※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダム エロ短編集 女達の地獄の黒史録   作:みなぽん

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Ζガンダム フォウ ムラサメという女

 

第一章 戦災孤児

 

 瓦礫の山だった。かつて街と呼ばれた場所は、一年戦争の傷跡を癒やすことなく、ただ腐臭を放つ墓標のように横たわっていた。灰の降り積もる路地裏で、少女は膝を抱えていた。腹の虫が鳴く音は、遠くの砲撃音よりも耳障りだった。

 

 彼女にはもう、名前がなかった。キョウと呼ばれた記憶は薄く、飢えと恐怖にかき消されそうだった。細身の身体は骨と皮ばかりで、汚れにまみれたボロ布を纏っているだけだが、それでも秀麗な顔立ちは隠しきれなかった。むしろ、薄汚れた美しさは、男たちの嗜虐心を無言で煽った。

 

「おい、小僧じゃねえな」

 

 声をかけてきたのは、地球連邦軍の兵士だった。戦場の虚しさを埋めるための酒と女を探す男たちにとって、少女は格好の獲物だった。男はニヤリと笑い、ポケットから合成チョコレートを取り出した。

 

「腹、減ってんだろ?」

 

 少女の視線が、チョコレートに吸い寄せられた。唾を飲み込む音が、静かな路地に響く。男はそれを見て勝誤り、もう片方の手で自分の股間を擦った。

 

「いい子にしてりゃ、飯くらいどうにかなるぜ」

 

 薄暗い兵舎。安酒と汗とタバコの煙が充満する部屋で、少女は服を剥かれた。男たちの視線が、貪るように彼女の白い肌を舐め回す。

粗い手が乳房を掴み、乳首を捏ね回されるたび、少女は小さく身震いした。痛みはなかった。ただ、虚無があった。生きるためには体を差し出すしかない。それがこの街の掟だった。

 

「へえ、いい体してんな。まだ成長期か?」

 

 男が太い指を彼女の秘所にねじ込んだ。乾いた粘膜が軋む音がした。痛みに顔を歪める少女に構わず、男は指を動かす。クチュ、という卑猥な水音が響く。

 

「あぐ……っ」

 

「おら、もう濡れてんじゃねえか。ガキのくせに感じやすいな」

 

別の男が後ろから抱き着き、硬くなった性器を尻に押し付けた。

 

「早く終わらせろよ。順番待ってんだ」

 

薄汚れたシーツの上。三人の男たちの獣じみた吐息。乳房を揉まれながら口に突っ込まれる怒張。もう一人が背後から腰を打ち付けてくる。どれが誰のモノかも分からないまま、少女は喘ぎ続けた。ただただ早く時間が過ぎることを願いながら。

 

 

「君みたいな子を探していたんですよ」

 

数週間後。瓦礫の街に奇妙なスーツ姿の男たちが訪れた。ムラサメ研究所を名乗る彼らは、薄っぺらい微笑みを浮かべ、選りすぐりの“素材”を連邦高官へ紹介すると宣伝し始めた。その目当てが自分だと気づいたとき、少女はゾッとした。

 

「研究室に来ませんか? こんな生活とはお別れできる」

 

差し出された錠剤の入った袋。僅かな金貨。連邦兵士どもの欲望の捌け口になるよりはマシかもしれない。そう思ったのが運の尽きだったのか。

 

「フォウ」

 

研究所の一室で、白衣の男がそう呼んだ。それは、自分がこの研究所の四番目の実験体であることの証だった。

 

「キョウ? そんな名前はないですよ。今日からはあなたはフォウ・ムラサメです」

 

キョウという名前が記憶の中で霞んでいく。自分の存在そのものが作り替えられていくような不穏な予感。だが抵抗する力もなく、少女――フォウは白いベッドに座らされた。

白衣の男たちが集まってきて、興味津々といった様子で彼女を観察している。彼らの視線は実験動物を見るそれだった。

 

「さて、“調整”を始めましょうか」

 

白衣の男の一人が注射器を持ち出し、フォウの腕に針を刺した。液体が血管に入ってくると同時に、頭がクラクラするほどの脱力感に襲われる。視界がぼやけ、意識が遠のいていく。

 

「これから毎日、“特別な処置”を行います。あなたの潜在能力を最大限まで引き出すためにね」

 

何を言っているのか理解できなかった。ただ全身の感覚が麻痺していき、自分が自分でなくなっていくような感覚だけが広がっていく。

 

 

翌朝。目が覚めると手足には枷が付けられていた。白い壁に囲まれた小さな部屋でフォウは拘束されているのだということを理解するまでしばらくかかった。

 

「おはようございます、フォウさん」

 

昨日と同じように白衣を着た男がやって来た。手には黒いベルト状の器具を持っている。

 

「これは拘束帯です。今日はこれを使って“神経系活性化訓練”を行う予定です」

 

フォウは何も答えずただ怯えた眼差しで相手を見つめた。昨日の薬物投与による副作用なのか頭痛がひどくて思考がまとまらない。それに加えて疲労困憊していて反論する気力すら湧いてこないのだ。

 

「まずこれを装着しましょう」

 

言われるままに両腕両脚ともしっかりと固定されてしまう。これでは逃げることはおろか身動き一つ取れないだろう。

 

次に胸元や股間にも同じようなバンドと電極をつけられる。締め付けられていることで呼吸すら困難になってきたところで突然電流が流された。

「ひぃぎぃいいいっ」

バチッと火花のような衝撃を感じて悲鳴をあげる。両足をピクピクと痙攣させ彼女はジョロジョロと失禁した。

「くくくこいつは適性がありそうだ。」

第二章 強化人間

 

研究所の地下調整室は、消毒液の臭いと機械油の混ざった独特の匂いが充満していた。白い蛍光灯が無機質に照らす部屋の中央で、フォウは拘束具に四肢を固定されていた。十六歳の肢体は薄い検査着一枚だけで、冷たい金属の検査台に横たえられている。

 

「被験体第四号、本日の調整プログラムを開始する」

 

主任研究員のサカキ博士が、抑揚のない声で宣言した。彼の後ろには五人の研究員たちが控えており、その目は科学者の好奇心と、もっと別の暗い欲望にぎらついていた。

 

「まずは基礎的な神経感応度の測定からだ。準備」

 

サカキの合図で、若い研究員がフォウの検査着の前を開いた。白い肌が露わになり、まだ完全に成熟しきっていない乳房が外気に晒される。フォウは唇を噛み締め、天井の一点を見つめていた。抵抗しても無駄だと、すでに学習していたからだ。

 

「触覚センサーを装着する」

 

冷たい電極パッドが、両方の乳首に貼り付けられる。続いて下半身の検査着も取り払われ、秘所にも同様のセンサーが装着された。研究員の指が敏感な部分に触れるたび、フォウの身体は不随意に硬直した。

 

「第一段階、低周波刺激を開始する」

 

ブゥン、という低い唸り音とともに、電極から微弱な電流が流れ込んだ。乳首が疼くような違和感に、フォウは小さく息を詰めた。それは次第に強くなり、やがてチリチリとした痛みと、その裏に潛む奇妙な快感へと変化していく。

 

「ん……っ」

 

「おや、反応が出たな。データを記録しろ」

 

サカキの声に興奮の色が混じる。モニターにはフォウの脳波や心拍数、ホルモン分泌量がリアルタイムで表示されていた。

 

