機動戦士ガンダム エロ短編集 女達の地獄の黒史録 作:みなぽん
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 『帰還者たちのクリスマス』
第一章 最後の戦い
サイド6・リボーコロニー。
クリスマスの朝、コロニー内の森林公園に、二機の巨大な人型兵器が対峙していた。
ガンダムNT-1“アレックス”。白と青の機体は、連邦軍の最新技術の結晶だった。
そして、ザクⅡ改。深緑の機体は、すでに満身創痍だった。左肩のシールドは失われ、装甲のあちこちに被弾の跡がある。それでも、その単眼は爛々と輝き、眼前の白い機体を見据えていた。
コックピットの中で、バーナード・ワイズマンは汗に濡れた手で操縦桿を握りしめていた。十九歳の少年兵は、乾いた唇を舐めた。
「これで終わりにする。このコロニーを守るためだ」
それは自分への言い聞かせだった。サイド6への核攻撃を止めるために、ガンダムを破壊しなければならない。そうすれば、ジオン軍上層部も核を使う理由がなくなる。
バーニィは知らなかった。すでに核攻撃を企図したジオン艦隊が連邦軍に遭遇し、交戦後に投降していたことを。彼の戦いは、もはや無意味なものとなっていたことを。
「行くぞ!」
ザクⅡ改が動き出す。森林の木々を遮蔽物にしながら、ガンダムへと接近する。
対するアレックスのコックピットで、クリスチーナ・マッケンジーは唇を噛みしめていた。
「なぜ抵抗するの……もう戦争は終わるというのに」
彼女もまた知らなかった。目の前の敵機に乗っているのが、隣家の少年アルの友人であり、自分が仄かな好意を抱いていたあの青年だということを。
ガンダムNT-1は反応が敏感すぎた。通常の三割の出力でしか運用できない。それでも、ザクⅡ改を相手にするには十分な性能だった。
しかし、その性能が仇となる。
森林地帯でのゲリラ戦は、バーニィの土俵だった。
「そこだ!」
ザクが跳躍する。ヒートホークが唸りを上げ、ガンダムの右腕を切り裂いた。90ミリガトリング砲が使い物にならなくなる。
「この!」
クリスが反撃に出る。ビームサーベルが閃き、ザクの左腕を切断した。
激しい金属音。火花が散る。
バーニィは歯を食いしばりながら、最後の賭けに出た。ミノフスキー粒子散布下で、センサーは当てにならない。頼りになるのは、ただ己の勘だけ。
「もらった!」
ザクが跳ぶ。ヒートホークが弧を描き、ガンダムの頭部を斬り飛ばした。
同時に、クリスのビームサーベルがザクの胴体を貫いた。
爆発。
それは、終わりの始まりだった。
アルフレッド・イズルハは、呆然とその光景を見つめていた。まだ十一歳の少年にとって、目の前の現実はあまりにも残酷だった。
「バーニィ……!」
炎上するザクⅡ改。コックピットはビームサーベルの直撃を受けていた。生存の可能性は、ほぼゼロだった。
アルは走り出していた。戦闘が終わり、静寂を取り戻した森の中を、ただひたすらに走った。
第二章 奇跡
三時間後、コロニー中央病院。
「奇跡です」
白衣の医師は、信じられないものを見るような目でカルテを見つめていた。
「コックピットの装甲がビームの直撃を一瞬だけ逸らしたようです。そして、爆発の直前に緊急脱出装置が作動した。通常ならまず助からない状況ですが……このパイロットは、生きています」
アルはその場に崩れ落ちそうになった。
「本当ですか……本当に……!」
「ええ。重傷ですが、命に別状はありません。コロニー内の医療施設としては最高水準の設備があります。回復するでしょう」
少年の目から涙が溢れ出た。
それから四日間、アルは毎日病院に通った。
バーニィが意識を取り戻したのは、四日目の朝だった。
「こ、ここは……」
包帯に巻かれた身体をわずかに動かして、バーニィは天井を見上げた。白い天井。消毒液の匂い。規則的な電子音。
「病院ですよ、バーニィ」
声のした方を見ると、アルが涙ぐみながら立っていた。
「アル……」
「よかった……本当によかった……」
少年は声を詰まらせながら、バーニィの手を握った。
「クリスマスに、ザクが爆発して……僕、もうだめかと思って……」
バーニィはしばらく沈黙していたが、やがて掠れた声で問いかけた。
「コロニーは……核は……?」
「止めたんです。ジオン艦隊は途中で連邦軍に降伏したって。核攻撃は、最初からなかったんです」
その言葉を聞いたバーニィの目から、涙が零れ落ちた。無駄死にだったのかもしれない。それでも、彼は生きていた。その事実だけが、今はただ重かった。
