ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活♡~旦那様の体液が全部媚薬でごっくんしたらみんな狂ってイっちゃうんです~ 作:有のよいち
「ねえ、エル君」
「はい」
「初めてのときは優しくしてあげてね♡」
「え?」
サキュバスってみんなこうなんだろうか。それは置いておいたとして、自分の娘の初体験を勧めるような言い方するのはどうなんだ。うれしくないと言えば嘘になるけれど——。
「あら、顔赤くして……可愛いわね♡」
「か、からかわないでください」
「うふふ。よく見ると、なかなかいい男じゃない♡ ラズちゃんで足らなかったらいつでも呼んでね♡」
「リリスさん、やめてくださいよ」
悪戯っ子な表情で、僕を見つめながら翼をバッと大きく広げた。
「じゃあね、エル君。あなたも少しは休みなさいよ」
言い終えると同時にリリスさんは一瞬で姿を消した。芳醇な花の香りを残して——。それがあまりにいい匂いで、全身の力が抜けてしまった。僕はそのまま眠りに落ちた。
——目が覚めたら、夕陽が僕らを染めていた。
ラズがとなりですうすうと寝息をたてて眠っている。思わず抱き締めたくなる愛らしさに、手を出さずにいるのが苦しいほどだ。
「ん、んあっ……だんな、さま」
「起きたのかい?」
朱色に染められた寝室が、まるで朝かと錯覚させる。寝ぼけ
「私、いつの間に……」
はっとしたラズは、途端に顔を赤くして布団に潜り込んだ。そっと目元だけを出して僕を見つめている。
「良く眠れたみたいだね。気分はどう?」
「はい、おかげさまで。気分は……」
言いかけてまた布団の中に身を隠してしまう。仕草が小動物みたいだ。今度は潜ったままで言った。
「あの、お母様は?」
「僕が寝入る前に帰って行ったよ」
残念に思ったのか、すっと布団から顔を出して、しゅんとした表情をした。
「そうですか……」
「ひょっとして、もっと話したかった?」
「少しくらいは……。久しぶりに会ったので」
「そっか。前に会ったのはいつくらい?」
「えっと……、90年前くらいでしょうか」
「きゅ、90年!?」
人間とは時間の感覚が違うことは予想にあったけれど、いざ実際に聞かされるとその差に驚かされる。どのくらい感覚に違いがあるか聞いてみると、サキュバスの約30年は人間でいう1年とほぼ同じ感じ方らしかった。
「ラズって今、人間でいうと何歳くらいなの?」
「えっと、551歳になったので、人間だと……18歳とちょっと、でしょうか」
実年齢にはぴんと来ないし、人間でいう18歳と聞いてもにわかに信じがたい。ラズは幼く見えるから、僕より明らかに年下かと思っていた。
「旦那様はおいくつなんですか?」
「あ、ごめん。先に女性から年齢を聞くなんて、失礼なことしてしまったね。僕もちょうど同じくらいの歳なんだよ」
「そうなんですか? うふふ♡ 何だかうれしいです♡」
ベッドの中で可愛い声を出されてドキッとしてしまう。布団からひょこっと顔を出して、胸元をおさえて。そういえば、ラズってまだ裸だったよね——。
「旦那様あ♡」
ぶわっと布団から飛び出してくるラズ。裸のまま僕に絡みついてきた。
「ラズ、服着て、服!」
「うん?」
甘々状態になっている。こうなるとサキュバスはとことん積極的だ。
「眠る前のことを思い出すと恥ずかしいですけど~、旦那様にいっぱい責めていただいて、ラズはすっごくうれしかったです♡ せっかく裸なんですから、えっちなご命令してくださってもいいんですよ?」
「起き抜けでそんなことしなくても、別にいいから……」
「ええ~? 少しだけ、ねえ、少しだけでいいですから~♡」
困った。けれどすぐに案が浮かんだ。
「じゃあ、こうしようよ。雨も上がったし、まずはここを離れるのが先決でしょ? だから、早めに今夜の宿を見つけて、そこで……しない?」
聞いた瞬間、ラズの目がキラキラと輝いた。手のひらを胸の前で組んで、お祈りするように上目遣いで迫ってきた。
「いっぱい、いっぱい、えっちなご命令をくださるんですね♡ すっごく楽しみです!」
これで良かったのか——ひょっとして墓穴を掘ったのかもしれない。半日と空けずに淫らなことするだなんて、正気を保っていられるかどうか。淫魔って本当に——えっちだな。
身支度をして隠れ家を出た。
まだ陽は沈んでいない。さすがに服は着てもらった。とはいえ、移動はラズの飛行に頼るしかないので、また抱き合って空を飛んだ。
市街地の上を飛ぶと人の目についてしまう。山伝いに森を低く飛んでもらうようお願いした。ラズはずっと笑顔だった。市街地の北端、市の堺にいい老舗宿があると聞いていたので、そこへ向かってもらうことになった。
「あの煉瓦造りの建物でしょうか?」
「うん、そうそう」
ラズの胸越しに見えてきたお宿、【
まさか泊まる日が来ようとは。
ラズには念のため人間の姿になってもらい、入店すると——。