※この作品はR-18です。

つきなき旅路の番いたち   作:水城 真子

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行方を求めて

ああ、ひもじい。

鬱々とした感情を増幅させる森をさっさと抜けようと、休憩を終えた四人は歩き続けていたが、スープだけでは空腹を、心も満たせず苛立ちを募らせていた。

こんなことになるなら、もっと肉を取っておけばよかった――サイレントは土を踏みしめながら、声に出さず溜息をつく。同時に、料理を一任していた今はもういない男をまた思い出してしまい、頭を振った。

 

「むっ……見よ!あちらは明るいぞ」

「x1f972(よかったという電子音)」

「よかった……やっと出られるのね……」

 

立ち並ぶ樹木の感覚が広くなり、影をもたらしていた木の葉が逆光に透けて、足元にいくつもの木漏れ日が射す中を進むと、森が開けて広大な平原へ出た。見渡す限り萌黄に彩られた緑で埋め尽くされ、膝を隠せる丈の草が風にそよそよと揺れている。葉についた細かい露が光を反射し波打ち際のように煌めく中、リージェントは地平線まで続く緑の最果てを指差した。

 

「あれはなんだ?浮かんでおるのか?ひっくり返っておるぞ?」

 

皆でリージェントの指し示す頭上を仰ぎ見る。

地平線の上に、砂岩を用いたであろう大きな白っぽい城が浮かんでいた。だが尖った頂部や切妻屋根は地面に向けられ、上下が反転している。輪郭は紙に記した線が水に濡れて滲んだようにぼんやりとしており、歪んだ壁や屋根は風に煽られ、たなびいたように伸びている。

 

「x1f3f0?(お城?という電子音)」

「あの浮かび方……蜃気楼かしらね」

「蜃気楼だと?そういえば、サイレントのカードにそのようなものがあったな」

「本来は、空気の中で屈折した光によって虚像が見える現象のことを言うの。あんな風に、遠くの景色が伸びたりひっくり返ったりして、実際とは違う景色が見えるのよ。スターリスにはないの?」

「ほう。あのような大きな虚像が存在するとは……面白い!」

 

リージェントは、またがっているディフェクトの肩から身を乗り出すようにして、頭上に浮かぶ幻影をじっくり眺める。

 

「プレオンにはまだまだ余の知らぬことが豊富にあるな!しかし……」

 

好奇心を満たしたリージェントは言葉を区切り、再び緑の海を見渡した。

 

「この辺りには何もないようだな……ふむ。あの城は虚像ということだが、お主の言う通りだとすると、実際の城は存在しているのだろう?」

「ええ」

「ならば、城へ向かってみるとしよう。『あの方』、とやらがおるのではないか?」

 

蜃気楼を眺めていた一行は、リージェントが強調する一言に顔を見合わせた。

ネクロバインダーは足元のオスティとも視線を交わし、手の内にある鎌をきつく握る。

 

「……そうね。ここまで来たからには、そいつの顔を拝んでおかないと」

「x1f620(ぷんすかした電子音)」

 

ディフェクトが怒りを滲ませたような電子音を放ち、サイレントも黙って同調していた。

皆、分かっている。崩落した橋の大仰な仕掛けは『あの方』とやらによるものだろう。あの方とやらがいなければ――仲間を一人、失うことはなかった。四人の心に居を構え始めている喪失感や、怒りをぶつけるのに『あの方』とやらは最適の相手だ。

そうと決まれば出発だ。目的地が決まり、四人は空に浮かぶ城を目印に大平原を進む。

草の中をしばらく歩いていると、ディフェクトに搭載されているセンサーが、ピピッ、と反応した。ディフェクトは立ち止まり、センサーが反応する方角へ向けて指を動かす。

 

「x1faf5(指を差す電子音)」

「あっち?あっちに何かあるの?」

 

ディフェクトの指先を追ってみると、豆粒ほどの遠く、草に埋もれるようにして円形の建物が見える。

ネオーの地図を頼りに塔を登っているときは、分かれ道があったらどちらに進めば魔物がいるのか、どこで休むことができるのかが分かり、道に苦労しなかったが、今は全てが手探りだ。四人は辺りを警戒しながら建物へ近づいていく。

サイレントの肌よりも薄い色をした、何かの毛皮で骨組みを覆った建物の前までやってくると、一度立ち止まり見回す。緑一色の草原に似つかわしくない緋色の木で出来た押扉が目についた。扉の前には、スパイアを登る際によく出会う、商人が身につけている仮面と同じ絵が描かれた欅(けやき)の看板が立てかけられている。

四人は赤い扉を開けて中に入った。途端に、香辛料や茶葉と思われる華やかな香りが出迎えてくる。屋根部分には中心から放射状に木の梁が渡され、刺繍の施された赤っぽい布で装飾がされていた。中央には錆の目立つ角ばったかまどが置かれて火が焚かれており、外気の爽やかな空気と違う温もりが室内に満ちている。

 

「やぁ。いらっしゃい。お客さんかい?」

 

かまどの奥には、土や砂の汚れが目立つ仮面をつけた商人がいた。スパイアを登る際に見かける商人同様に、紋様の描かれた敷物の上に腰を落とし、四人と顔を合わせると手を上げて歓迎してくる。

ひとまず四人は陳列された商品を眺めてみる。敷物の上にあるカードは無色の三枚だけ。代わりに壺から溢れんばかりのスパイスや薬草、ポーションを敷物の上に隙間なく並べて売っていた。普段、塔を登るときに出会う商人とは違い、敷物の上以外にも、骨組みの周りを囲うようにして多種多様なものに値札がついていた。

ディフェクトが室内に陳列されている商品をくまなくスキャンし始め、ディフェクトと共に商品を吟味しながら、リージェントは室内をぐるりと見回し、目を細める。

 

「お主、レリックは販売しておらんのか?」

「ははは、おれはスパイア商人ランキングだと下のほうでねぇ。レリックは大体ランキングが上のやつが持って行っちまうんだ。それに俺はこういうスパイスとか草の匂いが好きでねぇ。ほとんど趣味みてぇなもんさ」

 

ネクロバインダーがかまどの近くに置かれている壺の蓋を開けた。くるみがぎっしりと詰め込まれている。

 

「肉とか魚とかの食料はないの?」

「んー、どうだったかな……」

 

商人は頭をかきながら手が届くところにある壺の蓋を一つひとつ開ける。どの壺にもたんぱく質となるものは入っていなかった。

 

「前まで蜥蜴の肉があったけど、売れちまったみたいだ。悪いな」

 

壺の蓋を閉じた商人が顔を上げる。

 

「にしても、こんな僻地に来るなんて、もしかして……あんたたちも、あの方の祝福を授かりにきたのか?」

「ええ。もちろん」

 

情報を集めるため、ネクロバインダーはわざと声を弾ませ、自然を振舞いながら頷いた。

 

「そういうあなたも?」

「授けて頂ければ最高だが、足蹴にされちまってねぇ。前にたまたま入荷したレリックを持って行ったけど、そんなんじゃダメだって断られちまったよ」

「……そうだったの。実は……私たち、あの方に捧げたいものがあったんだけど……」

 

ネクロバインダーはちらりとリージェントへ目配せする。察したリージェントは腕を組み、それとなく溜息をついた。

 

「うむ。盗まれてしまってな……あちこちを探しておるのだ」

「x1f641(困っているという電子音)」

「あー、この辺じゃよくある。多分、騎士団の仕業だな」

「……騎士団?」

 

訝し気なネクロバインダーの声に、商人が首を傾げる。

 

「ありゃ、知らないのか?」

「ふむ、お主、詳しいようだな。我らに教えるがよい」

 

話を聞き取ろうとするリージェントに合わせ、ディフェクトがスキャンの手を止めて商人の前に移動する。

 

「んー、詳しいことって言っても、俺も又聞きだからなぁ……レリックや珍しいものを騎士団に寄付すれば、騎士団を立ち上げ、今も団長を務めるあの方が寄付に応じて祝福を授けてくださるそうだ。見たことはないが、あの方の持ってる聖剣はすごいらしいぞ!どんな魔物も触れるだけで一刀両断するんだとか」

「ほう。剣の使い手か。余も手合わせ願いたいものだ」

 

リージェントは目を閉じ、剣を振るうという『あの方』と、己のソヴリン・ブレードを交えて血沸く戦いに身を投じる光景を思い浮かべた。

 

「この辺りの魔物を退治してくれるもんだから、有難いことだよ。ただ問題は、あの方の強さを盲信して集まった下っ端の騎士……いや、ほとんど野党崩れみたいな連中だな。あの方のためにって、目を合わせた連中に寄付を強制してよ、ノルマみてぇにレリックを取り立てて、ちゃっかり自分のものにしてるときがあるらしいんだ。俺も通りかかった連中に、一回身ぐるみ剥がされそうになっちまって……たまたま逃げれたからよかったんだけどよ」

 

商人は大きな溜息をつきながら、足元で傾いていたスパイスが入った壺の位置を直した。

 

「あなた、それでレリックの販売をしていないの?」

「ま、そんなとこだ。んで、何か買っていってくれるかい?」

 

四人は目線で会話する。

気のいい商人への情報料として、ここでいくらかは支払って構わないだろう。

 

「もちろん、買うわ」

 

