第四章:溶けゆく境界
【食卓の変容】
調教から一か月後(マシンセルの侵食15%)
リューネは呆然とチューブを見つめた。
最初は嘔吐必至の汚物と感じていたものが──
今や「味気ないペースト」と認識されるようになっていた
以前は異物侵入の警告音が鳴り響いていた腸や肛門は
すっかり鳴りをひそめ静かに沈黙している
(……嘘だ……あのひどい味と食感と臭いが…しない………)
(……お腹も痛くならない……全然苦しくない………)
(おしりからも…出てこない…体が嫌がってない………)
(中身が変わってる?…でも同じにしか見えない…)
(あたしの体……おかしくなってるの?)
【午後の調教室】
「今日は感度テストや」
“あなた”の指先が乳房を円を描くように揉みしだく
過去の反応とは明らかに異なる変化が現れていた
乳首が僅かに屹立して秘裂から数滴の薄い蜜が滲み出る
リューネの鼻腔から甘い息が漏れる
『ふぅ……っ!』
「ん?なんや今の音は?」
慌てて息を止めるリューネ
顔を真っ赤にして“あなた”から必死に背ける
(ダメ……!喘ぎ声が出るところだった……!)
(こいつなんかに……絶対に気付かれたくない……!)
【排泄の慣習】
深夜0時。もはや習慣となった独りきりの排泄
尿道と肛門が緩み、うんちとおしっこが自然と出てくる
ブリリリリ、シャアアアアアア
(ひどい臭い……おしりも股も気持ち悪い……)
(でも我慢なんてどうせできないし……もう仕方ないよ……)
明日の朝の屈辱を考え鬱屈した気持ちで目を閉じる
朝6時、ドアが開き“あなた”が入ってくる
(来た……)
(もうやだ……)
「今日はたっぷり出てるなぁ!」
プラスチックスプーンでうんちを掬い上げリューネの目の前に持ってくる
かつては号泣した屈辱の光景だが──
リューネの顔は紅潮するのみだった、睨み返す事もできずに目を逸らしている
(この人どうしてこんなことするの……恥ずかしいよ…………)
(あたしの…きたないのに…ダメだ……何も考えたくない……)
【浄化の儀式】
ブラシが肛門と尿道をこする瞬間だった
初めて与えられる心地よい刺激にリューネは軽く震える
『あっ……きもちいい…』
排泄で蒸れてかゆくなっていた所をかいてもらった、ただそれだけの爽快感──
その単純な爽快感が地獄の毎日だったリューネに少しの喜びを与える
(今……気持ちよかった……?)
(嘘……私…身体が勝手に……)
“あなた”の手が意図せずクリトリスに当たる
『ふぐっ!』
『ほう……すごい鼻息が出たなぁ?』
“あなた”の鼻歌混じりの嘲りが響く
(違う……感じてるんじゃない……)
(勘違いだから……絶対に……!)
【独房の深夜】
深夜。必死な表情のリューネは全力を振り絞って無茶苦茶に暴れる
だが、穴に固定された四肢はピクリとも動かなかった
(ここに居たらおかしくなる……!お願い!お願い!)
すっかり余裕を失った彼女は体の痛みにも構わずに一晩中暴れ続ける…
監視モニター越しに“あなた”が冷笑していた
『無駄や』
『本能的に理解しはじめてるみたいやな、自分の負けが近づいてるのを』
『せやけど精神の摩耗だけは気を付けなあかんな、これからは少しだけ優しくしてやるか』
(もう……抜け出せないの……?)
(どんどんおかしくなる……)
(だれか……助けて……)