雨の音が、志喜屋夢子の部屋の窓を激しく叩いていた。
温水和彦はバスローブ姿で部屋に入り、ベッドに座る夢子を見て一瞬動きを止めた。下着姿の彼女の冷たい白い肌、ウェーブの長い髪が肩に落ち、白いカラコン越しの目が虚ろに半開きになっている。派手なギャルらしい下着が、彼女の低体温の肌に張り付くように密着していた。
夢子は、温水の視線に気づいているのかいないのか、いつものようにぼそぼそと口を開いた。
「……遅かった」
感情がほとんど乗っていない短い言葉。温水は慌てて視線を逸らそうとしたが、夢子の鎖骨やブラジャーの下から覗く柔らかな膨らみから、目が離せない。頰が一気に熱くなった。
「……すみません。シャワーが長くなってしまって」
彼はぎこちなくベッドの端に腰を下ろした。隣に座った瞬間、夢子の冷たい肩が彼の腕に触れた。シャワーを浴びた直後なのに、彼女の肌はひんやりと冷たいままだった。一方、温水の体からは微かな甘い香りが漂い始めている。
夢子は、ゆっくりと体を少しだけ温水の方へ傾けた。冷たい腕が密着する。
「……寒い」
また短い言葉。彼女は視線を少しだけ温水の方へ向け、ぼそぼそと続けた。
「……温水くん。……少し、近くにいて」
温水は喉を鳴らし、懸命に頷いた。心臓がうるさいほど鳴っている。夢子の冷たい肌が触れている部分が、じんわりと熱を持っていくような気がした。
(……この人、いつもこうだ)
夢子の頭の中で、ぼんやりとした思考が浮かんだ。
感情をうまく出せない自分を、彼は一度も「もっと笑って」とか「ちゃんと話して」とか言ったことがない。ただ、彼女が低体温で動けなくなったときに飲み物を渡したり、冷えそうなときにそっと支えたりするだけ。押しつけてこない。わからなくても、苛立たない。
過去の因縁が、ふと胸の奥を掠めた。素直になれなくて、相手を傷つけてしまったあの頃の自分。表現できない苛立ちが、関係を壊してしまった記憶。
でも彼は、違う。
この人は、自分の「表現できないこと」そのものを、ただそのまま受け止めてくれている気がする。
夢子の指が、シーツを軽く摘んだ。冷たい体が、隣にいる温水の体温を強く意識し始めている。甘い香りが、鼻の奥に染み込んでくるたび、頭の芯が少しずつ溶けていくような感覚。
「……温水くん」
彼女は、いつものように少ない言葉で囁いた。
「……触って、いい? ……冷たい、手を」
温水はびくりと肩を震わせ、顔を真っ赤にした。バスローブの裾が乱れ、彼の白い太ももがわずかに見える。男の娘のような繊細な容姿が、緊張でますます赤らんでいる。
「……いい、ですか?」
夢子は、小さく頷いた。
「……うん」
温水が、ためらいながらも夢子の冷たい手を、自分の掌で包み込んだ。その温かさが、夢子の冷えた指にじんわりと染み込んでくる。甘い香りが、二人を包み込むように濃くなった。
夢子は、視線を自分の手と温水の手に落とした。感情を言葉にできない自分が、こんなに近くにいるこの人を、ただ「寒いから」としか言えない自分が、少し悔しくて、少し甘い気持ちでいっぱいになっていく。
(……この人に、わかってもらえてる、気がする)
あのときは、わからなさすぎて、相手を傷つけてしまった。
でもこの人は、わからなくても、怒らない。ただ、冷たい手を温めてくれる。
夢子の冷たい肩が、温水の腕にさらに寄りかかった。白いカラコン越しの目が、わずかに細められる。甘い香りが強くなるたび、彼女の「外面」が、ゆっくりと、しかし確実に溶け始めていた。
「……温水くん」
また、短い言葉。
「……もっと、近くに、いて」
温水は、赤くなった顔で、小さく息を呑んだ。夢子の冷たい体が密着し、甘い香りが彼自身の体からも立ち上る。無自覚の力が、ゆっくりと彼女の内側に染み込んでいく。
夢子は、ぼそぼそと、最後に一言だけ付け加えた。
