機動戦士ガンダム エロ短編集 女達の地獄の黒史録 作:みなぽん
シーマ・ガラハウの死から十数年後——宇宙世紀0096年。
一本の古いデータディスクが保管庫の片隅から発掘された。
「なんでこんなものが?」
青年兵士が拾い上げたディスクのラベルには、「S.GARAHOU」と手書きで記されていた。軍の識別コードでもなければ個人名を示す番号でもない。手書きの筆跡は古く褪せているものの、妙に整っていてどこか威厳があった。
「おい、再生できるか?」
「やってみます」
旧式のデータプレイヤーにセットすると、数秒の読み込み時間を経て画面が立ち上がった。ノイズ混じりの映像と共に音声ファイルが再生される。
『……聞こえるか。私はシーマ・ガラハウだ』
ざらつく映像の中に現れたのは、蒼い炎のように揺らめく女の瞳。そして痩せた肩を剥き出しにした黒のパイロットスーツ姿だった。
第一章 マハルの少女
私の故郷は、サイド3の3バンチ・マハル。スペースノイドの中でも最下層、極貧の被差別コロニーだ。戸籍さえまともに登録されていない者たちがひしめく、ジオン公国の影の部分だった。
あの頃のマハルは、それでも私たちの故郷だった。薄汚れた区画で、飢えた瞳の子供たちが私の周りに集まってくる。みんな痩せ細って、明日の食費にも困っている。私は彼らの姉代わりだった。少しでも食料を分け与え、傷を手当てし、夜は身を寄せ合って眠った。
「シーマ姉ちゃん、僕たち、いつかここから出られるかな」
小さな手が私の服の裾を引っ張る。その手のあまりの細さに、胸が張り裂けそうだった。
そんな時、ジオン軍から声がかかった。士官学校への推薦だ。マハル出身者としては異例の栄達。仲間たちを養える。家族を助けられる。そう思った私の決断は早かった。
だが、この世界に無償の好意など存在しない。
士官学校推薦の条件――それは、ジオン軍の有力者たちの「夜の相手」をすることだった。
最初の男は、軍需産業関連の高官だった。年の頃は五十過ぎ、腹の出た醜い男だ。彼は私の顎をつかみ、品定めするような目で見た。
「マハルから来た女は、これだからいい。野生的で、飢えている」
高級士官用の宿舎。シルクのシーツ。こんなものは生まれて初めてだった。しかし、その柔らかな寝台の上で行われたことは、獣の交尾にも等しい。
男はいきなり私を押し倒した。粗暴な手が服をまさぐり、剥ぎ取っていく。痛い。肌が擦れる感覚に、涙が出そうになった。だが、私は耐えた。これが仲間たちを救うための対価なのだと。
「もっと腰を使え。士官学校に行きたいのだろう」
私は言われるままに身体を動かした。男の腹が私の腹に押し付けられ、汗ばんだ皮膚が粘りつく。鼻につく古いタバコと酒の臭い。吐き気がした。しかし、下腹部の鈍い痛みだけに意識を集中させれば、なんとか耐えられた。
男は私の中で暴れ回り、満足すると獣のような唸り声をあげて果てた。
「いいだろう。推薦状は書いてやる」
汗まみれの身体から逃げ出したくても、逃げ場はない。私はシーツの端を握りしめ、ただ無の表情で天井を見つめた。
これが最初だった。
二人目は人事局の将校。三人目はザビ家に連なる貴族の子弟。四人目は現場指揮官。それぞれが違うやり方で私を求め、私はそれに応えた。
四人目の男、アサクラ大佐。
後の私の直属の上官となる人物だ。彼は他の者たちよりは若く、まだ三十代半ばだった。だが、その性癖は最も歪んでいた。
「シーマ、お前は美しい。その美しさは、武器だ。男を支配する武器だ」
彼は私を椅子に縛りつけ、熱い蝋を垂らした。白い肌に赤い蝋が落ちるたびに、ビクリと身体が跳ねる。痛みが焼けるように広がる。
「痛みに耐えることを覚えろ。戦場はもっと過酷だ」
蝋が固まる頃には、私の身体は赤い斑点で覆われていた。アサクラはそれを満足げに見下ろし、次は氷を持ってきた。冷たい感触が火傷の跡を撫でる。熱と冷たさの交互の刺激に、身体は訳も分からず震えた。
そして最後に、彼は私を解き放ち、優しく抱き寄せた。痛みの後の安らぎ。それが逆に私を混乱させた。
「いい子だ。もう大丈夫だ」
彼の手が胸を這い、股間に伸びる。指先が秘所を探り当てると、羞恥と快楽が入り混じった感覚が走った。
