その日、空崎ヒナはシャーレの当番であった。はるばるゲヘナからやってきた彼女は、オフィスの事務室の前で一旦、息を整えた。それから意を決してドアを開けた瞬間、男物のパジャマがなんとか脱げないようズボンを引っ張り上げている自分自身を目撃した。
「えっ」
まさに白昼夢である。いきなり現実と区別できないような状態に陥るほど、休息を必要としていただろうか。
それにしても変な夢だ、と一歩部屋に踏み込んだ瞬間、顔を真赤にした自分が、ぎゅっとズボンを引っ張り上げながら叫んだ。
「ヒッ、ヒナ!?もう来ちゃったの!?」
口ぶりは自分のものではない。慌てていても、どこか柔らかな口調。部屋の主を考慮して、ヒナは思わずもう一人の自分に尋ねる。
「先生?」
「……そうだよ」
追い詰められた犯人のように、目の前の自分ががっくりと項垂れる。ヒナは首を傾げたまま、そう、と頷いた。
羞恥が遅れてやってきた。
「……ッ!?先生!?」
「み、見てない!私は何もしてないからっ!」
「し、信じる!それは信じるけど……先生!?」
遅れて合流した混乱が、状況をしっちゃかめっちゃかにしてしまった。空崎ヒナはもう一人の自分ーー先生の手に自分の手を重ねながら、そのまま固まった。
「気がついたら……ヒナの姿になってたんだ」
「それは……災難だったね?」
「いや、ヒナが悪いわけじゃないんだけど……」
はぁ、とため息を付く自分はいつもの自分そっくりなのに、もう少し、なんというか愛嬌がある気がする。この顔と体で生きてきた自分としては、まるで魅力が出し切れていなかったようで複雑な気分である。
「なにか、変なものでも食べた?」
「んー、特に心当たりはないけど……」
ちょっとこの姿のままじゃ、色々と困るね、と先生が柔らかく笑った。
「とりあえず、ヒナが当番なのは他の子達も知ってるから、最低限の書類を揃えたり、言伝を頼んだりしておけば、秘密裏になにが起こったか明らかにできないかな?」
「難しいと思う。たとえ先生がいなくなったわけじゃなくても、先生の姿が見えないようじゃ、また混乱が生まれることは必至」
それよりも、先生が私の姿になってしまったことを明らかにすべき……言いながら、ヒナは自分の顔がどんどん赤くなっていることに気づいた。
鏡を見ながら話している、というには相手の反応が違いすぎるし、愛嬌に至っては自分と比べ物にならない。双子の妹がいたらこんな感じなのだろうか、とヒナは考えてしまう。
「とりあえず先生、パジャマから着替えたら?いつもの服に着替えたら、少しは説得力も増すかも」
「そう、かな?ヒナがそう言ってくれるなら」
と、何気なく立ち上がった先生こともう一人のヒナは、その男物のパジャマが明らかに体躯にあっておらずブカブカだったため、立ち上がった瞬間、ズルっとズボンが脱げた。
トランクスも、腰のくびれを素通りして床に落ちる。下半身が露わになる。
「ちょっ……と?」
咄嗟のことに隠そうとした動きが、止まる。ヒナの視線が、彼の股間を凝視する。
「いや、その……何故かこれだけはそのままだったもので……」
隆起するペニスを前に、ヒナは、今度こそ言葉を失った。
基本的に、男性器が隆起するのは興奮などで血流が増加したときである。だから、「エッチなことを考えているとペニスが大きくなる」というのはあながち間違いではない。
しかし、それはリラックスしているときなどもあてはまる。特に起きて間もないと、男子は自然に勃起していることが多い。
しかし、そんな前提知識を知らないヒナは、震える声で言う。
「先生……エッチなことを考えてたの?」
「いや、これはその……」
「私が来て、ああいや、私自身になって、それで……?」
誤解だった。しかし、言えば言うほど事態は悪化しそうである。
ヒナは、音もなく先生の正面に立った。鏡写しの少女が二人、お互いを見返す。
「ヒナ……?」
「……えいっ」
ヒナの小さな手が、ペニスを包んで引っ張った。
効果は劇的だった。体をのけぞらせ、ビクンビクンとのたうち始める先生に、ヒナは顔を赤くしたまま手を激しく動かす。
「ひ、ヒナ!ストップ!ストップ!」
「お、おちんちんが大きくなったら……こうして、小さくするんでしょう?」
「それは……ひあっ!?」
すべすべとした指が、赤い亀頭を撫でた。敏感な筋の裏に爪がぶつかった。
「て、手伝って、あげるっ」
「その必要はないから!ヒナっ……」
「大丈夫、私だって、風紀委員長だからっ」
「理由になってないよ!?」
言葉をかわそうとヒナの決意は揺るがず、優しく包み込む手は偶然にも的確に敏感な箇所を擦り上げ、果たして先生は、ぎゅっと目をつぶった状態で、射精した。
どろっとした精液が、床に飛び散る。その何とも言えない臭いが、ヒナの鼻をくすぐる。
「ヒナ……?」
ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナは、自分と同じ姿になった先生を押し倒していた。
スカートを膝頭に引っ掛けるようにして、しゃがみ込む。ショーツを広げてその僅かな隙間に、彼のペニスを押し込んでいく。フワフワとしたボリュームのある髪が床に広がり、押し倒した相手の元へと垂れ下がる。
先生、とうわ言のように繰り返す。押し倒されたと思ったら、今度は胸ぐらを掴まれ、起き上がらせられている。ヒナの顔が、先生の小さな肩に押し当てられた。
「うっ……く、うっ……」
痛みに歯を食いしばる。漏れ聞く声に、先生は気が気ではない。自分で動くわけにもいかず、かと言ってこのままにしておくこともできず、固まっている。
と、急にヒナの体が離れた。
気がつけば、唇を奪われていた。ヒナの体から漂う柔らかく甘い香りが鼻孔をくすぐり、それが下半身を刺激する。十分すぎるほど大きくなったペニスに対し、ヒナは首筋に腕を回してかじりつきながら、グリグリと腰を押し付けた。
荒い息遣いと、ぴちゃっ、と聞こえてくる水音。布が擦れ合う音に、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と妙に規則正しい音。
その時、ヒナが腰を落とした。先生が、自らの意思で唇を奪った。その体では支えきれずに、押し倒されていた。ヒナを貫くペニスが、ぐい、と膣内を掻き回した。
先生の胸元に顔を埋め、ヒナは達した。かくん、かくん、と下半身が揺れている。パジャマを握りしめていた手が、落ちる。
「先生?さっきから、何をしているんです?」
そんな声が事務室の前まで聞こえてくる。先生は乾いた笑みを浮かべて、この状況をどう説明したものか考えていた。