※この作品はR-18です。

おっさんず、ダンジョン都市を攻略する   作:おっさん

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おっさんず、初ダンジョンに行く

「あはは……わりぃ」

「昨日は本当に、焦ったわ」

 

 あの後、宿屋に戻り、ベッドに寝かせて、一時間程度で瑞樹の体調は元に戻りました。

しかし、演習場に戻る気にもなれず、酒場で美味しくない食事を終えるだけに留めます。

そして、地面に寝ているのとさほど変わらない布団で眠りにつき朝を迎えます。

布団の硬さに隣におっさんという美少女が居ることといい、異世界に来た興奮もあり、寝れるのかと思いましたが、意外にもすんなりと眠る事が出来ました。

 

「遂に俺等もダンジョンデビューか」

「デビューと言っても、チュートリアルダンジョンだからな。踏破率百%だそうだ」

「誰でもクリア可能か」

 

●チュートリアル

・ステータスを確認しましょう   

・ギルドに行き、冒険者登録をしましょう

・パーティーを組みましょう

・宿を取りましょう             

・食事をしましょう             

・演習場で動きを確認しましょう        

・チュートリアルダンジョンを踏破しましょう(0/5)

 

「それにしても体調が良いのは素晴らしいね」

「内臓の類がな……調子悪い時は調子が……」

「ビール飲みたい」

「その体で飲めるのか?」

「……あ」

 

 そんなおっさんトークをしながらも、二人は階段を降りて受付へと向かいます。

 

「どういった御用でしょうか?」

「チュートリアルダンジョンに潜りたいのですが」

「かしこまりました。入るのは二人でよろしいでしょうか?」

「はい」「はーい」

「分かりました」

 

 朝早いという事もあってか、昨日よりも一階のギルドは人がいません。

昨日の人が多く、賑わっている空間も好きですが、京助は朝の空気と、閑散とした空間も好きでした。

 

「腕輪をこちらへ……完了しました。チュートリアルダンジョンは、カウンター隣の入口からお入りください」

「ありがとうございます」

「どうもー」

 

 受付はあっさりと終わりました。

カウンターでの受付と、腕輪を差し出して、情報を読み取りダンジョン登録を終えるだけの簡単なお仕事。

二人は、チュートリアルといわれてても、初のダンジョンという事で胸の中はどきどきと鳴っています。

それでも顔や雰囲気に出さないのは、元中年おじさんの経験からでした。

 

「やっぱり最初は、ゴブリンとかスライムか?」

「どうなんだろう……他の世界からも来てる人がいるしな」

「そうだ。忘れてた。他の世界だと最初の敵の基準も違うか」

「この世界、妙に公平感があるからね」

 

 そんな、たわいない話をしつつも、二人はダンジョン内部へと足を進めていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★★☆☆★★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルド裏手の重厚な石扉を押し開くと、そこにはひんやりとした空気が漂う未知の空間が広がっていました。

 

「おー……W●zか」

「一般的なダンジョン内部って感じ」

 

 京助が先頭に立ち、内部へと足を踏み込みます。

内部は、角ばった石材が積み上げられた通路がどこまでも続いていました。

壁には一定間隔で魔法の松明が設置されており、青白い炎がゆらゆらと揺らめいています。

人工的なのに、どこか無機質な恐怖を感じさせる――まさに「管理された遊び場」といった風情です。

 

「思ったより明るいな。もっとこう、湿っぽくて暗い場所を想像してた」

「松明が設置されてるからな。初心者が迷って死なないための配慮かな?」

 

 二人の足音が、石の床にコツコツと乾いた響きを立てます。

 

「おっ」

「おー……」

 

 道は一本道であり、後ろはギルドに続く道なので、モンスターが湧かない限りは、前方に注意を向けているだけで済みました。

最初だから優しいなと思っていると、先の通路の奥行きが、広がっているように見えました。

ゆっくりと足を進め、少しばかり緊張しつつも近づくと、少しばかり広がった広間の様な場所に辿り着きます。

 

