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日継市をふらふらと歩く男――芹田(せりた)は、道行く人々に視線を向ける。
夜が近づく夕刻、道端には学生や会社員が歩いている。芹田は辺りの女性を眺めては溜息を漏らす。
(今日はハズレの日かも)
盗撮趣味がある芹田は、次の獲物を探していた。
(撮りたい――撮りたい、撮りたい……)
そう考えるうち、芹田の身体には熱が宿る。
芹田にはワモンダコのオボロが憑く。女性が集まる施設にこっそり侵入するための変装道具を揃え、隠れ潜みながら獲物を撮る――そんな芹田にワモンダコの霊が憑いたおかげで、盗撮も随分とやりやすくなったのだ。
(この力があるんだ、今までよりもっともっと良い獲物を……!)
静かに欲望を膨らませる芹田がギョロギョロと視線を動かしていると、不意に学生の集団が視界に飛び込んできた。
「!」
往来を歩く少女たちを見るやいなや、芹田は物陰に身を隠す。
暗がりから首だけ伸ばして少女たちの方に目を向ければ、彼女たちは夕陽を背にこちらへ向かって歩いてくる。
目に痛い逆光にも構わず、芹田の目は見開かれた。
「はあ。疲れた……」
気だるそうに呟く黒髪ボブの少女。
その隣に立つのは、ブロンドのウェーブヘアを揺らめかせる淑やかな少女。
「無事にダストできて良かったですね」
「ね。でもサナりん。ちょーっと頑張りすぎじゃない?」
ブロンドの少女に頷く白い髪の少女に言われて、小柄な少女がピクッと肩を跳ねさせ。
「そ、そう? でも……」
賑やかに話す少女四人のそばには男二人もいるが、そちらは目に入らない。
それぞれに方向性の違う顔と体つきの美少女四名を前にして、芹田の身体に熱が宿る。
「……撮りたい」
呟きに呼応するように、ワモンダコのオボロが装甲に変わる。
「撮りたい――!」
隠しきれないほど熱っぽい声とともに、芹田はオボロ憑きに変じて。
夕闇の中に姿を消すのだった。
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彼女たちを見つけた翌日には、芹田は彼女たちの身元を突き止めていた。
日継高校に通う彼女たちはオボロ・ダストを行うメンバー。一晩のうちに氏名も住まいも特定は済み、さっそく芹田は昼の日継高校に侵入する。
(昼休みは『待機室』にいるらしいな……)
そんなことまで調べはついている。
昼休みの校舎は賑やかだが、オボロの力で校舎の景色に溶け込んだ芹田に気付く者は一人もいない。芹田が首尾よく待機室に侵入すると、部屋には月田ツゥと阿由葉チオの二人がいた。
「……ん」
待機室に備えられたパソコンに向き合っていたツゥが声を上げると、チオが視線を向ける。
「なに&なに~?」
「報告書出せって。……ま、いつも通りニコナガがやるでしょ」
「確かにー」
待機室には弛緩した空気が満ちている。
二人とも昼食は済ませ、だらだらと時間を潰しているのだろう。ツゥは椅子にだらしなくもたれかかって手慰みにパソコンを操作しており、チオは携帯電話を操っている。
駄弁る二人は、部屋に芹田が侵入したことに気付いた様子もない――忍び足の芹田は、まずはチオに接近する。
(胸がデカいな……)
昨日見かけた時も思ったことだが、距離を詰めるとバストの豊かさが目につく。
ノースリーブのシャツの前部分は乳でパンパンに張りつめて、ネクタイが双丘の存在を強調する。あらわになった肩や短いスカートから伸びる脚も魅力的で、芹田はゴクリと喉を鳴らしてしまう。
(スカート――)
チオの足元に伏せて床と同化しつつ、彼女の美脚を仰ぎ見る。
長い脚を組んで座るチオの脚の隙間に顔を寄せると、薄い隙間から白いショーツが覗ける――とたんに芹田の身体はカッと熱くなって。
「――撮――」
自分にも聞こえない小声で、そう呟く。
「……ん?」
「どうかした?」
「ううん、気のせい〜」
その瞬間だけチオはわずかに首を傾げたが、すぐに携帯電話の画面に顔を戻してしまう。
(よし、撮れた……!!)
二人に気付かれないまま、チオのパンチラ撮影に成功する芹田。
(確認は後だ、今度は月田ツゥも!)
オボロの能力があるとはいえ、見つかる可能性はゼロではない。
芹田は大慌てでツゥの足元に迫る――カサカサと床を這う姿は滑稽そのものだが、やはりツゥもチオも気付く気配すらない。
「んー……」
ちらりとパソコン画面を見てみるが、ニュースサイトのトップ画面から適当なページを見ているだけのよう。
完全に暇を持て余した様子のツゥは、椅子の背もたれにだらしなく寄りかかって完全にリラックス状態。
(ガラ空きだな)
いつもはヒリつくような盗撮のスリルを味わっている芹田からすれば拍子抜けなほどあっさりと、ツゥの正面――ショーツを見る特等席にたどり着く。
(おお……!)
