※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダム エロ短編集 女達の地獄の黒史録   作:みなぽん

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機動戦士Gundam GQuuuuuuX ニャアン という娘

機動戦士Gundam GQuuuuuuX ニャアン

 

生きるということは、もっと簡単なものだと思っていた。

 

 朝になれば目を覚ます。

 

 腹が減れば食べる。

 

 喉が渇けば水を飲む。

 

 夜になれば眠る。

 

 そんなふうに、ただ毎日を繰り返していればいい。

 

 少なくとも、昔のニャアンはそう思っていた。

 

 故郷のコロニーでは、空があった。

 

 本物の空ではない。

 

 コロニーの内壁に映し出された、精巧な空だった。

 

 朝には薄い青色になり、昼には白い雲が浮かび、夕方には橙色へ変わる。夜になれば無数の星が灯る。

 

 それでも、幼いニャアンにとっては、それが空だった。

 

 家があり、食卓があり、人がいて、学校があって、明日があった。

 

 明日が来ることを疑ったことなど、一度もなかった。

 

 だから、あの日。

 

 サイド2が戦場になった日。

 

 最初に聞こえた爆発音を、ニャアンは工事の音だと思った。

 

 窓ガラスが震えた。

 

 食器棚の皿が、カタカタと音を立てた。

 

 遠くで誰かが叫んでいた。

 

 それでも彼女は、何が起こっているのか分からなかった。

 

 次の瞬間、人工の空が消えた。

 

 昼間だった。

 

 青い空が、一瞬で黒くなった。

 

 コロニーの照明が落ちたのだ。

 

 暗闇の向こうで、巨大な何かが動いた。

 

 そして、光った。

 

 白い閃光が窓いっぱいに広がり、次いで轟音が来た。

 

 建物そのものが揺れた。

 

「……なに?」

 

 誰かに聞こうとした。

 

 けれど、答える人はいなかった。

 

 次の爆発で、窓が吹き飛んだ。

 

 ニャアンは床に叩きつけられた。

 

 頬に何かが刺さった。

 

 痛かった。

 

 けれど、それ以上に怖かった。

 

 廊下に飛び出した。

 

 人が走っていた。

 

 泣いている人。

 

 叫んでいる人。

 

 子供を抱えている人。

 

 荷物を引きずっている人。

 

 誰もが同じ方向へ走っていた。

 

 ニャアンも走った。

 

 何を持っていたのか、よく覚えていない。

 

 家族のことを考えていた。

 

 戻らなければ。

 

 そう思った。

 

 けれど、戻れなかった。

 

 また爆発が起きたからだ。

 

 天井が崩れた。

 

 通路が塞がった。

 

 煙が流れ込んできた。

 

 そして、その瞬間にニャアンは理解した。

 

 ――帰れない。

 

 家族がどうなったのか。

 

 生きているのか。

 

 死んでいるのか。

 

 それすら分からない。

 

 確認する暇などなかった。

 

 足が勝手に動いた。

 

 逃げた。

 

 逃げて、逃げて、逃げ続けた。

 

 やがて、彼女は格納庫にたどり着いた。

 

 そこに一台のプチモビルスーツがあった。

 

 軍用でもなければ、戦闘用でもない。

 

 ただの作業機械だった。

 

 子供が操縦するようなものではない。

 

 操作方法だって、ほとんど知らなかった。

 

 それでも乗った。

 

 乗るしかなかった。

 

 操縦席に身体を押し込み、震える手でスイッチを探した。

 

 機械が唸った。

 

 モニターが点いた。

 

 外には炎が見えた。

 

 その向こうに、巨大なモビルスーツがいた。

 

 人間が作ったはずなのに、人間には到底見えなかった。

 

 巨大な腕が振り下ろされる。

 

 建物が崩れる。

 

 火花が舞う。

 

 ニャアンは声を出さなかった。

 

 声を出す余裕がなかった。

 

 ただ、前へ進んだ。

 

 プチモビが走る。

 

 何度も壁にぶつかった。

 

 何度も転びそうになった。

 

 それでも進んだ。

 

 そして、コロニーの外へ出た。

 

 宇宙が広がっていた。

 

 静かだった。

 

 あれほど騒がしかった戦場が、宇宙へ出た瞬間、嘘のように遠ざかった。

 

