※この作品はR-18です。

結構仲の良かった女騎士の遺体を戦場で発見したとき   作:うお

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1.結構仲の良かった女騎士の遺体を戦場で発見したとき

あ。

 

見つけちゃった。

 

戦闘が終わったばっかの戦場。

 

血のにおい。そこら中に転がってる鎧と死体。

 

俺はいつも戦闘が終わると死体を探して回る。

 

荷物持ちとか掃除とか、そういう雑用。

 

魔術師なのに前線じゃ役に立たないから。

 

今日も死体漁ってたら。

 

金色。

 

見えたんだよ、ポニーテール。

 

どくん、って心臓が嫌な音立てた。

 

嘘だろ。

 

お前、死ぬようなやつじゃないだろ。

 

俺の名前はクロード。

 

帝国軍所属、階級は……一番下。

 

陰キャ魔術師。友達ゼロ。趣味は一人で魔法研究。

 

なぜかコイツだけは、そんな俺に話しかけてきた。

 

『おーいクロード!今日も暗い顔してるな!』

『ほら、スープ。飲め飲め。お前いつも食わないだろ』

『え?役立たず?はは、誰が言ったんだそれ。ぶっ飛ばしてやろうか?』

 

男かよって感じの。

 

いや、見た目はめちゃくちゃ女。

 

金髪ロングのポニテ。

 

青い目。

 

鎧の上からでもわかるデカい胸。

 

顔も綺麗だと思う。

 

でも口調が脳筋。

貴族ってわけでもないのに、やたらと正義感つよい。

弱いやつ見ると放っとけないタイプ。

 

俺みたいな根暗で陰気な魔術師にも……。

 

で、今。

 

アリシアは冷たくなってた。

 

胸のあたりに剣が突き刺さった跡。

鎧、ぼろぼろ。

血が固まって、金髪が赤黒く染まってる。

 

「……おい」

 

声かけてみる。

返事ない。

わかってる。死んでるって、わかってる。

 

「ばかだなお前。一人で突っ込んだんだろ。知ってる。お前そういうやつだからさ……」

 

味方の何人もが倒されて、それでもコイツだけは前に進んで。

 

かっこよかった。

うん、かっこよかったよ。

 

でも、死んだ。

 

「……くそ」

 

周りを見る。

他の兵士たちはみんな死体漁りに夢中だ。

俺がここにいることを誰も気にしてない。

 

チャンス、って思った自分がいる。

 

最低だな、俺。

 

でも。

 

アリシアの身体を、ここに置いていくのも嫌だ。

野ざらしにして、烏につつかれるとか、ありえない。

 

俺は腕を伸ばして、彼女の身体を持ち上げた。

 

重い。

鎧のせいもあるけど、人の身体ってこんなに重いんだな。

生きてる時は、もっと軽そうに見えたのに。

 

「……運ぶぞ」

 

死人に話しかける俺。

もうおかしいのかもしれない。

 

戦場からちょっと離れた場所に、廃教会があった。

前に偵察で見つけてた。

屋根は半分崩れてるけど、隠れるには十分。

 

アリシアを床に寝かせる。

鎧がガチャガチャうるさい。

ちょっとイラっとして、外した。

 

チェストプレート、ショルダーガード、ガントレット……。

 

全部外したら下はボロボロの布と、包帯と、傷。

 

無数の傷。

 

古いやつも、新しいやつも、たくさん。

 

「……お前も、がんばってたんだな」

 

知らなかった。

いつも笑ってたから。

弱いとこ、全然見せなかったから。

 

俺は静かに彼女の身体を床に横たえた。

床は冷たい石だけど、我慢してくれ。

 

それから水魔法を使った。

 

落ちこぼれ魔術師の俺にできることなんてこれくらいだ。

空気中の水分を集めて、彼女の身体をきれいにしていく。

 

血を落として。

汚れを拭いて。

髪をとかして。

 

金髪が、ちょっとずつ元の色を取り戻していく。

 

「……綺麗だ」

 

口に出てた。

 

死んでるのに。

目、閉じてるのに。

 

それでも、綺麗だと思った。

 

生前は絶対に言えなかった言葉が、今なら出てくる。

ああ、クズだな俺。

 

で、気付いた。

 

視界の端っこに、彼女の胸。

 

……デカい。

 

いや、知ってたけど。

鎧越しでもわかってたけど。

こうして布越しだと、主張がすごいというか。

 

俺は一応、男で。

アリシアは一応、女で。

 

……いや、「一応」じゃないな。完全に女だ。おっぱいあるし。

 

どくん、どくん、心臓がうるさい。

 

「ばかやろう、俺。死んだやつ相手に、なに考えてるんだ」

 

わかってる。

最低だってわかってる。

 

でも。

 

でも、アリシア。

お前、俺に優しくしすぎたんだよ。

 

『クロードの魔法すごい!お前は役に立ってるんだから!もっと自信もて!』

 

あんなこと言われて。

あんなに笑いかけられて。

 

何も思わないわけ、ないじゃないか。

 

──俺は多分、この時もうおかしかったんだと思う。

 

右手を伸ばして。

彼女の髪に触れて。

それから、頬に。

 

冷たい。

当たり前だ、死んでるんだから。

 

でも、柔らかい。

 

生前、一度も触れたことなかった。

当然だ、俺なんかが触っていい相手じゃない。

アリシアは誰にでも優しい人気者で。

俺は誰からも相手にされない陰キャで。

 

だから。

 

だから、今なら。

 

「……ちょっとだけ」

 

俺は自分に言い訳して、彼女の唇に、自分の唇を押し当てた。

 

冷たい。

 

返事はない。

 

それだけで涙が出てきた。

 

「お前のせいだからな。お前が、優しくするから。期待して、調子に乗って、それで……」

 

死んでから好きだって言うとか。

ほんと、俺はどうしようもない。

 

口を離して、彼女の顔を見る。

 

何も変わらない。

笑ってもいないし、怒ってもいない。

ただ静かに、目を閉じてるだけ。

 

「アリシア」

「俺、お前にしていいか?」

 

生前は絶対にできなかったこと。

そもそも、言い出す勇気もなかったこと。

 

でも今は。

誰も見てないし。

アリシアも文句言わないし。

 

「いいよな?」

「お前、優しいから、許すよな?」

 

返事はない。

 

俺は、それを「はい」ってことにした。

 

震える手で、彼女の布に触れる。

 

包帯を外して。

傷だらけの肌が見えて。

 

それでもやっぱり、綺麗で。

 

「ありがとな、アリシア。最後に、俺のものになってくれて」

 

ああ、でも。

 

俺のものになるのは、これからだ。

 

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