※この作品はR-18です。

猫は狼と遊びたい(R-18)   作:酢酢酢酢酸エチル豆腐

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猫は狼と遊びたい5(R18)

薄暗い洞窟の奥で、タデウスは瞬時にそれを感じ取った。

 

「来るぞ!」

 

タデウスが短く告げた瞬間、暗闇から赤褐色の巨体が飛びかかってきた。エキムマーラ、吸血鬼の一種だ。岩をも砕く爪が、シルヴィアの頭を狙って振り下ろされる。タデウスは即座に跳び、シルヴィアを突き飛ばしながら自分の剣と全身を使って爪を受け止めた。盾の印が発動し、衝撃で腕が痺れる。エキムマーラが怯む。

 

「下がれ!」

 

だがシルヴィアは下がらなかった。興奮と恐怖で瞳を輝かせながら、両手を突き出した。

 

「炎よ——!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

炎の奔流がエキムマーラを直撃した。洞窟内が一瞬、真っ赤に染まる。しかし炎は止まらなかった。エキムマーラは怯んでいるが、彼女の感情が高ぶりすぎた。炎が膨れ上がる。制御を失い、洞窟全体を飲み込もうとする勢いだ。

 

「シルヴィア、止めろ!」

 

彼女は必死に手を引き戻そうとしたが、炎はもう彼女の意志を離れていた。熱波がタデウスを襲う。普通なら即座に身を翻し距離を取るべき場面だ。だが彼は動かなかった。炎から身を翻し、距離を取ってしまえばシルヴィアが無防備になるからだ。灼熱の炎が自分をも包み込もうとするのを見ながら、ゆっくり剣を構え直した。剣の切先をエキムマーラに向け、雄牛の構えを取る。

 

次の瞬間、暴走した炎がエキムマーラ諸共に彼の全身を包み込んだ。熱かった。だが、焼かれることに恐れはなかった。シルヴィアの炎に彼女の感情そのものを感じた。恐怖と興奮と、少しの信頼——そのすべてが彼の体を包み込んだ。エキムマーラが炎に包まれ暴れる中、タデウスは素早く踏み込むと袈裟懸けに斬り込み、返す刃の二撃目でその首を落とした。

 

炎がゆっくりと収まるなかシルヴィアは呆然と彼を見つめていた。息を荒げ、瞳を潤ませながら。

 

「大丈夫⁉︎怪我はない⁉︎」

 

タデウスは燃えかすのついたマントと、クェンがあったとはいえ多少は負った火傷を確認しながら答えた。

 

「無い。良い一撃だった。お陰で隙が出来たし、お前が俺を焼く気が無いことは分かってた」

 

シルヴィアの唇が小さく震えた。

 

「…ありがとう」

 

「さあ、戦利品を漁ろう」

 

「…そうね!この石棺がドラゴンスレイヤーのものかしら?」

 

シルヴィアが魔術を併用しながら、テキパキと遺跡や石棺のスケッチを取っていく。

 

肝心の戦利品/副葬品はといえば、古い金貨、強力な魔力を秘めたルーン石、宝石、そしてグリフィン流派の鎧の設計図。エキムマーラが集めたと思しき宝も少量だが存在した。また、嬉しい誤算だがゲーム的な都合で分散されていた防具の設計図だが、最高級の改造まで施せるだけの詳細なものだった。タデウスには金貨の一部と鎧具足の設計図、シルヴィアには金貨とルーン石と力ある宝石。円満に山分けする事が出来た。これは財宝や目的地を目の前にして裏切る傭兵や、仲間割れをする盗賊等が多い中で互いが類稀な素質を持っているといってよかった。

 

洞窟内で一夜を明かすため、火を起こし、タデウスのサーコートを床に敷いて腰を落ち着け、干し肉を軽く炙った物やチーズ、ドライフルーツや干したレーズン、度数の高い酒を舐めるように飲み、食事を楽しんだ。タデウスはそっと手を伸ばし、彼女の赤い髪に指を滑らせる。そばかすの残る頰に炎の光が揺れている。シルヴィアは嫌がらなかった。

 

「この髪の色みたいに美しい炎だった。あの炎は君そのものだ」

 

シルヴィアの瞳が潤んだ。彼女は小さく息を吸い込み、震える手で彼の胸に触れた。

 