「興味深い。通常の被験体よりも性感帯の反応が鋭敏だ。戦災孤児時代の性的経験が、神経回路に影響を与えているのかもしれんな」

 

サカキは眼鏡を押し上げながら、フォウの顔を覗き込んだ。

 

「フォウ、今どんな感覚だ?」

 

「……答えたく、ありません……」

 

「そうか。では第二段階に移行しよう。直接的な物理刺激との複合効果を測定する」

 

サカキが手袋をはめた手を上げると、二人の研究員がフォウの両脚を広げて固定した。無防備に晒された秘所に、別の研究員が細長い金属製の器具を近づける。

 

「これは新開発の淫具だ。内部から神経を直接刺激できる。まだ試作段階だがな」

 

金属の冷たさが入り口に触れた瞬間、フォウは思わず身体を捩った。

 

「いや……やめて……」

 

「拒否権はないよ、フォウ。これは必要な実験なんだ」

 

クチュリ、という濡れた音とともに、器具がゆっくりと挿入されていった。異物感に眉を歪めるフォウを無視して、研究員は器具を奥へと進めていく。やがて器具が最奥に到達すると、サカキが手元のスイッチを操作した。

 

「さあ、これからが本番だ」

 

器具が内部で振動を始めた。

同時に外側からは別の研究員が、クリトリスに直接電極を当てる。二重の刺激に、フォウの腰が跳ね上がった。

 

「ああっ! や、やめ……あぁっ!」

 

「素晴らしい反応だ。被験体第四号は期待以上の適性を示している」

 

サカキは満足げに頷きながら、モニターの数値を確認する。フォウの身体は、本人の意思とは無関係に、着実に快楽の閾値を超えようとしていた。

 

「内部温度が上昇し、分泌液の量も増加している。身体的には完全な性的興奮状態だ」

 

「……ち、がう……わたしは……」

 

フォウは必死に首を振ったが、自分の身体が裏切っていく感覚は止められなかった。子宮の入り口を器具がノックするように刺激するたび、脳天を突き抜けるような衝撃が走る。

 

「いくぞ、次のフェーズだ。直接交尾によるデータ収集を行う」

 

サカキが白衣を脱ぎ始めた。他の研究員たちも同様に服を緩めていく。フォウは恐怖に見開いた目で、彼らの行動を追った。

 

「な、にを……」

 

「説明しただろう。直接的な物理刺激との複合効果を測定する。我々の性器を使った、より実践的なデータが必要なのだ」

 

サカキはすでに下半身を露出させ、充分に硬くなった陰莖をフォウの眼前に突き出した。四十代半ばの彼のそれは、血管が浮き出て不気味な存在感を放っている。

 

「本来なら動物を使うところだが、君はすでに人間の男性器を受け入れた経験がある。都合がいい」

 

「い、いや……!」

 

「検査中に騒ぐな。口を開けろ」

 

顎を掴まれ、無理やり口を開かせられる。熱く硬い肉の塊が、強引に喉の奥まで押し込まれた。噎せ返るフォウを押さえつけながら、サカキは腰を動かし始める。

 

「口腔内の粘膜温度と圧力データを取れ」

 

別の研究員がフォウの頬にセンサーを貼り付けながら、自分も下半身を露出させた。彼はフォウの両脚の間に陣取り、挿入されていた器具を引き抜くと、代わりに自身の陰莖を押し当てた。

 

「では膣内データも同時測定する」

 

「んぐっ……!」

 

ぐちゅり、という音とともに、二人目の研究員が侵入してきた。口と膣を同時に貫かれ、フォウは身動き一つ取れない。両手には他の研究員がそれぞれ自分の性器を握らせ、上下に扱かせようとしている。

 

「手の平の発汗量も記録しろ。可能な限り多くのデータを収集するんだ」

 

五人の男たちが、フォウの身体を隅々まで弄ぶ。口内を蹂躙され、膣を激しく突き上げられ、手でシゴかされ、胸には顔を埋められて乳首を吸われる。五感すべてが性的な暴力に塗りつぶされていく。

 

「んんっ……んぅ……っ」

 

「おや、膣内の締め付けが増してきたな。そろそろイくか?」

 

サカキが嘲笑うように言った。フォウは涙で滲む視界の中で、首を振ろうとしたが叶わない。身体の奥底から、自分では制御できない熱が込み上げてくる。

 

「いかせてやれ。強制絶頂時の脳波パターンも重要なデータだ」

 

膣内の研究員が、ピストン運動を激しくした。同時に、クリトリスを指で捏ね回す。フォウの身体は大きく痙攣し、口からはくぐもった悲鳴が漏れた。

 

「んんんーっ!」

 

一気に押し寄せた絶頂に、フォウの意識が弾けた。視界が真っ白になり、全身が硬直する。

その瞬間、膣内の陰莖から熱い精液が放出され、口腔内でもサカキが果てた。生臭い液体が喉に流れ込み、フォウは激しく咽せた。

 

「ゲホッ……ゴホッ……」

 

「データは取れたか?」

 

「はい、強制絶頂時の脳波は通常の性交時とは明らかに異なるパターンを示しています。このデータは強化プログラムに応用できます」

 

咳き込むフォウから唾液と精液が混じった液体が垂れた。その様子を、サカキは冷徹な目で見つめている。

 

「よし、次の被験者と交代だ。彼女にはまだまだ集めてもらわなければならないデータがある」

 

「はい、博士」

 

新しい三人の研究員が前に進み出て、まだ絶頂の余韻に震えるフォウの身体に手を伸ばした。一人は彼女を後ろ向きにうつ伏せに固定し、尻を高く突き出させる。もう一人が尻の割れ目に指を這わせ、アナルにゼリー状の潤滑剤を塗り込んだ。

 

「処女肛門か。これは貴重なデータが取れそうだ」

 

「や……そこは……やめて……」

 

「肛門の初貫通時の痛覚データと、それに伴う快楽物質の分泌量の相関を調べる。重要な実験だ」

 

抵抗空しく、アナルに男の亀頭が押し当てられる。じわじわと圧力がかかり、やがて悲鳴とともに狹窄が突破された。

 

「痛いっ! 痛い! やめて!」

 

「直腸内温度、三六・八度。挿入時の抵抗値は予想よりも低い。戦災孤児時代に何らかの性的虐待を受けていた可能性があるな」

 

「いやぁぁ! 違う! 違うの!」

 

フォウの叫びは無視され、アナルを蹂躙される感覚に彼女は半狂乱になった。しかし、その間にも膣には別の研究員が新たに侵入し、口にも性器が押し込まれた。

 

三人同時の貫通。身体の三つの穴すべてを埋められ、フォウはもはや声を出すこともできず、ただ涙を流し続けた。

 

「データ順調に取得中です」

 

「よし、では始めよう。記憶領域の再編成プログラムだ」

 

サカキはフォウのこめかみに電極を貼り付け、機械のスイッチを入れた。頭蓋に直接響くような不快なノイズが走る。フォウの目の焦点が合わなくなり、身体から力が抜けていく。

 

「……あ…う……」

 

「過去の記憶を消去し、新たなプログラムを書き込む。きみはもうすぐ、生まれ変わるんだよ」

 