「そうか……」
その時、病室のドアが開いた。
「アル! こんなところにいたのね」
入ってきたのは、美しい赤髪の女性だった。連邦軍の制服を着ている。
「クリス!」
アルが振り返る。バーニィもまた、入り口に立つ女性を見た。
一瞬、時間が止まった。
クリスもまた、ベッドに横たわる包帯姿の青年を見つめていた。あの時、自分がビームサーベルで倒した敵パイロット。そして、アルの友人。
「あなた……」
クリスの声が震えた。
「もしかして……あの時の……」
バーニィは答えられなかった。ただ、その青い瞳を見つめ返すことしかできなかった。
第三章 引き合わせ
一年戦争は終わった。
ジオン公国は共和国として再出発し、サイド6は中立を保ったまま、戦後処理の混乱を乗り越えつつあった。
バーニィは回復に三ヶ月を要した。左足に後遺症が残り、わずかに跛行が出るようになったが、日常生活に大きな支障はない程度だった。
退院の日、アルは無理を言ってクリスも連れてきた。
「クリス、話があるんだ」
アルは真剣な表情で、幼馴染であり隣の家の姉のような存在であるクリスを見上げた。
「どうしたの、アル?」
「バーニィに会ってほしい。ちゃんと話をしてほしい」
クリスは複雑な表情を見せた。この数ヶ月、彼女は自らの手でバーニィを殺しかけたという事実と向き合い続けていた。ガンダムNT-1のパイロットとして、敵を倒した。それは軍人として当然の行為だった。しかし、相手がバーニィだと知った時、何かが彼女の中で崩れた。
「私……どんな顔して会えばいいの」
「普通でいいと思う。クリスは優しいから」
アルは笑って言った。
そうして、コロニー中央公園のベンチで、二人は再会した。
戦争が終わった後の、静かな午後だった。子供たちの笑い声が遠くに聞こえ、人工の太陽が温かな光を降り注いでいた。
「こんにちは、クリスチーナさん。それとも、クリス、と呼んでもいいですか?」
バーニィは照れくさそうに頭を掻いた。退院したばかりで顔色はまだ悪いが、その目には生気が戻っていた。
「バーニィ……本当に、あなただったのね」
クリスは彼の隣に腰を下ろした。
「ええ。アルから聞きました。あのガンダムのパイロットがクリスだって。初めは信じられなかった。こんな偶然があるものかって」
「私もよ。あの時、バットで殴り倒した侵入者が、まさかMSパイロットだったなんて」
二人は顔を見合わせて、同時に笑った。その笑い声は、どこかぎこちなく、しかし確かな温もりを持っていた。
「あの時、嘘を吐いていたんです」
バーニィは遠くを見つめながら言った。
「アルに、あと一機でエースだって。そんなの全部嘘で、僕はただの新兵だった。戦場に出たこともない、ただの」
「知ってたわ」
クリスは静かに言った。
「アルが教えてくれたの。バーニィは嘘吐きだけど、いい奴だって」
バーニィは目を見開き、それから照れ臭そうに顔をそむけた。
「あいつ……」
「でも、最後の戦いは、エース顔負けだったわ。ガンダムNT-1に勝ったんだもの。あのアムロ・レイが乗るはずだった機体に」
「勝ってませんよ。僕は倒れて、クリスは生き残った。それに、あの戦い自体が無意味だった」
バーニィの声に苦みが混じった。
それを聞いたクリスは、そっと彼の手に自分の手を重ねた。
「無意味なんかじゃない。あなたはこのコロニーを守ろうとした。結果はどうあれ、その気持ちは本物だった。違う?」
バーニィは何も言えなかった。ただ、手の温もりを感じながら、長い戦争の終わりを実感していた。
第四章 数奇な運命
それから半年が過ぎた。
クリスは連邦軍を除隊していた。ガンダムNT-1の喪失と、戦争の終結がその理由だった。今はリボーコロニーの技師として、コロニーのメンテナンスシステム開発に携わっている。
バーニィは退役軍人として、コロニーの修理工場で働き始めていた。ザクを修理した経験が、意外なところで役立っていた。跛行は残ったが、仕事に支障はなかった。
アルは学校に通いながら、二人の仲を気にしてしばしば顔を出した。彼にとって、バーニィは兄のような存在になりつつあり、クリスは相変わらず「隣の家のお姉さん」だった。
しかし、二人の関係は、ゆっくりと、しかし確実に変化していた。
始まりは小さなことだった。
クリスが休日に作った食事をバーニィのアパートに持っていくようになった。
バーニィが仕事帰りにクリスの家を訪れ、他愛もない話をしていくようになった。
