※この作品はR-18です。

『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』   作:シキセ

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(時系列:本編第四話以降)


番外編三 守屋雪

「あなたが、式世一ですか」

 

別邸の門前に、見知らぬ少女が立っていた。

 

白銀で短かめに切りそろえたおかっぱ髪。水色をした涼やかで鋭い目。学院の制服の上に、水属性の術紋が刻まれた短衣を羽織っている。

 

(……見覚えのない顔のはずなのに)

 

一瞬だけ、引っかかった。

 

元の世界の、高校の教室の端。窓際の席に座って、いつも外を見ていた女子がいた。名前も知らない。話したこともない。当時は意識もしていなかった——ただ今にして思えば、顔が好みだったのだと気づく。

 

おかっぱ髪。目の形。鋭くて均整のとれた顔の骨格。

 

この白銀の少女の顔が、その女子に似ていた。

 

(……今更なんだ)

 

俺は内心で打ち消した。関係ない。

 

俺には見覚えがない顔だが、年の頃と出で立ちから、すぐに当たりをつけた。

 

(学院の符士——英稟の周辺の者か)

 

「そうだが」

 

「英稟様の親衛隊、守屋雪です」

 

やはり。

 

「英稟様の様子が、おかしい」

 

雪は俺の目をまっすぐ見て言った。怒りと、それ以上の何かが混ざった目だった。

 

「英稟様は、誰の前でも凛としていた方です。学院で最も誇り高く、最も強い符士だった。それが最近——世一様の方を見る目が、従者に向ける目じゃない」

 

俺は何も言わなかった。

 

雪は一歩踏み出した。

 

「英稟様は何かを隠しています。あなたに弱みを握られているか——あるいは何らかの術で縛られているかのどちらかです。どちらだとしても、解放してもらいます」

 

「解放、か。どうやって?」

 

「符闘で。あなたに勝ったら、英稟様から手を引いてください」

 

俺は雪の目を見た。

 

怒りだけじゃない。焦りと、心配と——それ以上の感情が、目の奥にある。

 

(この子は、英稟が好きだ)

 

英稟が男装で過ごしてきたことを踏まえれば——雪は英稟を「憧れの先輩符士」として愛していた可能性が高い。そういう目だった。

 

「負けたら?」

 

雪は一瞬だけ黙り、それから言った。

 

「負けたら——私はもう口を出しません。英稟様のことは、世一様に任せます」

 

「俺には何の得もない賭けだな」

 

「それが私の精一杯です」

 

俺は雪を少し眺めた。水属性の符士、年は英稟より二歳は下。しかし符叢の持ち方が板についている。実力はある。

 

「分かった。受けよう。ただし——俺が勝ったらお前も俺の側に入ってもらう」

 

「……どういうことですか」

 

「英稟と同じように、俺の下で動いてもらう」

 

雪は少し黙り、それから強く頷いた。

 

「——それでも、構いません。英稟様のためなら」

 

俺は内心で笑った。こういう子は嫌いじゃない。

 

「別邸の符闘場で」

 

 

雪のデッキは想定通りだった。

 

水属性の小型使役式を一ターン目から三体展開し、「浄水の守護陣」によって全体防壁を張る。水の循環効果で使役式が霊体化するたびに符叢から補充が入るため、山札が尽きない持久型だ。

 

「先攻を取ります」

 

雪の先攻。

 

「水の精霊・小流、実体化。水の精霊・清泡、実体化。水の精霊・霧衣、実体化。浄水の守護陣——発動」

 

一ターン目で守護陣が完成した。水の薄い幕が全体を覆う。

 

「守護陣の仕組み、知っていますか」

 

雪は俺を試すような目で見た。

 

「水属性三体以上で発動、一体でも割れると崩れる。水循環で符叢から補充——こんなところか」

 

雪の表情が微かに固まった。「……知っていたんですね」

 

「対策はしてある」

 

俺のターン。

 

