡♡……熱い……っ♡……世一様が……奥まで……っ♡♡……」
腰を動かした。くちゅくちゅ、と音が続く。リタニアの内壁が、ひくひくと俺に絡みついた。
「……っ♡♡……世一様……っ♡……世一様……っ♡♡……研究とか……っ♡……どうでも……いい……です……っ♡♡……世一様だけが……っ♡♡……!!」
「研究はどうした」
「……っ♡♡!……世一様の……方が……っ♡♡……大事……っ♡♡……世一様の……陽気が……っ♡♡……私の……いちばん深いところで……っ♡♡……!!……いっていい……ですか……っ♡♡……」
「いけ」
「——っ♡♡♡!!!!……世一様……っ♡♡♡……!!……世一様……っ♡♡♡……!!!!」
リタニアが達した。内壁がぎゅうぎゅうと締まりながら、体全体でひくついた。
俺は最奥に精を叩き込んだ。陽気を込めて。
「——っ♡♡♡……!!……いちばん奥まで……っ♡♡♡……熱い……っ♡♡♡……世一様の全部が……私の中に……っ♡♡♡……!!!!」
リタニアが長く達し続けた。
やがて、静かになった。
「……はぁ……っ……はぁ……っ……」
荒い息が続いた。
リタニアが俺の胸に顔を押しつけた。
しばらくして——顔を上げた。
「……手帳、書いてもいいですか」
「書け」
リタニアが起き上がった。手帳を取った。ペンを取った。書き始めた。
俺はその横で、リタニアが何を書くかを見ていた。
しばらくして、リタニアが手帳を差し出してきた。
書いてあった。
「世一様の陽気は、学術院の理論の全てを超えている。私は昨夜から二度、完全に思考を失った。しかし——世一様のそばにいることが、最も合理的な選択だと理解している。なぜなら——世一様は、この世界で唯一、私が観測したいと思う現象の発生源だからだ。研究対象として。そして——」
その先が、研究者の言葉でなくなっていた。
「そして——世一様のものでいたいと、思っている」
俺は手帳をリタニアに返した。
「よく書けた」
リタニアが眼鏡を押し上げた。
「……支離滅裂ですか」
「研究記録としては失格だ。ただ——正直だ」
リタニアが少し間を置いた。
「……それが、陽気支配の完了を意味しますか」
「まだ途中だ」
「……そうですか」
リタニアが手帳を閉じた。
「……では、また伺います」
「来い」
リタニアが一礼した。
昨夜と同じ一礼だった——しかし、眼鏡の奥の目が、昨夜と違っていた。
計算の目ではなかった。
────
その夜遅く、律也が別の報告を持ってきた。
書状が二通。
一通は、白い封蝋。聖教紋章。
もう一通は、金の封蝋。マギニア神聖同盟の紋章。
「……二通、同日ですか」
律也が珍しく、微妙な顔をしていた。
「タイミングがいい」と俺は言った。
「そうですね」
「ヴァンダリアが着いた日に届くように計算したか、単なる偶然か」
「どちらだと思われますか」
「偶然ではない。ただ三者で示し合わせてもいない。それぞれが俺の動向を追って、同じ時期に動いた」
律也が頷いた。
俺は二通を机の上に並べた。
白い封蝋の向こうには——ルクシエルとアルギメルの問題がある。
金の封蝋の向こうには——エリナがいる。
そして今夜の応接間には——リタニアと、アイウェリンデがいる。
(盤面が埋まってきた)
符闘の盤面に似ていた。各地の勢力が、それぞれの動線で俺に向かってくる。
違うのは——これは符叢の外側の話だということだ。
「返書はどうされますか」と律也が聞いた。
「聖教には、三日以内に応じると返せ。マギニアには——使節を歓迎すると」
「……エリナ様も来られますか」
「来る。その準備をしておけ」
律也が頷いた。
「ヴァンダリアの方々には、明日の昼に改めて協議の場を設けます。よろしいですか」
「そうしろ」
律也が出ていった。
俺は机の上の二通を見た。
それから、窓の外を見た。
遠海の夜の港が、灯りを点けていた。
(始まる)
英稟の牙が戻った。符叢の軸が戻った。
外側の盤面が動き始めた。