二人で公園を散歩し、時には人工の海辺を歩いた。戦争の話はあまりしなかった。代わりに、好きな音楽の話をし、子供の頃の話をし、これからの人生の話をした。
「私ね、地球に行ったことがあるの」
ある夜、クリスは語り出した。二人は彼女の家のソファに座り、窓の外の人工星空を見上げていた。
「士官学校の訓練で、北米のグランドキャニオンに行ったの。あの景色は忘れられない。自然が何万年もかけて作り出した、巨大な峽谷。コロニー育ちの私には、圧倒されるような大きさだった」
「地球、か」
バーニィは呟いた。
「僕は一度も行ったことがない。コロニー生まれのコロニー育ちだから、本当の空も海も知らない。でも、クリスがそう言うなら、きっと素晴らしいんだろうな」
「いつか、一緒に行かない?」
クリスは思わず口に出して、すぐに顔を赤らめた。
「今のは、その……」
「行きたいです」
バーニィは真剣な目で彼女を見つめた。
「クリスと一緒なら、どこでも」
沈黙が訪れた。二人の視線が交錯し、互いの気持ちが言葉にならない形で伝わっていく。
「私、知ってるの」
クリスは小さな声で言った。
「バーニィが、ずっと自分を責めてること。あの戦いは無意味だったって、自分のせいで多くの人が死んだって。でもね、戦争では誰もがそうなの。私だって、もしバーニィが死んでいたら、きっと一生後悔していた。敵だって人間だって、当たり前のことを、戦争は忘れさせるの」
「アルを守ろうとしてくれてありがとう」
クリスは続けた。
「あの子は、あなたに会って変わった。戦争をゲームみたいに思ってた子供が、人の命の重さを知ったの。それは、とても大切なことだと思う」
「クリス……」
バーニィの声が詰まった。彼の目に涙が浮かんでいるのを見て、クリスはそっと彼の頬に手を触れた。
「私たち、敵同士だった。でも今は違う。戦争は終わったの。だから……」
二人の顔が近づく。
人工の月明かりが窓から差し込み、二人の輪郭を淡く照らしていた。
唇が触れ合う。それは、戦争を生き延びた者同士の、静かな約束だった。
第五章 結ばれる夜
窓の外では、リボーコロニーの人工月が青白い光を投げかけていた。照明を落としたクリスの部屋には、その月光だけが差し込み、二人の姿を淡く浮かび上がらせている。
ワインを飲み終えたグラスが二つ、テーブルの上で寄り添うように置かれていた。かすかに流れる古いジャズの旋律。戦前に録音されたという、優しくも切ないピアノの調べ。
部屋の空気は温かく、互いの存在を包み込むようだった。
「バーニィ」
クリスが彼の名を呼ぶ。その声は、普段の凛々しい連邦軍中尉のものではなく、一人の女性の、かすかに震える声だった。
「クリス……」
バーニィは返事をしながら、彼女の顔を見つめた。青い瞳。戦場では見せることのなかった、しかし今は不安と期待に揺れる瞳。
彼はゆっくりと手を伸ばし、クリスの頬に触れた。指先から伝わる温もり。生きた人間の、体温。
「震えてる」
「だって……緊張するもの」
クリスがほほえんだ。戦闘の直前でも感じたことのない緊張が、今は全身を包んでいる。それは恐れではなく、歓びに似た予感だった。
「僕もだよ」
バーニィも笑い返す。その笑顔は、かつてアルに見せていたおどけた表情とは違う。大人の男の、しかし少年のような純粋さを残した笑顔。
彼はもう片方の手も伸ばし、両手でクリスの顔を包み込んだ。親指でそっと、彼女の目尻をなでる。
「綺麗だ。こんなに近くで見ると、本当に綺麗だ」
「そんなこと……」
「本当だ。コロニーに来た時、初めてクリスを見た時から思ってた。バットで殴り倒された時も」
クスリとクリスが笑った。
「あの時はごめんなさい。泥棒かと思って」
「あのバット、すごく痛かったんだぞ。でも、綺麗な人に殴られるなら本望だって、ちょっと思った」
「ばかね」
二人は同時に笑い、静かに唇を重ねた。
最初の口づけは、触れるだけの優しいものだった。花びらが触れ合うような、そんな繊細な接触。
唇を離すと、二人は互いの目を見つめ合った。青い瞳と、茶色の瞳。そこにはもう、かつてのような敵同士の視線はない。ただお互いを求める、純粋な思いだけがあった。
「もう一度……」
クリスの方から求めるように顔を近づける。
二度目の口づけは、より深く、より長く。
バーニィは彼女の唇の柔らかさを味わうように、ゆっくりと動かした。クリスもまた、目を閉じてそれに応える。唇がわずかに開き、互いの吐息が混ざり合う。
彼の手が、クリスの金髪に差し込まれた。指通りの良い、絹のような髪。それをそっと梳くように撫でながら、唇を離さない。
