※この作品はR-18です。

乙女ゲー世界はモブにもヒロインにも残酷で厳しい世界です BITTER END ROUTE   作:氷破 熾央漓(ひば しおり)

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【3】覆せない言葉

「リオンさん! どうしてその人が一緒に居るんですか!?」

 

ある日の中庭、偶然顔を合わせてしまったリオンとオリヴィア。

あの日気まずい別れ方をして以来関係を修復していない二人はそのまま視線も言葉も合わさずすれ違うつもりだった。

だがオリヴィアは声を上げてしまった。上げずにはいられなかった。

 

それはオリヴィアにとって見過ごせないものだったから。

リオンと自身を罠に嵌めた女。自分を口汚く罵ったオフリー、その取り巻きだった女――カーラ。

そんな女がリオンと連れ立って歩む姿に黙ってなどいられなかったのだ。

 

「離れて! リオンさんから離れてください!」

 

オリヴィアは敵意を隠そうともしない視線でリオンの隣にいる女生徒――カーラを睨みつける。

その声と気迫に怯えるカーラはリオンに縋る。

その動きに仕草にオリヴィアは益々苛立ち声を荒げ歩み寄りカーラに手を伸ばそうとする。そんなオリヴィアの前にカーラを庇うようにリオンが立ち塞がった。

 

「……ッ!? リオンさん!? どうしてその人を庇うんですか!?」

 

「どうして? ああ、そう言えば言ってなかったね。婚約したんだよコイツと。だからカーラと一緒にいる」

 

リオンの言葉にオリヴィアは信じられないとばかりに目を大きく見開く。

 

「嘘……。嘘ですよね!? だって……その人私たちを騙したんですよ!? どうしてそんな人が婚約者なんですか!?」

 

「信じられないかい? だったら……」

 

リオンはカーラの肩を抱き寄せその唇に自分の唇を重ねる。

そして見せつける様に舌を唇の隙間からねじ込み更には互いの舌を絡める濃厚なキス。

 

「やめてください! そんな汚らわしい……!」

 

オリヴィアは嫌悪の込もった声で叫び視線を逸らす。

 

「汚らわしい? こんなの男と女の、婚約者同士なら当たり前の事だろ? 勿論、それ以上もな」

 

「それ以上!? それって、まさか……!?」

 

リオンの言葉にオリヴィアはその顔に驚きの色を浮かべ逸らした視線を再びリオンとカーラに向ける。

 

「ああ、抱いた。それも何度もな」

 

言いながらリオンはカーラの制服の胸元のリボンを解きブラウスのボタンを外しその胸元にその手を滑り込ませていく。

服の上からわかるリオンの手の動きが、カーラの乳房を揉みしだいてるのが。

カーラの頬が紅潮し、リオンの手の動きに合わせ口から甘い吐息が漏れる

 

 

「やめてください!」

 

リオンのカーラを愛撫する様子にオリヴィアは耐えきれず視線を逸らし悲鳴のように叫び声を上げた。

そして再び二人に向けられた瞳は涙で潤んでいた。

 

「どうして……どうして私じゃないんですか! ずっと……私の方がずっと前からリオンさんの側にいたのに……! リオンさんのこと好きなのに!」

 

オリヴィアの口をついて出た気持ち。それは告白。

だがこの様な、嫉妬と悲しみに駆られた状況で口にするつもりではなかった。

それでも紛れもない本心であったのもまた事実。

 

オリヴィアの言葉にリオンは思わず目を見開き気持ちが揺れる。オリヴィアの声がやけに響き胸が痛む。だがその気持ちを表には出さず心の奥底に仕舞い歯を食いしばる。

そしてカーラの肩を抱く手にも思わず力が入る。カーラの口から痛みに対し悲鳴が漏れそうになるも彼女はその口に手を当て悲鳴を飲み込む。

それでも僅かに漏れた声にリオンはすぐ手を緩め「スマン」と小声で呟く。

リオンは一呼吸置くとオリヴィアに向き直る。

気持ちを鎮め感情を消し静かに口を開く。

 

「好き? オリヴィアさん、あんたはもっと賢い子かと思ってたんだけどな? 好きとか惚れた腫れたとかそんな気持ち色恋沙汰と、婚約結婚は別物だって知ってるだろ? そもそも貴族の俺と平民のアンタとで釣り合うわけ無いだろ」