「……ありがとう」
それは、彼女が誰かに向けて発した、珍しく素直に近い言葉だった。
夢子が目を開けたとき、そこはもう彼女の部屋ではなかった。
どこまでも白く、柔らかい光に満ちた空間。重力の感覚が曖昧で、体が浮いているような浮遊感。床も壁もすべてが乳白色の靄に包まれている。
そして、目の前に立っていたのは温水和彦だった。
長く綺麗な黒髪が光を吸い込むように輝き、乳白色の肌が柔らかく光を反射している。バスローブはすでに脱がれ、シャツ一枚になった胸元が、男の娘のような繊細で美しい曲線を描いていた。彼はまだ控えめな表情のまま、しかし無自覚に夢魔の本能が全開になっている状態だった。
「……志喜屋先輩。ここは夢の中ですよ。でも、大丈夫。僕が……ちゃんと、受け止めますから」
温水の声はいつも通り控えめで優しい。
でも、その声が響くたび、甘い香りが一気に濃くなり、夢子の体に染み込んでいく。
夢子は、自分の体が冷たいままであることに気づいた。
夢の中でも、彼女の肌はひんやりと冷たい。温水はそれを、じっと見つめていた。
「……冷たいんですね。先輩の体……」
彼はゆっくりと近づき、夢子の冷たい腕を優しく包み込んだ。指先から、じんわりとした熱が染み込んでくる。無自覚の夢魔の力が、夢子の「冷たさ」を感じ取り、それを解放しようと動き始めていた。
(……この冷たさ……)
夢子の内面で、ぼんやりとした声が響いた。
感情をうまく出せないこと。
そのせいで関係を壊してしまった過去。
そして今も、温水の前で「ありがとう」としか言えない自分。
そのすべてが、「冷たい」という一つのコンプレックスとして、夢子の中に根を張っていた。
しかも、その冷たさの中には、長い間捌け口のなかった性欲も含まれていた。誰にも触れられず、感情を出せないせいで、ただ溜め込まれ続けていた欲求。
温水の指が、夢子の冷たい腕をゆっくりと撫でる。
ぬるっ…… ぐちゅっ……
指の腹が肌を滑るたび、甘い香りが強くなり、夢子の体がじんわりと熱を持ち始める。冷たい肌が、温水の体温によって少しずつ溶かされていく感覚。
「……先輩。……冷たいのが、辛いんですね」
温水の声は、いつものように控えめで押しつけない。
でも、その言葉が夢子の胸に、痛いほどに突き刺さった。
(……この人は、わかってる)
感情を出せない自分の冷たさを、嫌がらない。ただ、温めてくれようとしている。
夢子の体が、ゆっくりと震えた。
温水の指が、今度は夢子の冷たい肩から鎖骨へ、そして白いブラジャーの上から、優しく胸を包み込むように触れる。夢魔の力が全開になり、彼女の「冷たいコンプレックス」を、官能的に溶かしていく。
ぐにっ…… むにゅっ……
指が柔肉に沈む感触。冷たい肌が、温水の熱でじんわりと火照り始める。夢子は思わず小さく息を呑んだ。
(……んっ……熱い……)
性欲が、長い間閉じ込められていた蓋を、ゆっくりと持ち上げられる。
温水の無自覚な力が、彼女の抑圧された欲求を、容赦なく解放しようとしていた。
「……先輩。……もっと、楽になってください」
温水の控えめな声が、耳元で囁かれる。
同時に、彼の指がブラジャーの上から夢子の乳首を、優しく摘むように刺激した。
ぴくっ…… んっ……
夢子の体が小さく跳ねる。冷たい肌が熱を持ち、甘い香りが頭の芯まで染み込んでいく。
(……こんなに……気持ちいいのに……)
夢子は、内面で葛藤を抱えていた。
温水への思いが、どんどん大きくなっている。
この人は、自分の冷たさを理解してくれている。感情を出せなくても、怒らない。押しつけない。ただ、温めてくれる。
でも、それをどう言葉にすればいいのか、わからない。
「好き」だとか「気持ちいい」だとか、そんな普通の言葉が、自分の口から出てこない。
そのもどかしさが、逆に快楽を増幅させていく。
