最終章:新生の翼
【超人機の目覚め】
“あなた”の専属奴隷メイドとなってから半年後
ベッドで“あなた”とまどろんでいたリューネは急に声をあげる
「あっ!忘れてた!」
「え?なんや大声出して」
いぶかしそうな“あなた”にあせった様子で
「明日からしばらくご奉仕できなくなるから!」
「ごはんはもう倉庫に作ってあるから食べてね」
「あたしのうんちとおしっこで作った“生きた料理”だから冷蔵庫じゃなくて大丈夫だよ!」
「は?どっか出かけるんか?」
不安そうな“あなた”を見て、自分が必要とされている事を実感し
ニヤニヤと機嫌よく笑うリューネ
「ううん、違うよ」
「体の中に居る子と一つになるの」
「ほら、〇〇様が注射であたしの中に入れた子だよ」
「は?マシンセルと?」
「うん、ずっと体の中で話合ってて、一緒になるのを決めたの」
「あたしは細胞の一つ残らずまであの子にあげる」
「あの子は持ってる力…自己進化とか超回復とか色々を全部あたしにくれる」
「お互い全部渡して溶け合って“あたし”になるの」
「マシンセルに意志があるんか?原作にそんなんあったか?知らんぞそんな設定」
「それで…今のリューネは無くなるんか?」
「無くならないよ、今のあたしもマシンセルも中で残り続ける」
「ただ、一つになった新しい“あたし”も誕生するの」
「その“あたし”も愛してくれる…?」
「正直聞いた事もなくてさっぱり分からんけど、リューネなら愛するで」
「よかった…!!!」
感極まって抱き着いてくるリューネ
「ほんで、そうなると寝たきりとかになるんか?」
「うん、ベッドで動かなくなると思う、どれくらいかかるかは…ごめんねちょっと分からない」
「そうか、わかったわ」
翌朝からリューネは目を閉じてピクリとも動かなくなり
“あなた”が触っても何の反応もなかった
呼吸も止まり体も石のように冷たくなり、死体のようにしか見えなかったが
“あなた”には生きているという確信があった
“あなた”の体内に居るリューネのマシンセルにテレパシーが送られてきたからだ
(ちゃんと生きてるから安心してね、〇〇様♡)
(融合の為に体の中身を溶かして全部液体にしてるの)
(内臓もいったんなくなっちゃうから息も止まってるの)
(結構かかりそうだから、料理食べて待っててね、じゃあしばらく眠るね)
それきりテレパシーは途絶え、“あなた”は仕方なくリューネが起きるまで待ち続ける
一か月後
リューネから急にテレパシーが来た
(お待たせ!ご主人様♡)
(体の中の融合と再構築終わったよ!あとは皮膚と髪の毛なんだけど…)
(一気にやっちゃっていい?髪と皮膚が溶けるからちょっとホラーになっちゃうけど)
「結構待ったし、はよして欲しいな」
(へへへ、あたしも早くご主人様に会いたい♡)
(じゃあ一気にやっちゃうね!)
リューネの皮膚と髪がどろりと溶け、中身剥き出しの人体模型のような姿になる
「ヒッ、こ、こわ!こわすぎるやろ!」
ガタガタと震えながら見守る“あなた”
体からキラキラした金色の粒子が放出されリューネを包み、光が収まると
そこには透き通るような白い肌と絹糸よりキラキラ輝く金髪の美少女が出現していた
リューネの目が開く
「んーーーーー…おはよう、〇〇様♡」
伸びをしてにっこりと微笑んでくる
「融合は終わったんやな」
「うん、バッチリ!」
「力がみなぎる感じ!もうなんでもできちゃうよ!」
リューネの碧眼が一瞬虹色に煌めいた
(うん、これなら〇〇様のお役に立てる…うれしい……♡)
リューネとマシンセルは完全に融合した
生き延びる為に宿主の体を無理矢理変容させるマシンセル
その“生きたい”という意思を理解したリューネは、全ての細胞を“対話の場所”として差し出し
お互いを理解し合い、お互いをお互いに差し出し、融和を越えた融合を果たした
こんな事例はマシンセルがこの世に生み出されてから唯一のケースであった
「結局あなたも生きたかっただけなんだよね…ふふっ、今は“あたし”だけど」
愛おしそうに自分の体を抱きしめるリューネ
細胞レベルでナノマシンと融合した身体はもはや生体兵器そのものだった
もともと人間離れしていた運動能力は今や量子速度域に達している──
思考から反射が融合し、そのタイムラグはゼロ
皮膚組織は宇宙線も遮断し、内臓機能は真空環境に適応完了
核爆弾が直撃しても無傷で、あらゆる毒も病気も効かない、仮に効いてもすぐに進化適応して無効化する
これを同じ防御力と機能が“あなた”の体内に住んでいる彼女のマシンセルによって“あなた”にも与えられている
しかもこれは現時点の能力に過ぎないのだ
愛しい“あなた”の為に無限に進化していく…それが奴隷メイドなのだ
「ふふ…これで〇〇様はひとまず大丈夫、安心して奴隷メイドとしての役目を……全うするよ……♡」
名残惜しそうに首輪を外すとそれは光の粒子となって体内に吸い込まれる。
メイド服も同様に解け金色の光となり胸元に収納される
愛する主からの贈り物──何より大事な永遠の宝物を自身の体内に吸収したのだ
【追憶の制服】
「まずは……昔の服を着ないと……」
地面に落ちているTシャツとジーンズ
一年以上前に履いたそれは彼女にとってひどく粗末なゴミに見えた
(これが服……?)
