『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』 作:シキセ
星宮邸に戻った。
玄関の広間で、エリナが足を止めた。
「……世一様。三日目が、終わります」
俺は振り返った。
エリナがベールを外した。青い目が、まっすぐ俺を見ていた。盛り場の格好のままだったが——立ち方は、騎士のものに戻っていた。
「返答を申し上げます。……その前に、条件を提示させてください」
「聞こう」
「五つ、あります」
エリナが、指を一本立てた。
「一つ。私は遠海の符士として、世一様の命令に従います」
「ああ」
「二つ。ただし——救済や保護を名目とする命令で、対象本人の意思確認を怠るものには、異議を申し立てます。その申し立てを聞いていただくことを、契約に含めてください」
俺は少し、目を細めた。
(盛り場の女将か)
あの片腕を、ずっと見ていた目だ。
「三つ。マギニアと戦う日が来ても、私は民間人を保護します。これは命令の外で、私が守る一線です」
「四つ目は」
「証言です。喚問や記録の場で問われれば——世一様に不利な事実であっても、私は偽らずに答えます。私の証言を、陣営の都合で曲げさせないでください」
「五つ目は」
「……婚姻と、符士契約は——別の契約として、扱ってください」
エリナの頬に、初めて色が差した。
「符士契約は、今この場で結びます。私の判断で。……婚姻は——まだ、その、順番が——」
俺は少し間を置いた。
「五つとも飲んでやる。ただし、こちらからも一つ出す」
エリナが——身構えた。
「今夜、お前を抱く。婚姻の紙より先に、だ。断るなら、五つ目の条件から取り下げろ」
エリナの喉が、小さく動いた。
「……それは——契約ですか。それとも」
「契約じゃない。俺の望みだ。契約の外にあるものを、契約の中で断れると思うな」
エリナが、しばらく黙った。それから、小さく息を吐いた。長い息だった。三日分の息だった。
「……わかりました」
「明日、使節の前で正式に署名する。文面はお前が書け」
「……私が、書くのですか」
「お前の契約だ」
エリナが——背筋を伸ばした。それから、騎士の礼をした。マギニアの様式ではない、どこの国のものでもない、少しぎこちない礼だった。
「エリナ・ソルベルクは、本日より——遠海の符士です」
「聖旗はどうする」
エリナが、一度だけ目を伏せた。
「……捨てません。マギニアの旗としてではなく——守られる側の選択を守る旗として、私が持ち直します。旗の意味は、掲げる者が決めていいはずです」
「いい答えだ」
────
内室の前でエリナが立ち止まった。
「……ここから先は——契約の外、ですね」
「そうだ。紙に書いたことは、もう終わった」
エリナが、ベールを外した。
「入れ」
エリナが——扉を開けた。
部屋の中に——深紅の枢機卿服が立っていた。
「——せ、先生……!?」
セレスティーナが、穏やかに微笑んでいた。
「今夜は、私が立ち会います」
「……な——なぜ——先生が——ここに——」
「私はあなたの師です。弟子の大事な夜に、立ち会わない師は——いないでしょう」
エリナが——俺とセレスティーナを、交互に見た。
「俺が頼んだ」と俺は言った。「お前の体は三日で開いた。だが心は騎士のままだ。騎士のまま初めての夜を越えるには——先に越えた者がいた方がいい」
「……先に——越えた——」
エリナの目が、セレスティーナに戻った。
セレスティーナが——静かに、頷いた。
「ベッドへ」とセレスティーナが言った。「大丈夫。取って食べたりはしません。……いえ、それは嘘になりますね」
「……先生——そういう冗談を——言う方でしたか——」
「ここでは言うのです」
ベッドに座らせた。セレスティーナがエリナの後ろに回り、ベールの上から髪を撫でた。
「力を抜きなさい」
「……っ——抜けません——」
「私も、最初の夜はそうでした」
エリナが——息を飲んだ。
俺は首輪に指を当てた。
「——っ!♡♡」
陽気が流れ込む。三日間、開かれ続けた体は、もう最初の夜とは別の速さで火が点いた。
「……っ——ぁ——!♡♡♡」
「声は抑えなくていい」とセレスティーナが言った。「ここには、あなたを笑う者はいません」
