「『自分』が羞恥に震えて……いや、淫靡に顔を赤らめて……ふふ、何と言えばいいのかな。それが意外と悪くないどころか、面白いと思っている自分がいることに、少し驚いているよ……先生」
シートを倒した状態で百合園セイアは股座にひょこっと顔を出し、スカートの下に隠されていた、あるいはショーツでも隠し切れなかった勃起した男根に愛おしげに頬ずりしながら言った。小さく温かな手をそっと添えて、舌をぺろり、と覗かせる。サングラスの下のイタズラっぽい笑みに、彼女が病弱な姿から抜け出し、徐々に「らしい」姿になっていくことを喜びながら――でも、「先生」としては情けなく、申し訳なく思いながら――百合園セイアの姿をしたまま、ペニスを勃起させた彼は、目を閉じて、ふっと息を止めながら、体を縮こませた。
先生が百合園セイアの姿になって、暫く経つ。その間にトリニティのティーパーティのホストである桐藤ナギサが、「混乱を最小限にとどめるため」と、
「今の先生は我がトリニティのティーパーティが一人である、百合園セイアと同じ姿になっている」と発表した。
ナギサにしてみれば、そう発表することで、トリニティが少しだけ、そう、ほんの少しだけ他の学校よりもシャーレの先生に近しいのだと、セイアに言わせれば「茶目っ気たっぷりに」宣言したわけなのだが、それがどういう風に伝わるのかがわからないというのが噂の怖さと言ったところである。
気が付けば、「シャーレの先生は変装の達人である」「シャーレの先生の本当の姿は誰も知らない」「先生は生徒たちと親交を深めるために、生徒たちの姿に『変身』するのだ」とかいう訳の分からない話にまで膨れ上がっていた。
これがいわゆるロアーーフォークロアとでもいうやつかと、彼は戦々恐々したものだが、生徒たちの反応は意外にも、「次は私」「いや次こそゲヘナの風紀委員長に」「ミレニアムも忘れてもらっては困る」「ん。次は先生は私になるべき」
などと、生徒たちは先生を変態と罵るどころか、「次は私に」と大人気であった。
そのままの熱量でシャーレに押し掛けてくることも予想されていたのだが、そこに現れたのは百合園セイア本人で、
「先生。ちょっと私と、逃避行なんてどうかな」
とサングラスを押し上げながら言ったものだった。
誰もいない海岸線沿いの道路の脇に止めて、運転席を降りる。ぐるっと車体の周りをまわったかと思えば、彼女は彼が座っていた助手席の方に、ちょうど先生と向かい合うようにしてドアを閉めた。
ぎゅうと押し付け合う互いの体温がじんわりと伝わってくる。先生が見上げ、セイアが彼を見下ろした。はっはっ、と気づけば互いの息づかいが荒くなっている。気が付けば、セイアが獣のようにむしゃぶりついてきて、こちらの唇を奪っていた。そのまま熱い吐息が形の良い鼻梁を擦るようにくすぐった。二人の口の中で醸成されて、ぐちゅぐちゅと混ぜあった、どちらのものでもない唾液の橋が二人を繋ぐ。ぽん、ぽん、と、セイアの手が、トリニティの制服の上から先生の胸を撫で回す。セイアさんに間違えられては困るでしょう、という割に、誰もが着せたがる、セイアとお揃いの制服。袖もきっちり、採寸したように余っている。
贔屓をしていると思われるのも困るから、せめてスーツのジャケットとシャーレのバッジだけはそのままつけているが、変身前のそれが身分証扱いになるとはどうしても思えない。
そのトリニティの制服をまさぐり、ささやかでも確かに存在を主張する二つのふくらみを今、当の本人が撫で回していた。
「セイア……っ」
「しっ」
人差し指を唇に当てて、セイアが太腿を淫らに撫でる。びく、とショーツの下の突起が大きく跳ねた。抵抗もままならないまま、ショーツが脱がされ、セイアは自分と同じ姿の先生の股座へと体を滑りこませ、シートの下に膝をつき、そして、ぴとり、と充血した一物に少しひんやりとした頬を添えた。
「セイア、待って、待って――」
「待たない。ふふ、こういうのは、早い者勝ちだよ、先生」
口を大きく開けて、喉の奥までよく見せてから、これが今の君の体、これと全く同じ状態にあるんだと言わんばかりに見せつけて、セイアは勢いよくぱくりとペニスを咥えこんだ。ぬるりと温かな感触が、ペニスから伝わってくる。じゅぼ、じゅぼっ、と音を立てて、身動きの取れない先生の代わりに、顔を動かして擬似的にストロークを再現する。
先生の、女性らしい腰をしっかりと支えている太腿に、セイアの指が食い込んでいる。情熱的に、心許した異性にだけ行う淫らな奉仕に、驚くほど熱中している。
既に、腰が砕けていた。抵抗する力も失い、弱々しく彼女を制止しようとする口の端からは、唾液が流れ落ちている。ぺろっと舌でなぞって、ずずずっ、音を立ててセイアが吸った。窓枠、シートそのものに手をかけて、ぐっと身を起こす。シートごと先生の体を抱くようにして、太腿の上に乗ったセイアは、そのまま逆手でリクライニングシートを倒した。
ぎしっ、ぎしっ、と車が揺れる。しっぽをぴんと立てて、セイアが偽物の体の上で踊る。抱きしめられていたはずなのに、気が付けば、自分の方が彼女の太腿を掴んで必死に腰を叩きつけている。抱きしめられていたはずが、まるで暴れるのを押さえ込まれているようだった。
「まるでケダモノだね、君は」
ふーっ、ふーっ、と息を荒くして、生徒の柔肌に爪さえ立てかけているもう一人の自分の耳に、セイアは微笑みながらそっと囁いた。