「あ……」
声が漏れる。アサクラは耳元で囁いた。
「感じたか? 痛みの先にある快楽こそが、真の歓びだ」
彼の指は執拗に私の敏感な部分を弄り続けた。やがて身体の中から熱いものが湧き上がり、抗えない波に飲み込まれていく。屈辱的なはずなのに、身体だけが正直に反応してしまう。その矛盾に、私は自分自身が壊れていくような恐怖を感じた。
私は耐えた。マハルの仲間たちの顔を思い浮かべながら。涙が出そうになると、唇を噛みしめて耐えた。
この痛みも快楽も、いつか彼らが貧困から抜け出すための対価なのだと自分に言い聞かせて。
だが、ある夜、すべてが変わった。
四人目の男、アサクラが私の身体を弄び終えた後、何気なく言ったのだ。
「お前の前に三人の男がいたな。みな、お前を『なかなかの娼婦だ』と褒めていたぞ」
その瞬間、自分の中で何かが壊れた。娼婦。そう、私は娼婦だった。どんなに美辞麗句を並べても、マハルの仲間のためと自分を騙しても、結局はただの売女だ。
その夜、私は初めて激しいセックスを自ら求めた。アサクラにではなく、酒場で出会った名も知らぬ兵士と。痛みを快楽で上書きするように。自分が汚れていることを、もっと汚れることで忘れようとするかのように。
酒場の薄暗い個室。兵士は逞しかった。私が「抱いて」と言うと、彼は驚いたような顔をしてから、すぐに好色な笑みを浮かべた。
「お嬢ちゃん、いい身体してるな」
彼の手が私の腰を引き寄せ、唇を重ねてくる。酒とタバコの臭い。アサクラとは違う、もっと粗野な臭い。それが逆に私を興奮させた。
服を脱ぎ捨てると、兵士の目が釘付けになった。白く滑らかな肌、引き締まった肢体。戦場では見られない女としての私。
「すげえ……」
彼は私を抱き上げ、粗末なベッドに押し倒した。前戯などない。荒々しい手が胸を揉みしだき、足の間に割り込んでくる。
「ああっ!」
指が侵入してくる感覚に、背筋が震えた。粗い指の動き。でもそれがよかった。優しさなんていらない。ただ激しく、激しく私を壊してほしかった。
兵士はズボンを下ろし、怒張したものをあてがった。
「いくぞ」
一気に貫かれる。痛みと快楽が同時に走り、視界が白んだ。
「はあっ……あっ……!」
彼は私の脚を高く持ち上げ、獣のように激しく腰を打ちつけた。肉と肉がぶつかる音が響く。汗が飛び散る。私はその激しさに身を委ねた。頭の中が真っ白になる。何も考えなくていい。ただ、身体の奥から湧き上がる快楽だけが、私の存在を肯定してくれる。
「もっと……もっと……!」
私は自分から腰を押しつけ、彼を求めた。彼の歓びが私の中で膨らみ、弾ける度に、脳髄まで痺れるような感覚に襲われる。自分が消えてしまいそうな恐怖を、肉の交わりで紛らわすように。
絶頂が来た時、私は叫んだ。悲鳴なのか歓喜なのかも分からない声を。
これが、私の本当の堕落の始まりだったのかもしれない。
士官学校に入ってからも、その習慣は変わらなかった。訓練で追い詰められると、私は男を求めた。上官と、同僚と、時には複数の相手と。セックスは私にとって麻薬だった。苦しみを一時的に忘れさせてくれる、ただ一つの方法。
ある時は訓練教官と格納庫の影で。ある時は同期の士官候補生たちと共同部屋で。
「シーマ、お前は壊れているな」
そう言った上官も、結局は私の身体を求めた。男たちは私の外見だけを愛した。透き通るような白い肌、引き締まった肢体、挑発的な目つき。そんな外面だけを見て、誰も内面の崩壊には気づかない。
それでも、私は士官として確かな腕を磨いた。MS操縦の才能は群を抜いていた。戦術眼も、指揮能力も、誰にも負けない。皮肉なことに、心が壊れれば壊れるほど、戦場での私は冷徹無比になっていった。
第二章 毒ガスの記憶
宇宙世紀0079年1月3日。一年戦争が始まった。
私が率いる部隊は「シーマ艦隊」と呼ばれるようになり、キシリア・ザビ少将直属の突撃機動軍に配属された。表向きは海兵上陸戦闘部隊。しかし実際の任務は、公国軍の「汚れ仕事」だった。
ある日、アサクラ大佐から通信が入った。
「シーマ、コロニーに特殊ガスを注入する作戦だ。あくまでも無力化ガスだ。住民を眠らせて、安全に制圧するためのな」