 ニャアンは息をしていた。

 

 生きていた。

 

 ただ、それだけだった。

 

 しばらくして、一隻の船に拾われた。

 

 どうして助かったのか。

 

 誰が助けてくれたのか。

 

 今となっては、記憶が曖昧だった。

 

 船の中で渡された水を飲んだ。

 

 パンを食べた。

 

 毛布に包まれて眠った。

 

 眠りながら、何度も故郷の夢を見た。

 

 目が覚めるたびに、ここが知らない場所だと気づいた。

 

 そのたびに、胸の奥が冷たくなった。

 

 そして彼女は、少しずつ理解していった。

 

 もう、帰る場所はない。

 

 家族がどうなったのかも分からない。

 

 自分が何者なのかを証明してくれる人もいない。

 

 ただ一人。

 

 生き残ってしまった。

 

 それだけだった。

 

 やがて、彼女はイズマ・コロニーへ流れ着いた。

 

 そこで難民として認定された。

 

 紙の上では、それで彼女の身分は保障された。

 

 けれど、紙切れ一枚で生活ができるわけではなかった。

 

 食事をするには金がいる。

 

 部屋を借りるには金がいる。

 

 服を買うにも金がいる。

 

 学校へ行くにも、生活するにも、何をするにも金がいる。

 

 そして、ニャアンには金がなかった。

 

 最初の部屋は、今の部屋よりさらに酷かった。

 

 壁は薄く、隣人の咳が聞こえた。

 

 天井からは水が漏れた。

 

 窓は閉まらなかった。

 

 冬になると寒く、夏になると暑かった。

 

 ベッドの代わりに古いマットレスを敷いた。

 

 食事は安いパンとインスタント食品。

 

 それすら買えない日は、水だけで眠った。

 

 空腹には慣れた。

 

 寒さにも慣れた。

 

 孤独にも、少しずつ慣れていった。

 

 ただし、慣れたというのは、平気になったという意味ではない。

 

 感じないようになっただけだった。

 ニャアンは毎晩、財布の中身を確認した。

 

 硬貨を並べる。

 

 紙幣を数える。

 

 そして、明日までに必要な金額を考える。

 

「……足りない」

 

 小さく呟く。

 

 もう一度数える。

 

 やっぱり足りない。

 

 その瞬間だけ、胸が締めつけられる。

 

 どうしよう。どうすればいい。

 

 考える。けれど、答えは一つしかなかった。

 

 働く。そして、そんな彼女の前に示されたのが

 若い娘の体を求める男たちに体を開くことだった

 最初は自分の父親と同じ位の年齢の初老の男だった。

 コロニーの安い食堂で、ご飯をご馳走になった後、ホテルに行った

 

⭐️はじめてのセックス

ホテルの部屋は狭かった。

ベッドが置かれればそれだけで埋まってしまうような空間。

空気は澱んでいた。

嗅ぎ慣れない石鹸のような甘ったるい匂いが薄く漂っていた。

 

男が後ろから鍵をかけた音がした。

カチャリ。

その乾いた金属音が心臓を直に撫でた。

 

「こっちへおいで」

男が言った。

さっきまでの食堂での穏やかな笑顔とは少し違う、粘つくような優しい声だった。

さっきまでスープを飲ませてくれていた時の声と同じだということにニャアンは気づかないふりをしたかった。

 

ニャアンは動けなかった。

足が床に貼りついたようだった。

胃袋がまだ温かいものを訴えているのに全身の血の気が引いていく。

 

男がゆっくりと近づいてきた。

太くて肉付きの良い腕が伸びてくる。

それは威圧的というより妙に有無を言わせない雰囲気を持っていた。

肩を掴まれた。

力は強くない。けれど決して振り解けない強さだった。

体温が伝わってくる。

ニャアン自身の皮膚よりも遥かに熱いそれは不快感だけをもたらした。

 

「よいしょ」と言うでもなく引き寄せられた。

男の腹に顔が埋まった。

柔らかく弾力のある感触。

自分の体があまりに薄っぺらいことを否応なく意識させられた。

痩せている。

肋骨が浮き出ているはずだ。

男の脂肪の塊に自分の骨ばった輪郭が沈み込むのが分かった。

これは何なのだろう。

餌付けされた後にやってくる当然の報酬なのか。

それにしては何も嬉しくなかった。

 