温水の指が、ブラジャーをずらし、直接夢子の冷たい乳首に触れた。
ぬるっ…… ぐりっ……
冷たい乳首が、温水の指の熱でじんわりと硬くなる。夢子は思わず声を漏らした。
「……っ……ん……」
短く、抑えきれない声。
温水はそれを聞きながら、控えめなまま、さらに優しく指を動かす。
「……気持ちいいですか?」
夢子は答えられなかった。
ただ、冷たい体が熱くなり、長い間閉じ込められていた性欲が、夢魔の力によって容赦なく解き放たれていく感覚に、身を委ねていた。
(……この人に……解放されてる……)
冷たいコンプレックスが、官能的に溶かされていく。
抑圧された性欲が、熱い波となって夢子の下半身を襲う。
温水の指が、さらに下へ移動し始めた。
夢子は、甘い香りに包まれながら、温水の優しい、しかし無自覚に強烈な力に、ゆっくりと飲み込まれていく。
(……温水くん……)
彼女の内面で、初めて明確な名前が響いた。
温水の指が、夢子の白いショーツの上から、秘部を優しく撫でる。
ぬるっ…… ぐにっ……
冷たい布地越しに、指の腹が柔肉を押し広げる感触。長い間閉じ込められていた熱が、じわじわと目覚めていく。
「……先輩。ここ、冷たいままですね……」
温水の声は控えめで、優しい。押しつけるようなところは一切ない。ただ、彼女の「冷たさ」を感じ取り、それを解放しようとしているだけだった。
指がショーツの端をずらし、直接夢子の秘部に触れる。
ぬるっ…… ぐちゅっ……
すでにわずかに濡れ始めていた冷たい秘唇を、温水の温かい指がゆっくりと撫で上げる。クリトリスを指先で優しく円を描くように刺激すると、夢子の体がびくりと跳ねた。
「んっ……!」
短く、抑えきれない声。
夢子の内面で、葛藤が渦を巻いていた。
(……こんなに……敏感なのに……)
感情をうまく出せない自分。
この人は、自分の冷たさを嫌がらない。ただ、温めてくれようとしている。
その事実が、長い間捌け口のなかった性欲を、急速に呼び覚ましていた。
温水の指が、ゆっくりと夢子の冷たい膣口に沈んでいく。
ぐぽっ…… ぬるっ……
一本の指が、簡単に奥まで入る。冷たい内壁が、温水の指の熱に驚いたように収縮した。
「はあっ……ん……」
夢子は、温水の肩に額を押しつけるようにして、体を震わせた。
温水はもう片方の手で夢子の冷たい太ももを優しく押さえながら、指をゆっくりと引き抜き、再び沈める。
ぐちゅっ…… じゅるっ…… ぐりっ……
冷たい愛液が、指の動きに合わせて少しずつ溢れ始める。温水の無自覚な夢魔の力が、彼女の抑圧された欲求を、官能的に溶かしていく。
「……先輩。……中、冷たいのに……熱くなってきましたね」
控えめな声で囁きながら、温水は二本目の指を加えた。
ぐぽっ…… ぐちゅっ…… じゅるるっ……
二本の指が、冷たい膣内をゆっくりと掻き回す。親指の腹で腫れ始めたクリトリスを同時に擦り上げる。夢子の体が、びくびくと跳ねた。
(……んっ……あ……こんなの……初めて……)
長い間、誰にも触れられず、感情を出せないせいで溜め込まれ続けていた性欲が、温水の指によって容赦なく解き放たれていく。冷たい体が、じんわりと熱くなり、甘い香りが頭の芯を溶かす。
温水の指が、激しく動き始めた。
ぐちゅっ…… ぐちゅっ…… じゅるるっ…… ぐりっ…… ぐぼっ……
冷たい愛液が、指の間から大量に溢れ、びしゃっ…… と淫らな水音を立てる。夢子の冷たい内壁が、温水の指を締め付けるように収縮し始めた。
「んあっ…… あんっ…… んんっ……!」
夢子は、短い喘ぎを繰り返す。
言葉がうまく出ない。
「気持ちいい」とか「もっと」とか、そんな普通の言葉が、自分の口から出てこない。
(……この人に……解放されてる……)
温水への思いが、快楽とともに膨らんでいく。
