乙女ゲー世界はモブにもヒロインにも残酷で厳しい世界です BITTER END ROUTE 作:氷破 熾央漓(ひば しおり)
「申し訳ありません。お見苦しいところお見せしました……。覚悟は決まってます。どうぞ男爵の好きなようになさって下さい」
その言葉にリオンは「フン」と鼻を鳴らすとカーラの肩を軽く押す。
押されたカーラはそのままベッドに仰向けになり目を瞑る。
リオンは再び瞳が閉じられたカーラの唇に顔を近づける。
未だ身を強張らせ微かに震えているが先ほど迄よりかはマシ。
これ以上は時間を置いては気持ちが鈍ると唇を重ねる。
それはリオンにとって、そしてカーラにとっても初めてのキス。
だがそこには何の気持ちも込もっていない虚しいキス。
そんなリオンの脳裏にオリヴィアの顔が浮かぶ。
この期に及んでまだ未練がある自身に対しリオンは苛立ちを覚える。
「痛ッ……!」
その時カーラの口から小さく悲鳴が零れる。
思わずリオンは顔を放しカーラの顔を見る。
そして気付く。沸き起こる苛立ちに無意識にカーラの唇を噛んでしまったことを。
カーラの唇に指を当てるが出血は無く切れてないないようだ。
その事に安堵の表情を見せながら「スマン……」とリオンは零す。
「男爵……?」
リオンの見せたその気遣うような表情と言葉にカーラは僅かに驚いたかのような表情を見せる。
次の瞬間リオンは再び唇を重ね更には舌も捻じ込む。
それは今思わず見せてしまった気遣いの表情をごまかすかのように。
そしてリオンは自身の唇を、舌を、指を、掌をカーラの乳房に秘所へと滑らせまさぐり愛撫する。
前世で異性との交際の経験は無く今世においても初めて味わう女体の柔肌。
愛情の欠片も抱かぬ相手ではあっても十代の瑞々しい肉体は情欲を掻き立てるに十分だった。
下半身の分身は未だかってない程昂り固くそそり立ち直ぐにでも目の前の体に突き立てたい衝動に駆られるが抑える。
十分な愛撫による前戯で準備を整えねばその秘所に分け入ることは叶わぬことは未経験でも分かっている。
そうしてリオンはカーラの躰をむさぼる様に食らいつくように、だがどこか遠慮気味に愛撫する。
それは荒々しく乱暴でいながら非情になり切れない不器用な愛撫。
そんな愛撫では怯え身を強張らせるカーラの心も体も開かない。
繰り返しの愛撫にもその秘所は未だ固く蜜を滴ることはない。
合意があるにせよ無いにせよこの様な状態では性交など望むべくもない。
だがここで躊躇えば覚悟が鈍るとリオンは意を決す。
リオンは脱いだ上着のポケットに手を突っ込むと、手の平に収まるほどの小さな小瓶を取り出し栓を外し口に含む。
そしてそのままカーラの唇に自らの唇を重ね口移しで中身の液体を流し込む。
瓶の中身は媚薬。本意ではないがオリヴィアとアンジェリカと決別するための覚悟を決めるべくカーラを抱くと決めた以上後に引かない為。
カーラの咽がゴクリと鳴る。その音に口内に注ぎ込んだ媚薬が体内に流し込まれたのをリオンは確認する。
「男爵……? 今のは一体……?」
カーラの問いにリオンは答えず再び唇を重ね舌をねじ込み絡ませる。
それは質問を許さない、或いは答えるつもりが無いという意思の表れの様で。
そして再び愛撫を続ける。
やがてカーラの全身は汗ばみ紅潮し始める。顔を見れば瞳も潤み蕩けた表情を見せる。
媚薬が効いて来たのだろう。秘所も湿り気を帯び蜜が滴り始める。
これならば挿入も可能であろう。
リオンは自身の凶暴なまでに反り返り固くなった剛直の先端を当てると一気に挿入する。
「あああぁぁぁッッッッ!!!!」
瞬間カーラは体を大きく仰け反らせ口からは悲鳴声が漏れる。
カーラの膣内に強引に分け入り突き破ったリオンの剛直は、柔肉に包まれ得も言われぬ快感をもたらしその痺れる様な快楽に全身を震わせる。
だがカーラの方は初めて男に貫かれた破瓜の激痛に顔を歪ませ涙を溢れさせていた。
確かに膣は潤い準備は整ったと言えた。だがそれは最低限であり十分とは言い難かった。