ポーン

「あぁ……始まった」

「ここでもこれなのな」

 

 広間に辿り着くと、脳内に演習場で聞いた音が鳴りました。

 

・戦闘のチュートリアル

 

「親切だな」

「最初からこうだったのか、気になるな」

 

・最初のモンスター<スライム>を登場させます

 

「スライムだった」

「どこの世界でもこんな扱いなんだろうな」

 

 広間の中央に、ゼリー状の半透明な塊が「ボチャッ」という音と共に現れました。

直径一メートルほどのスライムです。

そのスライムは二体おり、その場で弾むこともなく、ただゆらゆらと青白い光を放ちながら、二人の様子を伺うように静止していました。

 

・敵を攻撃してみましょう

 

「凄く丁寧!」

「敵も動かないみたいだな」

 

 あまりの丁寧さに、冒険をしている気がどんどんとなくなっていきます。

しかし、「ゲームとかのチュートリアルもこんな感じか」と気を取りなして、スライムに二人は近づきました。

 

「流石にドラ●エじゃないか」

「核のあるタイプのスライムだ」

 

 京助は、スライムの目の前まで歩み寄ると、恐る恐る指先でその表面をツンと突いてみました。

指先が沈み込み、冷たくてヌルッとした質感が伝わります。

それでもスライムは、先ほどから微動だにしません。

 

「しまったな。敵がこんなにも小さいと、殴りづらい」

「ほぼほぼ、地面だしな」

 

 さて、攻撃をしてみようかと京助は思いましたが、ここで問題が発覚しました。

京助は、格闘家で相手を殴らなければいけないのですが、敵の幅は広くても、高さが二十センチ程度で殴りづらかったのです。

酸などはないので、足で踏み込んでの攻撃は可能なのだけが幸いでした。

 

「最初の敵ぐらい、気持ち良く倒したかった」

「ははは」

 

 しょうがないので、京助は、スライムの核を狙って踏み込み「ぶちゅっと」した音と共に核を破壊しました。

スライムが弱いのか、核は京助の攻撃一発で割れます。

 

「ばきゅん」

「そっちは、かっこいいな」

「魔法だしな」

 

 それを見ていた瑞樹は、昨日通りに、指をスライムに向けて短く詠唱し、魔法の矢を飛ばします。

指先から放たれた『ファイアーアロー』は、核どころかスライム全体を巻き込み、ドロドロの塊を壁一面にぶちまける形で爆散させてしまいました。

ただ踏み込んだだけと、相手を爆散させた瑞樹、京助の地味さが際立ちます。

 

「うん?」

「これは、楽勝かもな」

 

 スライムを片付け、わずかに緩んだ空気が漂った時でした。

京助の背筋に、突如として冷たい悪寒が走ります。

 

「っ!」

 

 反射的に視線を向けた瑞樹の背後、そこには揺らめくような赤い靄が浮かび上がっていました。

――スキル『超直感(ハザード・センサー)』による警告です。

その不気味な予兆を前に、京助は先ほどの余裕などどこへやら、反射的に瑞樹の肩を掴んで引き寄せました。

 

「みっちゃん、下がれ!」

 

ポーン

・敵の攻撃を受けてみましょう

 

 すると、突如、脳内にガイド音声が響き渡り、そういいました。

そして、その直後です。

スライムがもう一体、湧き出して、核を瑞樹に飛ばしてきたのです。

 

「いっ!」

「ばん!」

 

 スライムの核は、瑞樹を庇った京助の腕に当たりました。

予感の意図が読めず、とりあえず腕を盾の様にしていたのが、功を奏します。

そして、一瞬の沈黙の後に、瑞樹がキッと鋭い視線をスライムに向けたのち、指を立てて魔法を放ちました。

 

「不親切!!」

「きょうちゃん、大丈夫か?」

「だ、大丈夫。硬球のボールが腕に当たったって感じの痛み」

「……結構痛くね?それ」

 