と、ネクロバインダーが頷いた。

どちらにせよ近くに店はないし、そもそも人気がない。地図のない先行きの不透明な旅路だ。準備を怠っては生き残ることができないだろう。ここで補充を済ませなければ――四人は繫茂の地でかき集めた有り金をはたいて、食料とポーションを揃えることにした。量り売りされていた日持ちする粒の丸い米や木の実、味付けに使う香辛料を買い、食料袋に入るだけ詰める。サイレントは今後の交戦や狩りに使用できそうな爆弾のカードを、余ったゴールドを使って購入する。

 

「ありがとな!まいどあり!」

 

四人が支払ったゴールドを皮の袋に詰めた商人は、出発する四人を見送りにわざわざ外まで出てきて手を振ってくれた。

足で草をかき分けて歩きながら、ネクロバインダーはオスティに頼んで、自分の荷物の中から羊皮紙製の背表紙が青い本を取り出してもらう。遭遇した魔物の特徴やどのような行動をとるのか、動植物の絵図に効能など、オスティと協力して細かに記載した手製の図鑑だ。しばらくページをパラパラとめくって熟読するが、ぱたりと音を立てて閉じる。オスティに渡して荷物の中へしまいこむと、ネクロバインダーは小さく溜息をつく。

 

「地図にも載らない場所の次は、強盗まがいの騎士団ね……図鑑には何の記載もないわ」

「この辺り一帯で悪さをしているようだな。それに聞いたか?」

「ええ。あの方、とやらが騎士団を創設し、団長をしている。橋の上で見た、あの機械に入れろっていうのは、騎士団長の名前だったのね」

「商人の話だと、一部とはいえ、騎士団は守るべき弱者から富を奪い、独占しているということだったな」

「x1f928(ひどいという電子音)」

「そうだろう、ディフェクト。余はそのような下賤な者は見過ごせん!」

「それに……財宝を集めている騎士団……私の勘だけど、もしかしたら……」

 

ネクロバインダーの言葉の続きは、平原中を切り裂くように響き渡る女の甲高い悲鳴によって遮られた。

四人はすぐに足を止め、声の在処を探って周囲を窺う。進行方向の先、傾斜の緩やかな小高い丘の上に人影が現れ、こちらへ足早に駆けてくるのが見えた。

 

「誰か!誰か助けて!」

 

今にも泣きだしそうな大声を上げながら近づいてくる女が、後ろへ振り返る。女の視線の先、丘を越えてきた人影が三名、剣や槍、杖といった武器を手に女へ迫っていた。さらに三名に加勢するようにして、栗毛色の馬と、馬に跨る騎手が見える。

 

「貴様止まれ!」

「あの方への捧げ物を持っているのだろう!」

「祝福が欲しければここで出すのだ!」

 

女を追いかける者は全員、アイアンクラッドが纏う青銅で出来た金に近い光沢を放つ鎧と違い、兜や喉当て(ゴルゲット)、小手に膝当て、具足まで全て、白く輝く金属の鎧で全身を覆っていた。

 

「もしかして、あれが例の騎士団ってやつかしら……?」

「騎士団の情報が欲しいところに、向こうから来てくれるとは幸先よいではないか」

 

すぐに戦闘へ移れるよう皆で身構えると、丘を越えてきた女が四人を見つけ、天の助けだと言わんばかりに走り寄ってくる。

 

「助けて!お願い!」

 

同じ女であるサイレントへ縋り付くように駆け寄ると、くすんだ茶色い外套で全身を包んでいる女は激しく息を切らして、震えながらへたりこむ。

サイレントは仮面越しに女を見下ろした。女の外套の隙間から、襟を深く刳(く)った木綿の白いブラウス、踝までを覆う丈の長い灰色のスカートの裾が覗く。走っている間に脱げてしまったのか、革靴を片方しか履いていない。

仮面の内側で目を細めて女を細かに観察しながら、サイレントは察した。

――こいつ、違う(・・)な。

 

「お願い……助けて……」

 

ぜぇぜぇと息を切らして草の中へうずくまる女を心配して、ディフェクトと彼にまたがるリージェントが近づく。

 

「お主、どうした。騎士団に見つかったのか」

「そ、そうなの……!レリックを持っていないときに……見つかって……」

「噂通りの連中だな。だがお主、もう大丈夫であろう!幸運にも余に会えたことを感謝するがよい!」

 

迫りくる騎士たちを迎え撃とうと、ディフェクトと共にリージェントは女を守るように足を前に出す――が、サイレントがディフェクトの肩を掴んで押し止めた。

 

「お姉さん……?」

 

鎧を纏う三名に、馬に跨った騎士もいよいよ追いつき、剣を持っていた騎士が刃の先をこちらへ向けてくる。

 

「貴様ら、その女の仲間か?」

「ちょうどいい。ここへ来たという事は、あの方の祝福が目当てだろう?」

「祝福を得たければ、対価を差し出すのだ」

「さもなくば……」

 

馬に乗った騎士が言葉を区切ると、女を、四人を逃がさぬよう騎士たちが前後左右を囲い込む。

サイレントは騎士団の襲撃に怯える女の前へしゃがみこみ、女の胸倉をつかんで引きずり立たせる。

 

「お姉さん何をするの……!?」

「サイレント、何をしとる!」

 

困惑する女を無視し、サイレントは女の外套を無理矢理引っぺがして草の上に投げた。外套が地面に落ちると、どしゃりと本棚が倒れたような鈍く重い音がした。

 

「……お嬢さん、どうして、その外套の下にあるものを使わなかったの?」

 

ネクロバインダーは、女が外套の内側に隠し持っていた分厚い魔導書や、隠し刀、分銅鎖といった数々の暗器に目を通しながら、持っている鎌を構える。

脱げたというより途中で脱いだとしか思えぬほど綺麗な足、片方の靴についている泥も薄く小綺麗で、農家の身なりのような旅に似つかわしくない軽装、見せかけるにしてももっとマシな方法があるだろう――サイレントは内心鼻で笑いながら、旅人を偽って近づいてきた女を払って押しのけた。女がわなわなと身を震わせるが、眉間には悔しさからか深い皺が刻まれている。

 

「助けようと油断したところで、私たちからレリックを奪うって寸法かしら?」

「x1f620(ぷんすかした電子音)」

「なるほど……我らを欺こうとしたか。サイレント、よくぞ気づいた!皆の者、容赦は要らんぞ!」

 

リージェントが戦闘で使用する星屑(スター)を煌めかせたのを合図に、ディフェクトはリージェントの頭上高くにオーブを浮かべた。サイレントは既にナイフを抜き放ち、眼前の女の喉を捉えていた。

騎士団の一員である本性を露わにした女は、顔を歪ませながらスカートの内へ手を入れ、クナイに似た短刀を取り出し、サイレントを睨みつける。

 

「チッ……!みんな、こいつら全員やっちまいな!」

 

女が吐き捨てたのと同時に、リージェントはスターの力を乗せた星霊の波動を放ち、囲い込む騎士団の面々を怯ませる。追い打ちをかけるようにディフェクトが槍を手にする騎士へ向け、ボールライトニングを命中させた。衝撃で手にしていた槍が草に落ち、無防備になった騎士の懐へオスティが滑り込んで爪弾きにする。

舌打ちする女が悔し紛れに目の前のサイレントへ刺突を繰り出すが、あっさり見切ったサイレントは音もなく背後へ回り、毒を塗り付けた刃を女の背中に突き刺した。よろめく女に、ネクロバインダーが冒涜の力を秘めた鎌で女の腹を思い切り裂く。

 

「ち、ち…く……しょう……」

 

血濡れた女は喉を押さえて正常な呼吸を取り戻そうとしたが、サイレントの毒はすぐ全身へ回り、短刀を手にしたまま地面へ倒れ込む。

残る騎士は三人。ディフェクトがリージェントとともに剣を持つ騎士の正面へ回り、ネクロバインダーとオスティが杖を手にした騎士と睨み合う。サイレントは馬に乗る騎士を逃がさぬよう、外套の内側にある狩猟道具へ手を触れながら、いつでも息の根を止められるよう静かに近づく。

 

「こ、こいつら……!」

「まずいぞ……ここまで来て……」

 

三名の騎士に動揺が走り、四人の顔を見回しながら後ろへ足を動かし始める。レリック欲しさに、似たようなことをこれまで出会った旅人に繰り返していたのだろう。だが今回は力を見誤ったことに気づき、退却を決めたようだ。

 

「怖気づくには早いであろう。騎士とは名ばかりか?」

 

リージェントが皮肉を口にしながらディフェクトとともに少しずつ距離を詰めるが、騎士はじりじり下がり続ける。

 

「くそっ……せっかく手に入れたってのに……!」

「おい、お前!さっき団員から預かったやつを城へ……あの方の元へ持って行け!」

 

剣を構えた騎士が懐から何かを取り出し、馬の騎手へ向けて放り投げる。

騎手が頭上でキャッチしたものを即座にスキャンしたディフェクトが、これまで聞いたことのない大きな電子音を放ち、視覚ユニットを輝かせた。

 

「x1f5fa!(地図の電子音)」

「むっ!それは……ネオーの地図ではないか!」

 

四人が騎手の手の内にある、古びて退色した巻物へ注目する。間違いない。繫茂の地で何者かに盗まれ、ずっと探し求めていた地図だ。

 

「やっぱりあなたたちが盗んでいたのね!」

「お主ら、よく聞け。その地図は我らの所有物だ。大人しく返却すれば、我らはこれ以上傷つけぬ。望みならば見逃し、立ち去ろう。素直に寄越すのだ」

 

リージェントが指を突き出し、ディフェクトとともに馬上の騎士へ迫る。

 

「余は寛大だ。二度は言わぬ。地図を渡すのだ!」

「x1f624(そうだそうだと言う電子音)」

 