「……先生が——見て——っ——♡♡」
「見ています。それが、立ち会うということです」
俺は前に触れた。
「——っ!!!♡♡♡♡♡♡」
指の腹で、ゆっくりと。三日で覚えさせた場所を、順番に。エリナの腰が、シーツの上で跳ねた。
「……っ——ぁ——! ぁ——!♡♡♡♡♡」
波が来る、その直前で——止めた。
「——っ!?」
エリナが——目を見開いた。
「……なぜ——止め——っ——」
「言うか」
「……っ——言いません——!♡♡♡」
「そうか」
また、触れた。上げて——止めた。
「——っ!!♡♡♡♡」
「……ぁ——っ——また——っ——なんで——っ——!♡♡♡♡♡」
「エリナ」とセレスティーナが、耳元で静かに言った。「言いなさい、とは言いません。言葉は——あなたが自分で選ぶものです。誰にも、決めさせてはいけません」
「……先生——っ——」
「ただ、一つだけ」
セレスティーナが、エリナの髪を撫でた。
「我慢と誇りは、別のものですよ」
エリナが——止まった。
三度目の波が来た。上げて——止めた。
「——っ!!!♡♡♡♡♡♡」
「……ぁ——っ——ぁ——っ——」
エリナの目から、涙が滲んだ。ベールが濡れた。
「……先生は——言ったのですか——自分から——」
「言いました」とセレスティーナが言った。「枢機卿の誇りは、あの言葉で欠けたりはしませんでした。……騎士の誇りも、同じだと思いますよ」
エリナが——目を閉じた。
開いた。
「……犯して——」
止まった。
「続けろ」
「……っ——犯して——ください——っ——」
「もう一度言え」
「……っ——犯して——ください——っ——前を——前を——世一様に——っ——犯して——ください——っ——!♡♡♡♡」
仰向けに寝かせた。
セレスティーナが——エリナの手を、両手で包んだ。
「……先生——」
「痛いのは最初だけです。痛かったら、この手を握りなさい」
「……はい——」
そこに——前に——初めて、触れた。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡♡」
「……っ——触れた——っ——触れてくれた——っ——!♡♡♡♡♡」
「ここか」
「……っ——そこ——っ——そこが——ずっと——ずっと——っ——!♡♡♡」
「処女だな」
「……っ——はい——初めて——です——っ——」
「わかっている」
ゆっくりと、入った。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡」
「……っ——! 痛い——っ——痛くて——っ——それでも——っ——!♡♡♡」
「力を抜け」
「……っ——ぬいて——る——っ——でも——っ——熱くて——っ——大きくて——っ——!♡♡♡」
最奥まで、ゆっくりと。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡♡」
「……奥まで——来た——っ——世一様が——私の——奥まで——っ——!♡♡♡♡♡」
「痛みは」
「……っ——ある——けど——っ——それより——熱い——っ——!♡♡♡」
エリナの手が——セレスティーナの手を、強く握った。セレスティーナが、握り返した。
動き始めた。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡」
「……っ——! ぁ——! ぁ——! 前が——前が——っ——!♡♡♡♡」
「これがお前だ」
「……っ——!♡♡♡」
「マギニアの聖旗の騎士が——自分から犯してくれと言った」
「……っ——言いました——っ——言って——しまいました——っ——!♡♡♡♡♡」
「後悔するか」
エリナが——少し間を置いた。
「……後悔——」
「……していません——っ——!♡♡♡♡」
「そうか」
陽気を流した。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡」
「……ぁ——! ぁ——! いく——っ——いきます——っ——!♡♡♡♡♡♡♡」
びくびく、ぴくぴく、びくびく、と絶頂した。
「出るぞ」