思わず声が上がりそうになるのをグッと堪える。
芹田の顔の左右にはツゥの脚。短めの黒ソックスから伸びるふくらはぎは瑞々しい若さに満ちていて、見ているだけで勃起が止まらない。
(そして……)
見上げれば、投げ出した足の付け根――グレーのショーツがチラリと覗いている。
装飾のまったくないボクサーショーツだ。下着はぴったりとツゥの下半身を包み込み、座っているおかげで陰唇の肉感が強く感じられ、少女の甘酸っぱい香りまで嗅げそうだ。
(――)
全身が蒸発しそうな深い情欲をたたえて、芹田はツゥの股間を凝視し続ける。
「……あ、もう時間」
呟いたツゥが動きだす。
立ち上がる際のプリーツスカートのひらめきすら間近だ。たまらない気持ちになりながら芹田は二人の後ろにぴったりついて、スカートの中を逆さ撮りしながら廊下に出る。
(女の子のにおいだ……)
まもなく昼休みが終わるからだろう、廊下には生徒たちがごった返している。
生徒たちの雑踏を抜けがてらしゃがみ込み、道行く女生徒たちのスカートの中を次々覗く。学生らしい清純なショーツを眺めて満足感を覚えながら、芹田は階段の方へ急ぐ。
(次の授業、斉藤サナリが移動教室だよな)
学校の間取りも把握していた。
階段の一階部分に到着した時、ちょうどサナリが向こう側からやってくるところだった。
(よし、いた)
盗撮を目論む芹田がいるとも知らず、サナリは階段へ。
教科書やノート、筆記用語は胸の前で抱えるように持っている。両手が塞がったサナリはスカートを押さえもせず、芹田が見張る階段を上り始める。
(来た!)
階段の下に伏せ、サナリのスカートの中を覗きにかかる。
ひかえめに揺れるスカートの中身は、真後ろに接近する芹田には丸見えだ。
(白……かわいいパンツだな)
綿だろうか、自然な色合いのショーツはどこか幼さを感じさせる。
階段を上るサナリが左右の足を動かすたび、小さな布地は徐々に食い込んでゆく。ただでさえ小さい布地は歩くごとに食い込んでいって、スカートの下はほとんど生尻が出ているほどだった。
(食い込みすごいな、これサナリちゃんは気付いてんのか?)
芹田が疑問に思う中、サナリはモジモジと腰を揺らす。
「ん……」
もどかしいような動きに合わせ、二つの膨らみがふるっと揺れる。
「……!!」
その動きは、明らかにショーツの食い込みを気にしたもの。
両手が塞がって、辺りには他の生徒たちもいる――ショーツの食い込みが気になっても直せずにいるサナリは視線を左右に向けながら、移動教室へ入ってゆく。
――芹田が見つめているとも知らないサナリが席に着いてすぐに教師が現れ、チャイムが鳴る。ショーツを直す暇もなかっただろうサナリのことを思うと、芹田は笑いが止まらない。
(それと、御田カァヤも……!!)
授業が始まった廊下を急いで、芹田はカァヤのいる教室へ。
授業中のしんとした教室の中で、カァヤの美貌はひときわ輝いて見えた。教師の説明を聞きながらノートにシャープペンシルを滑らせるカァヤは、息がかかるほどの距離に芹田がいることに気付いてもいない。
(これはすごいな)
教室にいるのはカァヤだけではないのだ。
周囲にはクラスメイトがいて、教師は板書をしながら定期的に生徒たちに目を配る。しかし誰一人として芹田の存在には気付かず、昼過ぎの気だるい空気とともに授業は進むのだ。
(……あの男子、ずっとこっち見てるな)
カァヤを凝視する芹田には、周囲の男子の視線も感じ取れる。
特に露骨なのは斜め後ろの席にいる男子。彼はノートから顔を上げるたびにカァヤに視線を置き、見惚れるように動きを止めるのだ。
(気があるのか?)
熱っぽい視線を向ける男子生徒は、明らかにカァヤを異性として意識している。
彼からはカァヤの後ろ姿くらいしか見えていないだろう。かたや芹田はカァヤの顔面を至近距離から眺め、制服越しの胸元やスカートから伸びる足まで凝視できるのだ。
(パンツは……ちょっとだけ見えるな)
カァヤの机の下に潜るようにして顔を寄せると、黒タイツ越しの白い布がわずかに見える。
「じゃあこの問題を――御田」
ほんのわずかにしか見えない布を懸命に凝視していると、不意に教師がカァヤを指名。
「はい」
カァヤが立ち上がると、芹田はすかさず下からショーツを隠し撮り。
(白!!)
黒タイツ越しにも見て取れるノーブルな光沢に心臓が跳ねる。
見た目の印象にふさわしい気品が感じられる真っ白なショーツを見た喜びに心を満たされて、芹田は改めてカァヤの顔面を覗き込む。
(こんなに見られてんのに気付いてないなんて)
その顔が美しければ美しいほど、滑稽でたまらないのだった。