3
翌日の放課後。
「あ?」
いつも通り待機室へ向かった響尾ニコナガは、待機室前の廊下にいる沖津ネザを見つけて首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「俺にも分からない」
肩をすくめたネザは、待機室のドアを指さす。
そこには、昨日までなかったはずの貼り紙がある――『男子禁制!』と書かれた紙を前に二人が顔を見合わせる中、待機室の中から「ちょっと」とツゥの尖った声がする。
「こっちは忙しいから。早く帰って」
「どういうことだ?」
「いいから早く!」
ツゥの声は焦りと苛立ちが乗っている。
「この調子だ。とにかく帰ろう」
「お、おう……?」
いつものように即決するネザに言われ、よく分からないながらも頷くニコナガ。
首を傾げる二人が立ち去る背後、サナリはそっとドアを開けて廊下の様子を窺う。
「……帰ったみたい」
「じゃあ、始めよう」
ツゥが返すと、待機室に集まった四名は真剣な表情に。
「ま、オボロの仕業なのは間違いないよね~」
切り出すチオの表情は剣呑だ。
ここに集まった四人はみな、オボロ憑きと思しき何者かの襲撃を受けている。
襲撃といっても、受けたのは攻撃ではなく痴漢。カァヤとツゥは浴室で、サナリとチオは自室で『何か』に身体を触られた――とても許せない卑劣な行為を働いた者たちを捕まえるべく、女性陣は男子禁制の会議を行っているのだ。
「まず整理すると……お風呂場か、お風呂上がりに出てきていて……」
カァヤの言葉に、ツゥが力強く頷く。
「それと、姿は見えなかった」
「わたしも」
「あたしも」
サナリとチオも続けて首肯する。
彼女たちからすれば、痴漢を働くオボロ憑きの正体は不明。入浴中に襲われたカァヤとツゥ、そして風呂上がりに自室でリラックスしていた時に――具体的に何をしていたかはなぜか二人ともごまかしたが――襲われたサナリとチオ。オボロ憑きの姿を見た者はなく、水場に出現するのではないかと推測するのがせいぜいだ。
「水場……海の生き物が憑いてる……?」
「範囲広すぎでしょ」
考えてみるも、オボロの正体には辿り着けない。
「でも、このまま放っておくわけには……」
「とにかく、対策考えよっか~」
正体はともかく、彼女たちがオボロ憑きに狙われているのは間違いない。
調べたところ、日継市で他に似たような事件は起こっていないらしい。これ以上被害が広がる前にどうやってオボロ憑きを捕まえるかの会議は白熱したが、長い時間をかけてようやく結論が出た。
「決行は明日……」
呟くサナリの顔に決意が滲む。
「捕獲&逮捕しないとね~」
チオが獰猛な笑みを浮かべる横、カァヤは静かに呟く。
「これ以上の被害は食い止めないと」
そして、ツゥはテープレコーダーを握りしめて。
「絶対、陥とす」
卑劣なオボロ憑きの捕獲に向け、彼女たちは闘志を燃やすのだった。
●
その翌日、職員室から出てきたカァヤはプールの鍵を手にしていた。
「鍵、もらえた……?」
職員室の前で待っていたサナリに問われて、カァヤは頷く。
「オボロ憑き捕獲に必要だってお願いして、何とか」
微笑むカァヤは、大事そうに鍵を握りしめる。
――立て続けに彼女たちに痴漢を働いたオボロ憑きの捕獲を目指す四人だが、今回は警察への協力を仰ぐことはしなかった。
捜査協力を頼むために書類を整えて提出して受理されてから動いて――などと悠長なことはしていられないし、書類仕事の大半を担うニコナガにこんな恥ずかしいことを伝えたくはない。詳しいことははぐらかしながらも鍵が必要だと強弁するカァヤに、教師は訝りながらも鍵を貸してくれたのだ。
囮となる一名がスクール水着姿でプールへ向かい、変態オボロ憑きが水着姿の少女を狙って現れたところで、他の三人が猛攻を仕掛ける――それが、今回の作戦だ。
まだ姿が見えていないオボロ憑きの能力は未知数だが、戦闘能力は低いだろうというのが四人の共通した見解。ネザとニコナガを除く四名での戦いにはなるが、まず負けることはないはずだ。