蹂躙され続けながら、フォウは自分の記憶が溶けていくのを感じた。瓦礫の街の匂い。空腹。連邦兵士たちの顔。自分の名前。

 

キョウ。

 

誰かの呼ぶ声。

 

「きょ……う…」

 

「何か言ったか?」

 

「……わから……ない……」

 

「よし、順調だ。続けろ」

 

股間で動いていた研究員が腰を震わせ、膣内に熱い液体を放つ。アナルでも同様に熱い感触が広がった。

 

「んぁ……あ…」

 

「記憶消去率、七〇パーセント。このまま続ければ、一時間後には完全に過去の自我は消滅する」

 

フォウの目から涙が零れ落ちた。それは痛みのせいか、悲しみのせいか、それとも自分が何を失っているのかも分からない不安のせいか。すでに彼女自身にも理解できなくなっていた。

 

サカキは満足げに笑った。

 

「素晴らしい。すべては我々の思い通りだ」

 

 

フォウは暗い海の底に沈むような感覚の中で、自分の意識が断片化していくのを感じていた。過去の映像が泡のように浮かんでは消え、つかもうとすると指の間をすり抜けていく。

 

「あ……う…」

 

「自動反応以外の言葉を発するな」

 

誰かの声が命令する。それが誰なのかも分からない。ただ従うことだけが、この白い部屋での正しい行動のように思えた。

 

気がつくと、また男たちが周りにいた。人数は何人だったか。四つん這いにさせられ、前と後ろから何かを突っ込まれている。それが何かも理解できない。ただ身体が勝手に反応して、熱くなって、時々大きく震える。

 

「データが安定してきたな。被験体第四号、フォウ・ムラサメの基本調整は完了に近い」

 

フォウ。それが今の自分の名前だと言われた。ムラサメ研究所の四人目の被験体。それだけは覚えている。覚えさせられた。

 

「明日からはより高度な調整プログラムに入る。ところでサカキ博士、次のデータ収集ですが……」

 

研究員たちが何か話している。自分のことなのに、まるで他人事のようだった。誰かが近づき、また脚を開かせる。もう抵抗する気力もなく、フォウはただ天井の蛍光灯をぼんやりと見つめていた。

 

光がチカチカと点滅している。それを見ているうちに、自分の心の中も同じようにチカチカと明滅する感じがした。何か大事なものを忘れている気がする。でも、それが何かは思い出せない。

 

「フォウ、お前の役目は何だ?」

 

「……戦う……ことです……」

 

「誰のために?」

 

「……ムラサメ……研究所の……ために……」

 

「よろしい」

 

満足げな声。フォウは機械的に答えた。それは何度も教え込まれた答えだった。

 

男の一人が彼女の頭を撫でた。その手が首筋を伝い、鎖骨をなぞり、乳房を揉む。フォウはされるがままになっていた。身体は勝手に反応して、息が荒くなる。でも心はどこか遠くにあって、もう何も感じなかった。

 

「ところで博士、一つ提案が」

 

「なんだね」

 

「次の調整では、より強い快楽と苦痛を同時に与えることで、脳内麻薬物質の自己分泌量を増加させてはどうでしょう。被験体の依存度が上がり、服従プログラムの刷り込み効率が向上するはずです」

 

「興味深い。早速試してみよう」

 

フォウは静かに目を閉じた。聞こえてくる言葉の意味は半分も分からなかったが、それが自分をさらに苦しめることだけは漠然と理解できた。

 

失われた記憶の代わりに、ただ一つのことだけが心に刻まれていた。自分は人間ではないのだ、と。ただの実験動物なのだ、と。

 

 

三ヶ月後には、フォウは自分の名前も過去も完全に失っていた。研究所のことを疑問に思うこともなくなった。与えられた命令をこなし、データを取られる日々。実験台の上で開脚し、様々な器具や人間を受け入れることが日常だった。

 

「被験体第四号、フォウ・ムラサメの調整は順調だ」

 

サカキ博士は会議でそう報告した。

 

「戦闘能力は飛躍的に向上し、同時に性的な調教も進んでいる。いつでも実戦投入可能な状態だ」

 

「素晴らしい。では次のステップとして、彼女にパイロットスーツを着せ、サイコ・ガンダムとの親和性テストを開始しよう」

 

フォウは会議室の隅で、研究者のイチモツを咥えさせられながら待機していた。口に異物があっても、表情は変わらない。ただ虚ろな目で、窓の外の青空を見つめていた。

 

誰かが、その空の向こうから、自分を呼んでいるような気がした。

 

だがそれが誰なのか、思い出せるはずもなかった。

 

第三章 出会い

 

ホンコン・シティに雨が降っていた。

 

高層ビルの谷間を縫うように、細かい水滴が降り注ぐ。ネオンサインの光が濡れたアスファルトに反射して、街全体が毒々しい色彩に包まれていた。地球連邦軍の監視下にあるとはいえ、ここは依然として無法地帯のような混沌を抱えている。

 

フォウは輸送機のコックピットで、外の景色をぼんやりと眺めていた。頭の奥に靄がかかっているような感覚は、研究所を出ても変わらない。思考がまとまらず、感情の所在もあいまいだった。

 

ただ、胸の奥底に小さな痛みがあることだけは感じていた。何か大切なものを失っている痛み。でもそれが何かは分からない。

 

「フォウ少尉、まもなく作戦エリアです」

 

通信士の声に、フォウは短く応答した。「了解」という言葉だけが、与えられた役割を果たす人形のように口から出ていく。

 

作戦は単純だった。ホンコン・シティに潛伏するエゥーゴの部隊を掃討すること。そしてそのために彼女は、可変モビルアーマー「サイコ・ガンダム」のパイロットとして投入される。

 

「ターゲットを確認。ガンダムMk-II、白いモビルスーツです」

 

「ガンダム……」

 

フォウはかすかに呟いた。その名前に、なぜか心がざわつく。記憶の底から何かが浮かび上がろうとしているような違和感。でも、思い出せない。

 

「出撃します」

 

サイコ・ガンダムのコックピットが起動し、フォウの意識が機体とリンクする。ムラサメ研究所の調整の成果は、この機体との高い親和性という形で現れていた。フォウの脳波は機体の制御系と直結し、まるで自分の手足のようにサイコ・ガンダムを動かすことができる。

 

しかしその代償は大きかった。機体と精神が深くつながるほど、フォウの自我は浸食されていく。戦闘中は特に顕著で、機体から流れ込む膨大な情報量が、彼女の感情を不安定にさせた。

 

「ガンダムMk-IIを捕捉しました。交戦を開始します」

 

フォウは淡々と状況を報告し、機体を前進させる。視界の端に、白く輝くモビルスーツが捉えられた。

 

そのときだった。

 

「……誰だ?」

 

通信回線から、若い男の声が聞こえてきた。おそらく回線を傍受したのだろう。敵パイロットの声だった。

 

「なぜ……泣いているんだ?」

 

フォウは自分の頬に手を当てた。冷たい感触。いつの間にか涙が流れている。自分でも気づいていなかった涙。理由の分からない涙。

 

「私は……泣いてなんか……」

 

「泣いてるじゃないか! 機体の動きがそれを示している。お前、戦いたくないんだろう?」

 

若い声には、敵意よりも困惑と心配の色が濃く滲んでいた。フォウは混乱した。敵は普通、こんなことを言わない。敵はただ攻撃してくるだけだ。しかしこの声の主は、フォウの内面を見透かすように語りかけてくる。