クリスの手が、バーニィの胸に触れた。シャツ越しに感じる彼の鼓動。速い。自分と同じくらい、いや、それ以上に速い鼓動。
(この人も、同じくらい緊張しているんだ)
そう思うと、クリスの心は少しだけほぐれた。
「バーニィ……」
「ん……」
言葉にならない声が交わされる。口づけは次第に熱を帯び、舌がそっと相手を探る。初めて感じる互いの舌の感触。驚くほど柔らかく、温かい。
二人はどちらからともなく、互いの身体を抱き寄せた。胸と胸が触れ合い、互いの心臓の鼓動が伝わる。二つの命のリズムが、少しずつ重なり合っていく。
長い口づけの後、バーニィは唇を離し、クリスの額に、まぶたに、鼻先に、そして首筋に、次々と口づけを落としていった。
「あ……」
クリスの口から、微かな吐息が漏れる。首筋への口づけは、くすぐったさと同時に、身体の奥に響くような不思議な感覚をもたらした。
「クリスの香りがする」
バーニィは彼女の首筋に顔を埋めながら囁いた。
「どんな……香り……?」
「わからない。でも、すごく落ち着く香り。太陽みたいな……温かい香り」
「バーニィの香りも好きよ。機械油と……なんだろう、森の匂い」
「森?」
「ええ。あの森林公園の、木々の香り」
そう言われて、バーニィは小さく笑った。皮肉な話だ。あの森は二人が戦った場所。そして、今は二人を結びつける記憶の場所でもある。
彼はクリスの身体を抱きしめながら、ゆっくりとソファから立ち上がった。左足にわずかな跛行があるが、そんなことは気にならなかった。
「ベッドに行こう」
バーニィの言葉に、クリスは無言でうなずいた。
二人は手をつなぎ、寝室へと歩いていく。その短い距離さえも、今は愛おしい。
寝室にも月明かりが差し込んでいた。カーテンを閉めようかと迷ったが、クリスは首を振った。
「このままがいい。あなたの顔が、ちゃんと見たいから」
「恥ずかしいな」
バーニィは照れくさそうに言った。
「私だって恥ずかしいわ。でも……あなたの全部を知りたいの。光の下で」
二人はベッドの縁に腰掛け、もう一度口づけをした。
それから、バーニィの手がクリスのブラウスのボタンに触れた。
「いい?」
「ええ」
ボタンが一つ、外される。クリスの白い喉元が現れる。
もう一つ。鎖骨のラインが浮かび上がる。
三つ目で、レースのブラの上端が見えた。
「綺麗だ」
バーニィは何度も同じ言葉を繰り返す。ボキャブラリーが少ないわけではない。この瞬間、他のどんな言葉も不要だった。
ブラウスが床に落ちる。クリスは両腕を少し広げ、彼の視線を受け入れた。
「見られてる……」
「見てる。ずっと見ていたい」
彼は手を伸ばし、クリスの肩から腕へと、なぞるように指を滑らせた。
戦闘機の操縦で鍛えられた引き締まった腕。
それでいて、女性らしい柔らかいライン。
「バーニィの番よ」
クリスが言うと、今度は彼女の手がバーニィのシャツのボタンに伸びた。
「私も……あなたを見たい」
「あまりいい身体じゃないぞ。傷だらけだし」
「それも含めて、全部見たいの」
ボタンが外され、バーニィの上半身が露わになる。
月光の下で、彼の身体は確かに無数の傷跡に覆われていた。
左胸の下には、破片がかすめた古い傷。
右脇腹には、ザクのコックピットでぶつけた打撲の痕。
そして、背中にはビームの熱で爛れた皮膚の治療痕。
クリスは息を呑んだ。それは、自分がつけた傷も含まれているのだと理解したから。
「ごめんなさい……」
「謝らないでくれ」
バーニィは優しく彼女の言葉を遮った。
「この傷は、僕が生きてきた証だ。戦争を生き延びた証だ。そして……クリスに出会うための道のりだと思えば、どの傷も大切に思える」
「バーニィ……!」
クリスの目から涙がこぼれた。それは、あのクリスマスの戦い以来、ずっと抱えてきた罪悪感と自責の念が、少しずつ溶けていく涙だった。
彼女は彼の胸に顔を埋め、泣いた。静かに、しかし確かに流れる涙が、バーニィの肌を濡らす。
彼は黙って、彼女の頭を抱いた。傷だらけの手で、クリスの金色の髪を撫で続ける。
「泣かないで。もう誰も傷つけなくていい。もう戦わなくていいんだ」
「バーニィ……私、私……!」
「知ってる。全部知ってる」
彼は彼女の顔を持ち上げ、涙で濡れた頬に口づけた。塩の味がする。だが、それもまた愛おしい。
「クリス、愛してる」
「私も……愛してる」
二人は再び唇を重ねた。それは涙の味が混ざった、少し塩辛い口づけ。しかしそれこそが、二人の現実だった。戦争の記憶と向き合いながら、それでも前に進もうとする、生の証だった。