 攻撃を当てられた腕を軽く振って、痛みを誤魔化しつつ、叫んでも何も解決はしませんが、音声ガイドに京助は叫びます。

瑞樹は、庇った京助を心配そうに見上げました。

 

「油断してたな」

「うへー……それにしても、よく分かったな」

「予感がしてなー……あー……スキルのせいか」

「『超直感(ハザード・センサー)』か」

 

 

スキル:『超直感(ハザード・センサー)』

【ランク】:一般補助スキル

 

【内容】:

「危険」を、論理的な思考よりも一瞬早く「感覚」として察知する能力。

いわゆる「虫の知らせ」や「殺気察知」がシステム化されたもの。

 

危機予兆(デンジャー・シグナル):

視界の端に赤い靄のような警告が表示される。罠の踏み込みや、モンスターの奇襲、あるいは「今この場所で立ち止まるとマズい」といった直感的な危険を、脳内に直接叩き込む。

 

「スキルあると便利だな」

「そうだろ?」

「ん……あと、ありがとよ」

「……おぅ」

 

 京助は、照れてぶっきらぼうに返してしまいます。

いつもであれば、照れなどなく、返せている返事も、相手が美少女の姿をしているだけで妙なむずむずを覚えます。

そんな気持ちを、振り払うべく、ヒリヒリと痛む腕をさすりました。

瑞樹もまた、先ほどまでの無邪気な笑みを消し、神妙な面持ちで京助の腕を見つめています。

いくら死に戻りがあるとはいえ、この「痛み」は紛れもなく本物です。

ダンジョンは、神々が用意した親切な遊び場であると同時に、容赦のない「現実」を突きつけてくる場所なのだと、改めて突きつけられた気がしたのです。

 

ポーン

・次は、自由に戦ってみましょう

 

「攻撃は、こっちが受けるから……魔法で倒してくれ」

「あいよ……大丈夫か?」

「当たり所次第かな。頭に当たらない様に気を付ける」

 

 そんな話をしていると、次のチュートリアルが始まります。

先程のように奇襲はありませんが、広間の中央に「べちゃ」っという音と共に三匹のスライムが落ちてきます。

今度は、先ほどのようにこちらを待ってはくれません。

その事を京助達も理解しており、京助はボクシングのガードの様に腕を盾にして身構えます。

瑞樹は、そんな京之助の後ろを陣取り、スライムに狙いを定めました。

 

「くるぞ!」

「あいよ」

 

 スライムに目はありませんが、中の核が、ぐるんぐるんと動き、ピタっと京助達の方を見て止まります。

それだけの動作ですが、京助達には、スライムがこちらを認識したのだと分かりました。

スライムは、意外にも動きが速く、ぷるぷると動いた瞬間、核を京助達に飛ばしてきました。

 

「『受け流し(パーフェクト・ディフレクト)』」

 

京助は、その三つの核をスキルの『受け流し(パーフェクト・ディフレクト)』をもって出迎えます。

思っていたよりも核の飛んでくる速度が、なかったので切り替えました。

ガードを解いて一つ、二つと器用に手のひらを押し当て、瑞樹の方に飛ばない様に力の流れを変えて、三つ全てを叩き落としました。

 

「ばん!ばん!」

 

 叩き落とされた核は、ダメージを受けたのか、その場で少しぶるぶると増えた後に、スライムの方へと戻って行きます。

もちろん、その隙を逃す訳もなく、京助が一つを足で潰しました。

そして、戻っている最中の二つの核を瑞樹が魔法を連発し壊しました。

 

「終了?」

「……」

 

ポーン

・お疲れさまでした

・これで戦闘訓練は終わります

・これから、モンスター達は明確な意思を持って行動を始めます

・奥の階段から次のチュートリアルへお進みください

 

「終わったらしいね」

「はぁ……初の戦闘だったけど、何とかなった」

 

 それだけをいうと京助は、その場に座り込みます。

体のダメージはそうでもないのですが、精神的に疲れがやってきました。

 