「……っ——なかに——っ——世一様の——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡」
ごぷっ、ごぷっ、ごぷっ、と深く注いだ。
「——っ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「……なかに——っ——来てる——っ——世一様のが——私の——奥に——っ——!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
びくびく、と長く震え続けた。
セレスティーナは——最後まで、エリナの手を離さなかった。
────
しばらくして——エリナが、ぐったりと横になった。
ベールが、汗と涙で頬に張り付いていた。セレスティーナが、それをそっと外してやった。
「……よく、言えましたね」
「……先生——」
「あの言葉は、あなたが自分で選んだものです。……それを、忘れないように」
エリナが——小さく、頷いた。
「……マギニアの騎士を——やめましたか」
エリナが——少し間を置いた。
「……やめていません——」
「そうか」
「……ただ——」
「ただ何だ」
「……世一様の——符士には——なりました——」
「体はとうに俺のものだった。今日は紙が追いついただけだ」
「……今日から——少し——違う意味で——」
俺は何も言わなかった。
エリナが——また少し間を置いてから、言った。
「……次の訓練場では——勝ちます」
「楽しみにしている」
「……勝ったら——ご褒美が——ありますか」
「何が欲しい」
エリナが——素顔のまま、俺を見た。
「……今夜のように——また、抱いてほしいです——」
「負けても抱く」
エリナが——少し目を細めた。
「……卑怯です」
「そうか」
「……でも——嬉しいです——」
エリナが、ふと真顔に戻った。
「……一つ、伺っても」
「言え」
「……マギニアにいた頃は、任務の後、必ず点検がありました。装備に破損がないか、規定違反がないか。人ではなく、装備の一部として確認される時間でした。……ここには、それが——ないのですね」
「お前は装備じゃない」
「……はい」エリナが、少し困った顔をした。「……終わった後、こうして、放っておかれないというのが——不慣れなだけです」
セレスティーナが、横で小さく笑った。
「慣れますよ。ここでは、後の時間の方が長いのです」
「……そう、なのですか」
「ええ。旗を選び直すのも、抱かれるのも、一晩の出来事です。……その後、朝までどう過ごすかの方が、案外、長く残ります」
エリナが体を起こし、乱れたドレスの襟を直した。セレスティーナが横から手を貸して、留め具を一つずつ留めてやった。
「……先生。一つ、聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「……先生は——私がここへ売られてきたと聞いた時——どう思いましたか」
セレスティーナの手が、一瞬だけ止まった。
「……怒りました。マギニアに対して。あなたを送り出した円卓に対して」
「……先生でも——怒るのですね」
「怒りますよ。弟子ですから」
留め具が、最後まで留まった。セレスティーナがエリナの襟を軽く整えて、離れた。
「……ですが、今は——少しだけ、感謝もしています。送り出した者たちの思惑がどうであれ——あなたはここで、旗の意味を自分で選び直した。それは、円卓にいたままでは、できなかったことです」
「……はい」
「明日から、忙しくなりますよ。契約の署名。三旗の顔合わせ。……騎士の仕事は、夜より昼の方が長いのです」
エリナが——小さく笑った。今夜初めての、力の抜けた笑い方だった。
「……はい、先生」
俺は二人のやり取りを、黙って見ていた。
師弟の形は、聖教の学院にいた頃と変わらないのだろう。変わったのは、それが立っている場所だけだ。遠海の内室で、師弟は続いていた。
セレスティーナが——最後に俺へ一礼して、先に部屋を出た。扉が閉まる寸前、「……お手柔らかに」と小さく言い残して。
窓の外に、遠海の夜が広がっていた。
マギニアの旗は、もう掲げていない。だが——聖旗は、落ちていない。
旗の意味を選び直した騎士が、一人、遠海に立った。