(それはいいとして……)
カァヤとともにプールの方へ向かうサナリが不安そうなのは、戦い以前の問題があるからだ。
「断固&反対!」
――プール前に近づくにつれ、チオの声が聞こえる。
放課後になったばかりの廊下は部活に向かう生徒や下校前の生徒で賑やかだが、その中でもチオの声はひときわ響く。
周囲の生徒たちが何事かと声の方を見れば、そこには言い合いをするチオとツゥの姿がある。
「反対って……じゃんけんで決めるって決めたじゃん」
「でも~、やっぱ一人で囮って危険すぎない?」
「危険な目に遭う人増やしてどうすんの」
プールで囮になる一名は、じゃんけんで決めることにした。
じゃんけんで負けたのはチオだが、チオはずっと駄々をこね続けている――ツゥは呆れながらも宥めようとするが、押し問答にうんざりとした表情だ。
もっとも、チオがこれだけ渋るのは仕方のないこと。
オボロ憑きに身体を触られた四人の中で、チオは乳と陰部をまさぐられ、絶頂までさせられたのだ。
オナニー直後だったとはいえあんな目に遭わされたチオからすれば、囮となって似たような目に遭う辱めは想像を絶する。
「と~に~か~く~、断固&拒否!!」
何度目かも分からない拒絶の言葉に、ツゥは溜息をついて。
「……じゃあ何、もう全員脱げばいい!?」
「えっ」
「つ、月田さん……!?」
ヤケクソ気味に言い放たれた言葉に、サナリとカァヤが狼狽えるも。
「――確かに~?」
その言葉を待っていたとばかりに、チオはニヤァ~~~~~っと笑うのだった。
●
――そんなわけで、四人そろってスクール水着に着替えるハメになった。
「なんでこんなことに……」
うんざり顔で着替えるツゥのそば、カァヤは更衣室の周囲を見回している。
「まだ来ていないみたい」
「水の近くに来るのかな……?」
先に着替え終えたサナリは、今日の作戦用に用意したバケツを覗き込む。
バケツの中は白色の塗料で満たされている。プールに張った水にこの塗料を流し込み、色付き水を辺りに散らすことで不可視のオボロ憑きを探すつもりなのだ。
「ほらっ、早く行くよ~!」
一人で囮になると決まった時はあれほど渋っていたチオだが、四人で囮になると決まってからは上機嫌。
四人は着替えを終え、念のため更衣室にオボロがいないことを確かめる――それからプールサイドに繰り出して、バケツいっぱいの白塗料をプールに流し込み始めた。
●
そんな彼女たちの姿を、芹田はじっくり眺めていた。
(? 何やってるんだ?)
昨日は盗撮行為を休んで、ここ数日のうちに撮った画像を見返していた。一日開けただけで芹田は彼女たちの身体が見たくてたまらなくなり、オボロ憑き捕獲に乗り出す彼女たちの罠に乗ることにしたのだ。
(ま、逃げれるだろ。余裕余裕)
あそこまでの行為に成功して完全に調子に乗った芹田は、自分が捕まるとは考えもせずに四名のスクール水着姿を眺め回す。
彼女たちの肢体を包む紺色の布地を見るだけで、散々見返した四人の裸を思い出す。
放課後になったがまだ日暮れには遠い。水着から伸びる太ももの付け根や細い肩紐からあらわになる腋窩は眩いほどで、芹田は誰から撮ろうか迷いながらカメラを構える。
(お、屈んでるな)
まずは手近にいたサナリの胸元にフォーカスして一枚。
サナリはプールサイドに膝をつき、白塗料が入ったバケツを傾けている。プールを覗くような姿勢のサナリを後ろから撮れば、むちっとしたヒップが何とも卑猥だ。
(あとは……)
続いて、カァヤの姿を引きで一枚。
プールで泳ぐつもりはない彼女たちは、水泳帽は被っていない。紺水着と色素の薄い髪のコントラストは美しく、ウェーブヘアに縁取られた美乳から目が離せない。
(乳といえば、もちろん――)
視線を横にずらせばチオがいる。
プールに手を突っ込んで、白濁した液体をかき混ぜるチオ。彼女がどんなみっともないオナニーをしているかまで知っているのだ、芹田はチオの胸を撮る間も、彼女の胸の感触を思い出していた。
(で? 何をするんだ?)
