※この作品はR-18です。

結構仲の良かった女騎士の遺体を戦場で発見したとき   作:うお

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3.禁忌に手を出すってよ

 

廃教会から、どうやってアリシアを運んだか。

 

覚えてない。

 

気付いたら、俺の部屋にいた。

 

俺の部屋は、兵舎の端っこ。

誰も近寄らない。

隣の部屋は物置だし、上は空き部屋。

 

……アリシアを隠すには、ちょうどいい。

 

ベッドの上に寝かせて、腐敗防止の魔法をかけ直す。

これで三回目。

魔力を込めるたび、彼女の肌は腐らない。

 

「……何してんだろ、俺」

 

呟いて、笑った。

 

死んだ戦友を持ち帰って。

死体を抱いて。

それが気持ちよくて。

 

いや、気持ちいいだけじゃない。

 

「好きなんだよな、お前のこと」

 

冷たい頬を撫でる。

返事はない。わかってる。

 

でも、いると落ち着く。

俺には、もうアリシアしかいない。

 

生前もそうだったけど、今はもっと。

 

彼女だけが、俺の全部だ。

 

 

俺は何度も彼女を抱いた。

 

夜になると、隣に寝転んで。

髪を撫でて、キスをして、身体を重ねる。

 

死体はいつも冷たくて、静かで、でもやわらかくて。

 

「アリシア」

「お前、生前こんな顔したことあったか?」

 

もちろんなかった。

いつも笑ってて、怒ってて、走り回ってて。

こんな風に、誰かの腕の中でじっとしてるような女じゃない。

 

今は動かない。

 

でもそれが俺にはちょうどよかった。

 

動かないから、俺を見てくれる。

俺から離れない。

俺だけのアリシア。

 

「……ごめんな」

 

俺は彼女の腹の上に精液を吐き出しながら、謝った。

 

後悔してる。

してるのに、やめられない。

気持ちいい。愛しい。手放せない。

 

最低なのは、わかってる。

 

 

ある日、俺は気付いてしまった。

 

死霊術。

 

魔術師として存在は知ってる。

死者を蘇らせ、操る魔法。

帝国では禁忌。

使った時点で死刑。

 

でも、もし。

 

もし俺が使えたら。

 

アリシアを動かせる。

 

目を開かせて、声を出させて。

 

歩かせて、笑わせて。

 

「……そんなの」

 

無理だ。

できっこない。

第一、バレたら死ぬ。

いや、それ以前に。

 

死霊術で蘇ったものが、本当にアリシアなのか。

 

俺は知ってる。

死霊術の概念くらいは、学院で知った。

蘇った死体に魂はない。疑似人格は術者の魔力で作られた、ただの操り人形。

 

それは偽物だ。

アリシアじゃない。

 

「……でも」

 

偽物でも、いいじゃないか。

 

動けば。

声が出れば。

俺を見て、笑ってくれたら。

 

それが本物かどうか、俺に区別つくのか?

ついたとして、意味はあるのか?

 

「……俺は」

 

声が震えた。

 

「俺は……アリシアに会いたい」

 

 

それから俺は、禁書庫に忍び込んだ。

 

陰キャはこういう時、便利だ。

誰も俺が何してるか気にしない。

見張りもまともにいない。

 

古い書物を漁る。

死霊術の記述を探す。

 

『死者蘇生の初歩』

『傀儡術式とその応用』

『高位死霊術師の事例研究』

 

どれも禁書だ。

持ってるだけで処刑もの。

 

でも、俺の手は止まらなかった。

 

ページをめくるたび、心臓がうるさくなる。

 

できる。

理論上はできる。

俺の魔力なら、たぶん足りる。

問題はむしろ、制御の方だ。

 

動かすだけなら簡単。

でも、自然に、人間らしく動かすには、膨大な魔力と精密な術式がいる。

 

「……今の俺じゃ、無理か」

 

ガキの作りかけの操り人形みたいに、ガクガク動くだけ。

それじゃあ、アリシアじゃない。

 

俺は、もっと深く学ぶ必要があった。

 

 

この国で、死霊術を極めるには。

 

一つしか方法がない。

 

『屍の塔』。

 

北の山脈にある、伝説の死霊術師が遺したとされるダンジョン。

そこにはあらゆる死霊術の知識が眠ってるって、禁書に書いてあった。

 

もちろん、誰も行ったことはない。

行って帰ってきたやつもいない。

 

ただの噂話だ。

 

でも。

 

「……行くしかないか」

 

俺は呟いた。

 

アリシアの顔を見る。

相変わらず、静かに目を閉じてる。

 

「お前のためだ」

 

俺は、そのための力を手に入れる。

 

国にバレたら処刑?

死霊術師はこの世の敵?

 

どうでもいい。

 

アリシアがいない世界に、価値なんてない。

アリシアがいるなら、世界が敵でもいい。

 

「待ってろよ、アリシア」

 

俺は彼女の額に口づけた。

 

「次にお前が目を開けた時は……」

 

それが本物か偽物かなんて、もう関係ない。

俺がアリシアだと思えば、それでいい。

 

「死霊術……獲得してやる」

 

行き先は屍の塔。

 

アリシアを連れて行こう。

 

だって、いないと寂しいから。

 

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