 

「名を名乗れ!」

 

「私は……フォウ・ムラサメ……」

 

「ムラサメ研の……強化人間か!」

 

怒りと悲しみが混ざった声。同時に、ガンダムMk-IIが距離を詰めてきた。そのコックピットの中で、パイロットはフォウを見つめている。

 

「俺はカミーユ・ビダンだ。フォウ、なぜこんなことをしている? 君は自分の意思じゃないんだろう!」

 

「私の……意思……」

 

フォウの頭の中で、何かが弾けた。意思。考えること。選ぶこと。そんなこと、一度も許されたことはなかった。研究所ではただ命令に従うだけ。実験台として使われるだけ。自分の意思なんて、最初からなかった。

 

「私は……命令だから……」

 

「それでいいのかよ! 人間なら、選ぶ権利があるはずだ!」

 

カミーユの声は熱を帯びていた。理不尽に対する怒りと、フォウという存在への純粋な共感が込められている。フォウの心は激しく揺れた。誰かに声をかけられたことすら、もう何年もなかったのだ。ましてや、こんなに真っ直ぐに自分を見つめてくる人間は初めてだった。

 

「私は……どうすれば……」

 

「戦うのをやめるんだ! 君は自由になれる!」

 

その言葉はフォウの胸に突き刺さった。自由。ずっと忘れていた言葉。瓦礫の街で、飢えと寒さに震えていた頃に失ったかすかな希望の光。それが一瞬、目の前に広がった気がした。

 

「フォウ、君を助けたいんだ!」

 

瞬間、サイコ・ガンダムの機体制御が乱れた。フォウの精神の動揺が機体に伝わったのだ。巨大な機体がふらつき、ビルに衝突しかける。

 

「う……ああっ!」

 

頭の中で警告音が鳴り響く。精神の安定が崩れると、調整の副作用で激しい頭痛と吐き気が襲ってくる。これが強化人間の限界だった。

 

「フォウ! 大丈夫か!」

 

カミーユの声は遠くに聞こえた。フォウは耳を塞ぎ、必死に頭を振る。

 

「もう……近づかないで……!」

 

「なぜだ!」

 

「私が……あなたを……殺してしまうかもしれないから……!」

 

絞り出すような声で告げて、フォウはサイコ・ガンダムを反転させた。背後のカミーユに向かって、これ以上危害を加えないために。研究所では、命令違反は重い罰を意味する。それでも、フォウは初めて自分の意志で行動した。

 

「フォウ! 待ってくれ!」

 

雨の中を、サイコ・ガンダムが撤退していく。その背中を、カミーユは黙って見つめることしかできなかった。彼もまた、自分の心に何かが引っ掛かるのを感じていた。

 

 

それから数日、フォウはカミーユの言葉を反芻していた。

 

「君は自分の意思じゃないんだろう」

 

「人間なら、選ぶ権利があるはずだ」

 

研究所に戻れば、また実験台の日々が待っている。サカキ博士たちは、戦闘データを基にさらに調整を進めるだろう。つまり、またあの白い部屋で、拘束され、器具を挿入され、何人もの男に身体を弄ばれる。

 

フォウは考える。これが自分の人生なのかと。もし選べるとしたら、自分は何を選ぶのかと。

 

胸の中に、なぜかカミーユの顔が浮かんだ。まだ一度も直に見たことはない。声と、機体越しの気配だけが知っている相手。それなのに、彼の顔が想像できた。優しくて、真っ直ぐで、そしてどこか傷ついた目をした青年の顔が。

 

「会いたい……」

 

思わず呟いて、フォウは慌てて口を押さえた。そんなことは許されない。自分は実験体で、兵器で、ただの道具だ。誰かに会いたいと思うことすら、おこがましい。

 

それでも心のどこかで、雨の中の声を待っている自分がいた。

 

そしてその密かな願いは、再び戦場で果たされることになる。

 

 

ホンコン・シティの地下通路。フォウは単独でカミーユを探していた。研究所には内緒だ。見つかれば、想像を絶する罰が待っているだろう。それでも彼女の足は止まらなかった。

 

通路の奥から、人の気配がした。慎重に歩み寄ると、そこにはモビルスーツのパイロットスーツを着た青年が立っていた。

 

「あ……」

 

「フォウ……!?」

 

カミーユは驚いた表情を見せたが、すぐに警戒を解いた。近づいてくるフォウからは、戦意はまったく感じられなかったからだ。

 

初めて間近で見る彼女は、想像以上に美しかった。薄いエメラルド色の髪は外の雨でしっとりと濡れ、大きな瞳は何かに怯えるように揺れている。華奢な身体は所々に痣があり、それが研究所での扱いを物語っていた。

 

「よく……来てくれたな」

 

カミーユがそっと言うと、フォウの目から涙がこぼれた。感情が溢れて止まらない。誰かに優しくされるなんて、もう記憶の彼方にある遠い過去のことだった。

 

「私は……どうすればいいの……」

 

声を詰まらせながら、フォウはカミーユの胸に縋りついた。カミーユは一瞬ためらったが、すぐに彼女の肩を抱き寄せる。

 

「大丈夫だ。君はもう一人じゃない」

 

その言葉はフォウの心の氷を溶かすように温かく、そして優しかった。二人の出会いは、運命の歯車を大きく動かし始める。すれ違うはずだった二つの魂が、雨のホンコン・シティで交錯した瞬間だった。

 

第四章 歓喜

 

それは古びたアパートの一室だった。エゥーゴの協力者が用意した安全な隠れ家は、戦争の喧騒から切り離された、小さな楽園のように静かだった。窓の外には雨が降り続いている。その音だけが、部屋の中の沈黙をやわらかく包んでいた。

 

フォウは窓辺に立ち、濡れた街並みをぼんやりと見つめていた。ムラサメ研究所の監視から逃れ、カミーユと二人きりで過ごす時間。それは彼女にとって、初めての「自由」だった。

 

「寒くないか?」

 

背後からカミーユの声がかかる。フォウは振り返り、小さく首を振った。カミーユは彼女の肩にそっとブランケットをかける。

 

「ありがとう……」

 

「フォウ……」

 

カミーユは躊躇いながらも、彼女の頬に手を伸ばした。冷たい肌に触れると、フォウの身体が小さく震える。それは拒絶ではなく、むしろその温もりを求めているかのような震えだった。

 

「君は……これまで、ずっと……」

 

カミーユは言葉を詰まらせた。研究所で彼女が受けてきた仕打ちについては、断片的にしか聞いていない。しかしその身体に刻まれた無数の痣や、時折見せる怯えた表情が、すべてを物語っていた。

 

「思い出したくない……」フォウはうつむいた。「でも……カミーユといると、時々、思い出しそうになるの。失くした何かを……」

 

「無理に思い出さなくていい。今の君で、十分だ」

 

「今の私……? 私は……フォウ・ムラサメ……でもそれは、研究所がつけた名前で……本当の私は……どこにもいなくて……」

 

涙がこぼれた。自分が誰なのか分からない恐怖。アイデンティティの喪失。フォウは震える声で、今まで誰にも言えなかった不安を吐露した。

 

カミーユは彼女を強く抱きしめた。骨ばかりで華奢な身体が、腕の中でか細く震えている。

 