騎士たちが互いに顔を見合わせる。

だが最後の抵抗だと言わんばかりに、剣と杖を持った騎士は武器を構え、馬に乗った騎士を守るように立ち塞がった。騎手は手綱を操ると、元来た道を戻るようにして馬の尻へ鞭を叩き込み、全速力で去っていく。

 

「待ちなさい!」

「貴様ら、ようやく手に入れたあれを……!我らから盗むというのか!」

「盗んだのは貴様らだろう!」

「行かせるものか!死ね!」

 

武器を振りかぶってくる二人の騎士へ、ディフェクトが共振変圧器(テスラコイル)を起動して浮かべたオーブの雷を叩きつける。金属の鎧を通じて流れる電流に大きく痺れ、隙だらけになったところへオスティが騎士たちをまとめて頭上からぺしゃんこに押し潰し、絶命させた。

 

「今度こそ逃がさぬ!皆の者!行くぞ!」

 

四人は頷き合い、馬の姿を見失わぬよう平原を駆ける。

しかし、馬の方が当然の如く四人のスピードを上回る。早くも丘を越えて、馬が視界から見えなくなった。地面が馬の蹄によって大きく抉られた跡を辿り、丘を乗り越えれば、草深い窪地が四人の視界へ入ってくる。こんもりとした葉を蓄える木々が林立し始め、窪地の中心には透明な水を湛え、雫状の形をした広大な湖があり、小さな点と化した騎士が湖沼へ向けて馬を駆らせているのを見つけた。

ディフェクトが湖へ最短で下りられる道を計算し、先導するように駆け下りる。草の中から白やグレーの石灰岩がごろごろ顔を覗かせるようになり、オスティが岩を殴りつけてどかす。岩の狭間をサイレントとネクロバインダーが走り抜けたとき、サイレントの足元を何かが掠めた。

岩の影に隠れていた騎士団員が弓矢を手に何人も姿を現し、サイレントは走りながら即座にいくつものナイフを指と指の間に挟む。

 

「待ち伏せか!」

「リージェント!ディフェクト!私たちがこいつらをどうにかするから、追いかけて!見失っちゃダメよ!」

「無論だ!余に任せておけ!ディフェクトよ!行くぞ!」

「x1f44c(もちろんという電子音)」

 

リージェントが頭部にしがみつき、振り落とされないよう腰を屈めたのを確認すると、ディフェクトは馬に乗った騎士をロックオンして追尾する。いくつかのシステムを起動して騎士が放つ矢を避けると、ディフェクトはさらに加速した。

サイレントは放たれてくる矢をナイフで撃ち落としながら、丘を駆け降りる足に弾みをつけ、無数に転がっている岩を蹴って曲芸(アクロバット)した。着地する寸前で足と腕を使って地面を思い切り叩きつけ、騎士団に大きな衝撃を食らわせる。

ネクロバインダーが呪文を唱え、死をもたらすもの(デスブリンガー)を呼び出すと、騎士たちが脱力し、弓を撃つ手が止まった。

サイレントがさらに無数のナイフを雨のように放ち、進路を塞ぐ騎士を蜂の巣にする。なおも立ち上がろうとする騎士をオスティが殴って退けると、ネクロバインダーが撒き散らした破滅の力が回り、騎士たちは次々と草の中へ倒れた。

二人が丘に降り立ったときには、ディフェクトとリージェントは既に立ち並ぶ樹木の中へ消えてしまい、姿が見えない。

――どこだ。二人ともどこに行った。

 

「貴様ら!行かせんぞ!」

 

背後から騎士の残党が迫り、弓矢を構えた。樹木の影に隠れてやり過ごしつつ、二人はディフェクトの足跡を探したが、騎士たちの無数の足跡が重なって判別できなくなってしまった。

仲間の行方が分からなくなり、サイレントは騎士の動向を探りながら舌打ちした。

――仕留めたと思ったのに。

 

「橋を渡ってから、妙に力が発揮できないけど……この辺りも呪いか何かの力が効いているみたいね。早く抜けないと……!」

 

隣の木にオスティとしゃがみこむネクロバインダーの言う通り、この一帯も、例えるなら常に旅人を脱力させるヴェールに覆われているかのように、ナイフのキレが悪い。

サイレントの隠れる樹木の裏に弓矢が突き刺さる。矢を再装填する隙をついて、二人は木立の中へ分け入って身を隠しながら進んだ。途中で息を潜めていると、自分たちの気配を探し当てられなくなった騎士たちが反対側へ走っていく。上手く騎士団を撒いたところで再びリージェントたちを探す。木々の隙間から先ほど丘を越えたときに見えた湖が見え、二人は硬い灰色の岩盤を敷き詰めた湖岸に出る。騎士団に注意しながら辺りを見回すが、交戦の音はもちろん、オーブや星屑の煌めきさえ視界に捉えられない。

二人の間に焦りが募る。既に一人、失っているのだ。これ以上仲間とはぐれるわけにはいかない。

 

「奴らめ!どこへ消えた!」

「探せ!反逆者だ!仕留めろ!」

 

右手から騎士たちの殺気立った怒号が聞こえてくる。やむを得ず、サイレントたちは湖の縁に沿って左側へ走った。

段々対岸が見えるほどに湖の幅が狭まってくる。ネクロバインダーが騎士の追手が来ていないか目を配ったとき、右手の湖岸に人工的な閃光が迸り、木々の間から何人かの騎士たちが弾き飛ばされ、湖に転落するのが見えた。

 

「あれは二人の……急ぎましょう!」

 

サイレントとネクロバインダーはどんどん細まっていく湖に沿って突き進む。

立ち並ぶ木々の隙間を抜け、名もなき草花が生い茂る大地を急ぐと、魔窟で遭遇するカイザークラブでも往来できそうな、巨大な鋼鉄製の水門が見えてきた。湖水を堰き止めている黒ずんだ扉体(ひたい)の左右には、石造りのとんがり屋根が特徴的な、煙突と見間違う見た目の物見櫓(ものみやぐら)が建てられており、白銀の鎧に身を包んだ騎士が何名か顔を覗かせている。

 

「貴様!地図を返すのだ!止まれ!」

「x1f620(怒った電子音)」

 

対岸を駆けるディフェクトの電子音と、リージェントの怒声が離れていてもここまで届き、二人は声の在処を確認しようと走りながら目を移す。

右岸にも広がる森の中から、地図を手に馬を走らせる騎士が現れ、水門へ馬を急がせる。

 

「お前たち!通してくれ!これをあの方に……!」

 

馬に跨った騎士が櫓にいる仲間へ向けて地図を掲げるのが見えた。

物見櫓の上から、弓矢を放つために開けられた狭間窓からも騎士たちが顔を覗かせ、騎手を確認すると櫓の内部を素早く往来し、配置についた。

 

「なんと、ついに見つけたのか!」

「お前たち、開けろ!通してやれ!」

 

見張り台から大声が飛び、水門の横にある円柱状の建物の頂上、人間をすっぽり覆えるような鉄の鐘が激しく打ち鳴らされ、鐘の真下にある石造りの小さな門が素早く開いた。馬に跨った騎士が潜り抜けると、後ろから追いかけていたディフェクトたちが追い付く寸前で関所の扉は閉ざされた。

 

「x1f4a6(焦る電子音)」

「貴様ら!余の、我らの道を塞ぐでない!どくのだ!」

 

櫓の内部から武器を手にした騎士が次々外に出てきてディフェクトたちを追い詰めようとする。飛び掛かってきた一人の騎士へ、取り逃した怒りに震えるリージェントが星の力を宿した拳を振るい、ノックアウトさせた。

ディフェクトもリージェントに追随して剣を振りかぶってくる敵を腕部で切断し、生まれたエナジーを使い屈折の力を宿したカードを使う。身を焼くような高熱を宿す光が空中で折れ曲がり、突撃してくる敵を叩きつけたと思えば、グラスのオーブが力を放って辺りの騎士たちの鎧を激しく切り裂き、湖の中へ吹き飛ばした。

 

「むっ!貴様らも地図を盗みに来たのか!」

「あの女たちも殺れ!」

「ちょうどいい。あの方から授かった祝福の力を思い知らせてやる……まとめて葬るぞ!」

 

サイレントとネクロバインダーも水門の手前に辿り着いたとき、見張り台にいた兜と胸当てだけを装備した身軽な騎士が一人、湖へ向けて腕を突き出し、何かを掲げた。

 

「あれは……!?」

 

ネクロバインダーが見上げた時、騎士の手の内から白く眩い光が放たれる。サイレントは仮面越しに騎士の手元に注目した。ちょうど今、ディフェクトが浮かべているグラスのオーブに似た真っ白な石が握られており、石から直視できないほどの眩い光線が放射され、湖面に奇妙な文様を描く。

 

「これは……召喚の魔法陣……?」

 

ネクロバインダーが目の前に生まれた光と、記憶の中にある図柄を照会したとき、湖面が震えて波打ちだす。

魔法陣を構成するいくつもの点や線から、逆円錐状に白い輝きが空中へ放散したかと思えば、光の中心にどこからか現れた何かの骨が無数に集う。バラバラだった骨は接着してやがて一つの骨格を生み出し、魔法陣の光が骨格に沿って生々しい肉や皮膚を形成していった。

光が周囲の色を全て奪うほどの強烈な輝きを放ち、四人は腕で庇を作り、目を守る。辺りに色彩が戻ったとき、山の如き体高を持つ存在が水底を踏みしめて立ち上がった。湖に生まれた巨大な存在を見て、リージェントがディフェクトの身体から身を乗り出す。