「いい子だ」

頭を撫でられた。

大きな手が乱暴に髪を掻き混ぜていく。

その感触に一瞬だけ目を閉じそうになった。

誰かに触れられることは久しぶりだった。

けれどこの手は温もりを与えるためのものじゃない。飼い主がペットを宥めるための仕草と同じだ。

これから与える行為のハードルを下げているだけ。

 

男が顔を近づけた。

髭の剃り跡がざらつく顎が頬に触れた。

タバコと汗と古い香水の匂い。

顎を掴まれた。

強引に上を向かされる。

目の前に老いた顔があった。

小さな瞳が潤みを湛えてこちらを見ている。

鼻息がかかりそうな距離。

呼吸を止めたいと思った。

 

唇が重なった。

湿っていてぬるっとした感触が押し当てられる。

しつこかった。

一回じゃ終わらない。

二度三度と角度を変えながら啄んでくる。

やがて強引に唇を割られて舌が侵入してきた。

他人の唾液の味。

生臭く湿った器官が口内を這いずり回る。

歯茎を舐め取られる。

頬の裏を刮がれる。

息ができなかった。

苦しい。

肺に届く空気が途絶える。

抵抗する術もなくニャアンは為されるままになった。

頭の芯がぼーっとしていく。

生理的な嫌悪感と酸欠で視界が歪む。

 

男の手が背中に回った。

服越しに脊椎の凹凸を辿るように下りていく。

そして裾から冷たい手が直接肌に触れてきた。

ひやりとした感触が背筋を駆け上がった。

ぞくりとした。

それは恐怖に似た悪寒だった。

 

「……っ」

呻き声とも吐息ともつかない細い音が喉奥から漏れた。

我慢しているつもりだったのに制御できない。

 

男は全く意に介さずに服を捲り上げ始めた。

一つボタンを外すごとに空気に晒される皮膚が増えた。

肌色の肌が露になる。

首元が剥き出しになって冷たい空気に撫でられた。

痩せた鎖骨が蛍光灯に照らされる。

貧相な身体の輪郭がくっきりと浮かび上がる。

 

ニャアンは鏡を見ないように努めた。

けれど部屋の隅の曇った鏡が断片的に自分の姿を映していた。

痩せこけた青白い顔と剥き出しの胸元。

そこにはさっき食べさせてもらったスープの名残なんてどこにもなくて。

ただ生きるために売られた商品が鎮座していた。

誰かの優しさのお返しになどなれるはずのない醜い対価。

それはあまりに滑稽で涙が出そうになるほどの惨めさだった。

 

頭の中はぐちゃぐちゃだった。

考えなければいけないことならいくらでもあった。

明日の食費のこと。家賃のこと。水道代のこと。

だけど今はすべてが霞んでいる。

ただひたすらに嫌で気持ち悪くて恐ろしいのに

逃げることはできない。

逃げたらそれこそ何もかも失うから。

 

男が再び覆い被さってきた。

裸同然になったニャアンの肌に荒れた髭が擦れる。

ざりっという音と共に皮膚に微かな痛みが走った。

 

どこか冷静な部分で彼女は思った。

あぁこれが私の「生きる」ってことなんだ。

 

コロニーが落ちた日以来、何一つ変わっていない。逃げて、何かを失って、次に何かを得るための対価として自分を切り売りする。

ただ生きてるだけなのに何もかもがこんなに痛い。

なんで生きてるのって、誰か教えてほしい。

 

男の手が胸の膨らみに触れた。

胸の先端を指の腹で摘ままれた。

「ひゃっ」

電流が走ったようだった。

強くない力で捻り上げられる。

指の腹で円を描くようにこね回される。

突起が硬くしこりを持ち始めた。

赤みを帯びた乳首が指に挟まれて変形する。

皮膚が引っ張られ、放され、弾かれる。

そのたびに神経が痺れるような感覚が乳首から全身へ広がっていく。

思考する間もなく与えられる刺激は

悲鳴に近い快感の入り混じった不快感を引き起こした。

痛みなのか快感なのか自分でも分からない異常な感覚。

初めて触れられる場所での感触はあまりに生々しかった。

 