「君はここにいる。今、俺の腕の中にいる。それだけで十分だ」

 

「カミーユ……」

 

フォウの手が、おそるおそるカミーユの背中に回された。初めて自分から誰かに触れる行為。それは彼女にとって、大きな勇気のいることだった。

 

二人は見つめ合った。フォウの大きな瞳には涙が溜まり、それが星のように輝いて見える。カミーユはその輝きに吸い寄せられるように、ゆっくりと顔を近づけた。

 

唇が触れ合う。それはかすかな、羽根が触れるようなキスだった。しかしフォウにとって、それは初めての「意味のある」接触だった。これまで彼女が経験してきたのは、奪われるだけの暴力。しかしカミーユのキスは違った。与えようとする優しさに満ちていた。

 

「怖い……?」カミーユが囁く。

 

「……いいえ」フォウは小さく首を振る。「あなたなら……怖くない……」

 

カミーユはもう一度キスをした。今度はもっと深く、確かめるように。フォウの唇は柔らかく温かく、そして微かに震えている。舌をそっと入れても、拒絶はなかった。むしろ、自分から積極的に応えようとする意志が感じられる。

 

「ん……っ」

 

吐息が漏れる。長い口づけの後、二人は見つめ合い、無言の了解を交わした。

 

カミーユはフォウの服のボタンを外し始めた。一つずつ、丁寧に。まるで聖なる儀式のように。ブラウスが脱がされると、露わになった白い肌に、点々と残る痣が目に入った。胸元や脇腹には、あの白い部屋での実験の痕跡が生々しく刻まれている。

 

「……ごめん」カミーユは目を伏せた。「俺は……何もできなかった」

 

「来てくれただけで……嬉しい」フォウはカミーユの手を自分の胸に導いた。「触って……私を感じて……」

 

カミーユの手が乳房に触れると、フォウの身体がビクンと跳ねた。しかし今度の反応は、研究所の時のような恐怖や拒絶によるものではない。愛しい人に触れられることへの歓喜と期待だった。

 

「ここも……痛かったか?」

 

「いいえ……あなたの手は……温かい……」

 

乳首を指で弄ぶと、すでに硬く立ち上がっていた。フォウの身体はカミーユに触れられることを待ち望んでいたかのように反応する。

 

「んっ……あ…」

 

甘い吐息が漏れる。これまでのセックスは、苦痛と屈辱に満ちたものだった。しかしカミーユの愛撫は違う。肌を愛でるような優しい手つきに、フォウは心が解き放たれていくのを感じた。

 

カミーユは唇を乳房に寄せ、乳首を吸い上げた。チュパリと音を立てて吸われるたびに、背筋に快感が走る。

 

「はぁっ……カミーユ……」

 

フォウはカミーユの髪を梳いた。エメラルド色の髪と同じくらい滑らかな感触。

 

下半身の手入れも進んでいく。スカートを脱がし、下着の中に手を滑り込ませると、すでに濡れているのが分かった。

 

「もう……濡れてるのか」

 

「だって……あなたが……触るから……」

 

恥じらいながらも、フォウは自分の欲求を認めた。これまで感じたことのない熱が下腹部に宿り、潤いを求めている。

 

カミーユは下着を脱がせ、秘所を露わにした。

薄い陰毛に囲まれた秘所は、愛液でしっとりと光っている。

 

「触って……」フォウは懇願した。「あなたの手で……」

 

カミーユは指を伸ばし、割れ目に沿って上下に撫でた。クチュリと音がして、フォウの腰が揺れる。

 

「ああっ……!」

 

敏感なクリトリスに触れると、フォウの声が一オクターブ高くなった。研究所の実験で過敏にされた身体は、愛する人の手に触れられることで、最大限の快感を引き出そうとしていた。

 

「すごく……感じやすいんだな」

 

「あなたが……あなただから……」

 

フォウは潤んだ目でカミーユを見つめた。その視線には、ただの肉体的な欲望を超えた、魂の結合を求める深い愛情が込められていた。

 

「カミーユ……お願い……あなたを……感じたい……」

 

カミーユは服を脱ぎ、自分のすべてを晒した。すでに硬くなった性器が、フォウの視界に入る。研究所で何度も男たちのそれを見てきたフォウだったが、カミーユのものだけは違って見えた。愛する人のもの。自分を傷つけるためではなく、愛するためのもの。

 

「入れて……」

 

フォウは脚を開いた。カミーユが上に覆いかぶさり、自身をフォウの秘所に押し当てる。クチュリと音がして、亀頭がゆっくりと埋まっていく。

 

「ん……ああ……」

 

「フォウ……」

 

「大丈夫……痛くない……嬉しい……」

 

一本一本が愛おしいように、カミーユはゆっくりと挿入を進めた。熱く濡れた膣壁が、カミーユを咥え込むように締め付ける。それはこれまでのセックスにはなかった、心のこもった結合だった。

 

完全に埋まった時、二人は息を吐いた。互いの体温が、最も深いところで混ざり合う。

 

「動いても……いいか?」

 

「ええ……お願い……」

 

カミーユはゆっくりと腰を動かし始めた。出し入れするたびに、膣壁が絡みつき、そして離れる。その摩擦が、二人に心地よい快感をもたらす。

 

「あっ……んっ……カミーユ……!」

 

「フォウ……好きだ……!」

 

「私も……私も好き……!」

 

涙が止まらない。うれし泣きだった。これまでどれだけの屈辱と痛みに耐えてきたか。そのすべてが報われた気がした。愛する人と一つになれる歓喜。それはフォウが初めて知る、真の「セックス」だった。

 

カミーユは何度もキスをしながら、ピストン運動を続けた。時折、深いところを突かれると、フォウの身体が反り返り、甘い悲鳴が漏れる。

 

「あっ!そこ……そこ……いい……!」

 

「フォウ……フォウ……」

 

名前を呼び合う声だけが、部屋に響く。机の上の花瓶に生けた花が、二人の振動で揺れている。窓の外の雨音も、今は二人の鼓動のように心地よいリズムを刻んでいた。

 

「カミーユ……私は……もう……実験体じゃない……あなたと……一つになっている……」

 

「ああ、俺たちの心は……一つだ……」

 

フォウはカミーユの背中に脚を絡め、より深い結合を求めた。

自分から積極的に腰を動かし、快感を貪る。これまでの受動的なセックスとは違う、自分の意思による快楽の受容。

 

「んっ……あっ……!」

 

「フォウ、いくぞ……!」

 

「ええ……一緒に……!」

 

二人は同時に頂点を迎えた。カミーユが深く突き入れ、熱い精液を放出すると、フォウも激しく痙攣し、膣内でカミーユを強く締め付けた。子宮の奥に精液を受け止めた瞬間、フォウは初めて「満たされる」という感覚を知った。

 

「ああ……温かい……」

 

果てた後、二人は抱き合ったまま、シーツの上に横たわった。汗ばんだ肌がくっつき、互いの体温を分け合う。フォウはカミーユの胸に耳を当て、彼の鼓動を聞いた。規則正しい力強い音。それは彼女に安心感を与えた。

 

「カミーユ……」

 

「なんだい?」

 

「私は……幸せだわ……」

 

フォウは心からの笑顔を見せた。涙の跡が残る顔で、花が咲くような笑顔だった。

 

「俺もだ。君に会えて……よかった」

 