 

「これは……!?」

 

足元は湖の中に隠れて判別できないが、蜥蜴(とかげ)に似た分厚く重い頭を持ち、ディフェクトのボディを遥かに上回る大きな顎、そして顎の中でのこぎりのように並ぶ円錐形の歯。白っぽい大きな眼球を宿した巨大な頭部に比べて、リージェントの背丈よりも小さいのではないかと思える前肢。しかし爪は牙同様に鋭い。土色の鱗がびっしりと隙間なく身体に並んでいる超大型の爬虫類を前に、四人は一歩後退(あとずさ)る。

 

「まさか……ダイナソア……!?」

「なんだ、それは!」

「巨大な蜥蜴の魔物よ!恐竜とも呼ばれる……!でも遥か昔、プレオンの大地を枯毒が覆い尽くしたときに滅んだはずじゃ……!?」

「x1f996!?(恐竜に驚く電子音)」

 

白い光が完全に消えると、石を持っていた騎士が見張り台を飛び出し、ダイナソアと呼ばれた巨大蜥蜴の背にまたがった。

 

「フン、あの方の祝福があれば、いにしえの力を蘇らせることも可能なのだ。ダイナソアよ!行け!」

 

騎士の命令に呼応し、ダイナソアが湖上より地響きの如き雄叫びを放つ。咆哮によって生み出された暴風が辺りを揺るがし、吹き飛ばされないよう堪えながら、四人は巨大な蜥蜴を見据えた。

 

「飢えているだろう、ダイナソアよ!まずは女から食わせてやろう!」

 

恐竜がサイレントとネクロバインダーへ首を動かして獲物と認識し、一歩、湖の中を歩く。ただそれだけで湖水は激しい波を生み出し、地面がぐらぐら震えて四人の足元が覚束なくなる。

 

「x1f620(怒った電子音)」

 

ディフェクトが足止めしようとオーブの力を解放するが、鱗には何の傷もつかない。サイレントたちへ迫りながら、蜥蜴は巨木の如き尻尾をディフェクトとリージェントへ鞭の如く左右に振るってくる。巻き起こる風にも負けず、ディフェクトが跳躍して事なきを得たものの、蜥蜴の尾が今度は頭上から振り落とされる。リージェントが咄嗟に反射の力をカードから引き出し、空中に星の力を宿した鏡を浮かべた。鏡によって尻尾をどうにか弾くが、あまりに強い衝撃は鏡を大破させ、返しきれなかった衝撃がディフェクトとリージェントの肌を裂き、二人とも大地へ倒れこんだ。

 

「くっ……!ディフェクトよ!大丈夫か!」

「x1f623(なんとか大丈夫という電子音)」

「サイレント、こうなったらやるしかないわ!」

 

迫る巨大な魔物相手にも怯まず、ネクロバインダーは鎌を握りしめる。

迷えば死あるのみ――サイレントも両手にナイフを握りしめて頷く。緊張が全身を漲る中で、心が躍ってもいた。ダイナソアとやらを、滅んだという古代の魔物を狩猟する機会など、滅多なことでない。

 

「オスティ、お願い!」

 

呪文を唱える間にネクロバインダーを守ろうとオスティが前に出る。サイレントは蜥蜴を攪乱するようにアクロバットして横へ飛びながら、毒の霧を蜥蜴へ放つ。毒の臭気に蜥蜴が身震いしながら足を止めた。

さらにネクロバインダーが恐竜の力を削ごうと虚脱の魔手を放つ。ダイナソアの隙をついてサイレントはナイフで急襲するが、鱗が硬すぎてナイフが弾かれてしまう。フットワークを生かした跳躍で蜥蜴と距離を置きながら、サイレントは外套の中からいくつものナイフを投げ放った。なんとか数本が鱗に突き刺さったものの、恐竜は蚊に刺されたとしか思えない涼しい顔をして、サイレントに瞳を動かす。

 

「燃え尽きるがいい!」

 

ダイナソアを操る騎士が白い石を掲げる。蜥蜴の眼前に魔法陣が生み出されたのを合図に、ダイナソアは大きく口を開けて再び大地を揺るがす咆哮を放った。雄叫びに合わせて魔法陣の内側より豪快な炎が生み出され、蜥蜴の吐息が炎の濁流となってサイレントへ襲い掛かる。

ネクロバインダーがすぐさま遅延(ディレイ)の呪文を唱え、ダイナソアが生み出した荒ぶる炎の進行を遅らせて食い止める。即座にサイレントが離脱し、一瞬遅れて炎が辺りの草木を一瞬で灰に変えて焼き払った。炎が生み出す熱波と舞い散る火の粉を防ごうとオスティが手を大きく広げて二人を守ろうとするが、それだけでは防御(ブロック)が足りず、サイレントとネクロバインダーは灼熱に体力が削がれる。

ネクロバインダーと並んで蜥蜴を睨みつけ、サイレントは汗に濡れた手でナイフを握りしめながら呼吸を整える。

毒は既に抜けて、ほとんど効いていないように思われた。攻撃という攻撃がほとんど通用しない。だが――サイレントは炎を生み出したダイナソアの顎を見つめる。鱗は無敵に等しい装甲だが、鱗に覆われていない口の中なら、あるいは――。

 

「ははは!丸焼けになって死ね!」

 

騎手が再び石を掲げ、魔法陣を生み出す。ダイナソアがまた顎を開き、雄叫びを轟かせる――直前、体勢を整え直したディフェクトが背後からロケットパンチを放った。勢いよく射出された腕は騎士の鎧にめり込み、衝撃で騎士の手に握られていた白い石が零れ落ちて湖の中へ消え、水面に小さな波紋を生む。

 

「ぐぅ……っ!」

「させんぞ!」

 

リージェントが星屑を生み出す輝きの一撃(シャイニングストライク)を騎士へ見舞う。騎士がダイナソアの背にしがみついて手を止める間、リージェントはまたがるディフェクトの頭上に微かな赤と青の光を生み出し、星の力を再び手中へ集める。

体勢を整えようとする騎士へ向けて再度輝きの一撃(シャイニングストライク)をぶつけたリージェントは、集まった星屑を束ねて撃滅の力を騎士へ叩きつけ、ダイナソアの背から騎士を振り落とした。

 

「うあああッ!」

 

騎士が無様に湖へ転落すると、ダイナソアが戸惑ったようにその場で足踏みを始め、湖と地面を震わせた。

 

「貴様ら、さっさとダイナソアに食われてしまえ!」

 

蜥蜴の咆哮に巻き込まれぬよう物見櫓に隠れていた騎士たちが再び飛び出してきた。

オスティが囲い込もうとする騎士たちを殴りつけ、ディフェクトも浮かべたオーブの力を解き放って対岸の騎士たちを追い払うが、応援でも来たのか、騎士の数が先ほどよりも増えている。

 

「くっ……!埒が明かんぞ!」

 

リージェントが煌めく激流を展開し、騎士の攻撃を食い止めるのを見届けながら、ネクロバインダーは閉ざされた水門の扉を見上げた。

 

「そうだ、水門……!みんな、水門を開けましょう!ダイナソアを……こいつらをみんな押し流すの!」

 

ネクロバインダーの声を聞きながら、無数の騎士から身を守るために寒気を生み出したディフェクトが、槍を手に襲い掛かってくる騎士の一撃を緊急回避する。

関所の近くへ跳躍したディフェクトとリージェントは、先ほど襲撃を知らせるのに騎士が打ち鳴らしていた鐘の近くに、いくつかの赤いバルブが石の壁に据え付けられ、等間隔に並んでいるのを捉えた。

 

「むっ、あれは……」

 

恐らく止水弁――敵の攻撃を避けて着地したディフェクトは生み出したフロストを足場に即席の階段を作って、石造りの関所の上へ急ぐ。

 

「サイレント、ネクロバインダーよ!時間を稼ぐのだ!ディフェクトよ、水門を開けるぞ!後ろは余に任せておけ!」

 

櫓から、関所の下から騎士たちが続々迫ってくる。襲いくる敵を足止めしようと、リージェントは星の力を宿した城壁を展開する。しかし同時に召喚できるはずのソヴリン・ブレードは、手元に現れなかった。

 

「くっ……何故だ!ミニオンだけでなく、余の剣が何故呼び出せんのだ……!」

 

ディフェクトが騎士を殴りつけながら止水弁へたどり着き、バルブを掴んで回す。だが、びくとも動かない。長年動かしていないのだろう。錆や水垢でバルブが固着しているのをディフェクトの視覚ユニットは捉えていた。

 

「x1f4a6(早くしなくちゃという電子音)」

 

腕部に力を込めると、ギギ、と軋んだ音を響かせながらバルブがようやく動いた。限界まで腕を回し、もう一度回そうとディフェクトがバルブを握りしめたとき、湖上のダイナソアが何かを訴えるように叫び、大気を震わせた。衝撃は関所にまで到達し、ディフェクトの足がふらついて尻もちをつく。

サイレントとネクロバインダーも地面に膝をついた。騎士たちもぐらつく地面につんのめり、攻撃の手が緩まる。サイレントは平衡感覚を取り戻すと、狩猟道具の中から爆弾を取り出した。騎士たちを踏みつけるようにしてダイナソアへ近づいて空高くジャンプし、取り出した燐寸(マッチ)で導火線に火を点ける。