口づけをしながら、バーニィの手がクリスの背中に回る。ブラのホックを見つけ、少し手間取りながらも外す。
ブラが取り払われ、クリスの胸が露わになった。月明かりに照らされたその曲線は、あまりにも美しく、バーニィはしばし言葉を失った。
「あんまり、じろじろ見ないで……」
クリスが恥ずかしそうに腕で隠そうとする。
「見せてほしい」
バーニィはその腕を優しく外し、彼女の胸元に見入った。
「こんなに綺麗なもの、初めて見た」
「大げさよ……」
「大げさじゃない」
彼はそっと手を伸ばし、その柔らかな膨らみに触れた。指先が触れた瞬間、クリスの身体がビクリと震える。
「冷たい?」
「ううん……そうじゃなくて……」
「痛くしないから。大丈夫」
バーニィは彼女の胸を包み込むように、手のひら全体で触れた。驚くほど柔らかい。その中心で、淡い桜色の頂が、彼の手のひらの温もりに反応して、少しずつ硬さを帯びていく。
「あ……」
クリスの口から、小さな吐息が漏れる。
彼は両手で彼女の両胸を包み、優しく揉むように撫でた。
その度に、クリスは彼の肩に手を置き、感じ入るように目を閉じる。
「気持ちいい……?」
「……わからない。初めてで……でも、嫌じゃない」
「嫌じゃないなら、よかった」
バーニィは今度は指先で、その頂をそっとつまんだ。強すぎないように、優しく。
「ひゃっ……」
クリスが小さく声を上げる。それは驚きと快感の混ざった声だった。
「ごめん、痛かった?」
「ち、違うの……自分でも変な声が出て……恥ずかしい……」
「恥ずかしくなんかない。その声、すごく可愛い」
「ばか……」
クリスは耳まで真っ赤になりながら、バーニィの肩を軽く叩いた。そんな仕草さえも愛おしくて、彼は笑みをこぼす。
「じゃあ、もっと聞かせて」
バーニィはそう囁くと、身をかがめて彼女の胸元に顔を近づけた。
そして、そっと、その頂に口づける。
「あっ……!」
今度は明らかに、驚きと快感の入り混じった声がクリスの口から漏れた。
彼は唇でそっと挟み、舌先で転がすように舐める。もう片方の頂は、指先で優しく愛撫した。
「バー……ニィ……ん…っ」
クリスは彼の頭を抱え込み、声を押し殺そうとする。しかし、経験したことのない感覚に、理性が少しずつ溶かされていく。
「声、出していいよ。誰も聞いてない」
「で、でも……あっ……!」
バーニィが少し強く吸い上げると、クリスは背中を反らして快感に耐えた。頭の奥が痺れるような、それでいて身体の芯が熱くなるような、不思議な感覚だった。
彼は交互に左右の頂を愛撫しながら、片手をクリスの腰へと滑らせる。スカートの上から腰の曲線をなぞり、太ももへと降りていく。
「バーニィ……もっと……」
クリスが自分からねだるように言ったことに、彼女自身が一番驚いていた。しかし、それは間違いなく彼女の本心だった。もっと触れてほしい、もっと感じたい。
「わかった」
バーニィは顔を上げ、彼女ともう一度深く口づけをした。舌を絡めながら、クリスのスカートのホックを外し、下ろしていく。
彼女はベッドに横たわりながら、身をよじってスカートを脱ぐのを手伝った。今、彼女の身体を覆うものは、最後の一枚だけになる。
「クリス……本当に綺麗だ」
バーニィは半ば呆然としたように呟いた。
月明かりが彼女の全身を照らし出している。軍人として鍛えられた健康的な肢体。それでいて、女性的な曲線美が全てを優美にまとめている。長い脚、くびれた腰、形の良い胸。
「恥ずかしい……」
クリスは両腕で身体を隠そうとするが、バーニィはその手を取った。
「隠さないで。全部、僕に見せて」
「ずるい。バーニィだけまだ着てる」
そう言われて、彼は苦笑した。確かに、自分だけまだズボンを履いている。
バーニィは立ち上がり、ベルトを外し、ズボンを脱いだ。左足の治療痕が露わになる。跛行の原因となった傷跡。
しかしクリスは、その傷跡をじっと見つめながら言った。
「あなたも綺麗よ。生きてる証が、こんなにあって」
彼女は手を伸ばし、バーニィの左足の傷跡に触れた。すでに癒えた古傷だが、当時の痛みが想像できる。
「もう痛くないんだな?」
「ええ。もう痛まない」
「なら、いいの」
クリスはほほえんで、彼の手を取った。
「来て。ここに」
彼女はバーニィをベッドに引き寄せ、自分の上に覆いかぶさるような形に導いた。
二人の身体が触れ合う。素肌と素肌が触れ合う感触に、二人は同時に深いため息をついた。
温かい。