私は疑わなかった。疑いたくなかったのかもしれない。
作戦当日、私は部下たちとコロニーに突入した。運搬用のポッドには、G3とラベルされたガス容器。
「よし、注入開始」
私の命令で、ガスが放出された。無色透明の気体が、コロニーの空気中に拡散していく。
やがて、異変に気づいた。
住民たちが倒れていく。ただ眠るのではない。苦しみもがきながら、七孔から血を流して。
「これは……これは催眠ガスじゃない!」
私の叫びは届かなかった。ガスは止めどなく流れ続け、コロニーは死の空間と化した。
すべての注入が終わり、確認のためにコロニー内部に降り立った時の光景は、今でも悪夢として私を苛む。
老人が、子供が、母親が、折り重なるように倒れている。ある者は目を見開き、恐怖の表情のまま固まっていた。ある者は互いに抱き合うようにして死んでいた。まだ幼い赤ん坊を胸に抱いた女性の遺体。その赤ん坊もまた、小さな握り拳を口元に当てたまま――。
「う……うう……」
私はその場に嘔吐した。胃の中のものをすべて吐き出しても、まだ何かがこみ上げてくる。
その夜、艦に戻った私は酒を浴びるように飲んだ。だが、どんなに飲んでも酔えなかった。目の裏に焼きついた死体の山が消えない。
「艦長……」
副官の声がした。振り返ると、そこには数人の部下たちが立っていた。彼らもまた、同じ罪の意識に押し潰されそうな顔をしている。
「俺たちは……俺たちは何てことを……」
私は答えず、服の前をはだけた。
「誰でもいい……抱いて……」
最初は躊躇していた部下たちも、やがて一人、また一人と私に群がった。艦長室の床の上で、私は複数の男たちに組み敷かれる。
「もっと……もっと激しく……お願い……」
普段は凛とした指揮官の、あまりにもみっともない姿。それでもよかった。肉体的な痛みと快楽で、心の痛みを覆い隠せるなら。
部下の一人が私の髪を掴み、後ろから激しく貫く。別の一人が私の口を塞ぐ。正気を失った獣のように、私たちは互いを貪り合った。
「艦長……艦長の中は……熱い……」
「んっ……んんっ……!」
口を塞がれながらも、身体の中で男たちが動き回る感覚に没頭した。前からも後ろからも同時に攻められ、脳が溶けそうになる。
ふと、ユーリの視線と目が合った。副官の彼は、ただ呆然とその光景を見つめていた。彼の目に浮かんだ哀れみの色が、深く心に刺さる。
乱交が終わった後、私は裸のまま床に横たわり、天井を見つめていた。身体は使い物にならないほど疲弊しているのに、心はまだ少しも楽になっていない。
「私は……間違っていたのか……」
声にならない声が漏れた。だが、その呟きに答える者はいなかった。
その後、このコロニーはブリティッシュ作戦で地球に落下させられたと聞いた。あの死体の山ごと、地球のどこかに落ちていったのだろう。何もかもが、巨大な力に押し流されていく。私という存在も、いずれは――。終戦が近づくにつれ、事態はさらに悪化した。コロニー潰しの件を、アサクラ大佐は私一人の責任にしようと画策していたのだ。
「シーマ艦隊による独断専行でした」
あの男は涼しい顔でそう報告した。私を抱きながら「お前は特別だ」と囁いた口で、今度は私をスケープゴートに仕立て上げる。さらには、故郷のマハルまでが失われた。ジオン公国が最終兵器ソーラ・レイを建造するために、住民全員を強制疎開させ、コロニーそのものを改造してしまったのだ。私の帰る場所は、永遠に消え去った。
第三章 宇宙の海賊
戦争が終わった。
私はジオンにも連邦にも裏切られ、アクシズへの亡命さえも拒否された。私の艦隊は、行き場のない者たちの吹き溜まりとなった。
シーマ艦隊としてブランドは立っているが、実態は宇宙海賊だ。傭兵まがいの仕事を請け負い、時にジオン残党からも、時に連邦からも物資を掠め取る。そうでもしなければ、マハルから連れてきた仲間たちが飢え死にしてしまう。
しかし、それも限界だった。艦隊の維持には莫大な資金がいる。仕事がなければ、賞金首として追われるだけの日々だ。