サイレントを視界に捉えたダイナソアが向き直り、食らいつこうとするように口を開けた。サイレントは爆弾を口の中へ投げつけ、バックフリップして巨大な恐竜から遠ざかる。ダイナソアは燐寸の脆弱な火を舌でいとも簡単に揉み消すと、餌だと思ったのか爆弾を丸呑みした。

――くそっ……どうしてこんなとき、あの男がいない。

ネクロバインダーの傍らに着地したサイレントは、声に出さず舌打ちし、唇を噛みしめる。燐寸の頼りない火などではなく、悪魔の――アイアンクラッドの強力な炎でもなければ、恐らく蜥蜴の内で点火することができない。

まだ胃が満たされないとでも言うように、再びダイナソアが咆哮を放つ。火を吹かなくなっただけで幾分マシだが、爆弾を投げ放ったサイレントを次の餌に認定し、大地を震わせながら湖をかき分け、一歩一歩近づいてくる。

 

「くそ……逃げろ!」

 

騎士たちが離れようとするが、ダイナソアが湖上から首を素早く伸ばし、湖の縁にいた何人もの騎士を顎の内側へ招いた。空腹を満たそうとするように鎧ごと騎士たちを噛み砕き、ごくりと飲み込むと、他の騎士も食料と定めたのかダイナソアは誰彼構わず啄みはじめた。

 

「う、うわあぁ!!」

 

すぐ背後に迫るダイナソアの顎がまたも騎士を一人捉え、丸呑みする横で、サイレントとネクロバインダーは櫓の中へ逃げ込む。

素早く石で出来た階段を駆け上がったサイレントは見張り台へ出ると、二つ目の爆弾を点火し、迫りくる恐竜の口を目掛けて投げつける。導火線の火は胃に飲み込まれた騎士たちの血肉によって消されてしまった。

――やはり駄目か。

そのとき、ダイナソアの巨体が生み出す震えと違う振動と、低く唸るような金属音が広がる。

遅れて見張り台に出たネクロバインダーが首を動かす。ディフェクトがようやく固まっていたバルブを動かし、水門が開き始めたのだ。

堰き止められていた膨大な水が轟音を立てながら一気に水門の外へ流れ出す。ダイナソアは流されまいとするように足を止め、踏ん張り始めた。

 

「皆の者!なんとかして水の中に倒すのだ!」

 

オーブと星屑の力で襲い来る騎士たちを水の中へ突き落としながら、ディフェクトとリージェントが反対の櫓の頂上へ現れる。

動きを止めた蜥蜴を目掛け、ディフェクトがボールライトニングを投げ放つ。見事に眼球に命中し、蜥蜴の巨大な瞳を焼き潰した。

 

「オスティ!今よ!」

 

視野を半分失ってふらつく蜥蜴を目掛け、オスティが飛び出し、顎を思い切り殴りつけた。叩かれた衝撃でよたよたと不安定な動きを見せる後ろ足を目掛けて、サイレントが何本ものダガーを投げつけた。鱗に弾かれるが、リージェントが放った三日月状の槍が一本のダガーの柄に追突して勢いを増し、ダイナソアの脛に深々と突き刺さる。刃と穂先が神経に到達したのか、蜥蜴が痛みに吠え散らしながら巨体を左右に震わせた。恐竜の太く巨大な尻尾が水面を乱打し、巻き上がる水飛沫が騎士たちを襲って湖の内へ連れていく。

 

「⚡」

 

ディフェクトが浮かべていた雷のオーブを解放(デュアルキャスト)し、湖面に幾重もの雷を落とす。

感電して激しく身を震わせたダイナソアは、意識を失ったのか糸が切れたように動かなくなり、己の頭の重みに引きずられて足を滑らせ、横になって湖の内へ倒れ込む。水面が激しく波打ち、打ち寄せた大きな高波が櫓と水門へ打ち付けて巨大な水煙を上げ、四人の身体に飛沫が降りかかった。

湖岸に打ち寄せた波が高さを増して再び湖へ戻っていくと、水中に沈んだダイナソアの巨体を飲み込んで押し流し、水門の外へと運んでいった。

巨大な蜥蜴が流されて行き、視界から完全に消え去るまで、四人は息を切らしながら激流の果てを見続けた。

 

「や、やったわ……」

 

気の抜けたネクロバインダーがその場にへたりこむ。サイレントも乱した息を整えながら、水門の先に広がっている大河の行方を未だ見つめる。

ディフェクトが辺りを見回すが、波に、あるいはダイナソアの胃袋へと攫われたのか、騎士団の姿は失せていた。

脅威が去ったことを確認し、四人は櫓を下りて水門の外へ出る。少し先に騎士団が往来するのに使っていたであろう赤茶けた石造りの太鼓橋がかかっており、橋の中央でようやく四人は合流した。

 

「x1f647(ごめんね、という電子音)」

 

肩を落とすディフェクトの頭を撫でながら、リージェントは首を振る。

 

「ディフェクトよ、謝るでない。余の攻撃もあの騎士に届かなかったのだ」

「でも、地図の在処は分かったわね」

 

ネクロバインダーが鎌を握りしめながら頭上を仰ぎ見る。四人の見上げる先には、まだ巨大な城の幻影が静かに浮かんでいた。

 

「うむ。こうしてはおれん。皆の者、取り返すぞ!城とやらへ急ぐのだ!」

 

もう一度、四人は足元を流れる川の行き先を見つめる。巨大な蜥蜴の不在を確認すると、四人は地図を求めて騎士の行方を追った。

 

――…

 

アイアンクラッドたちは、ほとんど垂直にそそり立つ断崖の狭間、勾配のある灰がかった渓谷を通り抜けて、広大なすり鉢状の土と石が転がる開けた道に出る。辺りには砂漠を写し取ったような黄褐色の岩山が立ち並んでいた。相も変わらず荒涼とした大地ではあるが、最初に立ち寄った洞にいたときよりも、濃密な臭気を感じる。繁茂の森とはまた違う、過度な湿度によって生まれるジャングルのカビ臭さや泥の腐敗臭といった、息苦しさを覚える臭いだ。だが、辺りを見回しても岩が連なるだけで、臭気を放つようなものはどこにもない。

 

「♦ーー!」

「♦!」

「♦~~~~!」

 

アイアンクラッドの前を歩くミニオンたちが、リージェントの名前を叫びながら岩山を見回した。ミニオンたちの声がやまびことなって返ってくるだけで、辺りには魔物の姿さえ一匹も見当たらない。

道なき道を進むと、岩の斜面に黒い洞穴がぽつぽつ見られるようになった。最も近い横長で楕円形の洞に近づき、覗いてみる。暗闇に満ちているかと思いきや、台座に祀られ、中空で白い輝きを放つ石によって、ごつごつと出っ張る無数の石の輪郭が浮かび上がっている。

アイアンクラッドの背丈では、奥へ進むのは這いつくばらないと入れないほど狭く、かなり骨が折れることだった。顔を見合わせたミニオンたちが石をよじ登って洞の中へ入り込み、台座の周りへ集まると、石へ向かって腕を突き出しながら振り返る。

 

「~~~~?」

 

言葉が分からずとも、何を言っているのかは理解できる。しゃがんで中の様子を見守っていたアイアンクラッドは、頷いた。

ミニオンの一体が台座をよじ登り、宙に浮かぶ石を手に取ると、張り出した岩盤へ向かって石を投げつける。

岩に当たって石が砕け散ると、空間が蛇行して歪み始めた。やがて光を放ったかと思うと、アイアンクラッドの予想通り、今度は明確に人が使っていたと思われる赤い煉瓦造りの階段が現れた。

これで壊した石は五つ目になるだろうか――洞の狭い入口を匍匐(ほふく)して潜り抜け、アイアンクラッドはミニオンたちと階段を登る。

階段の先は別の岩山にできた狭い洞穴へ続いており、暗い洞内に入るとアイアンクラッドは燃える血で道を照らし、ミニオンたちに足元が見えるようにして注意しながら進んだ。

洞穴を出れば、今度は岩山を囲うようにして舗装されていない砂利道が上へ続いている。捩れたような太い幹を持つ巨木が岩の隙間から生えており、岩山の隙間を吹き抜ける風が当たると杉に似た香りが漂った。道なりに歩き続けると巨木の数が二本、三本と徐々に増え、岩山の外周を三週ほど巡るようにして上ると、無数の褐色の岩を継(つ)ぎ接(は)ぎにくっつけたような、切り立った崖が現れた。

アイアンクラッドは頭上を窺う。ジャングルを彷彿させる臭気が強い――道は合っているのだろうが、崖の周囲は巨木がぽつぽつ並ぶだけであり、上へ続くような道や洞穴の類は見当たらなかった。

 

「~~~」

「~~~~?」

「~~~~~」

 

ミニオンたちが顔を見合わせて何事かを話し合うと、散り散りになり、崖の周囲へ駆けていく。また石によって道が隠されているのではないか――アイアンクラッドもそう考え、石が隠されていそうな箇所がないか見回った。

巨木が一つもない岩壁の前まで来たとき、アイアンクラッドは鉄で出来た梯子が崖の一番上に引っかかっているのを見つけた。しかし梯子は周囲の木と同じように捩れており、下は風雨の浸食によるものか、破損した痕跡があり欠落している。アイアンクラッドは目を凝らすが、まともな梯子は崖の上部、ディフェクトの背丈ぐらいの長さしか原型を留めていない。本来は、自分たちのいる一番下まで昇降できるようになっていたのだろう。

 

「~~~~~」

 