「そっちは、どうなんだ?魔法を合計四発撃ってたけど」

「残り七発かな……五分に一回分回復ぐらい。今、一回分回復」

「あまり多用出来ないか」

 

 昨日の魔力切れの事もあり、これからの事を話し合います。

 

「棍棒でも買っておけば良かったかな?」

「昆とか良かったかもな」

「三節昆とかかっこいいよな。帰ったら検討しよう」

 

 そんな話をして、少し休みを取ると二人は、その足で次の階段へと向かっていきました。

 

 

 

 

 

 

☆★★☆☆★★☆

 

 

 

 

 

  

「はぁ……はぁ……よ、ようやく最後だ」

「疲れたー」

 

 二人は、なんやかんやありながらも、最後の階段を降り、最初のボスがいそうな扉を見つけます。

重厚な鉄で出来ており、いかにもな扉です。

そんな扉の前で、二人は疲れ切り、その場に座り込んでしまっていました。

 

「これ……二人だときついかも」

「あ……やっぱり?」

「松明があっても暗いし、スライムは見えにくいから奇襲を良くするし」

「罠もあってゴブリン、コボルトは数が多い」

 

 二層目、三層目と最初の様にチュートリアルが続いたまでは、良かったのですが、四層目において問題が発生しました。

今までのことを踏まえての、予習的なエリアで自由探索となったのです。

実際にガイドなしで、ダンジョンを潜ってみると「大変」の一言でした。

松明は通路にあれど、足元が薄暗く、スライムが見逃しやすく、いきなり核を飛ばしてきて奇襲をします。

罠に気を付けても、ゴブリンやコボルトなどが自ら踏んで、こちらにも被害来たりもしました。

今までの一本道と言う訳でもなく、十字路などで分岐したりで、後ろからの奇襲にも警戒しなければなりません。

 

「特に……あれだな。モンスターの数に変化がないのがきつい」

「倒しても倒しても、湧いてくるとは……」

「MP回復剤飲んどけ」

「おー……いいの?」

「いいよ。全てが初めてなんだ。万全な状態で挑んだ方がいいだろ」

「そうだな」

 

 それでも、二つ良い事はありました。

 

 一つ目は、回復剤です。

チュートリアルで宝箱が出現し、そこから回復剤が幾つか貰えたのです。

更に言えば、四層目からドロップも追加され、店で売れそうな物も幾つか拾えました。

二人のポケットは既に、ドロップアイテムでパンパンです。

 

 二つ目は、チュートリアルで手に入った防具です。

簡易な革で出来た物ですが、ないよりましです。

実際にスライムの攻撃を受けても、最初程の痛みを感じなくなりました。

 

「ふぅ……割と美味いな」

「食堂で出る食事よりましだ」

 

 二人は、「乾杯」と軽く回復剤の入った瓶を互いにぶつけ合い、そのまま口にします。

 

「このまま寝たいな」

「途中から外に出ると、どうなるんだろう?」

「四層目の入口からだって、聞いたな」

「スキップできるのは一層から三層目だけか……なら、頑張った方がいいな」

 

 だらだらと過ごし、笑い合い、気持ちを落ち着けると二人は立ち上がります。

そして、扉を二人で押して開けました。

 

 

 

 

 

「なんていったっけ……」

「ホブゴブリンかな」

「取り巻きも居るし……最初にしては、難易度高いような?」

 

 二人が扉を開けて、中に入ると、広間の中央に鎮座していたのは、通常のゴブリンを一回りも二回りも大きくした、筋骨隆々の「ホブゴブリン」でした。

手に持つのは、無骨な鉄の棍棒。

その周囲には、小賢しく動き回る三匹のゴブリンが取り巻きとして配置されています。

 

ポーン

・ボスモンスターとの戦闘です

・連携を意識し、敵を崩しましょう

 

「チュートリアルにしては、随分と本格的だな」

「まだ、相手は気付いてないみたいだけど……どうする?」

 