男は執拗だった。

左右の乳首を交互に、あるいは同時に攻め立てる。

指で弄ぶ。

唇を寄せて吸い立てる。

「ちゅっ……ぢゅうっ……」

水音が響く。

赤ん坊のような音。

けれどその意味は子供じみたものではない。

男の熱い口腔の中で乳首が転がされる。

舌で弾かれ、吸い上げられる。

血管が脈打つのが分かった。

乳輪の周りを舐め回され、乳首の先端を舌の先でつつかれる。

そのたびに背中が弓なりに反った。

自分の意思ではない。

反射的に身体が反応してしまう。

脳が焼けるように熱い。

何かがおかしい。

これはただの行為のはずなのに。

体が勝手に声を漏らす。

「あ、あ、や……っ」

嫌だと言っているのか、それとも別の何かを訴えているのか、自分でも分からなかった。

ただ、この感覚は痛い。

けれど痛みだけではない何かが混ざっている。

それが一番怖かった。

男は満足そうに顔を上げた。

ニャアンの胸は唾液に濡れて光っていた。

乳首は充血し、赤く腫れていた。

男はそれを見て薄く笑った。

「感じてるな」

否定したかった。

けれど否定できなかった。

体が反応してしまったから。

それが一番残酷なことだった。

否定しようのない事実として身体に刻まれてしまったから。

 

男の手が下へ降りた。

太ももの内側を撫でられる。

肌が粟立った。

内側の柔らかい皮膚を掌で撫で回される。

ゆっくりと、時間をかけて。

中央へ向かって近づいてくる。

ニャアンは太ももを閉じようとした。

けれど男の手がそれを許さなかった。

強引に脚を開かれた。

「いや……」

小さな声が出た。

けれど男は止まらなかった。

下着が脱がされた。

空気に触れた股間が寒かった。

何もない空間に晒される恥ずかしさと恐怖。

男が顔を近づけた。

ニャアンは目を閉じた。

見たくなかった。

見たくても見られなかった。

息がかかった。

熱い吐息が敏感な場所に触れた。

そして舌が伸びた。

「ひっ……」

舌先が触れた瞬間、全身が跳ねた。

電気のような鋭い刺激が脳を貫いた。

太ももの付け根の薄い産毛がざわざわと逆立つ。

最も守るべき場所を他人に覗き込まれ、舐め回されるという事実が頭の中で反響した。

二度と失いたくないものとして隠していた場所が暴かれている。

二度と触れられたくない領域に異物が侵入してくる。

舌が割れ目を上下になぞる。

ゆっくりと。

時間をかけて。

粘膜が擦れる湿った音が鼓膜を震わせた。

「ん、あ、ぁ……」

声が出た。

出したくなかったのに。

自分の声ではないようだった。

どこか遠くから聞こえるようだった。

けれど紛れもなく自分の声だった。

男はさらに深く潛り込んできた。

舌が内部へと侵入する。

粘膜同士が触れ合う。

熱と湿り気。

神経が焼き切れるような感覚。

敏感な襞を一枚一枚丁寧に舐め取られる。

奥へ奥へと舌が進む。

そして小さな突起を見つけた。

「ひゃあっ!」

舌がそれに触れた瞬間、世界が白くなった。

背中が弓なりに反る。

太ももが震える。

自分の意思とは無関係に体が跳ねる。

脳が灼かれる。

今まで感じたことがない強烈な波が全身を襲った。

喘ぎ声は悲鳴に変わった。

「いや……あっ! あ……っ!」

舌が離れた。

けれど余韻が残った。

そこだけが独立した生き物のように疼き続ける。

そこだけが熱を持って存在を主張し続ける。

男は顔を上げた。

口元を拭いながらニヤリと笑った。

「ここが好きらしいな」

男はその一点を集中的に責め始めた。

舌先で捏ね回す。

唇で包み込んで吸い立てる。

時には歯を軽く当てる。

そのたびに全身が震えた。

コントロール不能の反応が続いた。

声は抑えられなくなった。

涙が溢れた。

理由は分からなかった。

怖かったのかもしれない。

恥ずかしかったのかもしれない。

ただただ混乱していた。

男は動きを止めた。

ニャアンは完全に脱力していた。

指一本動かせなかった。

荒い息遣いだけが部屋に響いた。

男は立ち上がった。

そしてベルトを外し始めた。

金属の擦れる音が響いた。

ジッパーが下ろされる音。

衣擦れの音。

何かが床に落ちる音。

全てがスローモーションのように感じられた。

 