「銀翼の衛兵、実体化。光の伝令、実体化。効果——場の陽属性が二体以上の場合、相手の使役式一体の属性を強制的に書き換える。水の精霊・小流の属性を陽へ」

 

「——っ! 守護陣の条件が……」

 

「水属性が二体になった。守護陣、解除」

 

水の幕が揺らいで消えた。

 

雪は素早く動く。

 

「水の精霊・小流を即時霊体化! 水の循環——符叢から補充——」

 

「霊体化の瞬間に「光の連鎖」発動——場に陽属性が実体化する際、対象の効果を一度無効化。補充、無効」

 

「……っ」

 

雪の手が止まった。

 

「ルクシエル、実体化」

 

金色の光の中からルクシエルが降りた。

 

「世一様♡」

 

「雪の水の精霊・清泡に攻撃。ダメージを符叢へ」

 

「まだです」と雪は唇を噛んだ。「諦めません」

 

その後、雪は五ターン粘った。

 

水循環を活かして補充を繰り返し、何度か守護陣を再展開した。封印布石でルクシエルの攻撃を一度止め、俺の攻撃ルートを細く絞った。

 

英稟と比べれば技術は一段劣るが——雪の守りには感情が乗っていた。

 

英稟様を守りたいという意志が、術式に滲んでいた。

 

しかしその強さは、結局突破された。

 

アルギメルを呼ぶと、雪はルクシエルとアルギメルの両方を封印する手数が足りなかった。

 

「アルギメル——攻撃。雪の残り符叢へ」

 

三枚。

 

雪の符叢が、尽きた。

 

 

雪は符叢を持ったまま、静かに立っていた。

 

「……負けました」

 

「ああ」

 

雪の目に、涙の前の何かが浮かんだ。

 

「英稟様は——本当に、自分の意志で、あなたの下に?」

 

「今、確認できるぞ。英稟を呼べ」

 

ルクシエルが英稟を呼びに行った。

 

——

 

英稟が符闘場の入口に現れた。

 

雪の姿を見た瞬間、英稟の目が一瞬複雑に揺れた。

 

「雪……」

 

「英稟様」

 

雪は英稟に向かって歩いた。

 

「英稟様は——本当に、この方の下に、自分から入ったんですか」

 

英稟はしばらく黙っていた。それからゆっくりと、雪の目を見た。

 

「……符闘で敗れました。それが全てです」

 

「でも英稟様——」

 

「世一様は、私を見ています」

 

英稟の声は静かだった。

 

「七耀陣のない甕星を、それでも正面から受けて、対策をしてくれる。私が強くなろうとすることに、向き合ってくれる。それだけで——充分です」

 

雪は英稟を見た。それから俺を見た。また英稟を見た。

 

「……英稟様が、そう言うなら」

 

雪は俺の前に立った。「約束通りです。私も、あなたの下に入ります」

 

「今夜から英稟と一緒に別邸に入れ」

 

雪は少しだけ顔を赤くした。「英稟様と、一緒に?」

 

「そうだ」

 

英稟が静かに言った。「雪、来なさい」

 

雪は——従った。

 

 

夜の別邸。主室に三人が揃った。

 

雪は英稟の隣に立ち、俺を正面から見ていた。

 

「……英稟様が、穏やかな顔をする」

 

「余計なことを言うな」と英稟が言ったが、雪はそれ以上引かなかった。

 

「本当に、そう見えます。ずっと張り詰めていた英稟様が——世一様の前では、違う」

 

英稟は少し目をそらした。

 

「……雪」

 

「はい」

 

「世一様を、怖がらなくていいです」

 

「怖くは——ありません。ただ、英稟様と世一様の間にいる自分が——どう振る舞えばいいか、分からないだけです」

 

俺は雪に近づいた。

 

雪は半歩下がりかけて——止まった。逃げない、と決めた目だった。

 

