おっさんず、ダンジョン都市を攻略する 作:おっさん
「それで……スキルとかステータスはどうなったんだ?」
「んーと、こうか。ほら、これ」
ガラス窓に映る自分を、いろんな角度から眺めている瑞樹に京助は、気を取り直して声をかけます。
この外見になる為に、どれだけのポイントを使用したのかが気になったからです。
名前:
性別:女性 (元男性)
年齢:十歳相当(元・三十六歳)
種族:人間(亜人混血)★半吸血鬼
職業:魔術師
ステータス(才能):知能五割、魔力五割 ★天才
スキル(パッシブ):『
スキル(アクティブ):*1『マジックアロー』『ファイアーアロー』
所持金:一万クレド
「清々しいほどに、見た目全振りだな!」
「どやぁ」
見せて貰ったステータスを見て、京助は絶叫しました。
職業の魔術師とスキル二つ以外、全てが見た目にポイントを使用していたからです。
特に特徴のない中年おじさんが、ここまで特徴のある少女になったとは誰が分かるでしょうか。
「きょうちゃんは、肉体年齢と視力だけにしたんだな」
「まぁ……自分の顔、嫌いじゃなかったし。その方がスキルも多く取れたからな」
瑞樹の言葉に、そう答えました。
実際は、少し考えもしましたが、外見にかかるポイントが勿体なさ過ぎて、その他にかけることにしたのです。
好きに生きるにしても、ダンジョン内に入るには、力がないといけません。
「俺も、戦う事も想定はしてスキルは取ってあるから」
「『
「こんな感じだな』
スキル:『
【ランク】:固有特殊スキル
【内容】:
対象の外見を、設定した「理想の姿」に永久的に固定するスキル。
このスキルが発動している間、以下の恩恵を常時受ける。
状態維持機能:
どのような状況下にあっても、外見上の「美しさ」が劣化しない。ダンジョン内での泥汚れ、衣服の破れ、さらには極度の疲労による顔色の悪化やボサボサ髪など、一切の「マイナス要素」が物理的に付着・発生しない。
年齢・成長の凍結:
肉体の成長や老化を停止させる。対象が設定した姿が、どれだけ時間が経過しても、どれだけ過酷な環境に身を置いても完全に保たれる。
「……つまり、どんなに泥沼を這いずり回っても、常に美少女のままなのか?」
「そう! これでどんなにハードなダンジョンでも、SNS映え……じゃなくて、冒険中のメンタル維持はバッチリだし、何より「美少女が頑張っている」という事実だけで、神々からの評価も爆上がりよ!」
「中身、おっさんだけどな」
「おっさんのバ美肉なんて、一般ジャンルだろ。イケる、イケる」
「『
「こんなん」
スキル:『
【ランク】:固有特殊スキル
【内容】:
五感を通じて得た「あらゆる情報」を、劣化させることなく脳内に完全保存し、任意のタイミングで再生・解析・比較を行うことができる。
完全回想:
一度見た風景、聞いた会話、戦ったモンスターの細かな挙動、さらには街の地図や魔術回路の構造までを、解像度を落とすことなく完璧に引き出せる。「超記憶」に近い状態。
動体解析・比較再生:
戦闘中、敵の動きをリアルタイムで「バックアップ」し、過去のデータと照合する。これにより予測を、直感ではなく「データ」として弾き出す。
「あっ……これは便利だな」
「おうよ。日本に住んでいたころの、いろんな知識がすぐに思い出せるようになってる。一度でも、見た事があれば、思い出せるらしい。小難しい、化学式とかも思い出せるぞ。というか、魔法が多くなってくると覚えてられないから」
「……」
最後のスキルは、想像よりも使えるスキルでした。
これからだけでなく、前の世界の知識を覚えておけるのは、ありがたいことです。
「知識無双出来そう?」
「いや、魔法もある文化なんだし、こっちの生活基準の方が高いかもしれない。先に来た人が同じようなスキルを取って、既にやってるかもしれないし」
「そういえば、『生活魔法』も習得スキルであったな」
「その魔法の習得の難易度にもよるが、簡単であれば、家電製品は要らないな」
「そうか……ところで、種族って変更可能だったか?」
未だにその場から動いていない為に、地球の知識がどこまで使えるかなどが、不透明であり、話が変わります。
次に注目したのは、瑞樹の種族の話でした。
京助の知る限り、種族に関しては弄れなかったと記憶しています。
裏技でもあったのかと、あったならそこだけは、教えてくれてもと思いました。
「いや……弄ってない」
「うん?なら、何でだ?」
瑞樹自身も、その事に関しては首を傾げます。
それを見て、京助は信じて、同じように考えました。
「んー……あー……もしかして、ボーナスとかか?」
「ボーナス……容姿のボーナス?」
二人で「ランダム」「血筋」「前の世界での行動」などなどあがります。
そして、暫く考えて、思いついたのが、今会話で出て来たことでした。
「特定のスキルの組み合わせでボーナスが付くとか」
「ありそうー……てか、それがあるかも知れないことを忘れてた!やり直したい!」
