ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活♡~旦那様の体液が全部媚薬でごっくんしたらみんな狂ってイっちゃうんです~ 作:有のよいち
泣くことができたらよかったのに。
サキュバスの私は、泣くことができた。でも、バンパイアの私には、多分無理だ。私は私が嫌いだ。特にバンパイアの私が大嫌いだ。
エルヴェ様のおかげで、私はサキュバスの私を少しだけ好きになってきている。けれど、バンパイアの私を好きになんて、なれそうにない。
「こんな私を……貴方は愛せると言うの?」
「もちろん。だって、バンパイアの姿でも、中身はラズだ。ちゃんとラズなんだって、僕には分かるから」
「嘘よ、そんなの嘘。気休めは言わないで。可愛く振る舞えるサキュバスのときとは違う。荒っぽくて、不器用で、意地っ張りで……全然可愛くない」
「そう?」
首を傾げて、エルヴェ様は本気で不思議そうにしている。
「今、ちょうど可愛いって思ってるんだけどな」
「そんなの——」
「嘘じゃない!」
語気を強め、私の顎を掴んだ。くいっと顔を上げられる。エルヴェ様は怒っている様子で続けた。
「こんなに綺麗な女性を、僕は知らない。サキュバスとバンパイアでは確かに違って見える。だけど、ラズが綺麗なのは変わらない。君は綺麗だ。本当に綺麗で、とびきり可愛いよ!」
心臓がありえないほど跳ねた。言葉が、体中を稲妻のように
同じ人に、二度も、私は惚れたのだ。
「それで、まだ返事をもらっていないけれど……。僕とお付き合いしてください。どうか恋人になってください。だめ……かな?」
心の中で何かが消え去るのを感じた。しばらく言葉が出なかった。エルヴェ様は待ってくれた。私の目を見つめたままで。何度まばたきをしても、一切視線をずらすことなく。
鋭いのにやさしく私を求めてくれる、まっすぐな眼。
躰の力が抜けていく。全身が熱を帯びていく。激しい鼓動とは反対に、心は穏やかになっていく。それでもバンパイアの私は、何かを守ろうと意地を張る。
「こんな女と付き合おうなんて、とんだ物好きね。どうせすぐに愛想を尽かすに決まっているわ。付き合うのは構わないけれど、別れるなんて言い出したら殺してやるから」
「いいよ、殺して。じゃあ…………いいの?」
「構わないって言ったじゃない!」
——そう言った瞬間だった。
エルヴェ様は私の肩を強く抱き寄せ、唇を重ねた。
「ん? んんっ!」
牙を避けながら激しく舐り、舌を入れてくる。私の頭をがっしり抱え、激しく絡めてくる。混ざり合うふたりの唾液がこぼれ落ちる。そこでようやく唇を離した。
乱れる呼吸が交錯する。それだけでは終わらなかった。
私を見つめて、もう一度。
私を抱き締めて、もう一度。
これが夢なら、説明がつく。でも夢なんかじゃない。確かに感じる体温、息遣い。夢じゃないからタチが悪い。誰からも愛されることなく終わるはずだった、バンパイアの私。
それで良かった、はずなのに——。
狂ったように繰り返されるキス。あまりの激しさに、意識が混濁していった。
(嫌いじゃない。ううん。これ、すごく……。でも……)
バンパイアの血が訴えかける。主導権を取り返せ、と。本来は、人間にとって絶対的な捕食者だ。淑女を装って人間を客人としてもてなし、館に引き入れ、血を奪って殺す。こちらが上位なのだと。
けれど私の心は揺れる。混血が理由ではない。淫魔であっても、吸血鬼であっても、人間に対してはいつでも加虐的なのだ。しかし、淫魔の私は被虐を好む出来損ないだ。
相手がエルヴェ様でなければ、今のこの状況さえ耐えがたい。エルヴェ様だから思わず許してしまうのだ。けれども、どうしたことか、なぜこんなに心地いいのだろう。ありえない、抗わなければ。
翼を大きく広げ、宙を舞う。体を翻してエルヴェ様をベッドへ叩きつけた。
「うわっ!」
「ふふふ……。私を選んだのだから、覚悟してくださいね」
不敵に笑って見せ、首元に噛みつく。血を吸うためではない、唾液を血管へ注ぎ込むためだ。人間はバンパイアにそうされると、脱力して抵抗できなくなる。後はこちらの好きに弄ばれるのみだ。
エルヴェ様の上に跨る。バスタオルは舞い剥がれ、ふたりはすでに全裸。私の股のすぐ前に、熱いものが脈打ってそそり立っている。
「貴方は私のもの。私だけのもの。そうでしょう?」
動けなくなったエルヴェ様。腫れあがる熱茎をぎゅうっと握りしめると「ううっ」と呻き声をあげた。びくっと腰を震わせる。可愛らしい反応に、秘貝がひくひくと呼応する。
もう貴方様は私の支配下。溢れ出す我慢の証を、人差し指でくるくると先端に塗り付ける。
「ああっ……うっ」
エルヴェ様が嬌声を漏らす。まるで少女のように、細く、か弱い声。バンパイアの血が騒ぐ。私がすべてを支配している。快楽も、痛みも、命の行方も、すべては私の思うがまま。なんて快感なのかしら。
最高の気分——そのはずだったのに。
十分に濡れた蜜谷をエルヴェ様の刀身にあてがい、じっとりと包み込む。強く押し付けながら、腰を前後に大きく動かす。
「くっ……。それ……ああ!」
「ふふふ。気持ちいいのね? こんなに勃たせて、今にも破裂しそうよ? 昼間にサキュバスの私とあんなにシたのに……なんていけない子」
バンパイアの私の中に、確実に宿っている支配欲。サキュバスの私に欠けているわけではない。彼を自分だけのものにしたい。
誤魔化し続けている独占欲を、淫欲というかたちで満足させているに過ぎない。行き場をなくした強烈な欲望を噴き出させて。
嫌いだ。支配を望んでいるくせして、淫魔のように振る舞えない吸血鬼の
でも相手が、エルヴェ様だからこそ——。
「一滴残らず中に出させてあげる。出なくなるまで抜いてあげないから」
「ラ……ズ?」
「うっふふふ♡ さあ始めましょう。まだ誰も知らない、バンパイアの私との、本物のナマの交わりを!」
ガチガチに硬化した高熱の剣を手繰り、私の火口へとあてがう。彼は見る、その境界線を。期待に満ち、すでに快楽に惚けた目で。その表情がどう変わるのか、まばたきひとつせず私は見つめる。
そして極めて緩やかに、灼熱の世界へと誘い込んでいった。