『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
聖戦派の使節が遠海領に入ったのは、セレスティーナが符闘場を出た三日後だった。
律也が報告に来た。
「符侯様。聖華教皇国の第三枢機卿——ヴィクトル・ダンテ枢機卿が率いる一行が港に着いています。十二名の随行つきです」
「随行十二名か」
「はい。護衛の符士が八名、書記が四名です」
(圧力をかけに来た)
正式な外交使節として来れば、こちらも正式に迎える義務がある。人数は——示威だ。多ければ多いほど、「受け入れなければ何が起きるか」という無言の圧になる。
「通せ」
「……承知しました」
律也が出ていった。
俺は窓の外を見た。
遠海の港が、昼の光の中にあった。
(三日前に何があったか、ダンテは知っているか)
知らないだろう。セレスティーナは賢い。符闘の結果を外に出す理由がない。
だとすれば——ダンテは、セレスティーナを「まだ聖教の立場に立っている使節」として扱う。
(面白くなる)
────
ヴィクトル・ダンテ枢機卿は、五十を過ぎていた。
紫の枢機卿服。金の大十字架を首から下げている。顎髭が白かった。目が——鋭かった。交渉の場に何度も立ってきた人間の、相手の弱点を探す目だった。
同席したセレスティーナを見た瞬間、ダンテの目が少し動いた。
(想定外だったか)
セレスティーナは、深紅の枢機卿服で座っていた。穏やかな微笑みを崩していなかった。
「……ヴィクトル。先に来ていたとは聞いていませんでしたが」
「セレスティーナ。貴女こそ、単身で乗り込んでいたとは。枢機卿会議への報告は」
「個人的な視察です。私の権限の範囲内です」
「……なるほど」
ダンテが、俺を見た。
「符侯 式世一殿。ヴィクトル・ダンテです。聖座枢機卿会議の総意を携えて参りました」
「聞こう」
「単刀直入に申し上げます」
ダンテが、書状を取り出した。
「ルクシエル及びアルギメル——神の使いである両天使を、速やかに聖教の管理下に返還していただきたい。これは枢機卿会議の全会一致による決議です」
「理由を聞こうか」
「天使は神の所有物です。一個人が支配することは、教義的に認められません」
「ルクシエルに意志があることは、貴方も知っているはずだ」
「陽気支配で歪められた意志は、本人の意志とは認められません。これは教義第九条に明記されています」
俺は少し間を置いた。
「セレスティーナ」
セレスティーナが、静かに顔を向けた。
「第九条を読んでみろ」
「……「霊的強制の下にある者の言葉は、自由意志の表明とみなさない」——第九条です」
「ルクシエルは霊的強制の下にあるか」
「……」
ダンテが、セレスティーナを見た。
「セレスティーナ。答えは明白でしょう。陽気支配は霊的強制の典型例です」
「ヴィクトル」とセレスティーナが言った。「千年間、教会の倉にいたルクシエルの意志を、貴方は一度でも確認しましたか」
ダンテが、止まった。
「……天使への意志確認は、儀礼的手続きを経て——」
「千年間、一度も行いませんでしたね。行わなかった側が、行った側の判定だけを疑うのは——筋が通りません。私は直接ルクシエルと対話し、霊的強制の痕跡を確認できませんでした。この報告を覆すには、貴方の側にも同じだけの手続きが要ります」
「……詭弁だ」
「教義の手続きです」
俺は、二人のやり取りを聞いていた。
(やるな)
セレスティーナは、聖戦派の論拠を教義の内側から崩していた。感情で反論するのではなく、条文と手続きで返していた。
「符侯殿」
ダンテが俺を見た。目に——怒りが滲んでいた。
「セレスティーナ一人の見解で、この問題が解決するとは思っておられませんね」
「思っていない」
「ならば——枢機卿会議の決議に従っていただく必要があります。聖戦決議は、すでに八名の枢機卿の賛同を得ています。残り四名の賛同があれば、決議が成立します」
「成立したら何が変わる」
「聖教国が、符帝家及び遠海領に対して聖戦を布告します。神符帝国の内部から、聖教系符家が離反します。貴方の盤面が変わります」
静かな脅しだった。
「ルクシエルを見るか」
ダンテが、止まった。
「……符闘の場でもなく、儀礼的召喚でもなく——」
「ここで呼ぶ」
「それは——正式な手続きを——」
「ルクシエルの意志を直接聞くのに、手続きは要らない。お前が見たいかどうかの問題だ」
ダンテが、沈黙した。
長い沈黙だった。
「……見ます」
────
「ルクシエル」
白金の光が来た。
翼が広がった。
ルクシエルが顕現して——ダンテを見た。静かな目で。
「……ルクシエル」
ダンテが、低い声で呼んだ。
「はい」
「……貴女は——今——ここにいることを——望んでいるのですか」
「はい」
「私は千年、貴方の教会の倉にいました。誰も、一度も聞かなかった。貴方は今、聞いています。初めて」
ダンテが、答えられなかった。
「私はここにいたいと思っています。理由は、それだけです」
静寂が続いた。
「下がっていていい」
「はい、世一様」
白金の光が消えた。
────
ダンテが、長い時間、俯いていた。
「……」
やがて、顔を上げた。揺れてはいた。だが、退いてはいなかった。
「……符侯殿。貴方は——意志を取り戻した天使が何をするか、ご覧になったことがおありか」