現実感がなかった。

 

まるで悪い夢を見ているようだった。

 

この後何が起きるのか頭では分かっていた。

 

けれど感情が追いつかなかった。

 

もう終わりにして欲しかった。

 

お願いだからこれ以上何もしないで

 

そういう気持ちが全身から滲み出ていたと思う

 

しかし男は容赦しなかった。

 

服を全部脱いだ彼は、

 

そのままニャアンに覆い被さってきた。

 

男の身体は温かかった。

 

温かすぎるくらいだった。

 

ニャアンの冷え切った身体には毒だった。

 

触れている面積から体温が伝わってくる。

 

肌と肌の境界線が溶けてしまいそうな錯覚。

 

けれど心はどんどん凍えていく一方だ。

 

心臓の鼓動を感じた。

 

自分のものじゃない。

 

男の鼓動。

 

生命の鼓動。

 

でもそれは今まさにニャアンを犯さんとする者の鼓動であり、

 

自分の尊厳を破壊しようと迫り来る敵のそれであった。

 

胸板が密着してきた。

 

硬い感触。

 

ニャアンの華奢な骨格とは比べ物にならない質量。

 

力を込めれば簡単に潰されてしまうだろう存在。

 

恐怖。

 

シンプルに恐怖。

 

だが同時に不可避であるという諦念も芽生え始めていた。

 

もはや選択肢など存在しないのだ。

 

最初から最後まで与えられてもいなかった。

 

いや、スープを受け取った時点で。

 

この状況は決定していたと思い知らされた。

 

あの一杯の温かさの代償。

 

それが今ここで払わされる。

 

それがあまりにも理不尽で救いがない。

 

この世に無償の優しさなど存在しないことを知らされた気がした。

 

「大丈夫、優しくするよ」

男が囁く。

その言葉が耳を撫でる。

ゾッと鳥肌が立った。

何が大丈夫なのか。

優しくすれば何が許されると思っているのか。

言葉の一つ一つが偽りにしか感じられなかった。

 

男の片手が秘部へと再度伸びた。

指が差し入れられる。

内壁の圧迫感に息が詰まる。

異物感。

指が生ぬるく蠢く。

何かを探り当てるかのように丁寧に。

あるいは執拗に。

拳一つ分を埋め込まれた時、ニャアンは小さく悲鳴を上げた。

それは痛みの悲鳴だった。

何かが裂けるような、鈍い痛みが腹部を刺した。

目の前に火花が散る。

痛覚が現実を容赦なく突き付けてくる。

これは夢じゃないという証拠を。

逃げ場はないという自明を。

 

「や……っぅ……」

声が漏れる。

涙が止まらなくなった。

生理的な反射なのか、感情の作用なのか。

どちらでもよかった。

ただただ流れた。

乾いた頬を伝って冷たくなった。

枕を濡らす。

こんな時にまで体は水分を失ってはいけないとでもいうように排洩的な現象を起こすのだ。

滑稽だった。

 

男は指を追加した。

もう一本。

圧迫感に拍車がかかる。

裂けるような感覚。

内部が熱い。

自分の内部に他人の指が己の形を刻む。

動くたびに気持ちが悪かった。

腹の奥が冷たい。

だけど熱い。

相反する感覚が交互に来る。

正気ではいられなかった。

思考が混濁していく。

自分の輪郭が朧げになる。

 

指が抜かれた。

開放感があった。

けれど喪失感もあった。

今度こそ最後の工程が来る。

分かっていた。

分かってしまっているから怖い。

 

男が体勢を整える。

腰を抱えられた。

下半身を固定される。

足の膝裏を抱えられ、大きく広げられる。

もう何も隠せない。

隠す場所も許容する理由も見当たらなかった。

 

男の先端が宛がわれた。

熱い。

硬い。

脈打つような感覚。

触れられたとき、ニャアンの全身が総毛立った。

鳥肌が体中に立つ。

「いや……お願い」

声がやっと出た。

今まで押し殺していた感情がどっと溢れ出した。

「お願い……やめて」

その言葉は極限まで弱々しかった。

小さく、細く、祈りにも似た響きだった。

男は一瞬だけ動きを止めた。

世の中には当然すぎるほど当然な承諾確認というものがある。

だが男は知っていた。

ここで引き返すほど善良ではない。

なにせ代金は支払い済みなのだ。

食事を対価としてテーブルに並べた時点で、

ニャアンの肉体は空席という形で既に予約されていたのだから。

 

