※この作品はR-18です。

さよならコブラツイスト 〜美墨なぎさと弟・亮太〜   作:黒沼むつみ

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・美墨 なぎさ(16歳/ベローネ学院女子高等部2年)
・美墨 亮太(13歳/なぎさの三歳年下の弟)



Part2「帝国の逆襲」
ROUND1──「こんなこと考えたくない」


まるでそこだけ日が差してるみたいだった。

見たことのない服。

黒の細いズボン。

ふわふわのフリルがついた白い二重のスカートは、豪華なお菓子みたい。

みんなが振り向くんじゃないかってくらいの・・・かわいい、

とかじゃなくて・・・すごくきれいな人に見えた。なぎさが。

なんでぼくはすぐ声をかけなかったんだろう。

改札に人がいっぱいで近づけなかった?

久しぶりすぎて、なんて話しかけたらいいかわからなかった?

──そうじゃない。

違和感があったからだ。

後ろに立つ男と話している。

なぎさが首を振る・・・光がはじけるみたいな笑顔。

背が伸びた?・・・分からない。

こんなにきれいだったっけ。

何かを話してるけど遠くて聞こえない。

・・・その時、空気が急に冷えて、粘(ねば)りつく。

日に焼けた、短髪の背の高い男が、なぎさの肩に手を置いていた。

何かを言うと、笑うなぎさも

あいつの肩を押しやるように触れて。

また、光がはじける。

 

冷たい汗が脇の下を流れていく。

・・・周りから真っ黒な水が押し寄せてくる。

とぷん。

くらい、ふかい、海の底。

砕けそうなほど水圧がかかって。

音が幕をへだてているように遠い。

ゆっくり息を吸う。

・・・そうだ、見つかったらどうしよう。

急いで背を向ける。

取り返しのつかないものを見てしまいそうで。

もし、手を繋いでいたら──

想像を振り切り、コンコースの雑踏(ざっとう)へ逃げ込む。

海水が、足にまとわりついて重い。

 

 

「ごちそうさま」

肉じゃがもサラダも全然のどを通らなかった。

部活終わりにちょっと食べてきたから、といいわけをして部屋に戻る。

ベッドに寄りかかって携帯を開いた。

写真フォルダの1番上に、一度だけデートしたクラスの女の子。

向こうの好意には気づいていたし、

超うらやましいとむっちゃんに言われたけど・・・ぼくにはピンとこなかった。

スクロールした1番下に、隠すようにして家族の写真がある。

本当はなぎさだけ切り抜きたかったけど、

見つかった時のいいわけを考えて、そのままだ。

ぼくと肩を組んで笑う、ピースサインのなぎさ。

・・・やっぱり、きれいになってた。 

家を出ていってから一年ちょっと。

遠くからだったけど、

前はあんなにすらっとしてなかった。

黒の細いズボンがなぎさの足にぴったり張り付いて、

体をすごくきれいに見せていた。

携帯を閉じる。

写真を見ながらするのは、悪い気がして。

目を閉じ、思い浮かべる。

なぎさの声、匂い・・・リボンの感触、それと・・・今日みたはじけるような笑顔。

 

唇がひかっている気がした。

胸が大きくなったような。

気のせいかも。

でも記憶よりずっと変わっていて。

なぎさはあんなふうに笑うんだっけって思いながら、

そっと自分のペニスに手をやる。

ヒヤリとした感触。

なぎさにしてもらったことを思い出すとぐんぐん熱がこもる。

なぎさ、お姉ちゃん、そんな言葉を頭の中で繰り返す。

けれど、脳裏に割り込んでくる。

あの手が、なぎさの肩に。

どうしても隣のあいつが頭から離れない。

 

──最悪の想像がもう止まらない。

お菓子のようなスカートが乱暴にまくり上げられ、

開かれた服の下を、黒いズボンの中を、あいつの手がはい回る。

組みしかれたなぎさの息が白い。

想像の中の姉は、見たこともない顔で泣いていた。

下着をはぎとられ、後ろから押さえつけられる・・・あいつの指が肌に食い込む・・・

乱暴に打ち付けられる腰に身体が跳ねる・・・きれいな胸が弾んで・・・

吐きそうなくらいの嫌悪感に、みぞおちがギリギリと引き絞られる。

さっきまで食べていた夕飯をもどしそうなのに、

自分の熱が今までにないくらい猛り狂っている。

痛いくらいに昂(たかぶ)って、触れるだけで腰が浮く。

こんなこと考えたくない。

こんなことを。

考えたくない。

ぼくは頭がおかしい。

 

想像のなぎさがかすれた声をあげ、濡れた瞳から涙がこぼれた。

・・・べっとりとした欲望が自分のお腹の上に散っている。

最悪の感情で、姉を汚してしまった。

もう、取り返しがつかない。

 

汚れた塊を丸めてゴミ箱に捨てる。

・・・本当のことを確かめなければ。

なぎさがどこに住んでいるかは知らされてない。

けれど、時々遊びに来る時に持ってくるバイト先のたこ焼き。

あれはチェーン店の箱だった。

学校の近くに店が見つかれば、たぶん。

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