「…馬鹿」

 

焚き火の明かりが二人の顔を照らす中、シルヴィアがそっと彼の胸に額を押しつけた。

 

「温かい」

 

彼女の声はさっきよりずっと小さくて、甘えた響きがあった。女魔術師とは思えない、素直な甘え方だった。タデウスは一瞬固まったが、すぐに彼女の背中に腕を回した。力強く、だが優しく。

 

「故郷でもアレツザの外でも化け物を目にする機会は少なかっただろう。幽鬼やエキムマーラは恐ろしくなかったか?」

 

「エキムマーラ?って言うの?…でも、あなたが守ってくれたから」

 

「吸血鬼の一種だ。年を経れば経るほど強くなり、貴金属や宝飾品を集め、身を飾るようになる」

 

「変な怪物ね」

 

シルヴィアは顔を上げ、笑うと、彼の目をまっすぐに見つめた。群青色の瞳が、炎を映してキラキラと輝いている。

 

「ねえ…もう少し、近くに来てくれない?」

 

その言葉に、彼は彼女を自分の胸に引き寄せた。シルヴィアは抵抗せず、むしろ彼の首に両手を回してしがみついてきた。燃えるような赤髪が、彼の肩に広がる。

 

「私…話したとおり、感情が昂ると魔力の制御が甘くなって炎の形で溢れ出てしまうの。コヴィリの実家でも何度も何度も家族や使用人たちに迷惑をかけて。それでアレツザに入学して、制御を学んで女魔術師になるための訓練を受けてきた。でもあなたは炎に巻き込んでしまったにも関わらず怒らないし、私のことを恐れない。全部受け止めてくれた」

 

「もっと恐ろしいモノを見てきたし、死にそうな目にも遭ってきたからな」

 

彼女の指が彼の背中をぎゅっと掴んだ。

 

「こんな気持ち、初めて…」

 

タデウスは彼女の髪に顔を埋め、熱い吐息を漏らした。薔薇の香油の香りがした。

 

「お前が俺を受け入れてくれるなら、身も心も喜んで焼かれよう」

 

シルヴィアが小さく息を飲むのがわかった。次の瞬間、彼女は顔を上げ、彼の唇に自分の唇をそっと重ねた。柔らかくて、熱くて、甘い口付けだった。炎の明かりの中で、二人はただお互いの熱を感じながら、深く絡み合っていた。

 

キスが深くなるにつれて、シルヴィアの息が次第に熱を帯びてきた。彼女はタデウスの胸に手を当てると、軽く押し倒すようにして自分から覆い被さった。赤い髪がカーテンのように二人の顔を覆い、焚き火の光だけがその隙間から差し込む。

 

「…我慢、できない」

 

シルヴィアが震える声で囁きながら、彼の首筋に唇を這わせた。汗と血の匂い。熱い吐息と柔らかい舌の感触に、彼の理性が音を立てて崩れていく。彼女の手が彼の服の下に滑り込み、熱くなった肌を直接撫でた。指先が震えているのに、その動きは貪欲だった。

 

彼女が上体を起こし、燃えるような瞳で彼を見下ろす。その瞬間、彼女の背後に淡く炎の粒子が舞い上がった。感情が高ぶるにつれ、魔力が制御しきれなくなっている証拠だ。タデウスは彼女の腰を両手で掴むと、荒々しく引き寄せた。

 

「全部俺にぶつけろ」

 

シルヴィアの唇から甘い喘ぎが漏れた。

彼女は自ら上着を脱ぎ捨て、炎の光に照らされた白い肌を晒した。胸が激しく上下している。そのまま再び彼に覆い被さり、貪るようなキスをしながら腰をゆっくりと動かし始めた。洞窟に二人の荒い息遣いと、時折弾ける焚き火の音だけが響いていた。シルヴィアは何度も彼の名を呼びながら、抑えていた感情と欲望を、すべて解き放っていった。

 

シルヴィアの動きが次第に激しくなっていく。彼女は彼の胸に爪を立て、赤い髪を振り乱しながら腰を振り続け、抑えていた感情をすべて吐き出すように喘いでいた。焚き火の明かりが彼女の汗ばんだ白い肌を妖しく照らし、そばかすの浮かぶ胸が激しく上下する。

 