互いの体温が伝わり合い、まるで一つの生き物のように溶け合っていく。
「バーニィ……」
「なに?」
「私……初めてだから……優しくして」
その言葉に、バーニィの胸が熱くなる。クリスにとってこれが初めての経験だということ。それほどの想いを、彼女が自分に託してくれたということ。
「もちろん。クリスが痛くないようにするから」
「うん……信じてる」
彼は彼女の全身に口づけを散らしながら、ゆっくりと愛撫を続けた。
額、まぶた、鼻先、耳たぶ、首筋。
鎖骨のくぼみに舌を這わせ、胸の谷間から臍へと降りていく。
「あ……そこ、くすぐったい……」
臍の周りに口づけると、クリスがくすくすと笑った。その無邪気な反応に、バーニィも笑顔になる。
「ここは?」
彼はさらに下へと降り、彼女の下腹部に口づけた。最後の一枚の布地のすぐ上。
「ん……恥ずかしい……」
「じゃあ、ここは?」
彼は彼女の太ももの内側に口づける。クリスの身体がまた震えた。
「バーニィ……意地悪……」
「意地悪じゃないよ。全部の場所を愛してるって伝えたいだけ」
彼はそう言いながら、彼女の最後の一枚に手をかけた。
「脱がせるね」
「……うん」
クリスは小さくうなずき、腰を浮かせて彼の動きを助けた。
最後の一枚が取り去られ、クリスは完全な裸身となった。
あまりの恥ずかしさに、彼女は両手で顔を覆う。
「見ないで……!」
「見てる」
バーニィは嘘をつかなかった。
「こんな時に嘘は吐かない。綺麗だ。驚くほど。こんなに美しい人が、どうして僕なんかを好きになってくれたんだろうって、本気で思う」
「バーニィだって……素敵よ」
クリスは指の隙間から彼を見つめながら言った。
「優しくて、勇敢で、ちょっと不器用で。でも、誰よりも誠実で」
「買いかぶりすぎだ。僕は嘘吐きだぞ、アルにもエースだって」
「あの嘘は許す。代わりに、これからは私にだけは嘘を吐かないで」
「誓う」
バーニィは真剣な顔で言い、彼女の上に覆いかぶさりながら、そっとキスをした。
「これから先、クリスにだけは絶対に嘘を吐かない。約束する」
「私もよ。あなたに嘘は吐かない」
二人は微笑み合い、もう一度キスをした。舌を絡め合う、深い口づけ。
その間も、バーニィの手は彼女の身体を優しく撫で続けている。
腰のくびれ、太もも、そして秘めた場所へ。
「あ……」
クリスが小さく声を上げる。
バーニィの指が、彼女の最も敏感な部分に触れた。まだ触れただけだというのに、その感触は強烈だった。
「ここ……気持ちいい?」
「わかんない……でも、変な感じ……」
彼は指先でそっとその場所をなぞる。柔らかな花びらのような感触。その奥は、すでに熱く、わずかに潤み始めていた。
「濡れてる」
「恥ずかしい……やだ……」
「恥ずかしくなんかない。クリスがちゃんと感じてくれてる証拠だ。嬉しい」
「でも……あっ……!」
バーニィの指が、その小さな隆起を探り当て、そっと円を描くように動かした。その瞬間、クリスの身体に電流が走る。
「や……待って……なんか、変なの……!」
「痛い?」
「痛くない……けど、すごく、へん……!」
彼女の声が裏返る。腰が勝手に動き、もっと触れてほしいとねだるように浮き上がる。
「もっと、触っていい?」
「わかんない……でも……きて……バーニィ……」
クリスは自分でも何を言っているのかよくわからなくなっていた。ただ、もっとバーニィの感触がほしい、それだけが確かな思いだった。
バーニィは指の動きを少し早め、彼女の反応を確かめながら愛撫を続ける。彼もまた初めての経験ではなかったが、クリス相手だと全てが新鮮だった。彼女が気持ち良さそうにしてくれることが、自分の歓びになる。
「あっ……ああ……バーニィ……っ」
クリスの声が少しずつ大きくなる。彼女の理性が少しずつほどけ、本来の感覚が表に出てきている証拠だった。
彼女の両手が、シーツをぎゅっと掴む。足の指が丸まり、全身がこわばりそうになる。
「力、抜いて。その方が気持ちいいから」
バーニィの優しい声に、クリスは深呼吸をして、意識的に全身の力を抜いた。
すると、それまでよりもずっと深く、快感が身体の奥まで浸透してくる感覚があった。
「ああ……! これ、すご……!」
「よかった。気持ちいいんだね」
「うん……気持ちいい……こんなの初めて……」
彼女は快感に身を委ね、バーニィの愛撫を受け入れていく。時折、彼が触れる場所を変えるたびに、違う種類の快感が身体を駆け巡った。
「バーニィ……もっと、私を感じて……」