プールの中が白く濁った液体に満たされると見るや、ツゥはプールサイドを見回す。
テープレコーダーを手にしたツゥの表情は険しい。絶対にオボロ憑きを捕らえると覚悟を決めた顔のツゥの股間にカメラを向ける芹田は、何度も何度もシャッターを切る。
「いくよ」
真剣そのものの表情となったツゥはテープレコーダーを構えて。
「――烈龍烈憑ッ!」
叫びとともにテープレコーダーが刀に変わる――瞬間、ツゥはプールの中心に飛び込んで刃で水を斬り上げる。
(!)
ザアっと激しい音がした。
白塗料を含んだプールの水のほとんどが空中に巻き上げられる。白濁の雨がプール一帯に降り注ぎ、芹田は逃れることも出来ないまま白い水を浴びてしまう。
(やばい!)
急いで保護色を切り替えようとする芹田だが、刻一刻と変わる水の流れに合わせて体色を変えるのは至難の業。
しかも、四人はオボロ憑きがここにいると分かっているのだ。彼女たちの鋭い視線がプールサイドを走ったかと思えば、カァヤの声が響く。
「見つけた――悠鷹悠憑!」
双眼鏡をライフルに変え、即座に射撃。
完全にプールサイドの風景に同化した芹田の姿を完全に捉えたわけではないが、白い水は彼のシルエットをぼんやりと浮き上がらせていた。
「……!!」
ライフルは芹田の肩をかすめる――オボロ憑き特有の機械化した装甲のおかげか痛みはないが、保護色の維持はもう出来ない。
(やばい、姿が……!!)
白い雨が止む。
オボロ憑きそのものの姿が、彼女たちの目の前に現れた。
「やっぱりいた……!」
敵愾心をむき出しに芹田を睨むツゥのそば、サナリがひっと息を飲む。
「あ、あの人、カメラ持ってる……!?」
「えっ……!?」
悲鳴のような言葉に、チオの動きが止まる。
瞠目する四名の眼差しがオボロ憑きの手元――こちらに向けられたカメラレンズに集中。あの卑劣漢がカメラを持っていることの意味を悟った四名は血相を変える中、チオの叫びが響いた。
「妖蜂妖憑――!!」
切迫感に満ちた絶叫に、蜂の分身体が動きだす。
(撮られた……撮られてた……!!)
あのオボロ憑きがカメラを持っているなら。
オボロ憑きの被害を受けたあの時も持っていたなら。
チオは――サナリは、ツゥは、カァヤは――とんでもない映像を彼に握らせているのだ。
「絶対! 絶対捕まえる!」
悲愴感のある叫びとともに、カァヤはライフルを乱射。
「――ッ!!」
サナリの声はもはや何を言っているかも分からないほど。
このオボロ憑きが想像以上の存在だと理解してしまった彼女たちのプレッシャーは相当のもの。焦燥に駆られた彼女たちの攻撃は大ぶりで、芹田は乱射される弾丸を避けながらオボロの力を使う。
「……!?」
ツゥの目の前、オボロ憑きはエネルギーブレードを展開。
ブレードは八本。殺到した蜂の分身体をそれぞれで斬り伏せ、ライフルを弾く。
「撮ッ――!!」
その合間にもカメラを構え、蒼白の表情と水着姿を撮り続ける芹田。
「カメラ! カメラ壊さないと……カメラ……!!」
「絶対……絶対陥とす……!!」
サナリとツゥの挟み撃ちをバックステップで回避すると同時に、エネルギーブレードを閃かせる。
「しま……っ!!」
決死の一撃をかわされ、迫りくるブレードを前に何もできない。
それぞれに迫るブレードは二本。
(やられる――!)