この人は、自分の冷たさを全部受け止めてくれる。感情を出せなくても、怒らない。ただ、温めてくれる。
その甘い感覚が、性欲をさらに加速させた。
温水は、夢子を優しく押し倒すようにして、彼女の股の間に顔を埋めた。
れろっ……
最初の一舐めで、夢子の背中が大きく弓なりに反った。
「ひゃうっ……!? あんっ…… そこ……温水くんの……舌が……あぁっ……!」
熱い舌が、冷たい秘部を根元から上へゆっくりと這い上がる。クリトリスを舌先で丁寧に転がし、唇で優しく挟んで吸う。
れろれろっ…… ちゅるっ…… れろっ……
冷たい愛液と混じり合い、温水の舌が夢子の最も敏感な部分を執拗に刺激する。夢子の体が、びくびくと痙攣した。
(……舌が……熱い…… 冷たかった体が……溶けてく……)
温水の舌が、膣口に直接入り込み、指と同時に中を掻き回す。親thumbでクリトリスを激しく擦り上げる。
ぐちゅっ…… ぐちゅっ…… じゅるるっ…… れろれろっ…… ちゅるっ……
「ひぐっ…… あんっ…… んんんっ……! 奥まで…… 舌が…… あぁっ…… だめっ…… イくっ……!」
夢子の体が、激しく跳ねた。
長い間閉じ込められていた性欲が、一気に解放され、オーガズムが襲ってくる。
びくっ…… びくびくっ…… びくんっ……!
大量の愛液が、温水の口の中に噴き出す。
びしゃっ…… じゅるるっ…… ぐぼっ……
「んんんんっ…… あんっ…… あぁぁっ……!」
夢子は、夢の中で激しく痙攣しながら、初めて本当の雌の声を上げた。冷たい体が、熱く火照り、甘い香りに包まれながら、長い間溜め込まれていた快楽に飲み込まれていく。
でも、温水は止まらない。
彼女がまだ痙攣している体を優しく抱き起こし、自分の膝の上に跨がせるようにした。夢の中では、力が逆転していた。
温水の熱く勃起した肉棒が、夢子のぐっしょりと濡れた秘部に触れる。
ぬるっ…… ぐちゅっ……
「んあぁっ……!」
先端が、入り口を割り開く。熱くて、硬くて、脈打つ肉が、ゆっくりと冷たい膣内へ沈んでいく。
ぐぽっ…… じゅるるっ…… ぬるっ……
「はあっ…… あんっ…… 入ってくる…… 温水くんの……これが……」
夢子は、夢の中で完全に雌の本能に支配されながらも、内面で激しく葛藤していた。
(……こんなに……奥まで……入ってきてる……)
温水への思いが、快楽とともに溢れ出す。
この人は、自分の冷たさを理解してくれている。感情を出せない自分を、押しつけない。ただ、温めてくれる。
その事実が、性欲をさらに爆発させた。
温水は、夢子の腰を両手で優しく掴み、ゆっくりと動き始めた。
ぐちゅっ…… ぐちゅっ…… じゅぽっ…… ぐりっ…… ぐちゅっ……
冷たい膣内が、温水の熱い肉棒を締め付ける。愛液が溢れ、ぐちゅっ…… じゅるるっ…… ぬるっ……と淫らな水音を立てる。夢子の冷たい体が、温水の体温と夢魔の力によって、どんどん熱くなっていく。
「……先輩。中、すごく熱くなってきました……」
控えめな声で囁きながら、温水は動きを少しずつ激しくする。子宮口を、熱い先端が強く押し上げるたび、夢子の頭が真っ白になった。
「ひぐっ…… あんっ…… んんんっ……! 奥…… 当たってる…… あんっ……」
夢子は、温水の胸に顔を埋めながら、腰を振り始めた。冷たい体が、熱い快楽に溶かされていく。
(……温水くん…… この人に……全部、溶かされてる……)
長い間捌け口のなかった性欲が、完全に解放され、オーガズムが迫ってくる。
温水の動きが、さらに深く激しくなった。
ぐちゅっ…… ぐちゅっ…… じゅぽっ…… ぐりっ…… ぐちゅっ……
「んあっ…… あんっ…… んんんっ……! だめっ…… また…… イくっ……!」
夢子の体が、激しく痙攣した。
びくっ…… びくびくっ…… びくんっ……!