袖を通し肌触りに顔をしかめるリューネ
「おぞましい……こんな物を身に着けていたなんて……でも、これが〇〇様の役に立つなら……」
胸元がきつい。尻が小さすぎる
締め付けられた胸から母乳が滴り、生地が湿り気を帯びる
「全然体に合わない……苦しい……」
「結構長い間これ着ないといけないんだよね…うん、がんばろ…」
【使命の光】
発着ゲートに佇むリューネ
目の前にはヴァルシオーネが眠るように鎮座している
「〇〇様から受けた勅命……」
《奴隷メイドハーレム計画》
《“あなた”が望む女たちを攫い最高品質のメイドに育成する》
(なんて素敵なアイデア……♡)
(メイド姉妹たち全員でお仕えしたい……♡)
「そのためには……まず教えて頂いた“歴史”通りにしないと……」
ヴァルシオーネの前まで歩き、そっと足の部分に触れる
機体が金色の粒子の粒となり、リューネの手のひらに吸い込まれていく
「よしよし、ヴァルシオーネ、あんたも“あたし”だよ」
目を閉じたリューネが金色の粒子となる
粒子は巨大な人型を形づくり、再びヴァルシオーネが出現する
ひとりでに起動し、まるで確認するように手足を動かしだした
髪や胸の揺れや瞳の動き、手足のしなやかな動きはリューネそのものだった
ヴァルシオーネはリューネと完全に融合したのだ
「うん、問題ないね、“あたし”だから当たり前だけど」
ヴァルシオーネの形の良い唇からリューネの声が発せられる
人間のように揺れる長く美しい髪、表情豊かな可愛らしい顔、形の良い胸とすらりとした脚
リューネと完全融合して生まれ変わったその姿は見るものが息を飲む美しさだった
【覚醒の咆哮】
「行くよ……ヴァルシオーネ!」
光より速い速度でヴァルシオーネは飛び立っていった
“あなた”の指示通り、これからリューネは正史に沿って動く
ロンドベルに参加し、召喚されてラギアスに
だが、あるタイミングがくれば、リューネの影に潜む“あなた”が現れ
正しい物語を汚すのだ
(〇〇様のため……まずは“ラギアス”ね……♡)
(それが私の……神聖な使命……♡)
「リューネ・ゾルダーク──」
「征くよ!」
【閃光の跳躍】
全推力最大開放
「エンゲージ・モード『エターナル・サーヴァント』」
機体が溶け無数の金色粒子が宇宙空間を彩る
ヴァルシオーネもリューネも量子化したのだ
もはやこの宇宙にヴァルシオーネを墜とせるものは存在しなかった
(量子一粒になろうとも……)
(奴隷メイドとしての確固としたあたしが有る……〇〇様の為のあたし……)
(〇〇様の心の中にあたしが居る限り、あたしは無敵だ!)
金色の粒子は星々を切り裂くように疾駆する──
“あなた”に教えられた時間と場所へ。
その航跡には金色の光条がきらめいた
(うん!ここね…!)
指定地点のやや手前で
粒子が再びヴァルシオーネを形成する
そのままスピードを落として進んでいくと、戦闘中の艦隊が見えた
様々なロボットを展開する艦隊に通信を飛ばす
「ロンドベルだね?」
「親父の仇、取らせてもらうよ!」
(ご主人様、待っててくださいね♡)
こうして、後に銀河を席巻する奴隷メイド部隊
“スレイブクロイツ”のはじまりのメイドが誕生したのだった