痛打を受ける覚悟を固めるしかない四名。
しかし、ブレードが引き裂いたのは彼女たちの表面――身を包むスクール水着だけ。
「あ……!」
「や、やだ……!!」
甲高い悲鳴が重なった。
ブレードは水着を裂き、一瞬にして四人を裸に剥いた。彼女たちの身を守っていた一枚の布地は切っ先に絡みつくボロ布と化し、タイミング良く吹きつけた夕風に乗ってどこかへ消えてしまう。
「~~っ!!」
カァヤはライフルを取り落とし、胸を覆い隠してその場にしゃがんでしまう。
「が、がが、頑張らないと……頑張らないと……!!」
サナリは混乱状態ながらも大剣を手にオボロ憑きへ飛びかかる――だが、さらけ出した無防備な胸にカメラを向けられると切っ先がぶれて。
「ひゃ……!!」
慌てて胸と股を隠すが、すでにシャッター音は響いた後。
「と、撮られ……」
わなわなと震えて涙目になるサナリのそば、チオは胸の先を隠すので精一杯。
動揺のあまり、分身体の攻撃も冴えないもの。数で押そうにもままならず、蜂たちはエネルギーブレードに蹴散らされてしまう。
「撮――!!」
勇ましく響くはオボロ憑きの声ばかり。
「や……やめ……やめて……っ!」
首も耳も真っ赤にしたツゥはオボロ憑きに背を向け、その場にうずくまってしまう。
胸は隠せたが尻は丸出し。後ろから容赦ない連写の音が聞こえてもツゥは動けず、真っ赤になって身を固くするばかり。
「お、追いかけ……せめて手がかりだけでも……!」
やっとの思いでそれだけ絞り出すツゥに、他の三名はオボロ憑きに目を向けるが。
「撮――!!」
威嚇するようなシャッター音に続き、オボロ憑きはスミを吐く。
「煙幕……!?」
自分の指先すら見えなくなるほどの濃い煙に取り巻かれ、彼女たちは動けない――ややあって煙が晴れる頃には、すでにオボロ憑きの姿は消えていた。
「い、いない……」
カァヤが辺りを見回しても、オボロ憑きの気配はまったくない。
「逃げられた……」
「そんな……」
がっくりと肩を落とすチオとサナリに、ツゥはうずくまったまま呻く。
「ていうか、早く服着ないと……」
静けさを取り戻したプールサイドはめちゃくちゃだ。
プールの水に混ぜた白塗料はあちこちに散って、彼女たちの裸身もところどころが白く濡れている。水着は端切れの一片も残っておらず、全裸に剥かれた事実がじわじわと四人の心を蝕む。
「こ、更衣室……更衣室に……!」
サナリは必死に言いながら、胸を隠して立ち上がる。
プールサイドはフェンスに覆われ、周囲から覗き見ることはできない。それでも外に裸で立つのは耐えがたく、四名はプールサイドの更衣室へ急行する。
だが。
「……は……!?」
更衣室にあるはずの着替えは、全てなくなっていた。
「タオル……タオルは……!?」
カァヤは血相を変えるが、何も無いことは明白だ。
――オボロ憑きは、煙幕を張って目眩ましをした後、更衣室に忍び込んで彼女たちの着替えとタオルを全て持ち去っていた。
「わ、わたしたち、どうしたらいいの……?」
何もない室内、サナリは哀れなほど震えている。
水着も着替えも奪われたうえ、更衣室には身を隠せるものは一つもない。せめてビート板の一枚でもあればと思うのに、それらの備品は遠く離れた別の場所に保管されていて、真の意味でここには何も無いのだ。
「……」
「……」
「……」
更衣室を沈黙が支配する。
「……待機室に、着替えはある……けど……」
呟くチオが遠い目をしているのは、ここから待機室までの距離を思ってのことだろう。
待機室まで行くには、校舎内の廊下をそれなりに歩く必要がある――放課後になったとはいえ学内に残る生徒は多い。それに、普段過ごしている学校を裸で歩くなんて、とても恐ろしいことだった。