足元に戻ってきたミニオンが三体とも首を振る。道だけでなく進路の手がかりとなる光る石もない、ということだ。

アイアンクラッドはもう一度、時の流れに打ち勝つことができなかった梯子を見上げ、思案する。

――道がなくとも、進むしかない。

強行突破を決めたアイアンクラッドは、鎧を結ぶベルトと服の間にミニオンたちを挟みこんで固定した。次いで今は邪魔になる剣を口に咥えてしゃがみ、滑らないように足元の砂利を両手に擦りこませる。余分な砂を払い落としてから岩肌へ近づき、アイアンクラッドは突き出す岩の形状を見極めながら、手足をかけて崖をよじ登り始めた。

岩の重なり方、角度や割れ目、段差など、手足をひっかけられる場所は潤沢にある。

苦もなく中腹まで登り、次に手足をかけられる岩を探してアイアンクラッドは頭上に首を動かす。一匹の蝙蝠が翼をはためかせ、旋回しながら崖上に消えていくのが見えた。

 

「………」

 

間違いない。あの暗い赤紫色の体毛――洞で見た、ぶら下がらない蝙蝠だ。

休憩を終えて洞を出てからずっと、あの蝙蝠が自分たちの後ろをつかず離れずの距離で飛んでいることに気づき、アイアンクラッドは注意を向けていた。今のところ危害を加えてくることはなく、振り返ると岩陰や木の暗がりに潜んでいるだけ。敵意は感じないが……まるで自分たちを監視しているようにも感じる。

魔法を扱うものは詠唱の隙を埋めるために、使い魔を用いることがあるとネクロバインダーが話していた。それだけでなく、術者から離れて諜報活動を行う場合にも、使い魔を放って調査することがあるのだという。ネクロバインダーがオスティを召喚して彼女と攻撃したり、危害を加える者から守るのと同じように、あの蝙蝠は何者か――それこそ『あの方』とやらの使い魔なのかもしれない。隠された道を通る者が現れたら、ついて回るように指示されている可能性もある。

ミニオンたちを振り落とさぬよう、蝙蝠の動きにも注意を払いながら、アイアンクラッドは次の岩へ手を伸ばす。しかし岩に雨水でも溜まっていたのか表面が濡れており、指が滑った。慌てて反対の手を伸ばして別の岩を掴み、ぶら下がる。

 

「~~~!!!」

 

驚いたミニオンたちが懐で叩いたり蹴ったり暴れ回る。

俺だって橋に続いて、二度も転げ落ちるのは御免だ――ミニオンのクレームに耐えながら、もう一度両手で岩を掴み、岩と岩の隙間に足を挟んで体勢を整える。

再び登り始め、崖にこびりつくようにして残っていた、壊れた梯子の末端付近に辿り着く。鉄錆びた梯子を掴んで引っ張ってみると、朽ちきってはいない。かける手足を岩から梯子へと移して足場を素早く上り、アイアンクラッドはようやく崖の頂上へたどり着いた。

 

「~~~~……」

 

ミニオンたちがベルトの間から抜け出たかと思えば、背負っていた布包みを降ろして地面にしゃがみこみ、水や携帯食を取り出してちみちみ頬張り始める。

咥えていた剣を再び握り、アイアンクラッドは辺りを見回した。登り切った崖の先は、臭気の大元であるジャングルが広がっていた。螺旋状に百枚近い葉を密生させたソテツが行く手の地面に生い茂り、己の何倍もの背丈を持つ、名前も分からぬシダ植物が、森を埋め尽くすように所狭しと群生している。少し先にある地面から何日もの雨を吸ったようにぬかるみはじめ、砂利や石が泥の中に埋もれて消えている。先ほどまでいた岩に囲まれた世界と異なり、いくつもの香辛料を混ぜ合わせたような刺激的で蒸し熱い空気が否応なく鼻を殴ってきた。

アイアンクラッドはミニオンが下ろした布包みを解き、地図を取り出して広げた。右端の崩落した橋と、ほぼ反対に当たる左側の隅に、湿地帯らしき絵図がある。湿地帯の先に滝の絵が記載されており、まだまだ先は長いようだが、ひとまず目的地である城に近づいてきてはいるようだ。

ミニオンたちが代わるがわる飲んだため中身がほとんど残っていないが、アイアンクラッドはポーションの瓶を手に取り、喉を潤す。どこかで水を汲める場所が見つかるといいのだが――地図を布包みに戻し、再度ミニオンたちの身体に縛り付けると、アイアンクラッドたちは緑溢れる原生林へと足を踏み入れた。

ぬかるみに足を取られないよう、進路を剣で突き刺して土壌を確かめながら歩き続けていると、歩いていたミニオンが突然順番に泥の中へ突っ伏し始める。

 

「~~~……」

「~…」

「~~……」

 

呻くような声を上げるミニオンたちを起こす前に、アイアンクラッドも異変に気付き、咄嗟に手甲を鼻に押し当てて息を止めた。鼻を突くような酸っぱい臭いを嗅いだ瞬間、身体中にぴりぴりとした痺れを覚えたのだ。

アイアンクラッドは周囲の葉叢(はむら)に目を凝らす。ハシバミに似たギザギザの葉を無数に生やす低木の後ろから、人間の頭ほどの大きさがある、鈴のような形をした薄紅色の植物が伸びていた。見たこともない植物は、時折先端から空気を着色するかのようにスモッグじみた多量の黄色い胞子を放っている。見慣れぬ植物の花粉なのだろうが、これが痺れの原因らしい。

息を止めながら剣の刃に掌を滑らせ、アイアンクラッドは溢れた燃える血を薄紅色の植物にふりかける。身悶えを放つように植物が上向き、消し炭になりながら萎んでいくと、痺れを伴う臭気が薄まっていく。

そういえば先ほどから動物の、虫の鳴き声も一切聞こえない。この植物が放つ毒じみた胞子によって立ち寄れず、生存することができないのだろう。

胞子が完全に消え去ったところで、泥の中に伏せていたミニオンたちがようやく起き上がった。ふらついた様子を見せつつ、身体についた泥を払い落とすと、三体は互いを見やりながら何かを相談し始める。

 

「~~~」

「~~~~」

「~~~~~」

 

互いに頷き合い、ミニオンたちはアイアンクラッドの身体に引っつき、順番によじ登る。先ほど断崖を登ったとき同様にベルトに挟まったり、肩にしがみついたりしたかと思えば、ミニオンたちは動かなくなった。どうやら泥に足を取られたり、先ほどの胞子で倒れるのを嫌がって、アイアンクラッドの身体を避難場所として決めたらしい。要するに、しばらく歩きたくない、という意思表示だ。

――面倒だが、まあいい。連れて戻ってこいとリージェントに言われたのだ。いちいち倒れられて動けなくなっても困る。

大きな溜息をついたアイアンクラッドは、蒸し暑さに浮かぶ汗を手で拭うと、仕方なくミニオンたちを背負ったまま先へ進むことにした。

行く手に胞子を放つ植物が木々の中から頻出し始め、黄色い煙霧によって視界が遮られるようになる。アイアンクラッドは都度焼き払って進路を確保した。

普段、塔の頂上を目指しているときの、三、四フロア分は歩き続けただろうか。またも視界に入る胞子を放つ植物を血で燃やし尽くし、胞子の靄が晴れると、ぬかるむ道が枝分かれしているのが窺えた。アイアンクラッドは立ち止まって左右を確認する。どちらも先は生い茂る植物と、煙幕のように立ち込める多量の花粉によって先が見えない。

進むべき進路の手がかりを探していると、立ち並ぶ樹木の左側から、チチ、という甲高い声が聞こえた。

――動物の鳴き声?

首を動かすと、地面を覆い隠すように生い茂る左手の草むらの中から蝙蝠が一瞬姿を現した。かと思えば、あっという間に無数の葉が被さって光の入らぬ藪の内へ消える。

 

「………」

 

今のは――例の蝙蝠に間違いない。偶然飛び出したとは思えない。どういうつもりだろう。導いているのか、あるいは罠にかけようとしているのか。

意図が読めず警戒しながらも、アイアンクラッドは左の泥道へ足を踏み入れ、胞子を放つ植物を焼きながら前進する。剣を刺しながら黒っぽいぬかるみを進むと、やがて硬い石に当たる感触があった。耳を澄ますと、ちょろちょろと水の流れる音がどこかから聞こえてくる。道が少しずつ固くなり始めていることを剣で確かめながら歩いていると、突如肩に乗っていたミニオンがアイアンクラッドのもみあげを掴み、引っ張り始める。

 

「~~!」

 

頭(かぶり)を振ってミニオンの手を払うが、懲りずにまた引っ張るので何事かと顔を上げた。ミニオンが鎧の上で飛び跳ねながら腕を突き出す。ミニオンが示す方向を見れば、視界一面に広がっていた原生林の幹や枝、葉が、明らかに人が加えたと分かる精緻さで切り取られており、正円状にぽっかりと穴が開いている。目を凝らすと、遠く穴の中央でぼんやりと何かが光っている。あの輝きは、これまでにいくつも見かけた白く輝く石と同じ。

ぬかるみに注意を払いながら、アイアンクラッドは光の方角へ足早に急ぐ。ジャングルが僅かに開けた先に、苔むした黒い岩が転がる大地が現れた。岩と岩の間をアイアンクラッドの足ほどの幅しかない小川が流れており、水源を探って首を動かした先に、荒々しい岩崖が聳えている。崖の手前は陥没しているが、沈下する大地の中央に、光る石を浮かべる台座があった。

 

