ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活♡~旦那様の体液が全部媚薬でごっくんしたらみんな狂ってイっちゃうんです~ 作:有のよいち
旦那様とふたりのお家。誰にも邪魔されずに過ごせる夢のような場所。
(本当に誰なの? せっかくの良い雰囲気なのに!)
さっさと片づけて戻って来よう。メラメラと燃える怒りの炎。絶対許さないんだから——!
くるりと背を向け、魔法で戦闘衣を纏う。戦士のような鎧とは違って、私の場合はフリルのついたドレス。淫魔のときの普段着がそのまま私の戦闘服。
振り返らずに玄関から外に出る。さっきより気配が強くなってる。
光の連撃が森に降りかかる。少し間を開けて、遠くから雷鳴が聞こえた。雨がぽつりぽつりと辺りを濡らし始める。
気配は、森の中。私を誘っている。
——居る。立ち枯れた大木の影に。
「そこにいるのは分かっています」
姿を現す人型の影。稲光にちらちらと見え隠れする、黒を基調とした
——
「さすが、と言っておきましょうか。この地を訪れた直後に私に気づいていましたね?」
「あなた誰なの? 淫魔相手にストーカーするなんて、ずいぶん物好きな人なのね」
この男、線は細いけど人間にしてはかなりの高身長だ。地が響くほど低く唸るような声の持ち主。左手にロザリオ、右手には短い杖を持っている。それ以外目立った装備は見当たらない。
何より驚いたのが——。
「会いたかったですよ、淫魔ラズ=リリン」
私は彼を睨みつけた。初対面で名指しされるのは久しぶり。しかも、人間の男に。こんなこと生まれて初めて。
降り出した雨の中、私は男と対峙した。
「私が誰だか分かっていてひとりで挑んでくるなんて、随分な自信家なんですね」
「お褒めに預かり光栄ですよ、この淫乱魔族め」
鋭い眼光からは魔族への憎悪が感じられた。
「否定はしません。でもそれは、私たちに対する侮辱になりますよ?」
「そのつもりで言ったんですがね。必要ならもう一度言いましょうか?」
「もう結構です……」
言って分かる相手じゃない。しかも、この男は殺気を私に向け続けている。
「祓う、なんてケチなことは言いません。今日がオマエの最期だ、ラズ=リリン」
「私がまだ若い淫魔だからって、ナメないで下さいね」
大きく翼を広げて見せた。男は杖を構え、ほぼ同時に黒色の火球を放ってきた。
(無詠唱魔法? この男、ただの
ギリギリで躱し、宙を舞う。男は杖を天から地へと素早く振るう。今度は
「人間にしてはなかなかやりますね。大口叩くだけあって、見事なものです」
「ふん。こんなものはあいさつ代わりだ」
自信満々な目。本気で私を倒せると思ってる。
「そう言えば、さっきの連れの男は今夜のオマエの餌か? 貧弱そうな奴だったなあ」
「旦那様を侮辱することは許さない」
「はあ? 旦那様だ? オマエ、あんなのが好みなのか?」
「うるさい……」
激しい雷雨が打ちつける。光と音の間隔が一気に狭くなった。
「女みたいな男を犯して殺すつもりだったのか。お楽しみが無くなって残念だったな」
正確に雷鳴の合間を縫うように言葉を浴びせてくる。
「黙って! 私たちの邪魔をしないで!」
「あっはははは! オマエまさか、あんなガキの従魔にでも成り下がったって言うのか? それともなにか? あいつの一物が気に入っておもちゃにでもしてるのか?」
「……それ以上旦那様を侮辱したら、ただじゃ済まさない」
「ははは、そいつはおもしろい。返り討ちにしてやる!」
私が男に飛びかかろうとした、次の瞬間——。
「かかったな!」
「なっ……体が……」
地面から延びる泥だらけの触手。私の首と腰、四肢を束縛していた。よく見るとそれは漆黒の鎖だった。
金属とは違い、まるで意思を持っているかのように動いている。私の体はぬかるんだ地面に縫い付けられるように縛られていた。
「それは俺が編み出した拘束魔法【
動けない。触手が体に食い込んでる。
「うっ……痛いっ!」
「どうだ、いいだろう? その触手は針のように肉に食い込むんだ。食い込んだが最後、肉ごと引きちぎらないと外すことはできないぞ」
最悪。せめて魔法を解く方法さえあれば——。
「それだけじゃない。この魔法には淫魔のオマエに相応しい仕掛けがあるのさ」
ニタリと怪しく笑う男。眼光は鋭く強いけれど、ひどく濁って見えた。それが何を意味するのか、私は良く知っている。獣欲を満たそうとするときの目。男は私に向けて杖を翳した。
「さあ、痛みと快楽の宴を始めよう」
「離して、変態!」
「いいねえ。その調子だ」
鎖がドクドクと脈打つ。四肢に食い込んだ触手からドロリとした何かが体の中に入って来た。
「何これ、熱っ……。ああ、痛い痛い痛い! やだあああ!」
「いい反応だ。何がオマエの中に入って来ているか、分かるか?」
「知らないっ!」
粘度の強い液体のようなものが、じわりじわりと染み入って来る。それが骨まで届いて激痛を生んだ。歯を食いしばっても、耐えられないほどに。
「やああ! やめてっ、入れないで!」
「あっははは! それは高濃度の聖水だ。オマエほど魔力の強い淫魔となると、聖水などぶっかけたところでたいした効果はないだろう。だがな、直接体内に注入できれば話は別だ」
「聖水? これ……そんなんじゃ……ないでしょ」
「ほほう、勘がいいな。実はな、聖水に薬草を混ぜて作った私の特製の退魔薬なんですよ」
「あ……悪趣味……」
悪態をつく私の体に、男は雨でドロドロになった泥を塗りたくって汚していく。そして顔を近づけ、いきなり唇を奪ってきた。
「んんっ、んんん!」
やだやだやだ、気持ち悪い。噛みつこうとした。だけど避けられて、首筋を舌で弄ばれた。それから耳をじっとり舐められ、歯を立てられた。
「気持ち悪い! やめろ変態!」
「おやおや、急に口が悪くなったなあ。いいねいいねえ、ぞくぞくするぞ」
旦那様のためにある私の体。こんな奴に汚されるなんて死んでも嫌。その心を読んでいるのか、男はとんでもなく醜悪なことを口にした。