瑞樹が思いついたボーナス特典のことを、教えられ、京助は頭を抱えます。
確かに、
妖怪=亜人混血の可能性を見て、自分ももっと弄れば良かったと後悔しました。
しかし、時すでに遅し、戻る事も出来ず。
進む事しか出来ません。
「まぁ、それが本当かも分からないし……取り敢えず、案内通りにギルドに行こうか?」
「そうしよう。宿とか、食事とかも気になるし」
道端で幾つかの話題を話しあったことで、先ほどまで興奮していた気持ちの、落ち着きを取り戻します。
そして、先ほどから脳内に浮かんでいた。
文字列を読んで、その通りに進むことにしました。
●チュートリアル
・ステータスを確認しましょう
・ギルドに行き、冒険者登録をしましょう
・パーティーを組みましょう
・宿を取りましょう
・食事をしましょう
・演習場で動きを確認しましょう
・チュートリアルダンジョンを踏破しましょう (0/5)
「ゲーム仕様の世界みたいだ」
「そっちかーって感じだな」
「分かりやすいけどな」
「まぁ……リアル寄りだとフ〇ムゲーとかになりそうだし」
「初心者に優しいのは、ありがたいことだな」
京助が苦笑し、瑞樹が和服の袖を軽く揺らして同意します。
道端でステータスを確認し、種族の不可解な変化について少しばかり後悔はしたものの、二人はすぐに切り替えました。
どう転んでも、この世界で生きていくしかないのですから。
☆★★☆☆★★☆
街路樹の並木を抜け、少し大通りに出ると、そこにはいかにもな巨大な建物が見えてきました。
掲げられた看板には、二本の剣がクロスされた紋章と、『冒険者ギルド』という文字が共通語で記されています。
「立派だな」
「思っていたよりも、大きいな。ちょっとした、マンションだな」
二人の脳内あったギルドは、酒場と宿屋が組み合わさった木造建てのものでした。
しかし、目の前にあるのはコンクリートか何かで出来ている、四角いマンションみたいな姿をしています。
入口部分だけが、大きなアーチ状になっていて、重厚な扉が開きっぱなしになっていました。
そこを、様々な種族、多様な装備をした人々が行き来しています。
中に入れば、そこは大きな広間となっており、天井を見れば吹き抜けとなっていました。
奥には役所の様なカウンターがありました。
その前には、酒場になってるのかテーブルと椅子が幾つか用意されており、そこにパーティーを組んでいると思われる人々が、何かを食いながら座って話し合っています。
そんな様子を物珍し気に見ながらも、空いている端のカウンターを選んで、近づきました。
「ようこそ、第一層冒険者ギルド「セントラル」へ!」
「先ほど、こちらに辿り着いたのですが、基本的な説明の後、登録をお願いします」
「かしこまりました。登録はお二人でよろしいでしょうか?」
「はい」
受付嬢の女性は、にこやかな笑顔のまま淀みなく説明を始めます。
その口調は、まるで暗唱しているかのように正確で、ここが神々の管理する「遊び場」であることを再認識させるものでした。
「まず、この街は「第一層」に分類されます。ここでは、初心者同士のトラブルや理不尽な襲撃を防ぐため、神のご加護により如何なる暴力行為、犯罪行為も物理的に不可能となっています」
「なるほど。じゃあ、ここで強奪されたりする心配はないわけですね」
京助の問いに、受付嬢は小さく頷きました。
「はい。ですが、これは「第一層」だけの特権です。この世界は階層を登るごとにルールが変わります。レベル制限、資産上限……これらは、いつまで経っても高階層へ行かない人への装置です。第一層ではレベル二十が制限上限となっており、それ以上を目指すには、次の階層へ進む必要があります」
彼女はそこで一息つき、意味深な笑みを浮かべました。
「上の階層に上がるにつれ、制限は解除され、出来ることは飛躍的に増えます。……裏を返せば、「犯罪」も可能になるということです。もちろん、どの階層にも神の法に代わる「自治警察組織」や「ギルド法」が存在します。法の目を掻い潜る犯罪者もいますが、捕まれば相応の――時には元の世界よりも苛烈な処罰が下されますので、くれぐれもご注意くださいね」
その言葉は、二人への「忠告」であると同時に、これからの冒険が「ただのゲーム」ではないことを突きつける宣告でもあります。
「それから、最初の関門です。全ての冒険者は、まずチュートリアルダンジョンを踏破しなければなりません。これに合格しなければ、街の外でのクエスト受注や、本格的なダンジョン攻略の許可は下りません」
瑞樹が小さく頷き、京助が「了解です」と短く応じます。
この街の「ルール」が理解できました。
安全な場所は最初だけ。
後は実力がすべて――どこまで行っても、おっさんたちの人生と変わらない、泥臭い世界です。
「登録料として、一人につき五百クレド頂戴いたします」
「ステータス画面には、所持金が書かれていますが、どう渡せばいいですか?」
「手のひらをこちらにお出しください。特殊な機械を使い、手のひらから生体データを読み取って、頂戴いたします」