「な、何か近道があったりとか……」
「……ない……」
縋るようなカァヤの問いに、力なく首を振るツゥ。
ここに衣服はなく、待機室になら着替えはある。
携帯電話や手荷物も全て待機室にあるから、とにかく待機室には向かわなければいけない――そう理解しても、四人はなかなか動けずにいた。
「……行かないと……」
気重な様子で呟くサナリが立ち上がる。
このまま更衣室でじっとしていたら、様子を見に来た教師に裸を見られかねない。
今は誰にも会わないことを願って、待機室へ向かうしかないのだった。
●
「~~……っ!!」
全裸で校舎に踏み込んだ瞬間、四人の顔が紅潮する。
胸と股間は両手で隠してはいるものの、それ以外のところは丸出し。年頃の少女として絶対に見せてはいけない場所がほとんど見えている四人は、待機室に向かってそろそろと歩みを進める。
「誰もいない……よね……?」
「……たぶん……」
震えた声のサナリに、静かに頷くツゥ。
裸の心細さに足が震えて仕方ない。部活動中の生徒たちの声や音は遠くから聞こえているはずなのに、すぐそばに来るのではないかと思えて恐ろしい。
「……無理……」
力なく呟きながら、ひたりと歩みを進めるチオ。
長い髪を前に垂らして少しでも胸を隠すも、今度はガラ空きになった背中が心細い。豊満なバストが溢れないように両手で押さえるせいで、チオの下半身はむき出しだ。
「うう……」
誰かが先行するわけにもいかず、四人横並びで歩みを進める。
普通に歩けば、待機室なんてすぐそこ。どのくらいの距離があるか意識したこともない近距離をのろのろと進み、ようやく待機室のドアが見えてきた時――唐突に、近くの教室のドアが開いて。
「じゃあ俺んち集合で――」
五名の男子生徒が、全裸の四人の前に現れた。
「――――え?」
突然現れた全裸の少女四名を前に、男子生徒たちは目と口をかっ開く。
「……!!!!」
四人はといえば、恐れていた事態を前にして呆然と動けない。
横並びの四人の目の前にいる男子生徒たちの視線は彼女たちの裸体に釘付け。何が起きたのかも分からず呆然とする彼らのうち一人が、思わずといった感じで声を漏らす。
「え、御田さんと……月田さんと、阿由葉さんと、斉藤さ――?」
それぞれ名前を呼ばれた四人は、湯気が出そうに全身を赤くして。
「あ、」
「あ――」
「ああああ……!!」
「うわあああ……!!」
それぞれにめちゃくちゃな声を上げながら、男たちの間をすり抜けてダッシュ。
「え……!?」
「な、何!?」
「なんで裸……!?」
混乱した彼らの声を背中に受けつつ、待機室へと駆け込むのだった。
●
十数分後。
ネザとニコナガは、首をひねりながら待機室に向かっていた。
「荷物置いて、どこ行ったんだ?」
「さあな。ひとまず待機室に戻ってみよう」
さっきまで職員室にいた二人は疑問でいっぱい。
二人を職員室に呼んだ木場教師によると、オボロ憑きの捕獲のためにプールの鍵を借りたカァヤが戻ってこないのだという。
そもそもオボロ憑きの捕獲についての話も初耳だった二人は戸惑いながら校内を探し回るも、女子たちの姿はない――荷物はあるから戻ってくるはずだと思って待機室へ戻ると、果たして女子四名の姿があった。
「おー、おっカァ――」
言いかけるニコナガは、しかし言葉を切る。
制服姿の四人は机に突っ伏し、頭上に暗雲が見えそうなほど暗いオーラを纏っている。
「……ど、どうしたんだ……?」
室内を満たすどんよりした空気に気圧され、後退りしてしまうネザ。
「うっさい……ほっといて……」
ツゥはそうとだけ言うと、完全に気力が尽きて押し黙る。
――ありとあらゆるダメージを負った彼女たちが回復するには、まだまだ時間が必要そうだった。