「あっ…はぁ…もっと…」

 

彼女が熱い吐息と共に囁き、腰の動きをさらに速めた。感情の高ぶりに応じて、周囲に小さな炎の粒子がいくつも生まれ、洞窟の中で幻想的に舞い上がる。タデウスは彼女の腰を強く掴み、下から激しく突き上げた。シルヴィアの喉から甘く高い声がこぼれ落ちる。

 

彼女は上体を倒し、彼の唇を貪るように激しくキスをした。舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合う。シルヴィアの内腿が小刻みに震え、ついに彼女の全身が大きく痙攣した。

 

熱い炎が一瞬、洞窟全体を赤く染めた。

彼女は全身の力を失い、彼の胸にぐったりと倒れ込んだ。荒い息を繰り返しながら、耳元で甘く掠れた声で囁く。

 

「まだ、足りない」

 

彼女は汗だくの顔を上げ、潤んだ群青色の瞳で彼を見つめた。シルヴィアの言葉を聞いた瞬間、タデウスの目が獣のように鋭くなった。彼は一瞬で体を起こし、彼女を押し倒すとそのまま上から覆い被さった。シルヴィアの背中が冷たい岩肌に触れて小さく喘ぐ。

 

「我慢するなよ」

 

低い声でそう告げると、彼は彼女の細い腰を掴み、荒々しく突き入れた。シルヴィアの背が弓なりに反り、喉から甘く淫らな声が飛び出した。彼女は両手で彼の背中に爪を立て、足を彼の腰に絡めながら必死にしがみついた。

 

彼は容赦なく腰を振り、彼女の奥を何度も突き上げた。シルヴィアの瞳から涙がこぼれ、赤い髪が岩の上に乱れ散る。感情が完全に暴走した彼女の周囲では、小さな炎がいくつも生まれ、消えながら二人を照らしていた。

 

シルヴィアは何度も達しながら、泣きそうな声で彼の名を呼び続けた。やがて彼も限界を迎え、彼女の奥深くに熱を放った。洞窟に二人の荒い息だけが響く中、シルヴィアはぐったりと彼の胸に顔を埋め、満足げに小さく笑った。彼女は汗で濡れた彼の首筋にキスをしながら、甘く囁いた。

 

「あなたはもう、私のものだよ…」

 

シルヴィアはまだ息を荒げながら、彼の首筋に顔を埋めたまま小さく笑った。

 

「ふふ…まだ終わりじゃないよね?」

 

彼女は体を起こすと、彼を仰向けに押し倒して再び跨がった。さっきよりも大胆で、妖しい笑みを浮かべている。

 

シルヴィアは自ら腰を沈め、再び彼を深く受け入れた。ゆっくりと、しかし確実に腰を動かし始め、赤い髪を振り乱しながら甘い声を上げていく。彼女は潤んだ瞳で彼を見下ろした。炎の粒子がまた周囲に舞い上がり、二人の動きに合わせて激しく明滅する。

 

「見て…私の炎、あなたのせいでこんなになってる…」

 

シルヴィアの動きが次第に速くなり、彼女は二度、三度と達しながらも腰を止めず、貪るように彼を求め続けた。

 

激しい時間の後、シルヴィアは完全に力を失ったように彼の胸に崩れ落ちた。彼女は汗ばんだ額を彼の首筋に押しつけ、荒かった息を徐々に整えていく。タデウスが優しく背中を撫でてやると、シルヴィアは満足げな小さなため息を漏らし、すぐに深い眠りへと落ちていった。

 

焚き火の炎が小さくなっていく中、タデウスは彼女を抱いたまま剣を引き寄せ、不寝番を続けた。朝が近づき、洞窟の天井の切れ目から薄い光が差し込んできた頃。シルヴィアが小さく身じろぎをして目を覚ました。まだ眠そうな顔で彼の胸に頰を擦りつけながら、甘えた声で呟く。

 

「…朝?」

 

「ああ。よく寝てたぞ」

 

シルヴィアは少し照れたように笑い、彼の胸に顔を埋めたまま動こうとしない。

 

「…ちょっとやりすぎたかも。体がまだ熱いよ」

 

彼女はそう言いながらも、幸せそうに彼の腕の中に収まっていた。赤い髪が朝の光を受けて優しく輝いている。タデウスは彼女の髪を静かに撫でながら、低い声で言った。

 