痛みに苛まされ涙を溢れさせるその顔にリオンは胸の奥が疼き、それに耐えかねたかのように前腕をカーラの口元に突きつけ「噛め」と言った。
カーラは言ってる意味が解らないとばかりに涙をためた視線でリオンを見る。
「言う通りにしろ……!」
カーラは戸惑いつつもリオンの声に言われるがままに差し出された前腕を抱えるように手を添え口を当てる。
腕にカーラの唇と歯の感触を確認したリオンは腰を引く。
愛液と血に塗れた剛直が半ばほど引き抜かれ、その過程で膣をえぐるような痛みに堪える様にカーラの歯が腕により食い込む。
そして引き抜いた剛直を全部抜け切る前で止め再挿入すると、再び体を刺し貫く痛みがカーラを襲い、それに耐えるかのように抱えしがみついた腕を掴み立てた歯を食い込ませる。
リオンはその痛みに一瞬顔をしかめるが、直ぐ歯を食いしばりなるべく無表情を装いカーラの顔に目をやる。腕にしがみつき歯を立てるカーラの顔はその瞼もきつく閉じていた。
その顔から自分が痛みで顔をしかめたのを見られてないと察したリオンは安堵し、下半身に意識を集中し欲望を叩きつける。
性器同士の抽送による水音と互いの腰と腰が、肉と肉がぶつかり合う音が、部屋に響き渡る。
やがて限界を迎えたリオンの剛直から吐き出される白濁の欲望がカーラの膣へ注がれ満たしていく。
吐き出し達した余韻にしばらく動きを止め、やがてゆっくりと引き抜くと破瓜の血がシーツに赤い染みを作る。
リオンの剛直が引き抜かれるとカーラの体からも力が抜け噛みついてた腕からも口が離れる。
脱力し放心したカーラを一瞥するとリオンは服を纏い部屋を後にするのだった。
そして思う。もうこれで後戻りできないと。これでもう自分はあの二人には顔向けできない。
自分は二人と――リビアとアンジェ、いやオリヴィアとアンジェリカと共にいる資格を手放したのだと。
リオンが部屋を後にして暫く後、カーラは放心から立ち戻る。今もまだ破瓜の痛みは続いている。
そして気付く。自分の舌に残る血の味と口元についた血。
それがリオンが差し出した腕に噛みついたことによるものだと。
「バルトファルト男爵……?」
カーラは呟いた。既に部屋には居ない自分が先ほどまで体を重ねた相手の名を。
自分の意思では無くやらされたとは言え罠に嵌めようとして、それを逆に看破された。そして責任を問われた。
最悪処刑も覚悟していた自分に科せられた責は、婚約者になれというもので、見ようによってそれは破格の恩情とも言えた。
それでも拒否権もないまま抱かれることに恐怖を感じ、実際恐ろしくもあったが、だがそこに不器用な気遣いも感じられた。
その気遣いに安らぎに似た思いを感じ、それゆえカーラは戸惑うのだった。
様々な想いを胸に考えもまとまらぬまま、その日はそのまま床に就いたのだった。
翌朝、起床し着替えも済ませたカーラはこれからどうなるのか何をすべきか思案を巡らせているとドアをノックする音が。
その音に「ハイ」と答えると扉越しに声がかかる。
朝食にするから来るようにとの言葉に、分かりましたと返事を返しドアを開ける。
ドアの前に立っていたリオンは着いて来いと言うように顎で通路を指し歩き始めたので黙ってついて行く。
食堂に辿り着くとテーブルには既に二人分の朝食が配膳されていた。
リオンが席に着くもカーラは立ったまま。その様子を訝しみリオンが口を開く。
「何をしてるさっさと座れ」
その声にカーラは驚きの表情を浮かべ、そして遠慮気味に席につく。
だが席にはつくが食事に手を付けようとはしない。
「何だ? 苦手な食材でもあったか? 悪いがそこまで気を回してやる義理はねぇから我慢して食え」
「い、いえ、折角供して下さったお食事に不満などあろう筈もございません……。ただ、私の様な身分の下位の者が身分が上の方と共に食すべきではないので……。男爵がお召し上がり終わった後に私は頂きますので……」
カーラのその返答にリオンは驚き理解できないと言った表情を見せる。
「何をバカなこと言ってる。飯食うのに上も下も……待て、お前それ誰に言われた?」
「……オフリー家の……お嬢様に……」