「もしまた……戦場で会ったら……私は……あなたを撃てない……」

 

「俺もだ。君を撃てない。だから……」

 

「だから……?」

 

「戦争が終わったら……一緒に暮らそう」

 

その言葉は、フォウにとって奇跡のように響いた。未来。希望。それは研究所では決して与えられなかったもの。

 

「約束よ……」

 

「ああ、約束する」

 

二人は再び唇を重ねた。その夜、二人は何度も愛し合った。飢えるように、そして慈しむように。失われた過去の代わりに、二人だけの未来を刻み込むかのように。

 

第五章 射出

 

その日、ホンコン・シティの空は厚い雲に覆われていた。ムラサメ研究所の監視の目が光るスードリの格納庫で、フォウは一人決意を固めていた。

 

「カミーユを……宇宙へ……」

 

カミーユは宇宙に戻らなければならない。地上にいては、ティターンズの追跡から逃れられないし、何よりエゥーゴの仲間たちが彼を待っている。フォウはそう理解していた。自分とカミーユの立場の違いを、冷徹なまでに受け入れていた。

 

「私が彼を止める理由はない。彼には……やるべきことがある」

 

夜の情事の余韻はまだ体に残っている。カミーユに注がれた精液は、今なお子宮の奥で微かな熱を放っている。その温もりが、フォウの決意を支えた。愛する人のために何かができる。それがたとえ、別れを意味するものであっても。

 

スードリの格納庫は、深夜にもかかわらず忙しなかった。整備兵たちが、シャトル用ブースターの最終チェックを行っている。フォウはコックピットからその様子を伺い、タイミングを計った。

 

「命令には従うと見せかけて……独断で射出する。研究所には……後でどう言われようと……」

 

フォウの心には迷いはなかった。カミーユのあの真っ直ぐな瞳が、彼女の背中を押している。

 

「カミーユ……生きて。そして……戦いを終わらせて」

 

シャトル用ブースターがガンダムMk-IIに接続される。カミーユはまだ知らない。フォウが自分の命を懸けて、彼を宇宙へ送り出そうとしていることを。

 

「システム、オールグリーン。射出用意、よし」

 

マイクを握り、フォウは大きく息を吸った。

この行動は反逆罪に当たる。見つかれば即座に処刑されるかもしれない。それでも、カミーユを生かすためなら、命など惜しくはなかった。

 

「射出!」

 

ボタンを押した瞬間、ブースターが火を噴いた。轟音とともに、ガンダムMk-IIが射出されていく。地球の重力を振り切るように、白い機体は空へと舞い上がった。

 

「行って……カミーユ!」

 

その時、警報が鳴り響いた。

 

「被験体第四号!何をしている!独断での射出は許可されていない!」

 

スードリのオペレーターが叫ぶ。格納庫は騒然となった。

 

「反逆行為だ!止めろ!」

 

銃を持った兵士たちが駆けつけてくる。しかしフォウは、ただ空を見上げていた。遠ざかっていくガンダムMk-IIの光。それが彼女のすべてだった。

 

「さようなら……私の……愛しい人……」

 

兵士たちの銃声が響く。銃弾がサイコ・ガンダムの装甲を叩く。だが、フォウは操縦桿を握りしめ、身動き一つしなかった。カミーユが宇宙へ行った。それだけでよかった。

 

「私は……後悔しない……」

 

爆発音が響いた。スードリの後部から火の手が上がる。カミーユを送り出すために無理をした射出が、機体の不具合を招いていた。

 

「フォウ!無事か!」

 

通信機からサカキ博士の怒声が聞こえる。

 

「……博士……私は……」

 

フォウの声は静かだった。

 

「反逆の罰は……重いぞ……」

 

「罰なら……受けるわ……」

 

フォウは瞳を閉じた。炎に包まれるスードリ。その中で、彼女はただ一人、静かに微笑んでいた。カミーユが助かった。その事実だけで、彼女の心は満たされていた。

 

「カミーユ……生きて……」

 

爆炎の中に消えゆくスードリ。フォウの姿は炎に隠され、消息を絶った。だが彼女の命は、消えてはいなかった。カミーユへの愛が、彼女を生かしていた。

 

第六章 再教育

 

死んだと思われていたフォウは生きていた。

だがその生は、地獄への入り口だった。

 

「反逆者……か」

 

スードリの炎から救出されたフォウは、ムラサメ研究所に送還された。サカキ博士の表情は、これまでになく冷酷だった。

 

「被験体第四号、フォウ・ムラサメ。反逆罪により、再教育プログラムの適用を決定する」

 

再教育。その言葉が意味するものを、フォウは身をもって知っていた。あの白い部屋での恐怖。絶望。そして、人間性の崩壊。

 

「カミーユ……」

 

呟きながらも、彼女の心はすでに揺らいでいた。助かる見込みはない。せめて名前だけでも、心に留めておきたかった。

 

「おや、まだ覚えているのか? 記憶の消去が不十分だったな。今度こそ徹底的に……やらせてもらう」

 

サカキの笑い声が響く。その後ろには、これまでより多い八人の研究員が並んでいた。

 

「再教育は、従来よりも遥かに過酷になる。君の心も身体も、完全にリセットして……書き直す」

 

フォウは拘束台に固定された。今度はただの拘束具ではない。電流を流すためのワイヤーが全身に張り巡らされ、頭部には脳波を操作する特殊なヘルメットが被せられる。

 

「まずは、身体的な服従を植え付ける。全員、かかれ!」

 

サカキの合図とともに、八人の研究員がフォウに群がった。服は一瞬で剥ぎ取られ、白い肌が露わになる。

 

「いや……!」

「騒ぐな!」

 

一人の研究員がフォウの口に猿轡を噛ませた。革の味が広がり、声が出せなくなる。しかし彼らはそれを外し、代わりに別のものを口に突っ込んだ。バイブ付きの口枷だ。

 

「んぐっ!」

 

喉の奥まで押し込まれる異物感。口を開けたまま固定され、よだれが溢れる。呼吸もままならない。

 

「乳首のクリップに電流を流せ」

 

チクリ、と鋭い痛みが走った。乳首に挟まれたクリップから電流が流れ、焦熱のような痛みが乳房全体に広がる。

 

「んんーっ!」

 

身体が跳ねるが、拘束具はびくともしない。ただ全身が痙攣するだけだ。

 

「次は膣だ。二本同時に入れてやれ」

 

二人の研究員が、すでに硬くなった性器をフォウの秘所に押し当てた。

 

「二人同時だと? 無理だ!」

 

サカキが冷笑する。

 

「無理だからやるんだ。それが再教育だ」

 

二人の陰莖が、無理やり一つの穴にねじ込まれる。膣口が限界まで押し広げられ、粘膜が引き攣れる痛みが走った。

 

「ぎぃぃっ!」

 

猿轡の奥から、くぐもった悲鳴が漏れる。狹い膣内に二本の男根が押し入り、互いに摩擦し合いながら奥へと進んでいく。内臓が押し上げられるような圧迫感。裂けるような痛み。フォウの目からとめどなく涙が溢れた。

 

「どうだ? 苦しいか? 苦しいだろうな。だがこれからがもっと凄いぞ」

 

サカキが器具を取り出した。それは巨大な金属製の砲弾のような形をしており、先端には電極がついている。

 