「無理はするな」

 

シルヴィアは小さく頷き、再び目を閉じた。

 

「あなたがそばにいてくれると、なんだかすごく安心する」

 

彼女はそう呟くと、再び穏やかな寝息を立て始めた。タデウスはそんな彼女の寝顔を静かに見つめながら、朝の光が洞窟を照らすのをじっと待っていた。

 

洞窟の朝を迎えた日、二人はゆっくりと出発した。タデウスの愛馬トーチは、洞窟の近くの木陰で大人しく待っていた。気性は荒いが賢く忠実な相棒だ。シルヴィアは少し照れくさそうに彼を見上げた。

 

「私も…一緒に乗っていい?」

 

タデウスは軽々とシルヴィアの腰を抱き上げ、トーチの鞍の前に彼女を乗せた。自然と彼女は彼の胸に背中を預ける形になる。トーチがゆっくり歩き始めると、シルヴィアは小さく息を吐き、彼の腕の中に身を委ねた。

 

馬の穏やかな揺れが、二人の体を優しく包む。昨夜の激しい記憶が、まだ肌に残っているかのように熱かった。

 

「トーチ…いい名前ね」

 

シルヴィアは彼の胸に頰を寄せながら、ぼんやりと呟いた。彼女の燃えるような赤髪が風に揺れ、タデウスの顎に触れる。そばかすの浮かぶ頰が、朝の陽光の中で柔らかく輝いていた。帰路の森の道中、シルヴィアの内面は穏やかでありながら、複雑に揺れていた。

 

(出会って間も無い人なのに、こんなに安心できるなんて思わなかった。昨夜あんなに自分を曝け出して、感情も体も全部彼に預けて…それでも怖くなかった。むしろ初めて「自分を抑えなくていい」と思えた)

 

彼女は彼の腕に自分の手を重ね、指を絡めた。トーチの歩みに合わせて二人の体が密着するたび、昨夜の感触が鮮やかに蘇る。

 

「ねえ……離れたくないな」

 

小さな声でそう漏らすと、タデウスは無言で彼女の腰を強く抱き寄せた。それだけで十分だった。シルヴィアは群青色の瞳を細め、幸せそうに微笑んだ。

 

ゴーズ・ヴェレンの港町に着いたのは、その日の夕方遅くだった。往路とは違い復路は2人とも騎乗しているため、トーチを休ませる時間はあっても帰路の方がはるかに早く着いたのだった。町は賑やかで、船の発着、荷卸しや積込みの人夫や商人たちの声が響いている。二人はトーチを厩舎に預け、一晩休むことにした。その夜も二人は離れがたく体を重ねたが、今回は激しさよりも静かで甘い触れ合いが中心だった。

 

翌朝、シルヴィアはアレツザ魔法学院のあるサネッド島行きの船に乗る準備を整えた。当然ながら女魔術師やその関係者以外の立ち入りは禁じられている。タデウスは桟橋まで彼女を見送るしかなかった。

 

船が近づく中、シルヴィアは彼の胸に顔を埋め、声を震わせた。

 

「…行かなきゃいけないの。でも、この短い旅路でこんなに胸が苦しくなるなんて思わなかった」

 

彼女の内面は、甘い余韻と寂しさでいっぱいだった。シルヴィアは涙を堪え、タデウスの顔を両手で包み込んだ。そばかすの残る可愛らしい顔が、切なげに歪む。

 

「すぐに手紙を書くわ。お仕事柄難しいかもしれないけど、あなたも絶対に無茶しないで。トーチと一緒に待っていて」

 

シルヴィアは彼に口付けをした。長く、深く、離れたくないと訴えるようなキスだ。唇が離れた後、シルヴィアは彼の耳元で囁いた。

 

「あなたは私のものよ。私も…あなたのもの。また会いましょう」

 

シルヴィアは振り返りながら甲板へと上がっていった。赤い髪が風に舞い、海のように深い色をたたえた群青色の瞳が最後まで彼を捉えていた。

 

タデウスは桟橋に立ち、らしくもなく船がサネッド島に向かって遠ざかるのをじっと見つめていた。船がウィッチャーの視力でもっても見えなくなるまで、じっと見送っていたのだった。

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