そんなある日、私はアナハイム・エレクトロニクスの重役と接触する機会を得た。オサリバンという男だ。年齢は四十代半ば、神経質そうな痩せた顔の男だった。
「シーマ中佐、お噂はかねがね」
彼は取引先として、高級スイートルームを用意していた。地球の最高級ホテルの一室だ。贅を尽くした調度品、磨き抜かれた窓の外には、青く輝く地球が見える。
「単刀直入に申し上げましょう。我々はデラーズ・フリートの動向を探りたい。あなたには、そのための駒となっていただく」
「報酬は」
「期待に応えていただければ、それなりのものを。シーマ艦隊の維持費程度なら、お安いものです」
私は冷たく笑った。
この手の大人しい男は嫌いではない。力関係がはっきりしているからだ。
「何をすればいい」
「まずは、私を満足させていただきたい」
オサリバンは眼鏡を外し、じっと私を見つめた。その目には、抑圧された欲望が渦巻いている。
私は立ち上がり、ゆっくりと服を脱いでいった。上から一枚ずつ、男の視線を感じながら。
「見るだけか」
挑発的に言うと、彼は息を呑んだ。
私は彼の前に裸で跪いた。まるで奴隷のように。誇りも何もかも、とっくに捨て去っていた。
「私は、あなたの雌犬です。ご主人様」
そう言って、私は彼の脚の間に顔を埋めた。ズボンの上から硬くなっているものを掌で包み込むと、彼は小さくうめき声をあげた。
「なんて……なんて下品な女だ……」
侮辱の言葉とは裏腹に、彼の身体は正直だった。私はズボンを下ろし、下着の隙間から彼自身を露わにした。熟練した技で口に含み、舌を這わせる。彼の手が私の頭を押さえつけ、腰が前後に動き始める。
「うっ……くっ……!」
彼は私の口の中で果てた。喉の奥に吐き出される熱い液体。飲み下すと、彼は恍惚とした表情を浮かべた。
「素晴らしい……これからも定期的に、よろしく頼むよ」
数時間後、乱れたベッドの上で、オサリバンは満足げに葉巻を燻らせていた。私は何度も彼に抱かれ、身体中に痕を残された。彼はサディスティックな一面も持っていた。胸を縛り上げられ、蝋を垂らされた時は、アサクラを思い出して身体が震えた。
「素晴らしい。一級品の娼婦だ」
私は裸のまま窓辺に立ち、地球を見下ろした。眼下に広がる美しい星。あの星には、きっと平穏な暮らしがあるのだろう。家族を愛し、愛される営みがあるのだろう。
だが、私にはもう、そんなものは手に入らない。
「承知しました、ご主人様」
私は感情を消した声で答えた。
それから何度も、私はオサリバンの元に通った。
時には彼の友人の相手もさせられた。ビジネスパートナーだという男たちの前で裸で踊り、そのまま全員の相手をする。
「素晴らしい。一級品のエロ女だ」
彼らは私の身体にワインをかけ、舐め取った。ある男は私の脚の間に顔を埋め、舌で私を犯した。別の男は後ろから私を貫きながら、胸を鷲掴みにした。
「もっと!もっと激しくして!」
私は叫んだ。それは演技だったかもしれないし、本心だったかもしれない。もう区別がつかない。ただ、快楽の波に身を委ねれば、すべてを忘れられる。
次第に、私の身体は快楽なしでは生きられなくなっていった。激しく激しく扱われ、貫かれ、果てる。それだけが、私を生かしている証だった。
それでも、私の艦隊には金が必要だった。マハルから連れてきた連中は増えていく一方で、食わせていかなければならない。彼らには家族ができ、子供も生まれている。次の世代に、私たちのような苦しみを味わわせるわけにはいかないのだ。
そのためなら、私は何度でも娼婦になる。
どれだけ深く、汚れても構わない。
「シーマ艦長、本当にこれでいいんですか」
ユーリが心配そうに私を見る。私はいつものように不敵に笑って見せた。
「いいのさ。これが私のやり方だ」
しかし、夜、一人になると、体の震えが止まらなかった。私は何度もシャワーを浴び、自分の身体を擦り洗った。
それでも、男たちの手の感触が消えない。匂いが取れない。
結局、私はまた誰かを呼び寄せる。今度は私が彼らを支配するために。上に跨り、腰を振りながら、自分がまだ人間であることを確認するために。
第四章 デラーズの乱、そして
宇宙世紀0083年。