冷たい膣が、温水の肉棒を激しく締め上げながら、大量の愛液を噴き出す。
びしゃっ…… じゅるるっ…… ぐぼっ……
温水は、夢子を優しく抱きしめながら、最後のひと突きを深く沈めた。
ぐぽっ…… どくっ…… どくんっ…… びゅるっ……
熱い精液が、子宮の奥に直接叩きつけられる。
その瞬間、夢子の意識が、真っ白に弾けた。
「んんんんっ…… あぁぁっ…… 出てる…… 温水くんの……熱いの…… 子宮に…… あんっ…… んんっ…… イってるっ…… イってるううっ……!」
体が、激しく痙攣しながら、大量の潮を吹き出した。冷たい体が、完全に熱く火照り、長い間閉じ込められていた性欲と感情が、夢魔の力によって容赦なく解放されていく。
温水は、彼女の体をしっかりと抱きしめ、動きを緩めながら、最後まで精を吐き出し続けた。
夢子は、もう何も言えなかった。
ただ、激しい痙攣と、甘く溶けた短い吐息だけを、繰り返すだけだった。
「……はあっ…… んんっ…… あんっ…… はあっ……」
冷たかった体が、温水の体温と夢魔の力で、じんわりと熱く染まっていく。
温水は、夢子の額に、優しく唇を寄せた。
「……先輩。……少しは、楽になりましたか?」
控えめで、優しい声。
夢子は、温水の胸に顔を埋めたまま、ぼそぼそと小さく呟いた。
「……うん……」
それは、彼女が今まで誰にも言えなかった、本当の気持ちに一番近い言葉だった。
白い靄がゆっくりと晴れていくような感覚。
夢子はまぶたを重く開けた。視界に最初に入ってきたのは、温水和彦の長い黒髪と、優しい横顔だった。
彼女は、温水の膝に頭を乗せたまま、ソファ(ではなく、自分の部屋のベッド)に横たわっていた。膝枕の状態だ。温水は夢子を優しく支えるように腕を回し、静かに見下ろしている。
夢子は、まず自分の体を確認した。
下着姿のまま。白いブラジャーとショーツ。さっきまで激しく動いていたはずの体は、今も同じ服装で、布地が少し湿っているだけだった。制服は脱いだまま、部屋の隅に置かれている。
(……夢……だった)
安堵が、胸の奥に広がった。あの激しい行為——温水の指、舌、熱い肉棒が子宮の奥まで届いた感覚、幾度も繰り返された絶頂、完全に理性を手放して彼を貪ったこと——すべてが、自分の頭の中で起こった出来事だった。
でも、次の瞬間、夢の中の記憶が鮮明に蘇り、夢子の頰が一気に熱くなった。
(……あんな……こと……)
彼女は慌てて体を起こそうとしたが、膝枕の温もりがまだ残っていて、動きがぎこちない。白いカラコン越しの目が、わずかに泳いだ。
「……わたし……なんか……へんなことした?……」
ぼそぼそと、短い言葉で問いかけた。声が少し上ずっているのが、自分でもわかった。
温水は、穏やかに首を横に振った。頰が少し赤くなっている。いつもの控えめな声で、優しく答える。
「……いえ、眠っていただけですよ。先輩。少し、疲れていたみたいだったので……そのままにしていました」
夢子は、安堵の息を吐いた。
でも、その安堵と同時に、夢の中の光景が頭を埋め尽くす。