 

平民という言葉そのものに差別的意味合いは無い。

だが学園の生徒の一部はそこに差別的感情を込めて口にすることも多く、そのような使われ方をする度にオリヴィアは傷ついていたのをリオンは知ってた。

 

知っててあえて口にした。

オリヴィアを突き放すために。

リオンの冷たい言葉にオリヴィアの顔が悲しみで一層歪み、その表情にリオンの心も痛む。

だがリオンの言葉は止まらない。

 

「それとも遊びが、恋愛ごっこがしたいのかい? それなら他を当たってくれ。そうだ丁度良い相手がいるじゃないかグレッグとブラッド。空賊に襲われてたオリヴィアさんを助けようと颯爽と駆けつけてくれて負傷までして。それでそんな二人を気遣い治療してあげてる姿はお似合いだったよ?」

 

オリヴィアの告白に対し返されたリオンの言葉はとても冷たいものだった。

だがそれは何処か無理して悪態をついてるようでもあった。

オリヴィアもそれが分かってか、そんな冷たい拒絶の言葉にも怯まず声を上げる。

 

「違います! あの二人とはそんなんじゃありません! それに貴族と平民が駄目だって言うのならあの二人とだって駄目じゃないですか!」

 

「それこそ違うよ。俺は伝手も何もない成り上がりの田舎貴族だけどあいつ等は本物の由緒正しい貴族様だからね。その気になればオリヴィアさんを養女に迎えてくれる貴族の伝手なんかいくらでもあるさ、俺なんかと違って。貴族の養女になっちまえば平民もクソも無いからな。それでグレッグかブラッドのどちらかと結ばれてめでたしめでたし、って」

 

リオンの言葉にオリヴィアは言葉に詰まる。その言葉を認めたわけではないが話の筋道は立っているので。

 

「で、でもあの二人にはマリエさんが……」

 

「マリエが邪魔かい? だったら消そうか? いや、消すべきかもな。決闘で負けたのに相変わらず図々しくのさばってるような女、害悪でしかないもんな」

 

マリエは先に述べたグレッグとブラッドに加え更に三人の、計五名の攻略キャラたち全てを篭絡し逆ハーレムを構築すると言う主人公のお株を奪う行為を行った女。

そんな真似が出来たのは、おそらく同じ転生者だからとリオンは睨んでいる。

 

主人公気取りの行為はそれにとどまらない。

加えて主人公でもない癖に主人公になり替わろうとして断罪決闘イベント迄起こしたマリエをゲームの、世界のバランスを壊す危険要素と判断しリオンは介入しイベントを潰していた。

だが決闘終了後も五人の攻略キャラたちはマリエに靡いたままであった。

本来靡くべき主人公のオリヴィアに見向きもせず。

 

「やめてください! そんな怖いこと言わないでください! リオンさんそんな人じゃないはずですよ!?」

 

「違わないよこれが俺の本性だよ」

 

「違います! 私の知ってるリオンさんはとっても強くて優しくって……。なのに……どうしてそんな怖いこと言うんですか……」

 

オリヴィアの瞳に溜まってた涙は既に限界を超え溢れ頬を伝っていた。

 

「その人のせいですか? その人のせいでリオンさん変わっちゃったんですか……? やっぱりその人がリオンさんの隣にいるなんて認められないし許せません! さっきも言いましたように私たちを騙したそんな人と!」

 

激昂したオリヴィアはその表情を悲しみから怒りに変え二人に詰め寄る。

 

「俺たちを騙した、か。そうだな、だから俺たちを嵌めた責任を取ってもらうために婚約してもらった」

 

「責任……!? そんな理由で!? じゃぁ愛してもいないのに結婚するって言うんですか!?」

 

感情のまま怒りの声を上げるオリヴィアにリオンは鼻で笑う。

 

「愛? 結婚にそんなもん求める奴なんかこの学園に殆ど居ないよ、さっきも言ったろ好きだの惚れた腫れただのは結婚と関係ないって。この学園に通ってんだからそれぐらい知ってるだろ? 大体愛なんてろくなもんじゃないだろ。愛を声高に叫んでアンジェリカさんを捨ててマリエを選んだユリウス殿下がそのいい例じゃないか。それに今、愛なんて関係ないだろ」