「~~!~~!」

「~~!」

「~~~!」

 

大人しくしていたミニオンたちが飛び出し、三体が光る石の元へ駆けてゆく。

アイアンクラッドも濡れた岩を踏みしめ、滑らないよう慎重に進みながら周辺に目を配った。左右には未だ深い緑に覆われた原生林が広がっている。岩崖の頂上を見上げれば、抉れた大地から水が樹木一本分ぐらいの幅をもって流れ落ちてきており、この水が足元の小川となっているようだ。小川とは別に、段を刻むように並ぶいくつもの岩壁の切れ目から糸のように細い水が岩を伝って流れ落ちている。落口の広さを見るに、本来は名瀑と呼ばれるような荘厳な滝だったのだろう。足元で陥没している大地は、上流の水を溜めていた滝壺。しかし何らかの原因で水が枯れてしまったようだ。

お義理程度に上空から流れ落ちてくる水を調べると澄んでおり、アイアンクラッドは手で掬って口に含む。水質に問題はない。後でこの水を汲むとしよう。

 

「~~~?」

「~~~~!」

「~~!~~~!」

 

台座の周りにミニオンたちが集まり、アイアンクラッドも合流した。

細工の施された台座はアイアンクラッドの腰ほどまでの高さがあり、祀られている石も、これまでに見た石の倍以上の大きさがある。ミニオンたちがよじ登るが、台座は三体が並んでもまだ余裕があった。

光る石はアイアンクラッドの目線の高さに浮かんでいる。ミニオンたちが代わるがわるジャンプして石にしがみつこうとするが、なかなか届かない。

 

「それに触るでない!」

 

突如頭上から降りかかる怒声、アイアンクラッドは顔を上げた。

本来流れていただろう瀑布によって抉られた暗い岩壁の間から、胸当てや肘当て、兜に小手まで、全て白銀の鎧に身を包んだ大小さまざまな者が十人ほど姿を現し、岩の縁に立ち並んでこちらを見下ろしている。

――こいつらが騎士団か。

 

「貴様、何者だ!」

「冒険者か?何をしに来た」

「あの方の領地であるぞ。すぐに立ち去れ」

 

律儀に警告を繰り返すため、飛び跳ねるのを止めたミニオンたちが顔を見合わせ、どうする?と言いたげにアイアンクラッドを見つめた。

アイアンクラッドは騎士たちを見据えながら、台座に腕を伸ばした。察したミニオンたちがアイアンクラッドの腕を伝って上に移動し、今度こそ輝く石に食らいつく。掴んだ石を剥き出しの滝壺に放ると、パリン、と皿が割れたような景気のいい破砕音が響いた。

 

「貴様ら!!何をする!?」

「反逆者め!」

「斬れ!あの方に逆らう者は斬り捨てろ!」

 

滝壺へ降りた騎士たちが剣や槍、棍棒といった武器を構えて、アイアンクラッドたちを素早く取り囲む。

相手が攻撃に転じる前に、アイアンクラッドはカードから力を引き出して雷の拍子(サンダークラップ)を騎士たちへ叩きつけた。衝撃に怯む間に、アイアンクラッドは最も近くにいる舶刀(カトラス)とバックラーを装備した騎士の懐に入り込み、柄頭(ポンメル)を兜ごと眉間にめり込ませる。ふらつく騎士を剣で力任せに薙ぎ払うと、弾かれた騎士が勢いよく岩盤へ叩きつけられて武器を手放し、息を失った。

鉈を手にした別の騎士が、無防備な鳩尾(みぞおち)を狙って突進してくる。アイアンクラッドは冷静に見極めて突き出される相手の刃を小手で殴って弾くと、騎士の身体を軸に身を捻って一瞬で背後に回り、兜と肩当ての継ぎ目に刃を深く突き刺した。鎧の隙間からどろどろと流れ落ちる鮮血で絶命を確認してから、アイアンクラッドは刃を捻りながら素早く抜き取る。息つく間もなく、槍を地面へ叩きつけるようにしながら騎士が一人突撃してきた。間合いで見れば明らかに不利ではあるが、アイアンクラッドは槍を握る騎士の手に注目した。相手を寄せ付けぬことを優先しているのか、石突に近い部分を握りしめて刺突を繰り出してくる。

槍は中央を片手で握り、持ち手を中心に柄だけをもう片方の手で円錐状に振り回して素早く防御と攻撃に転じれば、隙なく敵に攻め入ることができる――遠い昔、兵士となるために一族の指導者から戦いの全てを叩き込まれたとき、嫌というほど先人から学んだことを、アイアンクラッドは思い返した。

ただ速さを伴っただけの、型のない粗末な突きの軌道を見極め、アイアンクラッドは迫る穂先のすれすれで身を躱し、空を切る槍を剣で上から叩きつけて地面にめり込ませる。

 

「はっ……!?」

 

地面に刺さって抜けなくなった槍に絶句して止まる騎士に、アイアンクラッドは槍に沿って剣を勢いよく滑らせて鎧ごと相手を真っ二つに解体した。

 

「~~~~!!!」

 

ミニオンの叫び声に振り返る。

囲まれて行き場を失い、台座の上で固まっていたミニオンたちに、槍斧(ハルバード)を持つ騎士が迫り、三体丸ごと払い落とそうと一撃を放った。

咄嗟にアイアンクラッドがブーメランのように投げ放った剣が槍斧を上に弾き飛ばし、衝撃で騎士の身体もがら空きになる。一瞬でも隙が生まれれば、アイアンクラッドの方が疾(はや)い。

回転しながら手元に戻ってきた刃を再び握りしめ、アイアンクラッドが完全な一撃(パーフェクトストライク)を無防備になった騎士へ振り下ろした。両断された騎士は濡れた地面へ膝をつき、無言のまま頭から頽(くずお)れる。

 

「くそっ……!」

「な、なんだ、こいつ……!」

 

動揺する騎士たちが攻撃の手を止めて、間合いを計るように足を前に、あるいは後ろへ動かすのを繰り返し始めた。

アイアンクラッドも台座を背にして剣を構え、囲う騎士たちの動向を探り、次に倒すべき相手を見定める。

互いの間に走る緊張が間もなく頂点に達しようとしたとき、どこかで雷鳴に似た轟音が響き渡った。間を置かず、騎士たちやアイアンクラッドの鎧に、ぽつぽつと透明な雫が降り注ぐ。

――雨?

 

「~~~~!!!」

「~~~!!!」

「~~~~~!!!」

 

背後のミニオンたちが何かを知らせるようにアイアンクラッドの鎧を叩き始める。アイアンクラッドが後ろへ振り返った時、小川を生み出す程度のか弱い水を流していた落口から、一本、二本と水の束が噴射して川の太さが増し、強い雨をもたらした。地鳴りのような振動が一帯を襲ったかと思えば、さらに崖上から水流が勢いよく呼び出し、小川と絡み合って一つの水の幹を形成したかと思えば、それが合図になったかのように突如咆哮を轟かせながら瀑布が噴出した。岩壁を打ち鳴らしながら宙を裂くようにして激流が滝壺を叩きつけて飛沫を上げ、立っていられないほどの強烈な地響きが辺りを包む。

 

「これは!?」

「まさか上流の水門が……!?」

 

突如復活した滝の激流によって、水嵩が凄まじい勢いで増していく。混乱する騎士たちを残し、アイアンクラッドは急いで台座に立ち尽くしているミニオンたちを抱えて走り、滝壺を離れた。岩をよじ登る間にも、膨大な水量が巻き起こす水飛沫で一帯が白く不透明になる。水幕によって視界不良に陥る中、人間よりも大きな岩が積み上がって出来た巨石群を残す高台を見つけ、アイアンクラッドは足元に迫る水の手を逃れて登り続ける。転がるようにして砂利だらけの頂上へたどり着くと、両手両足を大きく広げてミニオンたちが地面の上に倒れ込んだ。

アイアンクラッドは岩と岩の間から、滝壺を見下ろして状況確認に努める。

先ほど自分たちがいた台座付近は水底に沈み、飛沫に覆われて見えない。激流に混じって騎士たちの声がうっすら聞こえるが、悲鳴混じりだ。こちらの高台を登ってくる影は今のところ見えない。

難を逃れた安堵からアイアンクラッドは剣を地面に突き刺し、岩に寄りかかりながら呼吸を整えて心身を落ち着かせた。

後ろにはまたジャングルが広がっている。まだ続くであろう旅路に備え、アイアンクラッドは地面に倒れているミニオンの荷物を漁ってポーションの瓶を取り出した。大きな白い布を垂らしたような水の近くへ腕を伸ばすだけで、瓶の中身はいっぱいになる。

ミニオンたちもようやく一息つくことができたのか起き上がり、アイアンクラッドは水を背負わせて出発を促す。

もう一度騎士たちの追跡がないか、アイアンクラッドが瀑布の周囲を窺ったとき、辺り一帯が分厚い雲に覆われたように暗くなった。

 

「~~~!!!」

 

ミニオンが何かを叫ぶと雲が通り過ぎたように明るさが戻り、直後、滝壺から巨大なハンマーが振り下ろされたかのような轟音とともに、高波の如き豪快な飛沫が上がってアイアンクラッドたちの身体に降りかかり、全身をずぶ濡れにした。

――何が落ちてきた?

兜を流れる水を手で払い落としながら、アイアンクラッドは滝壺を覗き込む。

もはや小さな湖のように水を蓄えた滝壺の中心で、何かがシャワーのように滝の水流を浴びながら蠢き、腹の底まで響くような振動を辺りに振りまきながら、ゆっくり水底より起き上がる。

――なんだこれは?見たこともない、蜥蜴……?