私はデラーズ・フリートに参加していた。表向きはジオン残党の一員として、しかし本心では、連邦に寝返るための布石として動いていた。
デラーズやガトーは、大義だの理想だのを語る。ジオンの再興、スペースノイドの独立。そんな美しい言葉を、本気で信じている連中だ。但し、私が知っている。この宇宙に大義など存在しないことを。
あるのは力と打算だけだ。
コロニージャック、地球への落下阻止限界点の攻防。すべては芝居だ。私は連邦のコリニー提督と密約を交わしている。この作戦の後、私と私の艦隊には新しい居場所が与えられる手筈だった。
しかし、事態は思い通りに進まなかった。
グワデンの艦橋で、私はデラーズを追い詰めた。
「投降しろ、デラーズ。貴様の理想は終わりだ」
但し、他は死を選んだ。自らの命を顧みず、作戦の完遂を訴えながら。その姿は、ある意味で美しかった。愚かで、そして美しい。
「この……この偽善者が!」
私は彼を撃った。彼の言う「大義」が、どれだけ多く的人間を殺してきたか。その大義の陰で、私のような者たちがどれだけ苦しんできたか。
直後、すべてが崩壊した。
ガトーの攻撃でグワデンは破壊され、私の旗艦リリー・マルレーンもまた、連邦のガンダム試作3号機によって撃沈された。
私はガーベラ・テトラで脱出し、復讐のためにガンダムに挑んだ。真紅の機体が、白い死神に向かって突撃する。
「お前のせいだ!お前のせいで、私の艦が!私の仲間が!」
至近距離、私は叫びながらビームを放つ。但し、ガンダムはそれをかわし、巨大なメガビーム砲の砲身を振り回す。
避けきれなかった。
衝撃。機体が貫かれる嫌な感触。
私は串刺しになった。巨大な砲身が、コクピットを貫通していた。
ここで終わりか。
あまりにも呆気ない最期。
但し、不思議と恐怖はなかった。むしろ、これでようやく解放されるという安らぎの方が大きい。
一瞬、走馬灯のように過去が蘇る。マハルの貧しい街並み。私を「姉ちゃん」と呼んでくれた子供たち。裏切ったアサクラの顔。無残なコロニーの死体の山。数えきれない男たちの手。
そして、私を最後まで信じてくれた部下たちの顔。
ユーリ、お前は生き延びろ。
マハルの魂を、未来に繋げ。
次の瞬間、ゼロ距離からのメガビーム砲が火を噴き、私の身体は機体ごと四散した。
痛みは、一瞬だった。
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これが、シーマ・ガラハウという女の人生だ。
真心を貫こうとした。仲間を守ろうとした。故郷への愛を胸に戦った。
但し、世界はそれを許さなかった。
男たちは私の身体を弄び、上官は私を裏切り,大義を叫ぶ者たちは私を利用した。
それでも私は生き抜いた。自分のやり方で。たとえその手段が,最も卑しいものだったとしても。
これでよかったのか、誰にもわからない。
但し,最後に言えることは一つだけ。
私は最後まで、マハルの娘だった。
そして、この宇宙のどこかで,私の魂は今も燃え続けている。
故郷の残り火のように。
誰のためでもない、私自身のための――最後の輝きとして。
## 終章 残された声
後日、とある記録端末に、シーマが生前に残したものと思われる音声データが発見された。それが真に彼女のものかは確認されていない。ただ、その声はひどく疲れ、かすれていたという。
「聞こえるか。私はシーマ・ガラハウだ。
誰がこれを聞くのかは知らないが,記録しておく。
私は私なりに、真心を貫いたつもりだ。
汚い手段も多く使った。人もたくさん殺した。男たちと寝て,金を得た。
綺麗な生き方ではない。
但し,仲間のために戦ったことだけは本当だ。マハルの子供たちに,腹いっぱい飯を食わせたかった。
それだけは,本当だ。
もしこれを見つけたなら,覚えておいてほしい。
宇宙には,こんな女もいたことを。
大義も理想もなく,ただ明日を生きるために足掻き続けた,一人の女がいたことを。
そして,もし生まれ変われるなら──今度こそ,誰にも汚されず,誰も汚さず,静かに生きたかった。
それだけだ。終わりだ」
音声はここで途切れている。
誰かが溜め息を吐いたのか,それとも微かな嗚咽だったのか──解釈は聞く者に委ねられている。