その返答を聞いた瞬間、リオンの脳裏に忌まわしい記憶の一場面が思い起こされる。
それは憎々しい女――父の本妻。妾であるリオンの母と、妾の子であるリオン達兄弟には殊更辛く当たり、食事も共に席に着くことを許さず、挙句冷や飯や残り物しか与えずそれに悔しそうにしてる様に悦に浸っていた様子。
食事に限らず本妻からは、リオンと母たちは常日頃から立場をかさに着た嫌がらせを終始受けていた。
そしてカーラもオフリーの令嬢から同じような仕打ちを受けていたのか、と察せてしまった。
「……食え」
「……え?」
「ここではそんなバカなしきたりも慣例も無いから食えって言ったんだ。冷める前にさっさと食っちまえ!」
リオンの声はやや乱暴でぶっきらぼうで、その一方でどこか照れ隠しのような感情も見て取れる。
リオンに言われるままにカーラは「いただきます」と告げ、スプーンでスープを掬い口に運ぶ。
「あったかい……美味しい……」
言いながらカーラの目に涙が浮かぶ。
その様子からは今までオフリーの令嬢の元どのような仕打ちを受けてきたかが見て取れるようだった。
その後もカーラは食べてる間中、泣きながら感謝の言葉を述べ続けてたのだった。
朝食が済んだ後リオンは紅茶を入れる。ティーカップは二客。リオン自身の分とカーラの分。
差し出された紅茶にカーラは戸惑いの表情を見せる。
「あ、あの……いただいてもよろしいのですか?」
「いいに決まってる。聞くまでも無いだろ。冷める前に飲んじまえ。それとも俺の茶が飲めないとでも?」
「い、いえ、とんでもありません! では……いただきます」
食事も食後の茶も済んだ後リオンは自室でルクシオンに話しかける。
「オフリーの令嬢と、その取り巻き周辺の人間関係などについて調べろ。なるべく詳しく」
『直接あの女に問いたださないのですか?』
「あの女なんて呼び方するな。カーラって、名前で呼べ。勿論問い正すさ。だが一応念のための裏取りだ」
『了解しました。それよりカーラに対する対応が変わられましたか? 絆されましたか?』
「別に……そういうんじゃねぇ。ただ……気になっただけだ。そういう、つもりじゃなかったんだけどな……」
実のところカーラにはお飾りの正妻の、言わば飼い殺しの様な状態になってもらうつもりだった。後々気の合う下級貴族か平民を側室に娶り夫婦愛家族愛はそちらで育む、そんなつもりだった。
弱みを握った状態であれば正妻側室のパワーバランスは逆転する。
それは王国に蔓延る女尊男卑への意趣返しのつもりだったのだろう。
王国の貴族の女性達は夫とは愛の無い形だけの婚姻を結び、夫を蔑ろにし愛人と愛を育む、そんな女が多かった。
リオンが最も嫌悪する父の正妻が正にそんな女だった。
カーラにそんな貴族女どもを重ねるつもりだったが、むしろ彼女こそそんな貴族女どもに虐げられてる側なのでは。
そうであった場合、意趣返しどころかリオン自身が嫌悪する虐げていた側の女どもと同じになってしまう。それは絶対にあってはならない。
だから、その為のカーラに対する裏取り。何があっても取り違えるようなことがあってはならないから。
連休も終わり再び始まる通常の学園生活。
そんなある日中庭でリオンとオリヴィアは偶然顔を合わせる。
だがあの日気まずい別れ方をして以来関係を修復していない二人はどちらともなく視線を逸らす。
そうして互いに視線を逸らしたまますれ違おうとした時、オリヴィアはリオンの隣にいる女生徒に気づき思わず目を剥き振り返る。瞳に滲み出す敵意を隠そうともせずリオンの隣にいる女生徒――カーラを睨みつけ声を上げる。
「リオンさん! どうしてその人が一緒に居るんですか!?」
バッドエンドに求めるのは?
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多少の手心、慈悲や救いは欲しい
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残酷で悲劇的でこそ本懐 手心無用