「この特大電極バイブを、二人の上からさらに追加する。子宮口を直接刺激できる」

 

「やめ……あぐっ……」

 

二人の男根の上から、無理やりバイブがねじ込まれた。膣内はすでに限界まで広げられているのに、さらに異物を押し込む無茶な行為。フォウの下半身はまさに惨状だった。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁッ!」

 

絶叫。しかし猿轡に吸い込まれ、外には小さな唸り声しか漏れない。子宮口をノックする巨大なバイブ。その振動は、内臓のすべてを揺さぶる。痛みと、不本意な快感が混ざり合い、フォウの脳内を白濁させていく。

 

「ンッ! クッ! 力を抜け! 俺も気持ちよくさせて貰うぞ!」

 

膣内の一人が、強烈なピストン運動を開始した。狹い膣内をかき回すように、腰を振る。もう一人もそれに続き、二本の陰莖が膣壁を挟み込むように擦れ合う。

 

「くぅっ! すごい締め付けだ!」

 

「俺も限界だ! 中に出すぞ!」

 

二本の陰莖が同時に脈動し、膣内に大量の精液を吐き出した。熱い液体が子宮口を叩き、溢れ出す。その上からさらにバイブが突き込まれ、精液を子宮の奥まで押し込む。

 

「ん゛ぅぅぅ……!」

 

フォウの意識が白く弾けた。痛みと快感の境界が溶け合い、自分が何をされているのかも分からなくなる。

 

「よし、次だ。肛門も使え」

 

四つん這いにされ、今度はアナルを標的にされる。すでに電流責めと二本挿しで感覚が麻痺しているフォウだが、アナルへの侵入にはまた別の痛みがあった。

 

「まだ処女に近いな。まあ、それがいい」

 

太い男根が、狹い肛門を無理やりこじ開ける。抵抗など不可能だった。異物が直腸を犯し、内臓を圧迫する。

 

「んぅぅっ!」

 

口から猿轡を外され、代わりに別の研究員の性器が突っ込まれる。三つの穴が同時に貫かれ、フォウは男たちの肉便器と化した。

 

「ほら、口も使え。上手に扱かねば、電流を強くするぞ」

 

脅され、フォウは必死に口内の男根に舌を這わせた。必死さが“従順さ”と受け取られ、男たちの興奮を煽る。前後の穴から激しいピストン運動が続き、熱い精液が注ぎ込まれる。

 

「次、交替!」

 

研究員たちが次々と入れ替わり、フォウの身体を蹂躙し続ける。何度も精液を注がれ、何度も電流を流され、何度も絶頂を強制される。そのたびに、脳内麻薬が大量に分泌され、フォウの思考は泥沼のように濁っていく。

 

「そうだ……いい子だ……。快楽に溺れるんだ……」

 

サカキの声が遠く聞こえる。フォウの視界は、涙と精液で滲んでいる。カミーユの顔を思い出そうとするが、輪郭がぼやけていく。あの優しかった手の感触も、温かい言葉も、快楽の波に洗われて消えていく。

 

「カミーユ……」

 

その名前を呼ぶことすら、もうできなくなっていた。

 

「被験体第四号の再教育は、順調です。自我崩壊の兆候が見られます」

 

「よし。さらに加速させろ。完全に壊すんだ」

 

サカキの指示で、さらに激しい責めが加えられた。巨大なバイブを膣とアナルに同時にねじ込まれ、電流を流されながらの強制絶頂。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁッ!」

 

フォウの身体が跳ね上がる。拘束具が軋むほどの痙攣。目からは涙が乾き、ただ白目を剥いて快楽の淵に沈んでいく。

 

「カミーユ……助けて……」

 

心の中で呼びかけたが、その声は届かない。研究所の白い壁に吸い込まれ、消えていった。

 

 

数日が経過した。フォウはもはや人間としての反応を失っていた。与えられた命令には従うが、自発的な言葉や行動はない。ただ虚ろな瞳で天井を見つめるだけの人形。

 

「被験体第四号の再教育は完了した。実戦投入の準備を整えろ」

 

サカキの言葉に、研究員たちは敬礼した。彼らの目には、少しの憐れみも後悔もなかった。あるのは実験の成功への喜びだけ。

 

フォウは再びサイコ・ガンダムに乗せられた。コックピットの中で、彼女の意識は機体とリンクする。しかし以前のような意志の力はなく、ただシステムに従って機体を動かすだけ。

 

「ターゲット確認。ガンダムMk-II……」

 

モニターに映る白いモビルスーツを見つめても、フォウの心は動かなかった。かつて愛した青年が乗っているはずなのに、何も感じない。

 

「撃て」

 

命令が下る。フォウは機体を前進させた。機械的に照準を合わせる指先。そこには感情はなく、ただプログラム通りに動くだけ。

 

「カミーユ……」

 

かすかに呟かれた名前は、誰にも聞かれることはなかった。フォウの瞳の奥で、微かな光が明滅する。それは完全には消えなかった想いのかけら。しかし今の彼女には、それを意味づける言葉も思考も失われていた。

 

第七章 破壊

 

キリマンジャロの空は、不気味なほど晴れ渡っていた。

 

ティターンズの拠点であるキリマンジャロ基地攻略作戦。そこに投入されたサイコ・ガンダムは、まさに悪鬼のような猛威を振るっていた。

 

「被験体第四号の戦闘能力は、再教育によって飛躍的に向上しています」

 

サカキ博士は満足げに頷いた。

 

「フォウ……君は今、最高の兵器だ。存分に暴れろ」

 

サイコ・ガンダムのコックピットで、フォウは冷たい瞳でモニターを凝視していた。視界に映るモビルスーツたち。それらはすべて敵だ。排除すべき対象だ。そうプログラムされた認識回路が告げている。

 

「敵を……破壊する……」

 

ビームの雨が降り注ぐ。サイコ・ガンダムの拡散メガ粒子砲が火を噴き、次々とモビルスーツを屠っていく。味方であるはずのティターンズの機体すら巻き込みながら、巨大な機体は暴れまわった。

 

「止めてくれ! 味方だぞ!」

 

「制御できないのか!」

 

怒号が通信回線に響くが、フォウの耳には入らない。彼女はただ破壊の衝動に身を任せていた。それが生きている実感だから。

 

そのときだった。

 

「フォウ!」

 

聞き覚えのある声。心臓が跳ねた。モニターの隅に、白い機体が映る。ガンダムMk-II。かつて愛した青年が乗る機体。

 

「カミーユ……」

 

フォウの瞳が揺れた。再教育によって封印されたはずの感情が、胸の奥でうずく。

 

「カミーユ……? 誰……それ……」

 

頭が痛い。二つの記憶がせめぎ合う。愛する人を守りたい自分と、敵を破壊しろと命じるプログラム。その矛盾に、フォウの精神が軋む。

 

「フォウ! やめろ! そのままでは君が壊れてしまう!」

 

カミーユの悲痛な叫びが届く。しかしフォウの手は止まらない。むしろ、カミーユに向けられる攻撃は激しさを増していた。

 

「うるさい……うるさい……! 消えろ……!」

 

自分でも何をしているのか分からない。ただ胸の痛みを止めたかった。

この苦しみの原因を消し去りたかった。

 

「なぜ……なぜ私を苦しめるの……!」

 