 

「……あります。愛は関係あります。さっきも言いました……私はリオンさんが好きです! 愛してます……! だから、そんな人選ばないでください!」

 

オリヴィアの口にした愛と言う言葉にリオンの胸が痛む。その痛みに耐えるかのように歯を食いしばり拳をきつく握る。

そして自分に言い聞かせる。俺にはもうオリヴィアの側にいる資格は無いのだと。

 

「それこそオリヴィアさん、あんたの価値観を押し付けないでくれ。何度も言わせないでくれ俺は結婚に愛なんて求めてないんだ。大事なのは爵位が丁度良く釣り合う女、それだけさ。コイツを、カーラを娶ったのも抱いたのも爵位的にも丁度良かったから、それだけさ」

 

「それでも! リオンさんがその人とくっ付くのだけは嫌なんです! 私たちを罠に嵌めようとした――」

 

「オリヴィアさん。さっきから罠とか嵌めたとか、コイツが、カーラがどうして俺たちを罠に嵌めたか知ってるだろ? オフリーの性悪な伯爵令嬢に命令されて仕方なくだって」

 

「そんなのただの言い訳じゃないですか! 本当に嫌なら! 悪いことだって分かっているなら逆らえた筈です!」

 

オリヴィアの反論にリオンの眉間にしわが刻まれる。その言葉に対し癇に障ったかのように。

それに対しオリヴィアは一瞬怯むも直後、自分は間違ってないと言わんばかりに尚も真っ直ぐな視線を投げかけ続ける。

そんなオリヴィアに向かいリオンは表情を険しくさせたまま問いかける。

 

「じゃあ聞くがオリヴィアさんなら同じ立場だったら命令に逆らえたとでも言うつもりかい? いつも俺やアンジェリカさんの庇護に情けなく守られていたアンタに?」

 

「出来ます! 私だって守られてばかりじゃありません! 私だったらその人みたいに脅しなんかに屈したりしません! 間違ったことは間違ってると逆らってみせます!」

 

「そいつはご立派だな! 逆らえば家族に危害を加えられると言われて、その家族を見殺しにしてまで正義を貫くわけか!」

 

そう言い放ったリオンの声色は先ほど迄のが何処か無理して悪態をついてるようだったのとは異なって感じられた。

そこに怒りが本音が滲みだしてるかの様に感じられ、思わずオリヴィアも怯む。

 

「そ、それは……!」

 

「少なくとも俺には出来ないね! 家族を犠牲にしてまで正義を貫く。うん、立派だよ」

 

オリヴィアが決して家族を見捨てるなどと言う意図があってその言葉を発した訳でないのはリオンも十分承知している。

オリヴィアが平民だからこその苦労をしてるのは十分理解してた。

 

反面平民だからこそ下級貴族の苦しみなど知る由もない事も。

貴族社会のしがらみに囚われ上級貴族に虐げられ無理矢理従わされる苦しみ辛さなど知らぬことを。

その事にオリヴィア自身の落ち度などないが、だが思わず苛立ちを感じずにはいられなかった。

 

「そんな立派なアンタと俺じゃやっぱり釣り合わない。アンタと釣り合うのはあの二人みたいな正義感溢れる立派な貴族様さ」

 

そう言ってリオンは笑みを浮かべて見せる。

だがその顔は口角を上げながらも目には不快感を滲ませた獰猛な笑み。

そんなリオンの顔にオリヴィアは自分が言葉選びをしくじったのを、覆せない言葉を、失言を放ってしまったのに気付き、言葉を失い膝をつきへたり込む。

俯くオリヴィアの瞳から涙が溢れる。

 

 

 

 

 

「何を騒いでいる!」

 

騒ぎを聞きつけてか駆け寄ってくる靴音と声が。

駆けつけた声の主はアンジェリカだった。

そして膝をつき俯くオリヴィアを見つける。

 

「リビア!? 一体どうしたんだ!? リビア!?」

 




やっちゃいましたねオリヴィアさん。
この子って原作でも失言でやらかしてる印象でしたし。

バッドエンドに求めるのは?

  • 多少の手心、慈悲や救いは欲しい
  • 残酷で悲劇的でこそ本懐 手心無用
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