 ホブゴブリンやゴブリン達は、京助達に背を向けて、何かを食べています。

チュートリアルという事もあってか、最初の一撃は奇襲が成功するようになっているようです。

 

「ホブの鉄の棍棒は怖いけど、『受け流し(パーフェクト・ディフレクト)』は発動すれば体が勝手に動くから受けれると思う」

「とすると……混戦になる可能性がある。ゴブリンが怖いかな」

 

 二人は、その場でしゃがみ込み、ひそひそと話し合いをします。

 

「みっちゃんは、全体魔法とかって覚えた?」

「いや、レベルが上がってMPが増えたぐらいだ。だけど……どうにかなると思う」

「お……まじで?」

「ただし……最初の一撃でMPを八割ほど持ってかれるから、回復に手間取るよ」

「分かった。その間は、俺が受け持つよ。ただ……『別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?』」

「死亡フラグすぎるんだけど!?」

 

 話し合いを終えて、二人は息を整えると、本日最後の戦闘を終えるべく動き出します。

瑞樹は、両手の掌をゴブリン達に向けました。

 

「あ……」

「メ・ラ……」

 

 一つの言葉が言い終わるのと同時に、両方の指先の一本に火が灯ります。

その光景を見ていた、京助は「ネタに走りやがった」と思いつつも見守りました。

最終的には、両手なので原作の漫画の倍以上のものとなりました。

 

「ばきゅ!!」

「最後はそれなのな」

 

 瑞樹はその火をホブゴブリン達に向けて放ちました。

すると、指先の火が矢となり、合計十本の魔法が殺到します。

 

 食事に夢中だったゴブリンたちは、何の警戒もできていませんでした。

瑞樹が放った矢は、狙い違わずホブゴブリンを巻き込んだ上で、取り巻きのゴブリンの貫き、哀れな悲鳴を上げる暇もなく、ドロドロの残骸へと変わりました。

 

 残るは、ホブゴブリン一匹です。

 

 背中を焼かれたホブゴブリンは、怒り狂ってその巨体を反転させました。

鉄の棍棒が風を切る重低音が響き、広間の石床がミシミシと悲鳴を上げます。

 

「……さすがにタフだな、直撃させても消えないか!」

「うぇ……気持ち悪いギブ」

「え……ちょっと」

 

 気合十分、心配十分の京助は、心臓が痛くなるほど鳴っているのを感じながら、ホブゴブリンと睨み合います。

瑞樹は、一気に魔力が消失したことにより、精神ダメージを負ってその場にぐてっとなりました。

これは、想定外ですが、仕方がありません。

二人は今まで、魔力の温存を考えて、少しずつ使用していただけに、一度に多くの魔力を消費した場合を想定していなかったのです。

彼等にあった知識は、魔力切れを起こすと鬱状態となり、事実上の戦闘不能状態になるということだけです。

一度に大量の魔力を消費すると、それに近い状態になるとは、考えてませんでした。

 

「と、とりあえず、MP回復剤を」

「ぐえー……うぷっ!?」

「や、やってやら!」

 

 どすどすと足音を立てて、迫って来るホブゴブリンを見つつも、慌てて瑞樹の口に回復ポーションを突っ込みます。

そして、ヘイトを買う為にホブゴブリンに京助は、突っ込みました。

 

 ホブゴブリンが振り上げた棍棒が、京助の頭上をかすめ、石床を粉砕します。

 

「こわい!」

 

 京助は気合いで恐怖をねじ伏せ、ホブゴブリンの懐へ滑り込みました。

一撃目はスキルで受け流し、二撃目はバックステップで回避する。

その間にも、幾つか拳で殴るも、経験不足と冷静さを欠いている為に、ただただ殴っただけでになりました。

もちろん、相手もただのサンドバッグではありません。

乱暴な振り回しの中に、明らかに京助を潰そうとする殺意が混ざっています。

 