ビームがガンダムMk-IIを掠める。カミーユは回避行動を取りながらも、攻撃に転じることはできなかった。

 

「フォウ……俺は君を撃てない……!」

 

「撃てばいい! 私は……兵器だ! あなたを殺すために作られたんだ!」

 

フォウの叫びは、慟哭に近かった。愛する人を殺めたくない自分と、殺さなければならない自分。その矛盾に引き裂かれながら、彼女は涙を流していた。

 

「私は……カミーユを……愛してる……! でも……もう……戻れない……!」

 

サイコ・ガンダムが雄叫びを上げた。オーバーロード。機体がフォウの精神の不安定さに呼応し、制御不能になっていく。

 

「フォウ! やめろ!」

 

カミーユはガンダムMk-IIを急接近させた。機体同士が激突する寸前で、カミーユは通信回線を強制接続した。

 

「フォウ! 聞こえるか! 俺だ! カミーユだ!」

 

「やめて……近づかないで……!」

 

「見ろ! 俺の顔を!」

 

モニターにカミーユの顔が映し出された。苦悶に歪みながらも、真っ直ぐにフォウを見つめる瞳。

 

 

かつて雨のホンコン・シティで出会った、あの優しい眼差し。

 

「カミーユ……」

 

フォウの動きが止まった。時が止まったかのように。二人は見つめ合った。戦場の喧騒が遠ざかり、ただ二人だけの世界がそこにあった。

 

「思い出したか? ホンコンの雨の中で……君は言ったな。『私も好き』って」

 

「私も……好き……」

 

涙が止まらない。記憶の底から、封印されていた想いが溢れ出す。カミーユと過ごした夜。温もり。愛しさ。それらすべてが、再教育の壁を打ち破ろうとしていた。

 

「フォウ……戦いをやめよう。一緒に……」

 

しかしサカキ博士の声が割り込んだ。

 

「被験体第四号! なんとしても敵を排除せよ! さもなくば……」

 

脳内に直接響く命令。

それと同時に、強化プログラムが作動した。フォウの身体は自動的に武器を構え、照準をカミーユに合わせる。

 

「やめて……!」

 

自分の意思とは裏腹に、指がトリガーにかかる。フォウは必死に抵抗した。カミーユを撃つくらいなら、自分が死んだほうがましだった。

 

「カミーユ……逃げて……!」

 

「逃げるもんか! 君を置いていくわけがないだろ!」

 

カミーユは自機をさらに接近させた。フォウの葛藤が、機体の動きに反映されていることに気づいたのだ。

 

「フォウ! 思い出して! 君は兵器じゃない! 人間だ!」

 

その言葉が、最後の鍵となった。フォウの瞳に光が戻る。

 

「人間……私は……人間だ……!」

 

強化プログラムへの抵抗が最高潮に達した。コックピット内で、フォウの身体が震える。筋肉が引き裂かれるような痛み。脳が焼けるような感覚。それでも彼女は抵抗した。

 

「私は……カミーユを……守りたい……!」

 

第八章 永遠

 

キリマンジャロ基地の破壊が進む中、サイコ・ガンダムの暴走は収まらなかった。

しかしコックピットの中で、フォウの精神は別の戦いを続けていた。

 

「被験体第四号! 反抗は無駄だ!」

 

サカキ博士の怒声が脳内に響く。脳波誘導装置が、フォウの抵抗を抑え込もうと圧力を高めていく。

 

「う……ああっ……!」

 

頭が割れるような痛み。視界が赤く染まり、意識が混濁する。それでもフォウは歯を食いしばり、抵抗を続けた。

 

「私は……兵器じゃない……人間だ……」

 

かつて自分が言い続けた言葉。それは今、カミーユが教えてくれた真実だった。彼を信じたい。自分を信じたい。その一心で、フォウは心を奮い立たせた。

 

「フォウ! 聞こえるか! カミーユだ!」

 

モニター越しに、カミーユの顔が映る。彼も必死だった。フォウを救おうと、ガンダムMk-IIを巧みに操り、サイコ・ガンダムの攻撃をかわしながら接近を試みている。

 

「カミーユ……危ない……! 逃げて……!」

 

「逃げるもんか! 一緒に帰るんだ!」

 

カミーユの言葉に、フォウの心が揺れた。帰る。あの雨のホンコン・シティ。二人で過ごした小さなアパート。もう戻れない場所かもしれないけれど、確かにあったはずの幸福。

 

「帰りたい……でも……もう……」

 

強化プログラムが再びフォウの身体を支配し始めた。腕が自動的に動き、ガンダムMk-IIに照準を合わせる。

 

「やめて……! やめてぇっ!」

 

絶叫。フォウは渾身の力で自分の身体に反抗した。強化された筋肉が軋み、関節から血が滲む。

 

「被験体第四号! 調教プログラム起動! これ以上の反抗は許さん!」

 

サカキ博士の宣告とともに、コックピット内に注射針が飛び出した。首筋に突き刺さる感覚。薬液が注入されるにつれ、フォウの身体は痙攣し始めた。

 

「う……あああぁっ!」

 

視界が黒く染まっていく。意識が薄れていく。抵抗しても無駄なのかもしれない。でも、諦めたくなかった。

 

「カミーユ……私のこと……忘れないで……」

 

最後の力を振り絞り、フォウは通信回線を開いた。カミーユの顔が映る。彼は泣いていた。

 

「フォウ! 何をするつもりだ!」

 

「さようなら……愛してる……」

 

トリガーに指をかけた。だがそれは、ガンダムMk-IIに向けてではない。サイコ・ガンダムの自爆装置だ。

 

「私が……終わらせる……!」

 

サカキ博士の怒声が響く。「何をする! やめろ!」

 

カミーユの叫びが続く。「やめろ! フォウ! そんなこと……!」

 

フォウの瞳に、最後の決意が燃えていた。カミーユを殺すくらいなら、自分で終わらせる。そして、自分の愛した人が戦い続ける希望を、この機体ごと吹き飛ばしてやる。

 

「愛してる……カミーユ……!」

 

カチリ。自爆装置が作動した音。コックピット内にアラームが鳴り響く。

 

「フォウ! ダメだ! 爆発するぞ!」

 

カミーユはガンダムMk-IIを捨て身で接近させた。サイコ・ガンダムの脚部にしがみつく。

 

「離れろ! カミーユ! 危険だ!」

 

「嫌だ! 君を一人で行かせるもんか!」

 

カミーユの目には、死の覚悟が宿っていた。フォウは笑った。泣きながら、笑った。

 

「バカ……死ぬかもしれないのに……」

 

「君がいなければ、生きていてもしょうがない!」

 

サイコ・ガンダムが最後の力を振り絞り、マークツーをつき飛ばす。

地面に膝をつく。コックピットが開かれた。

 

「カミーユさよなら!」

 

最後の瞬間に見た彼の顔は、あまりに優しくて、あまりに真っ直ぐで、フォウの心を溶かした。

 

「カミーユ……」

瞬間、サイコ・ガンダムが閃光に包まれた。

 

「ああっ……!」

 

爆風がフォウを包み込む。しかし最期の瞬間、フォウは笑顔だった。安らかな笑みを浮かべて。

 

「幸せだよ……カミーユ……」

 

爆発音とともに、サイコ・ガンダムは炎に包まれた。

フォウは最後に、人間として命を終えた。

 

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