ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活♡~旦那様の体液が全部媚薬でごっくんしたらみんな狂ってイっちゃうんです~ 作:有のよいち
————なあんちゃって、ね。
「まだ気がつかないんだ」
「なに!?」
微笑むと同時に穏やかに私が言ったら、やっぱりびっくりしちゃってる。
自分が場を支配していると思い込んでて、私を好きにできてるって少しも疑ったりしてないもんね。私がずっと主導権を握ってたなんて、すぐには信じられないよね。
「自分の体、よく見てみて」
「はあ? 何言ってるんだ。頭がおかしくなったのか?」
「頭がおかしくなったのはあなたのほうだよ?」
ようやく男は自分の現状に目を向けた。男の体に食い込んだ『邪縛の鎖』。暗い森の中で、強雨に打たれながら拘束されていたのは術者自身。食い込んだ触手から聖水を注ぎ込まれているのも。
「これはどういうことだ!?」
「見たままが事実だよ、お馬鹿さん♡」
「オマエ、いつの間に……」
「初めからだよ♡」
悪戯な声で絶望を煽る。急激に青ざめていく男。死に絶える寸前なのは自分の方だって分かったみたい。
「バカな……。そんな気配はなかったぞ。これは……幻か?」
「ちょっと違うかな。
「なっ……」
自分が支配権を握っていて、絶対的な立場にある——そっちが幻。絶望的な被支配の立場にあって、死の恐怖に晒されている——こっちが現実。
「ねえ、楽しかった? 私を痛めつけながら、おまんこを散々に犯して」
男は目を見開いて、眉間に皺を寄せて震えている。
「ねえったら!」
聖水が全身に浸透して激痛に耐えているのか、呼吸が苦しそうで、うまく話せないみたい。
「痛い? 怖い? あ~あ、射精してこんなに周りを汚しちゃって、ダメな人ね。今すぐ楽にしてあげたいところだけど、あなたの精気はまずそうだし、ひどく悪趣味なことされたから……このままバイバイしよっか」
「まっ……まって、くれ……」
「うふふ♡ ……やだ!」
男は全裸で何度も射精し続ける。まだ半分、私の術中にあるから。
たったひとり、真っ暗な森の中で、男は淫らな夢を見る。私の体をおもちゃにして、犯しまくって殺す、あなた好みの夢の続きを。
「もうあなたは長くないわ♡ じゃあね……偽
「行くな……頼む、助けてくれ。俺が……悪かった、頼む!」
「や~だよ!」
私は両手を広げるのに合わせて、翼を大きく羽ばたかせた。落雷を避けるために低く速く飛んだ。速く飛んだの理由は雷だけじゃない。もちろん、旦那様の元へ一刻も早く帰るため。
私、またやっちゃった——。
せっかく旦那様とふたりでずっとあの隠れ家に住めると思ったのに。相手が魔族だったとはいえ、きっと出て行かなければならないんだろうな。
——そういえばあの男、やっぱり変だった。
人間の姿で悪魔祓いを生業にする魔族なんて、どう考えても普通じゃない。男が言っていたけれど、私を狙ってのことだった。
淫魔を嫌ってたみたいだけど、人間の
出て行きたくないけど、そうするしかないよね。私だけを狙ってる誰かがいるんだ。旦那様を危険な目に遭わせないようしなきゃ。
隠れ家に戻った。雨で全身びっしょり。
玄関のドアを開けると、旦那様が——!
「おかえりラズ! 心配したよ」
そう言って駆け寄って来てくれて、大きなタオルで私の体を拭いてくれた。ふわふわでいい匂いがするタオルを二枚も使って。多分一枚は旦那様のためのもの。
「遅くなってすみません」
「そんなのいいから! ああ、こんなに冷え切って……」
心配そうな表情で体を擦ってくれた。擦ってくれてはタオルで拭いて、また優しく擦ってくれたり。その姿を見ていたら涙が出てしまって——。
「ラズ?! つらかったの? 痛い思いでもした?」
全力で私の身を案じてくれる。そんなことされたら、止められないよ。
「大丈夫です、どこも痛くありません。つらい思いもしてません」
「それなら良かったけど……でも無理してるよね? だって、泣いてるじゃない」
「これは、違うんです。旦那様の顔を見たらほっとしてしまって……」
旦那様は言葉を返す代わりに、より丁寧に私の体を拭き上げてくれた。すっかり水気が取れたところで、私を暖炉の前に導いて椅子に座らせて、温かい紅茶を出してくれた。
暖炉の火に紅茶、どちらも準備してくれていたんだ。もちろんタオルも。
紅茶をひとくち飲むと、身体中がじんじんした。
「ありがとうございます、旦那様」
「たいしたことじゃないよ。僕にできることは、これくらいしかないから」
それがどれだけうれしいことか、きっと旦那様はよく分かっていないんだと思う。こんな素敵な人格をお持ちのお方を、私は命をかけてお守りしたい。でも——。
「あの、私、旦那様に謝らなければならないことが……」
首を傾げて私の言葉を待ってくれた。紅茶をもうひとくち飲んで、ふうっと息を吐いた。
「魔族に襲われて、倒しました。雨が上がる前にここを離れた方がいいと思います。せっかくこんな素敵なお家へ案内していただいたのに、私のせいで……」
「平気だよ、そんなこと。ラズが無事でよかったよ」
「……え? お叱りにならないのですか?」
「叱る? ラズは僕を守るために戦ってくれたんじゃないの?」
「その魔族の狙いは私だったんです。私が危険を呼び込んでしまって、それに対処しただけです」
「だったら、同じことだよ」
その後に続けた旦那様の言葉が、忘れられないものになりました。