熱い舌でクリトリスを舐められ、指で激しく掻き回され、彼の肉棒を自分で咥え込んで腰を振り、子宮に何度も精液を注がれ、理性が溶けていく感覚。
すべてが、ただの夢だった。
(……でも……あんなに……気持ちよかった……)
彼女の内面で、複雑な感情が渦を巻いた。
こんなに激しい欲求が溢れ出してしまった。
(……私にも……性欲が、あったんだ……)
今まで、感情を出せない自分にばかり目を向けていて、こんなに強い欲求が自分の中に眠っていたことに、夢子は困惑していた。
夢の中で完全に理性を手放し、ただ快楽を求めて彼を貪った自分。
それが、夢ではなく現実だったら……どうなっていただろう。
そんなことを考えただけで、夢子の体が小さく震えた。
温水は、そんな夢子の様子を静かに見つめていた。
いつもの「感情の薄い」夢子とは違う、明らかに戸惑いと動揺を露わにしている姿を見て、彼の頰がさらに赤くなる。繊細な顔立ちが、珍しく緊張している。
「……先輩」
温水は、優しく夢子の手を自分の掌で包み込んだ。もう片方の手で、ウェーブの長い髪をゆっくりと撫でる。指が、優しく絡まるように通り抜けていく。
「……大丈夫ですか?」
その触れ方は、押しつけるものではなく、ただ「ここにいるよ」と伝えるような、穏やかなものだった。
夢子は、温水の膝の温もりを背中で感じながら、ぼんやりと彼の顔を見上げた。
(……この人……)
彼の体温が、膝からじんわりと伝わってくる。
夢の中ではあんなに激しく自分を溶かしたのに、現実の彼は、いつものように優しく、控えめで、彼女の冷たさや不器用さを、嫌がらない。
(……変わってる……)
夢子は、自分の内面で、はっきりと自覚し始めた。
この人は、自分の感情を出せない冷たさを、ただそのまま受け止めてくれる。
夢の中であんなに激しいことをしても、現実では優しく髪を撫でてくれる。
そのギャップが、夢子の胸の奥を、じんわりと熱くしていた。
(……この人に……もっと、近くに、いたい……)
今まで感じたことのない、甘い感情が、ゆっくりと芽生え始めている。
それが何なのか、夢子はまだ上手く言葉にできない。
でも、温水の膝の温もりと、手のひらの温かさが、彼女の冷たい体に染み込んでいくたび、その気持ちは確実に大きくなっていった。
一方、温水は、夢子の手に触れたまま、わずかに驚いたような表情を浮かべていた。
(……先輩の体……いつもより、温かい……)
夢子の冷たいはずの肌が、じんわりと熱を帯びている。
夢の中で感じた彼女の「冷たいコンプレックス」が、少しだけ溶けたように思えた。
(……もし、僕が……少しでも、手助けできるなら……)
温水は、そう思いながら、優しく夢子の髪をもう一度撫でた。
彼自身は、まだ自分の力が何であるかを自覚していない。ただ、夢子が少しでも楽になればいいと、純粋に思っているだけだった。
夢子は、温水の膝の温もりに身を委ねたまま、ぼそぼそと小さく呟いた。
「……ありがとう……」
それは、彼女が今まで誰かに向けて発した、珍しく素直に近い言葉だった。
温水は、優しく微笑んだ。
「……どういたしまして。先輩」
二人は、そのまま静かに寄り添っていた。
雨の音は、もう止んでいた。