「英稟が言った通り、符闘の結果に従う判断は正しい」

 

「……はい」

 

「強いられるだけじゃない。お前が自分で選べ」

 

雪はしばらく俺を見た。それから英稟を見た。英稟が小さく頷いた。

 

「……英稟様が選んだ方なら」

 

「それが答えか」

 

「はい」

 

俺は英稟に視線を向けた。英稟が雪の隣に立った。

 

「大丈夫です、雪」

 

雪は英稟を見た。その目に、長年抱えてきた感情が一気に溢れた。

 

「英稟様……私ずっと、英稟様のことが——」

 

「分かっています」英稟は雪の手を取った。「今夜、ここにいてください」

 

雪は——頷いた。

 

俺は雪の前に立ち、その白銀の髪にゆっくりと触れた。

 

「ん……っ」

 

雪は身体を硬くした。しかし英稟の手を握ったまま、目を閉じた。

 

「陽気支配だ。俺が触れると身体が反応する。慣れる」

 

「そんな術が……っ」

 

英稟が静かに言った。

 

「……私も、最初はそうでした」

 

雪は英稟の顔を見て、何かを読んだ。

 

「……英稟様、今は、嫌じゃないんですか」

 

英稟は少し間を置いた。

 

「……嫌ではないです」

 

雪は目を見開いた。

 

「英稟様が……」

 

「雪、目を閉じていなさい」

 

「……はい」

 

英稟の手がまだ雪の手を握っていた。

 

俺は雪の顎を持ち上げ、首筋に触れた。

 

「んっ……あっ……♡」

 

陽気の浸透は早かった。符士としての魔力回路が鋭敏なせいか、初めて俺の陽気に触れた雪の身体が過敏に反応する。

 

「は……っ……何、これ……身体が……っ」

 

「英稟よりもずっと反応が正直だな」

 

「っ——」

 

「世一様を、信じて」と英稟が言った。

 

「……英稟様が、そう言うなら」

 

雪は目を閉じた。英稟の手が、雪の手を握り続けていた。

 

その夜、雪は英稟の傍で、初めて世一の陽気を受け入れた。

 

俺は雪のうなじに唇を当てた。

 

「んっ……!」

 

英稟より符士としての経験は浅くとも、魔力回路の鋭さは同等かそれ以上だった。陽気の最初の接触に、雪の身体が大きく反応した。

 

「は……っ♡ なんか……身体が……っ♡」

 

「さっきも言ったが、これが陽気支配だ」

 

雪の制服の帯を解き、内側を露わにした。白く細い身体。英稟より線が細く、まだ少女の名残がある。しかし符士として鍛えた芯の強さが、指先に伝わってきた。

 

「っ……見ないで……」

 

「見る」

 

「……っ」

 

雪は目を逸らしかけて——止まった。逃げない、と決めた目に戻った。それが雪という符士だった。

 

「英稟様……」と雪が言った。

 

「……傍にいます」英稟は雪の手を強く握り返した。

 

俺は胸の先端を指でゆっくりと転がした。

 

「ひゃっ……!♡ あっ……英稟様の前で……っ♡」

 

「今は関係ない」

 

「関係ある……っ♡ 英稟様が隣にいて……こんな声……っ♡♡」

 

「私のことは気にしなくていいです、雪」英稟が言った。「世一様に集中しなさい」

 

「そんな……っ♡ 英稟様に言われると……余計に……っ♡」

 

腰の奥に指を差し込んだ。すでに溢れていた。

 

「あっ……なかに……!♡」

 

「反応が正直だ」

 

「っ——」

 

「英稟様……っ♡ あっ……あっ……っ♡♡♡」

 

「力を抜いて、雪」

 

「抜けない……っ♡ 英稟様の声を聞くと……身体が……もっと……っ♡♡♡」

 

英稟が小さく苦笑した。「あなたは本当に素直ですね」

 

「英稟様は……っ♡ 英稟様も、こういう顔……するんじゃないですか……っ♡」

 