「何の話だ」
「五十年前の話です。教会の記録では——『白翼の日』とだけ、呼んでいます」
セレスティーナの表情が、わずかに動いた。その名を知らない顔ではなかった。封印された記録として知っている——そういう顔だった。
「第九条は、机の上で書かれた条文ではありません。あの日の後に、必要があって書かれたものです。……私はこの目で見た。セレスティーナ、貴女は見ていない」
静かな声だった。詭弁の声ではなかった。経験の声だった。
「その全容を話す気は」
「ここでは話しません。封印記録です」
俺は、それ以上は押さなかった。この男の反論には、まだ底がある。今日この場で割る必要のある札でもない。
「ヴィクトル」とセレスティーナが言った。
「……何ですか」
「聖戦決議の残り四名——貴方が次に説得しようとしていた四名は、预言者派の傾向があります」
「……それを——どこで」
「枢機卿会議の構造は、私も知っています」
ダンテが、顔を上げた。
「……つまり——貴女は——」
「私が預言者派に回るなら——残り四名の説得は難しくなります。貴方もそれはわかっているはずです」
「……セレスティーナ。貴女は——何のためにそれをするのですか」
「天使の意志を尊重するためです」とセレスティーナは言った。「それは、私が枢機卿に就いた時から変わらない信念です」
ダンテが、俺を見た。
「……符侯殿」
「何だ」
「聖教圏への出向——という話が、書状にありましたが」
「検討中だ」
「……いつ頃、返答が——」
「マギニアとの交渉が終わってから、改めて伝える」
ダンテが、少し間を置いた。
「……わかりました」
立ち上がった。
「——帰国までに、二つだけ決めておきます」
ダンテが、書状を懐に戻しながら言った。
「本使節としての返還執行は、停止します。それから——セレスティーナの報告が枢機卿会議で審理されるまで、聖戦票の取りまとめを、私の手で進めることはしません」
「会議全体を止めるとは言わないんだな」
「言えません。私にその権限はない。……私に止められるのは、私の手だけです」
「セレスティーナ。枢機卿会議への報告書は、私が帰国した後、十日以内にお願いします」
「提出します」
「……それが——預言者派に有利な内容であっても」
「事実に基づいた報告です」
ダンテが——深く、一礼した。
俺にではなく。ルクシエルが消えた場所に、向けて。
そのまま退室した。
────
扉が閉まった。
律也が、遠ざかる足音を確認してから戻ってきた。
「……聖戦決議は、止まりましたか」
「会議はまだ割れている。だが、取りまとめ役が自分の手を止めた。セレスティーナの報告が審理されるまで、票は進まない。——今すぐ聖戦は来ない」
「……うまくいきましたね」
「セレスティーナがやった」
律也が、セレスティーナを見た。
セレスティーナは、穏やかに微笑んでいた。
「……それほどのことでは——ありません。教義の手続きを——正確に踏んだだけです」
「十分だ」と俺は言った。
「……ありがとうございます——」
律也が退室した。
部屋に、俺とセレスティーナだけが残った。
「ご褒美をやる」
セレスティーナが——少し、目を細めた。それから、首を横に振った。
「……先に、報告書を書きます」
「今日か」
「今日です。記憶が新しいうちに。ダンテの言質も、ルクシエルの言葉も——一言も違えずに書きたいので」
セレスティーナが立ち上がった。
「……書き上がったら、お見せしましょうか」
俺は少し考えた。
「いらない。お前の署名で出せ」
セレスティーナが、俺を見た。
「……お読みにならずに、ですか」
「神使監察の報告書だ。俺が先に読めば、それは俺の報告書になる」
セレスティーナが——しばらく、黙っていた。
「……ありがとうございます」
一礼して、退室した。足音が、廊下を執務室の方へ遠ざかっていった。
────
夜半、セレスティーナが来た。
「……出しました。教会の急使で、聖都へ」
「内容は」
「事実だけです。ルクシエルとの対話の記録。霊的強制の痕跡を確認できなかったこと。第九条の適用には判定手続きが先行すること。……それと、千年間、意志確認が一度も行われなかったことへの——神使監察としての、正式な指摘」
セレスティーナが、写しを差し出した。
「……控えです。お読みください」
俺は読んだ。
過不足がなかった。俺への言及は、事実の範囲を一歩も出ていない。俺を庇う文もなければ、教会に阿る文もない。末尾に、セレスティーナ・ヴァル・アストラの署名があった。
「……正しい」
「……よかった」
セレスティーナの肩から、わずかに力が抜けた。
「間違っていると言われたら、どうするつもりだった」
「……出し直しません。もう出したものですから」
(そういう女だ)
俺が認めるより先に、この女の決断は終わっている。俺にできるのは、後から正しいと言うことだけだ。——それで、いい。
「来い。さっきのご褒美、まだ渡してなかったな」
「……はい——♡」
────
内室に入った。
扉が閉まった。
「よくやった」
「……世一様に——そう言っていただけると——」
「教義の手続きで崩した。感情で返さなかった」
「……感情で返したら——ダンテには負けていました——あの方は場数が違います——でも——手続きの網の中に入れれば——」
