ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活♡~旦那様の体液が全部媚薬でごっくんしたらみんな狂ってイっちゃうんです~ 作:有のよいち
アメジストの瞳が僕の意識を吸い込む。そう錯覚させられる。目線を移しても、純白に輝く肌に心が捕らわれてしまう。
これまで見知ったどの国の姫君でも、この子と並んでしまえば色を失いかねない。
そんなラズが裸で僕を抱き締めて、森すれすれを飛んでいる。顔を胸に挟まれて、そのあまりの柔らかさに理性が悲鳴をあげている。
それだけじゃなく——。
「いつでも私の体を旦那様の好きにして下さいませ♡ 胸の感触はいかがですか?」
答えられるわけがない。言葉で簡単に形容できるものじゃない。少しでも油断すれば手を出してしまいそうになる。
戸惑う僕を見て、ラズはその都度うれしそうに顔をほころばせている。僕は胸の谷間から何とか視界を確保して伝えた。
「森の端の方にぽつんと一軒、家が建っているのが見える?」
「えっと、あの丸太で出来たお家ですか?」
「うん、そうそう!」
「あそこが今日から旦那様と私の住まいになるんですね♡」
間違いではないけれど、身を隠す場所が言い方ひとつで色気を放って聞こえてしまう。
とにかく、思ったより早く着けそうで良かった。裸の女の子に抱きついて空を飛ぶなんて、これ以上我慢を続けるのは厳しい。
「はい、着きました♡」
「ありがとう。ところでラズ……服を着てもらえないかな」
「服、ですか? このままで良くないですか?」
全く悪びれる様子もなく、腕を後ろに組んでおどけた表情で胸を付き出してくる。というか、押し付けて来ている。とても直視できない。
「いったん落ち着きたいんだ。お願いだから」
「ええ~?」
眉を八の字にして不満そうな声を漏らしたけれど、しぶしぶ魔法で服を出してくれた。それは良かったのだけれど——。
「待って、それ、下着じゃないの?」
「はい♡ 気に入っていただけました?」
やたら露出の多い、帯を巻いているようにしか見えない服だった。乳房が布地の上下のどちらからも覗いている。心なしか、また胸が大きくたわわになっているように思えた。
「もう少し隠してもらえない?」
「う~ん……。それはご命令ですか?」
「えっと、そういうわけではないけど……」
「でしたら、もう少しだけこのままにさせてください。飛んだらちょっと体が熱くなってしまって……」
確かにラズは汗ばんでいた。興奮して火照っているようにも見えるけれど。
「ひとまず家の中へ入ろう」
僕はポケットに忍ばせておいた秘密の鍵を取り出し、玄関を開けた。外観より中は意外に広々としている。キッチンにテーブル、それから椅子が四脚、食器が一式収められた棚まで、必要なものは揃っていた。
「わあ! ここで旦那様と暮らせるんですね」
ラズは目を輝かせて声を弾ませている。何だか悪い気はしない。
僕はこの場所に何度か来たことがある。ストラディバリ家にはいくつか身を潜める場所があった。今ではほとんど無くなってしまったけれど。それでも、少なからず隠れ家といえる場所が残されていた。家門が没落して滅亡同然とはいえ。
そのひとつが、港湾都市【トリノメーア】の外れにあるこの一軒家だ。
質素な木造の平屋だけれど、住むには十分な設備が整っている。キッチンのあるリビング以外に寝室に浴室、洋服や備品の収納部屋まである。頑強な木材を組んで建てられていて、危険から身を守るにも適している。
「ラズ、疲れたでしょ。何か飲み物を入れるからそこに座っていて」
僕はそう言ってテーブルの方へ導こうとしたけれど、彼女は玄関に立ったまま動こうとしなかった。不思議に思って顔を覗くと、打って変わってひどく表情を曇らせていた。
「どうしたの?」
「あの、旦那様。……誰かが私たちを付けて来たみたいです」
「えっ? それってもしかしてさっきの……」
「違うと思います。でも、とても嫌な感じがします」
奴隷商の残党や取引相手だった貴族の手の者でないとしたら、ひょっとして辺境警備隊や保安隊に見つかってしまったのだろうか。いや、それにしては対応が早すぎる。僕らはここまで飛んで移動して来たのだから。
「旦那様はこの家の中にいてください。私が対処してきます」
その言葉に、僕は血の気が引いていくのを感じた。ラズの身が危険に晒されると直感したからだ。僕が止めようと手を伸ばしたとき、彼女は首を小さく傾けて、にこっと笑顔を見せた。
「どうかご心配なさらずに、ここで待っていてください。私こう見えて、結構強いんですよ?」
説得力があった。一度に十数人の魔族と人間の命を奪ったその実力は本物だと思う。小柄で可愛らしい見た目からは想像もできないほど。けれども、僕はそれでも不安が拭いきれなかった。
「そうかもしれないけど……」
僕が眉をひそめると、ラズはかかんで上目遣いをして言った。
「でしたら、私がいっぱい力を出せるように、あつ~いキスさせてください♡」
「え、なに言って——」
言い切る前にラズは唇を重ね、激しく舐めた。
「はむ、うんっ……ちゅぷっ……美味しいです、旦那様ぁ♡」
舌を入れ、ねっとりと絡ませ、僕の唾液をちゅるちゅると吸っている。ラズの喉が何度も動いた。ごくっ、またごくっと、吸い取った唾液を飲み込んでいる。
「あはあ♡ 体が熱くって、力がみなぎってきます♡」
「そう……なの?」
「はい♡」
存分に僕のものを取り込むと——。
「それでは行って参ります、旦那様」
翼をバッと勢いよく広げ、すばやく踵を返すと、勢いそのままに玄関を飛び出て行った。僕は急いで追いかけたけれど、すでにラズの後ろ姿は森へと消えていくところだった。
夜が明けたはずの空は、黒い雲に覆われていた。土が雨に濡れる匂いがどこからか漂ってきていた。僕はなす術なく、彼女の言う通り、家の中に身を隠すことにした。
お願いだ——無事に帰って来てくれ。
裏腹に、雨粒が僕の頬を打った。