「感じてるよ。指だけじゃなくて、心でも」
彼は彼女の秘所を指で優しく開きながら、その内側へとゆっくり指を進めた。
「痛くない?」
「……ちょっと、違和感がある……でも、大丈夫」
「無理しないで。時間はたくさんある」
バーニィは焦らなかった。彼は指を深く進めすぎず、浅いところでゆっくりと動かした。クリスが慣れてきたら、少しずつ深く。
「今、何センチくらい入ってる……?」
「え? えっと……指第一関節くらい……かな……」
「そう……不思議……自分なのに、自分じゃないみたい……バーニィの指、感じる……」
「もっと入れてみるね」
「うん……」
彼は慎重に指を進め、第二関節まで入れた。クリスは少し眉をひそめたが、痛みを訴えることはなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫……あなたの指、長いのね」
「ザクの操縦桿を握るには、このくらいがちょうどいいんだ」
「変なの……そんな話、今しなくても……あ…!」
バーニィが指をわずかに曲げ、彼女の内壁をそっと刺激した。その動きに、クリスの身体が反応する。
「今の……すごい……」
「ここ?」
「そう……そこ……」
バーニィは彼女の感じる場所を探り当てると、優しく、しかし確実にその部分を愛撫し続けた。
その間も、もう片方の手は彼女の胸を愛撫し、唇は彼女の首筋や耳たぶに口づける。
「バーニィ……バーニィ……っ」
クリスの声が甘く溶けていく。全身を包み込む快感に、彼女は自分がどこにいるのかもわからなくなりそうだった。ただ、目の前にいるこの人だけが、世界の全てだった。
「くる……なんか、くる……!」
彼女の身体が大きく震え始める。初めての絶頂が近づいているのだ。
「きて。大丈夫。僕がいる」
「あ……ああっ……!」
クリスは背中を大きく反らせ、全身を強ばらせた。頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。ただ、身体の奥底から湧き上がる波が、全てを押し流していった。
「バー……ニィ……!」
彼女が彼の名前を呼ぶと同時に、絶頂が彼女を包み込んだ。
全身が痙攣するような強い快感。腹の底からこみ上げる熱いもの。呼吸が乱れ、視界がチカチカする。
「あ……ああ……」
絶頂の余韻の中、クリスは荒い息を繰り返した。バーニィは彼女から指を抜き、そっと抱きしめる。
「大丈夫?」
「……すごかった……自分が自分じゃなくなるかと思った……」
「気持ちよかった?」
「……うん。今までで一番」
クリスは照れくさそうに笑い、バーニィの胸に顔を埋めた。彼の鼓動もまた、速くなっているのがわかる。
「でも……まだだよね?」
彼女はおそるおそる、彼の下半身に手を伸ばした。そこは、熱く硬く、彼女を待っているのが明らかだった。
「無理しなくていいよ。今日はここまででも」
「やだ」
クリスは首を振った。
「私も……バーニィと一つになりたい。ちゃんと、繋がりたい」
「クリス……」
「お願い。あなたがほしいの」
彼女の真剣な眼差しに、バーニィはうなずいた。
「わかった。でも、もし痛かったらすぐに言って。絶対に無理しないで」
「約束する」
バーニィは彼女の上に覆いかぶさり、自分のものを彼女の入り口にそっと当てた。
「入れるよ」
「うん……」
彼は腰をゆっくりと前に進める。熱く濡れた入り口が、彼を受け入れようと少しずつ開いていく。
「あ……」
クリスが小さく息を呑む。
「痛い?」
「ちょっと……圧迫感が……でも大丈夫……続けて……」
バーニィはさらに慎重に腰を進める。
少しずつ、少しずつ、彼女の中へと入っていく。
彼女の内側は驚くほど熱く、柔らかく、そして狹かった。全身を包み込まれるような、瞼の裏が熱くなるような感覚。
「全部、入ったよ」
「ほんと……?」
クリスは自分の下腹部を見下ろすようにしたが、よく見えない。しかし、自分の身体の奥深くに、確かにバーニィがいるのがわかる。熱くて、硬くて、愛しい存在が。
「動いてもいい?」
「待って……もう少し、このままで……」
彼女はバーニィの背中に手を回し、彼の存在を全身で感じ取ろうとした。互いの身体が溶け合うように密着している。
「バーニィ……大好き……」
「僕も……愛してる……」
二人は深く口づけをしながら、静かに抱き合っていた。
しばらくして、クリスの方から言った。
「動いて……いいよ……」
「痛くない?」
「少し痛いけど……それより、もっとバーニィを感じたい」