アイアンクラッドの掌ぐらいの大きさがある土色の鱗がモザイクのようにびっしりと並ぶ、巨大な蜥蜴が立ち上がって滝壺より姿を現し、落下した痛みを訴えるように一帯を吹き飛ばすような雄叫びを上げた。

地面が震えてミニオンたちが足元にへたりこむ中、アイアンクラッドは突き刺した剣に捕まりながらドラゴンの如き蜥蜴を注視する。エンシェントであるネオーよりも図体は大きく、ビャードニスを丸呑みできそうな巨大な顎の中には鋭利な牙が並んでいた。激流を流されてきたときにあちこちぶつけたのだろうか、人間の拳より大きな目は何故か片方焦げ付いて潰れており、ところどころ鱗が切れて血が流れている。

 

「ば、バカな……まさか……」

「これは……ダイナソア!?……やっぱり、ダイナソアだぞ!」

「まずいぞ!制御が効かなくなって……!」

 

反対側の岩山に逃れた騎士たちを見つけると、何事かを口走りながら戦慄(わなな)き、ジャングルの中へ逃げ込もうと背を向け走り出す。大きく口を開けた巨大な蜥蜴は、一歩前進して苦も無く首を伸ばすと、鎧ごと逃げ惑う騎士たちにかぶりついた。

ばりばりと、あるいはごりごりと嫌な音を立てながら蜥蜴は牙を動かして金属や肉、骨をすり潰し、余さず飲み込む。咀嚼音が聞こえなくなると、山の如き巨体を持つ蜥蜴は滝壺の中で踵を返し、こちらへ振り返った。

 

「~~~!!!」

 

驚きと恐怖にミニオンが叫ぶ中、巨大な蜥蜴は餌を見つけた喜びを知らせるように、地面を揺るがすほどの咆哮を再び放つ。蜥蜴の叫びは衝撃波となって辺りを襲い、巻きあがる小石と共にミニオンたちがジャングルの近くまで吹き飛ばされた。アイアンクラッドでさえも突き刺した剣に捕まっていなければ立っていられない。

飢えを訴えるような地鳴りじみた雄叫びをまともに浴びながら、アイアンクラッドは蜥蜴の吐息の中に、騎士たちを貪った血肉とは違う、焦げた臭いを嗅ぎ取った。

――なんだ?蜥蜴の口から漂ってくるのは……火薬の臭い……?

 

「~~~……」

 

ミニオンたちを探して辺りへ目を動かす。地面に倒れているミニオンたちのすぐ近くに、ジャングルの道中を手こずらせた、胞子を放つ植物がいくつも咲いていた。吸った花粉が既に全身を巡ったのか、ミニオンたちがぴくりとも動かない。後ろへ退けば、胞子によって身動きできなくなった自分たちは、目の前の顎(あぎと)に飲み込まれ、五体不満足になった騎士たちと同様に蜥蜴の胃袋へ収まることになる。

闘(や)るしかない――覚悟を決めるアイアンクラッドを食べやすい大きさに千切ろうと、早速蜥蜴が顎を持ち上げ、岩盤ごと叩きつけてくる。

地面を転がるようにしてアイアンクラッドは一撃から逃れ、距離を取るが、蜥蜴は地面を揺るがす一歩を踏み出しただけでアイアンクラッドに追いつき、首を突き出してきた。反射的に剣で弾くが、金属の如く硬い鱗には僅かな抉れもない。蜥蜴はもう一度アイアンクラッドへ頭突きし、高台から叩き落とそうとするように左右へ振りかぶる。

 

「……くッ……!」

 

重量を伴った蜥蜴の体当たりは剣で捌けぬほどの一撃であり、まともに食らったアイアンクラッドは弾かれて砂利の上に激しく打ち付けられた。なんとか受け身はとったものの、体勢を整える前に蜥蜴が易々と接近し、またも顎を振りかぶってくる。素早く起き上がってアイアンクラッドは滝の近くへ飛び退(の)くが、蜥蜴の一撃によって高台に並んでいた巨石が次々崩落した。

このままでは暴れ回る蜥蜴によって高台の足場は駆逐され、滝に飲み込まれる。人間の振るう刃など、この蜥蜴には蟻も同然で通用しない。ならば――アイアンクラッドは先ほど鼻孔を掠めた、僅かな臭いの可能性に賭け、掌を刃に滑らせて血を燃やした。

再び蜥蜴が大地を揺るがす咆哮を放ち、嵐の如き暴風を巻き起こして手中の炎を蝋燭のように吹き消す。

食われてたまるか――アイアンクラッドは剣の切っ先を蜥蜴へ突きつけ、来い、というようにわざと手招いた。挑発に乗った蜥蜴が地面を震わせながら近づいてくる。

振り上げた顎を叩きつけて地面を揺るがし、アイアンクラッドの体勢を崩した蜥蜴は、そのまま屠ろうと牙を向けて噛みついてくる。迫る蜥蜴の顎下をすれすれで潜り抜けたアイアンクラッドは、反対側に回った。振り返った蜥蜴が、さっさと食われてしまえとでも言うように口を開ける。

アイアンクラッドは剣に己の手を押し付け、皮膚を深く裂く。飢えた叫びを聞かせようと大きく開いた蜥蜴の口の中へ、血で作った兜と同じ大きさの火の玉を思い切り投げつける。灼熱でさえ己の腹を満たす餌だと思ったのか、蜥蜴は火球を苦も無く飲み込んだ。

火の玉では腹が膨れないとでもいうように、今度こそ蜥蜴が咆哮を放つ。吹き荒ぶ風に耐えながらも、アイアンクラッドの鼻は予想通り、荒々しい雄叫びの中に漂う火薬の臭いが強まってきたのを感じていた。

ようやく胃の異変に気付いたのか蜥蜴が攻撃の手を緩め、己の腹を確認するかのように滝壺の左右を見降ろし始める。

アイアンクラッドは想像しうる事態に備えてミニオンたちの元へ駆け、蜥蜴と己の間に炎の障壁を放つと、三体に覆いかぶさるようにして身を伏せた。

次の瞬間、着火した爆弾が蜥蜴の肉体を内側から木っ端微塵に吹き飛ばす。滝を上流へ押し返すほどの爆風が辺り一帯を吹き抜け、身を守るために放った炎の障壁をかき消しながら、荒々しい熱波がジャングルの中にまで駆け抜けて木々を激しく揺らした。

舞い上がる粉塵とともに、背中や腕に何かが降ってきて当たる感触があり、風が収まったところでアイアンクラッドは剣を杖代わりにしてゆっくり起き上がる。降りかかる水飛沫と砂埃が晴れて辺りを見回すと、身体に振ってきたのは蜥蜴の肉片や、鱗、既に胃液で溶け始めていた騎士たちのバラバラ死体だと分かった。辺りに散らばる無数の残骸に紛れて、蜥蜴の頭部が滝の近くに並ぶ岩の中心に落ちていた。胃から――爆弾から――離れていたせいか、それなりの原型を留めている。

 

「~~~~……?」

「~~~」

「~~~……」

 

爆風によって胞子を放つ植物が焼け落ちたせいか、新鮮な空気を吸って動けるようになったミニオンたちが起き上がった。

三体の無事を確認したアイアンクラッドは、蜥蜴の物言わぬ頭部へ近づく。千切れた顎から魔物を退けたときに見つかる呪符(カード)が顔を覗かせており、アイアンクラッドは見つけたカードを取り出した。どのカードも枠は金色に彩られている。旅の助けになる強力な力を有難く懐に収めたとき、焦げて潰れた眼球が薄らと光を放った。

まさかまだ生きているのかと警戒に一歩下がり、アイアンクラッドは蜥蜴の瞼(まぶた)に剣の切っ先を入れて無理矢理開かせる。命を失って濁る眼球があるかと思えば、内に秘められていたのは随所で見かける白く輝く石。

――まさか蜥蜴は石の力で動いていたのか?

 

「~~~~?」

 

何をしているのかと、ミニオンたちが集まってきた。

アイアンクラッドの剣の先を見て、ミニオンたちはすぐさま瞼(まぶた)の周囲に駆け上がる。三体が協力して蜥蜴の眼に潜む石を掴み、引き上げるようにして血肉の中から抜き取った。

途端に蜥蜴は肉や血を消失し、骨だけを残して一瞬で朽ちる。

ミニオンたちが滝壺へ向かって輝く石を放り投げた。瞬く間に水流へ飲み込まれて消える。

今度こそ終わったと安堵し、アイアンクラッドは吹き出した汗を手で拭う。息を整え、先へ進むべくジャングルへ爪先を向けたとき、グリーブの先端が何かに当たった。立ち止まったアイアンクラッドは足元で鈍く光る輝きを手に取る。

――ナイフ?

蜥蜴の鱗にでも刺さっていたのだろうか。柄や刃を観察すると、アイアンクラッドには見覚えのあるものだった。

――この形状は……サイレントの……。

アイアンクラッドはナイフを握りしめながら滝の噴出口を見上げた。先ほど交戦した騎士たちが、上流がどうのこうのと言っていたが、まさか……。

 

「~~~!」

「~~~~~!」

「~~!」

 

ミニオンたちも見覚えあるナイフを見て、その場で飛び跳ねる。

仲間がまだ生きている――確かな希望を手に入れたアイアンクラッドは、四人の気配を求めて、ミニオンたちと共に再びジャングルへと分け入った。

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