「……今はあなたの番です」

 

指を抜き、先端を当てた。

 

「これを受け入れろ」

 

雪は一度俺を見た。それから英稟を見た。英稟が小さく頷いた。

 

「……はい」

 

押し進めると、雪は息を詰めた。

 

「っ……ふ……ぁ……あつ……っ♡」

 

「入るぞ」

 

「はっ……!♡ で、でか……っ♡ ん……ぁ……っ♡♡」

 

一気に最奥まで押し込んだ。

 

「んぅぅっ……!!♡♡ あっ……あっ……世一様のが……全部……っ♡♡♡」

 

英稟が押し殺すように耐えていたのとは対照的に、雪は声を隠さなかった。感情がそのまま全部出てくる。それが雪らしかった。

 

「動くたびに……分かる……っ♡ 世一様の……っ♡♡」

 

「陽気が流れているのが分かるか」

 

「っ……はい……身体の中で……何か、溶けるような……っ♡ 魔力回路が……っ♡♡」

 

水の流れを操る符士の回路は、陽の精気との相性が激しい。英稟の回路が時間をかけて侵食されたのとは違い、雪のそれは受け入れた瞬間から素直に反応した。

 

「あっ……!♡ 身体の中が……世一様でいっぱいで……思考が……っ♡♡♡」

 

「考えなくていい」

 

「考えられない……っ♡ 英稟様……英稟様……っ♡♡」

 

英稟は雪の手を握りながら、その耳元に唇を寄せた。

 

「……私もそうでした。でも、慣れます」

 

「英稟様……っ♡ 英稟様もこんな……っ♡ 英稟様が……っ♡♡♡」

 

ストロークを深くした。雪の背中が反った。

 

「んぅっ……!♡♡ 深い……世一様が……深いところ……っ♡♡♡」

 

「声を殺さなくていい」

 

「殺せない……っ♡ も、無理……っ♡ んっ……んっ……は……っ♡♡♡」

 

英稟が目を閉じた。

 

「……世一様」

 

「何だ」

 

「雪が——もうすぐです」

 

「分かった」

 

俺はストロークを速めた。雪の足が震えた。英稟の手を両手でより強く握り締めた。

 

「英稟様……英稟様っ……♡ い、いきそう……っ♡♡ このまま……いっても……っ♡♡♡」

 

「いっていいです」と英稟は静かに言った。

 

「ひぅっ……!♡♡ んっ……あっ……はっ……♡♡♡ いく……いっ……英稟様……いきますっ……っ♡♡♡」

 

雪の身体が波打つように震えた。

 

俺はその奥に向けて精を放った。

 

「あっ……!♡♡ 中に……世一様の……あったか……い……っ♡♡♡」

 

雪の足から力が抜けた。英稟が肩を支えた。

 

「……傍にいます」

 

「……英稟様……」

 

雪は英稟の肩に頭をもたせかけ、肩で息をした。

 

---

 

その夜が終わる頃——雪は英稟の肩に頭をもたせかけていた。

 

英稟はその頭をゆっくりと撫でていた。

 

「……英稟様」

 

「何?」

 

「英稟様は——これで、いいんですか」

 

英稟は少し間を置いた。

 

「私にとって、いい、とか——それを考えるのは、もうやめました」

 

「え?」

 

「世一様の下にいる。それが今の私です」

 

雪は少し黙り、それから言った。

 

「……英稟様が、なんか——すごく、大人になった気がする」

 

「あなたも、なります」

 

「私が、ですか」

 

「陽気支配が進むと——そういうものです」

 

英稟の声は静かだった。

 

遠くで俺はその会話を聞きながら、今夜の仕事がうまくいったと、静かに思った。

 

英稟が新しい駒の慣れさせ役まで自然に担うようになっていた。

 

これ以上の使い勝手はない。

 

それだけで、十分だと思うことにした。

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