「わかった。ゆっくり動くから」
バーニィは腰をゆっくりと引き、少しだけ抜いてから、またゆっくりと差し込んだ。
「あ……これ……」
「気持ちいい?」
「うん……奥まで来ると……お腹の奥が……熱くなる……」
彼はその動きを何度も繰り返す。ゆっくりと、丁寧に、まるで壊れ物を扱うように優しく。
「バーニィ……もっと、もっとして……」
「でも……」
「大丈夫。私、もっと感じたいの」
クリスの言葉に、バーニィは少しずつ動きを速めていく。リズムに合わせて、二人の呼吸も速くなっていった。
「あ……あっ……!」
クリスの口から、甘い声が漏れ始める。最初の痛みは徐々に薄れ、代わりにじんわりとした快感が広がっていった。
「クリス……気持ちいい……とても……」
「私も……ああ……!」
バーニィは彼女の腰を支えながら、リズムを刻み続ける。彼自身もまた、初めて感じる深い快感に包まれていた。
互いの身体がぶつかり合う度に、水音が聞こえる。それは二人が溶け合っている証拠だった。
「バーニィ……名前、呼んで……」
「クリス……クリス……!」
「もっと……私のこと……感じて……!」
「感じてる……全部……クリスの全部を!」
彼は彼女の脚を持ち上げ、より深く繋がれる角度を探る。クリスはその動きに応え、自らも腰を動かし始めた。
「ああっ……そこ……すごい……!」
「ここか?」
「そう……そこ……ああっ!」
クリスの絶叫が部屋に響く。二人は夢中で互いを求め合い、肌と肌を重ね合わせた。
汗がにじみ、月明かりに照らされて輝く。互いの匂いが混ざり合い、部屋の空気そのものが甘く変わっていく。
「クリス……僕、もう……」
「いいよ……きて……私の中で……」
「でも……」
「大丈夫……今日は安全な日だから……」
その言葉に、バーニィは最後の理性を解き放った。
「クリス……!」
「ああっ……バーニィ……!」
彼は深く突き入れ、彼女の最奥で果てた。同時に、クリスもまた再び絶頂に達し、彼を強く締め付けた。
二人の声が重なり合い、そして静寂が訪れる。
激しい動きの後、二人は互いの体温だけを感じながら、抱き合ったまま微動だにしなかった。
「バーニィ……」
「ん……?」
「まだ……繋がってるね」
「うん。まだ離れたくない」
「私も」
クリスは彼の胸に顔を埋め、満たされたため息をついた。
「痛くなかった?」
「最初は少し痛かったけど……途中からはすごく気持ちよかった」
「よかった」
「あなたは?」
「僕も……最高だった。言葉じゃ言えないくらい」
「ふふ……私たち、合うのね」
「そうみたいだ」
二人は静かに笑った。
「もう一回……してもいい?」
クリスが上目遣いに聞いてきたことに、バーニィは驚きつつも微笑んだ。
「もちろん」
二度目は一度目よりもずっと自然だった。互いの身体の反応を知り、どこが気持ちいいのかを理解し合いながら、より深い快楽を追求していった。
三度目は、互いに上になるのも試した。クリスが上になると、彼女自身の動きで快感をコントロールできた。
四度目は、横になりながら抱き合ったまま。これはゆっくりと、会話を交えながら愛し合う形だった。
五度目は……もう回数を数えるのすら忘れていた。
ただひたすらに、互いを求め合い、触れ合い、愛し合った。
夜が明けるまで、二人は幾度となく結ばれた。
それは単なる性の交わりではなかった。戦争を生き延びた者同士の、生の確認だった。明日が来るという確信の下での、未来への祈りだった。そして何より、二人が一つになるという、永遠の約束だった。
朝日が差し込む頃、二人は疲れ果てて眠りに落ちた。寄り添い合うように、決して離れないと言うかのように、固く手を繋いで。
その寝顔は安らかだった。
戦争の悪夢を見ることもなく、ただ愛する人の温もりを感じながら、穏やかな眠りについていた。
窓の外では、新しい一日が始まろうとしていた。
リボーコロニーの人工太陽が、全てを等しく照らしている。
かつて戦場になった森には、新しい若木が植えられていた。
そして、バーニィのアパートの隣には、いつの間にかアルが引っ越してきていた。少年は今日も、二人の家のチャイムを鳴らすだろう。
「バーニィ! クリス! 一緒に遊ぼう!」
戦争は終わった。
これからは、ただ生きていく。戦った者として、愛する者として、そして、いつか親になる者として。
たとえ数奇な運命に弄ばれようとも、彼らは確かに、このポケットの中の戦争を生き延びた。
そして今、本当の平和が、静かに、しかし確かに、二人の上に訪れたのである。
(了)