「大丈夫、すぐ終わる」

いつの時代の誰の言葉か分からない決まり文句を口にした。

優しげに、しかし拒否する隙を与えず。

男が腰を進めた。

先端が窄まりを押し広げる。

圧迫感。

異物が侵入してくる。

少しずつ。

ゆっくりと。

だが確実に。

身体の芯を貫くように。

冷たく粘った感触が体内を上下する。

 

余計な肉がない。

余裕がない。

拒みたいのか受け入れたいのか。

彼女自身の肉体ですら判断を放棄している。

 

「ぁああ……!」

声にもならない悲鳴。

内壁が裂かれるような痛みが走る。

熱い。

血が出ているのかもしれない。

潤滑油など存在しない。

快感のための準備など何もされていない。

否、クンニという名のプレリュードは済んでいた。

だがそれは真に彼女のためではなく、征服欲を満たし上書きする男側の理に過ぎなかった。

 

男は最後まで挿入した。

結合部が密着する。

骨盤がぶつかる。

肉と肉の間から息が漏れる。

ぜえぜえという呼吸も声も何もかもが混ざり合う。

 

男が呻いた。

短い声。

獣のような響き。

ニャアンから出た声は、

産声とも断末魔とも言えない純粋な慟哭だった。

痛い。

痛い。

この世のすべての痛みが一点に集中しているみたいだ。

太ももが震える。

下腹部が熱い。

腹の奥を突き上げられるたびに酸素が強制的に吐き出される。

涙と汗と涎が混ざって顔はぐちゃぐちゃだ。

 

突き上げられるたびに身体の奥で何かが擦れる音がした。自分の内側から聞こえる、湿った生々しい音。それが、この行為が現実であることを、嫌というほど私に突きつけてくる。男の体重がのしかかり骨盤が押し付けられるたびに、ベッドのスプリングが耳障りに軋んだ。

 

私は、天井を見ていた。染みがいくつか浮かんでいる安っぽい白い天井。男の顔は、見たくなかった。目を閉じれば今、自分に何が起きているのかを、少しだけ忘れられる気がした。

 

だが、身体は正直だった。結合部から伝わる、熱く脈打つ異物の感覚。内臓を直接掻き回されているような吐き気を催す圧迫感。私は、この男の慰みものになるために生まれてきたんじゃない。そう、心の底で叫んでいるのに口から漏れるのは、ただの弱々しい吐息と時折、自分の意思に反して漏れてしまう、みっともない喘ぎ声だけだった。

 

「気持ちいいか?」

男が、耳元で囁く。生暖かい息がかかり首筋が粟立つ。その問いかけ自体が、私の尊厳を踏みにじるものだった。気持ちいいわけがない。痛くて苦しくて、気持ち悪くてただ、早く終わってほしいだけだ。なのに、男は私の反応を快楽の証だとでも勘違いしているのだろうか。その傲慢さが、何よりも屈辱的だった。

 

男の律動は、規則正しく、そして止まることを知らなかった。何度も何度も、私の一番深い場所を穿たれる。そのたびに私は小さく息を詰め、痛みに耐えた。身体は少しずつ、この暴力に慣れようとしている自分に気づいた。異物感は依然としてあるのにその輪郭だけが、ぼやけて感じられるようになる。

 

――ああ、もう、どうでもいい。

心のどこかで、そう呟く自分がいた。どれだけ嫌だと思ってもどれだけ抵抗したくても、もうこの状況は変わらない。時間が経つのをただ待つしかない。私は、ただの“モノ”だ。温かいスープと引き換えに一時的に貸し出された、ただの肉体。そう思うことでしかこの耐え難い時間をやり過ごす術はなかった。

 

私は、自分の心を、身体から切り離そうとした。意識を遠くに飛ばす。故郷の偽物の空を思い出す。もう二度と戻れない、あの穏やかな時間。家族の顔。しかしそれも次の瞬間、容赦のない突き上げによって粉々に砕かれた。私は、現実に引き戻される。この薄汚れた部屋の染みだらけの天井の下に。逃げ場は、どこにもない。