「おい、みっちゃん! 早くしてくれ、こいつの圧が凄すぎて心臓が持ちそうにない!」

「ぐ、ぐふぅ……あ、あと少しで、魔力が戻る……うっぷ」

 

 回復ポーションを飲ませたものの、瑞樹はまだ白目を剥いたまま床を転がっています。

魔力枯渇による強烈な気怠さと鬱屈感が、美少女の可憐な外見を台無しにしていました。

 

 京助は、ホブゴブリンの棍棒の軌道を『超直感(ハザード・センサー)』で読み切ります。

視界の端に映る赤い靄が、右からの横殴りを予兆しました。

心臓がバクバクとなる中、チャンスだと思い深くしゃがみ込むと、隙だらけとなった所に勢いよく立ち上がった反動を利用して、京助は技を放ちました。

 

 京助の肩が、ホブゴブリンの鳩尾を強烈に突き上げます。

 

「――ッりゃあぁぁ!!」

 

 魂を乗せた(スキル判定〇)『鉄山靠』の衝撃は、生半可な物理攻撃とは次元が違いました。

ずどん、と鈍く重い音が広間に響き渡り、ホブゴブリンの巨体がくの字に折れ曲がります。

今までただの「殴打」に過ぎなかった京助の攻撃が、初めて一つの「型」として、この世界のボスモンスターに牙を剥きました。

 

「ぐ、おぉぉ……っ!」

 

 ホブゴブリンが衝撃で大きくのけぞり、高く掲げられた棍棒が、制御を失って空を斬ります。

完璧な隙。

しかし、京助の身体もまた、渾身の力を出し切った反動で硬直していました。

 

「……ッ、今だ!」

 

 後ろに居た瑞樹が、青ざめた顔のまま、這いずりながら指を突き出します。

魔力枯渇の鬱屈を、殺意と気合で無理やり振り払い、瑞樹の瞳に、再び鋭い光が宿りました。

 

「……きょうちゃん、どいて!」

「『そいつ殺せない』ですね!」

 

 京助が慌てて横へ転がるように退避すると同時に、瑞樹の指先から極限まで圧縮された火球が放たれました。

 

「バン!バン!バン!バン!バン!バン!」

 

 これで終わってもいいとばかりに、瑞樹は全てのMPを消費して連続で魔法を使用しました。

一発が当たり、ホブゴブリンの頭が爆発します。

二発目がホブゴブリンの体に当たり、爆発します。

三発目がホブゴブリンの手に当たり、鉄の棍棒を吹き飛ばしました。

四発目が……五発目が……。

 

「……もう、だめ……ぽ」

「みっちゃん!」

 

 魔法を撃ち終わり、余裕のありそうなことをいって、瑞樹は動かなくなりました。

それを京助は、立ち上がると慌てて瑞樹に近寄って、ポケットからMP回復剤を取り出して、口に突っ込みます。

そして、何時でも瑞樹を抱き上げて逃げれるようにしつつも、ホブゴブリンへと視線を向けます。

 

「うぇ……気分悪い。あいつ……どうなった?」

「へんじがないただの屍のようだ」

「意外と余裕あるね。きょうちゃん」

 

 ホブゴブリンは、元が何であったのかも分からない状態でした。

四肢は吹き飛び、皮膚はこんがりと焼けて判別が出来ません。

明らかにオーバーキルです。

 

「終わった」

「……後衛辞めたいかも、常に死にたい気持ちに落ち込む」

「前衛も似たようなもんだけどな」

 

 京助は、へなへなと腰が抜けてその場に座り込み、瑞樹はまだ動く気になれず、そのまま京助の膝上に倒れ込みます。

こうして、初のダンジョン踏破を二人は成し遂げたのでした。

 

●チュートリアル

・ステータスを確認しましょう   

・ギルドに行き、冒険者登録をしましょう

・パーティーを組みましょう

・宿を取りましょう             

・食事をしましょう             

・演習場で動きを確認しましょう        

・チュートリアルダンジョンを踏破しましょう(5/5)

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