「俺が見えていた通りにやった」
セレスティーナが、少し目を伏せた。
「……世一様が——見ていてくれると——わかっていたので——」
「法衣を脱げ」
「……はい——」
深紅の枢機卿服を、震える手ではなく——慣れた手で脱いだ。
白い肌が出た。
「今日は——どうすれば——いいですか——」
「好きにしろ」
セレスティーナが、止まった。
「……好きに——」
「お前が選べ」
「……私が——選んで——いいのですか——」
「よくやった日のご褒美だ」
セレスティーナが——少しの間、考えた。
それから——俺の前に、静かに跪いた。
「……最初は——口で——させてください——」
「なぜ口から始めたい」
「……世一様が——気持ちいいところを——見たい——です——♡」
「そうか」
「……はい——」
深紅の枢機卿の——神使監察が、床に跪いた。
ぷちゅ、くちゅ、と丁寧な音が始まった。
「……んっ——んぅ——っ——世一様——っ——」
「うまくなった」
「……っ——んっ——ありがとう——ございます——っ——!♡」
ぬちゅ、くちゅくちゅ、と音が深くなっていく。教わった夜より、自分から進む舌だった。
「出るぞ」
「……んっ——! なかに——ください——っ——!♡♡♡」
どぷっ、どぷっ、と注いだ。
セレスティーナが——全部飲んだ。飲み切って、顔を上げた。目が潤んでいた。
「……全部——飲みました——っ——♡♡♡」
「よくできた」
「……世一様——っ——」
「まだ終わらない」
セレスティーナが——微笑んだ。
「……知っています——♡」
俺はセレスティーナを抱え上げた。
「——っ!♡♡」
ベッドに乗せた。
「……どんな——体勢が——いいですか——」
「お前が選べ」
「……では——」
セレスティーナが——自分で、上に乗った。
「……自分で——入れます——っ——♡」
震える手ではなく——慣れた手で。
「……っ——! ぁ——! 入った——っ——!♡♡」
「動かせ」
「……っ——はい——っ——!♡♡♡」
ぐちゅぐちゅ、と結合部から音が立った。
「……っ——! 今日は——うまくやれました——か——っ——?♡♡♡」
「ああ」
「……よかった——!♡♡♡♡ 世一様に——よかったと——言われると——っ——!♡♡♡♡♡」
「どうなる」
「……もっと——気持ちよく——なります——っ——!♡♡♡♡♡♡」
ぐちゅぐちゅぐちゅ、と音が大きくなった。セレスティーナが腰を速めた。
「……っ——! あ——! あ——!♡♡♡♡♡」
陽気を少し流した。
「——っ!!!!!♡♡♡♡♡♡」
「達していいぞ」
「……っ——はい——!♡♡♡♡♡♡♡」
セレスティーナが——全身で絶頂した。
びくびく、ぴくぴく、びくびく、と。
「あ——! あ——! ああ——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡」
「出るぞ」
ぐっ、と最奥まで押し込んだ。
「——っ!♡♡♡♡♡」
「いずれ、孕ませる」
「……っ——!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
セレスティーナが——一瞬、全身で止まった。
「……世一——様——っ——」
「今じゃない。だが——必ずやる」
「……ぁ——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
ごぷっ、ごぷっ、ごぷっ、と白濁した精液を最奥に注ぎ込んだ。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「……なかに——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
セレスティーナが、俺の胸に倒れ込んだ。
びくびく、と体が震え続けていた。
「……孕ませる——と——おっしゃいました——っ——♡♡♡♡♡」
「聞こえていたか」
「……聞こえて——いました——っ——♡♡♡♡♡♡」
「いやか」
「……いやでは——ありません——っ——♡♡♡♡♡♡♡」
また、びくびく、と震えた。
「……世一様の——お子を——孕む——と——思ったら——また——っ——♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「達したか」
「……はい——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
しばらく、そのままだった。
────
「……ダンテは——おそらく——また来ます——」
セレスティーナが、しばらくして言った。
「わかっている」
「……その時も——私が対応できますか——」
「今日みたいにやれ」
「……はい——」
少し間があった。
「……世一様——」
「何だ」
「……聖教圏への出向——本当に——行かれるのですか——」
「行くかもしれない」
「……その時は——私も——」
「お前が必要だ」
セレスティーナが——また、笑った。
あの夜と同じ笑い方だった。今度は、迷いがなかった。
「……はい——」
遠海の夕方の光が、部屋に差し込んでいた。
神使監察枢機卿が——秩序の内側に立ったまま、聖教を内側から動かし始めた日だった。