 

**快楽(への抵抗と変質)**

 

「ん、あ……っ」

不意に、男の指が、私の胸の先端を摘み上げた。さっきまであれだけ弄ばれすっかり敏感になっているそこは、触れられただけで電気が走ったような衝撃を脳に届ける。同時に下腹部の奥を突き上げられる。

 

「ひゃっ……!」

二つの刺激が合わさり私の身体は、自分の意思とは無関係に跳ね上がった。脊髄反射に近い制御不能な動き。

それが、悔しかった。

 

男は、その反応を見逃さなかった。「ここ、弱いんだな」と楽しそうに笑い、執拗に乳首と私の中を同時に責め立てる。指の腹で、固く尖った乳首を捏ね回し爪の先でカリカリと引っ掻く。そのたびに、身体の芯が痺れるような感覚に震えた。

 

――ちがう。これは気持ちいいんじゃない。

心は、必死に否定する。これはただの生理現象だ。痛みや不快感と、紙一重の異常な感覚。決して、この男に感じさせられているわけじゃない。そう自分に言い聞かせなければ、私の心までこの快楽という名の泥沼に沈んでしまいそうで、怖かった。自分の身体なのに自分のものじゃない。そんな不条理が、私の心をさらに深く傷つけた。

 

男の呼吸が、次第に荒くなる。ピストンはさっきよりも早く、深くなった。肌と肌がぶつかるパンパンという乾いた音が、狭い部屋に響き渡る。もうどれくらいの時間、こうされているのだろう。痛みはもはやずっと続く鈍い熱へと変わっていた。

 

その時、ふと、最悪の考えが頭をよぎった。

 

――もし、これで、子供ができたら。

 

背筋が凍りつくような感覚が走った。目の前が、真っ暗になる。この見知らぬ父親のような年の男の子供を、私が孕む。そんな未来がほんの一瞬でも可能性として存在していることが、何よりも恐ろしかった。今の私に子供を育てるどころか、明日を生きる力すらないのに。ただでさえ、自分一人で生きていくのに精一杯なのに。これは単なる行為の苦痛じゃない。私の、未来そのものを破壊するかもしれない致命的な恐怖だった。

 

「いや……それだけは……」

声にならない声が喉から絞り出された。懇願だった。しかし、男にその意味が通じるはずもない。男は自分の快楽を追い求めることに夢中で、私の必死の叫びはただの喘ぎ声としか認識されない。

 

「出すぞ……!」

男が、耳元で低く唸る。その言葉の意味を理解した瞬間全身の血の気が引いた。嫌だ。やめて。お願いだ。内側で、そう叫んだ。私は残った力のすべてで、男の胸を押し返そうとした。だが痩せ細った私の腕では、男の巨体はびくともしない。私はただの一度も、自分の身を守れなかった。自分の未来すら守れない。その無力感が、涙と一緒にとめどなく溢れてきた。

 

男は、私の身体を強く抱きしめ一際深く、私の奥を突き上げた。そしてそのまま、びくびくと身体を震わせながら熱い奔流を、私の最も深い場所に放った。

 

その生々しい感触が、絶望の烙印のように私の胎内に焼き付けられた。

 

 

⭐️ 空腹と、いくばくかの希望

 

男が去った後の部屋は、ひどく静かだった。

乱れたシーツと肌にこびりつく生臭い匂いと、太ももを伝う生温かい液体の感覚だけが先ほどの出来事が現実だったことを証明していた。

 

ニャアンはしばらく動けなかった。

天井を見つめ、浅い呼吸を繰り返す。

身体の芯がどんよりと重く、下腹部には鈍い痛みがまだ残っていた。

 

けれど、指の先に触れたものがあった。

枕元に置かれた、紙幣。

男が置いていった金だ。

 

その乾いた感触をたしかめて、ニャアンは少しだけ目を開いた。

神様は、こんなにも簡単に人を殺しながらこんなにも簡単に人を生かすのかと思った。

 

心は死んでいるのに、体が動く。

体が動くかぎり、このか細く脆い生命はまだ続いていく。

それが、何よりも皮肉に思えた。

 