「……便利ですね」
「他のお店でも、同じような構造となっております。相手に譲渡したい場合は、握手を交わし、相互の意思により、可能となっていますのでお忘れないようお願いいたします。こちらが頂戴いたします料金となります。ご確認下さい」
疑問に思っていた事を聞いてみると、現代よりも楽な貨幣制度で、二人は少しばかり驚かされます。
京助と瑞樹(背が足りず、カウンターによじ登ってぶら下がることで何とか届く)が手を出すと、受付嬢は金額の数字がこちらに見えるように表示される「バーコードスキャナー」のようなもので、読み取りました。
相手に断りを入れて、京助がステータス画面を開くと、確かに五百クレドが減っていました。
所持金の欄が一万クレドから九千五百クレドになっています。
「……ところで、もし死んでしまったらどうなるんですか?」
京助がふと思い立ち、ギルドの受付嬢に尋ねたのは、まさにダンジョン攻略の最大の懸念点でした。
「ご説明いたします」
受付嬢は、少しだけ事務的な笑みを深めました。
「このチュートリアルダンジョン、および正規の攻略対象となるダンジョン内では、皆さまの魂は神のご加護下にあります。万が一、魔物に殺害されたり、致命傷を負ったりした場合は、即座にギルドの神殿エリアへと強制転送――いわゆる「死に戻り」が行われます」
「あぁ、セーフティネットがあるんですね」
京助が安堵の息を漏らしましたが、受付嬢の言葉はそこで終わりませんでした。
「ただし、それはあくまで「命」の話です。転送の際、所持していたアイテムや装備の多くはダンジョン内にドロップし、その場に消失してしまいます。また、魂が削れることによるレベルの減衰もあります」
彼女は淡々と続けます。
「死なない、というだけで、タダでは済まないということです。ダンジョンは神の遊び場であり、皆さまは駒。駒を失うのは惜しいが、使い潰すのは一向に構わない――神々は、そう考えておいでですから」
その説明は、甘い期待を砕くには十分な冷たさを含んでいました。
死ぬことは「スタート地点に戻る」こと。
しかし、それは積み上げた努力やリソースを「ゼロに戻す」ことと同義でした。
「それと最後に、お二人を『パーティー』として登録しておきますね」
受付嬢が端末を操作すると、カウンターの奥から二つの小さな輝きが浮き上がってきました。
それは、鈍く銀色に光る細身の腕輪でした。
「これを手首に装着してください。パーティーメンバーのステータス共有、譲渡手続きの簡略化、そして緊急時の通信機能などがこれ一つで可能となります」
京助と瑞樹は言われるがままに腕輪をはめました。
冷たい金属が肌に触れた瞬間、パッと視界の端に半透明のウィンドウが展開されます。
【パーティー情報】
パーティー名:(未設定)
メンバー:
柏木京助 格闘家<Lv1>
高橋瑞樹 魔術師<Lv1>
共有資産: 一九,〇〇〇(19000)クレド
通信状態: 接続中
クエスト状況: チュートリアル・ダンジョン(進行中)
「あ、言い忘れておりました。この第一層での生活についてですが、今の皆さまにとって決して快適とは言えませんよ」
「生活基盤……ですか?」
京助が問い返すと、彼女は慣れた手つきでカウンターの端末を操作し、街の地図をホログラムのように空中に展開しました。
そこには、現在の第一層から上層へ向かうにつれて、色合いが豊かになっていく階層図が映し出されています。
「皆さまが今いらっしゃる「第一層」は、あくまで「生存の最低ライン」です。提供される宿は簡素な部屋か相部屋の場所がほとんど。食事も栄養価は補完されますが、ものは「ペースト状の何か」です。冒険者としての最低限の活動は行えますが、ここで安住することは推奨されません」
彼女はホログラムを指でなぞり、上の階層を強調しました。
「階層を一つ上がるごとに、宿の質は格段に向上し、食事も各段に良くなります。第十層を超えれば現代以上のグルメや娯楽、快適な居住空間を確保できるでしょう。つまり、「より良い生活を送りたければ、より高い階層へ挑め」。それが、この世界の経済とモチベーションを維持するためのルールなのです」
「……なるほど。完全に実力主義の構造ってわけですね」
京助が、そういうと受付嬢は何も言わず、作った様な笑みで答えるのみでした。
「お二人とも、これで正式な冒険者です。チュートリアルダンジョンへの入り口は、カウンター横の扉から直結しております。ご使用の際はこちらでご登録ください。それでは……皆さま、どうか楽しませてくださいませ」
無機質で、それでいてどこか煽るような受付嬢の言葉を背に、二人はギルドを後にしました。
●チュートリアル
・ステータスを確認しましょう
・ギルドに行き、冒険者登録をしましょう
・パーティーを組みましょう
・宿を取りましょう
・食事をしましょう
・演習場で動きを確認しましょう
・チュートリアルダンジョンを踏破しましょう (0/5)