翌日、ニャアンはアパートの近くの定食屋に入った。

躊躇した。

いつもはガラス越しに中の客を見るだけで、一度も入ったことがなかった。

足を踏み入れると、油の匂いと暖かい空気が迎えてくれた。

 

カウンターに座り、メニューを指さす。

「これ、ひとつ」

声は少し掠れていた。

出てきたのは、具がたっぷり入った定食だった。

味噌汁の湯気が立ち、白いご飯が丼にふんわりと盛られている。

焼き魚と小鉢香の物、それから卵焼きまでついていた。

 

箸を持ち、ご飯を口に運んだ。

熱くて、柔らかくて、甘い。

噛むたびに、口の中に広がる米の粒の感触。

おいしかった。

 

涙がでた。

食べている間中、ずっと涙が止まらなかった。

店の人が怪訝な顔をしていた気がする。

けれど、やめることはできなかった。

これが、生きるということなのだと今さらのように思い知る。

 

あの男に、あんなことをされた。

あんなに痛くて気持ち悪くて、死んでしまいたいほどだった。

けれど、その金で、こうして温かい飯を食えている。

命が、繋がっている。

 

そのことが、悲しいのか、嬉しいのかそれとも悔しいのか、自分でも分からなかった。

ただ、すべてに涙が出た。

 

食事の後、ニャアンは服屋に入った。

今まで、安い古着を扱う露店しか見たことがなかったから店の明るさに気おされた。

だが、ここで買わなければ次はないかもしれない。

男の前に立つための服が、必要だった。

 

店の奥、下着売り場に進んだ。

白や黒、淡い色、レースのついたものシンプルなもの。

どれを見ればいいのか分からず、ただひたすらに安いものを探した。

けれど、ふと、一着の白いブラが目に入った。

刺繍がほんの少しだけ施されていて、かわいらしかった。

昔の自分なら、きっと手に取らなかった。

手に取れなかった。

けれど今の自分は、違う。

 

――これは、仕事着だ。

そう自分に言い聞かせて、ニャアンはそれを選んだ。

合わせるショーツも買った。色は白。

汚れそうだな、と思った。

けれど、汚れても金を稼げばまた買える。

それは、一種の割り切りだった。

 

少し大きめのカーディガンと、体に沿うやわらかいスカートも買った。

どこかの誰かのふりをしているみたいで、少しだけ気分が変わった。

ガラスに映る自分が、昨日までの飢えた難民の少女には見えなかった。

見えなかった、だけだ。

 

だから、その日の夜。

ニャアンは、また、自分の体を売った。

 

今度は、自分から客を探した。

繁華街の隅、裏路地の明かりの下。

壁にもたれて、通り過ぎる男たちの目を見た。

怖くなかったと言えば嘘になる。

けれど、昨日までの理由なき恐怖ではなかった。

これは、生きるための仕事だ。

割り切ることで、心を守ろうとした。

 

最初に声をかけてきたのは、スーツを着た中年の男だった。

酒の匂いがした。

 

「いくら?」

ニャアンは値段を言った。

相場なんて知らなかったが、昨日もらった額と同じくらいを言った。

男は少し考えて、頷いた。

それで、決まりだった。

 

ホテルに入り、また知らない男に身体を開く。

今度は痛みに少しだけ慣れていて、嫌悪感に少しだけ蓋をして心を体から切り離した。

 

終わった後、金を受け取った。

昨日より多くの金だった。

不思議な気分だった。

こんなに簡単に、金が得られる。

生きるための金が、こんなにも簡単に。

 

帰り道、コンビニでおにぎりと甘いパンと飲み物を買った。

部屋に戻り、ベッドの上であぐらをかいてそれを食べた。

一日中、誰にも優しくされなかった。

触れられるたびに、心のどこかが削れていくようだった。

けれど今、食べ物はあって部屋はあって、明日もどうにかなる。

それが、心のどこかでほんの少しだけ安堵に繋がっていた。

 

――これでいい。

ニャアンは自分に言った。

これでいい。

生きるための、方法なのだから。

誰も助けてくれない。

誰も愛してくれない。

なら、自分で自分を売って生かすしかない。

体は消耗品。

心は、もうとっくに死んでいる。

 

その夜、ニャアンは久しぶりに腹が満たされた状態で眠った。

涙は出なかった。

翌朝、目が覚めた時彼女は新しい下着を身につけて、また街へ出た。

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