清掃作業も終盤に差し掛かっていた。
プールの底は、男子たちが撒き散らした強力な洗剤の泡と、剥がれ落ちた苔、そして雨水が混ざり合い、スケートリンクのように非常に滑りやすい状態になっていた。
「しっかり洗剤を洗い流せ!」
「「はーーい」」
体育教師からの怒声が飛ぶ中、生徒たちはホースの水をかけながら、モップで必死に泡を排水溝へと追いやっている。
「
「わかった、今いくよ!」
しかし、その足元は、洗剤の原液がたっぷりと残っているタイルの上だった。
雨水で濡れた靴底が、洗剤のヌメリに完全に足を取られる。
「あっ」
「「危ない!」」
バランスを崩し、彼女の長身が宙に浮く。
周囲の生徒たちが悲鳴を上げた。
クソっ……間に合え。
僕は、放り出されたデッキブラシの柄から手を離し、倒れ込んでくる
「わぁっ……!」
僕は踏ん張りを利かせ、彼女の体重をしっかりと受け止めた。
しかし、床の滑りやすさと彼女の勢いが相まって、僕たちはそのままの姿勢で、プールの壁面に背中をぶつける形で密着した。
ドンッ。
鈍い衝撃とともに、僕の胸板に、
「ぐぇっ……」
ジャージとサラシ越しでもはっきりとわかる、柔らかさと質量が、僕の胸でむにゅりと形を変えて押し潰された。
さらに、
倒れ込んだ勢いで、
「ひゃうっ……‼」
衝突の瞬間、
過敏になりきった胸を強く押し潰された刺激と、僕の硬い太ももの筋肉にダイレクトに打ち付けられたことによる、反射的な声だった。
「大丈夫か、
僕は、周囲の生徒たちの視線が集まっていることを意識し、あくまで冷静な、クラスメイトを助けただけの口調で声をかけた。
しかし、僕の太ももには、
「あ、あぁっ……ご、ごめんっ……」
密着したおまんこが、僕の太ももに押し付けられたまま離れない。
腰の力が抜け、自立することすらできなくなっているのだ。
雨水に濡れた
真っ赤に染まった頬、完全に焦点の合わなくなった瞳、だらしなく半開きになった唇。
「おい、
「
マズいな。
このままでは、
「……立てるか?
僕は、
「ひんっ……!」
「大丈夫、大丈夫だから」
引き剥がされた瞬間、
「ご、ごめんね……助かったよっ……」
「すごい滑ったね。
「ああ、大丈夫だよ。
女子生徒たちが心配そうに群がる中、
しかし、彼女の太ももは小刻みに震え、内股をギュッと閉じて、今にも崩れ落ちそうな身体を必死に支え続けていた。
「
「いや、たまたま近くにいただけだから。間に合ってよかったよ。それより、早く掃除を終わらせよう。雨も強くなってきたし」
僕は
◇◇◇
四時間目の授業終了を告げるチャイムが鳴り響き、ようやくプール掃除から解放された。
生徒たちは泥と汗と雨水にまみれたジャージを脱ぐため、足早に更衣室へと向かっていく。
男子更衣室はプールサイドのすぐ横のプレハブ小屋にあり、女子更衣室は少し離れた体育館の裏手にある。
僕は
「あー、マジで最悪。髪の毛バサバサだわ。
「いや、僕は弁当作ってきてるから教室で食べるよ」
「そっか。さすが、主夫はちげぇわ。俺、先に戻ってるわ」
「あいよ」
更衣室に最後まで残っていた僕は、タオルで髪の雨水を適当に拭きながら、一人で外へと出た。
男子更衣室の入り口から、校舎へと続く細い屋根付きの通路。
そこは、ちょうど女子更衣室へと向かう道と交差する場所だった。
周囲に他の生徒の姿はない。
みんな急いで教室に戻ったか、まだ更衣室の中で着替えている最中だ。
僕はその通路の角で、立ち止まった。
数秒後、予想通り、小走りで近づいてくる足音が聞こえた。
「……
角を曲がってきたのは、まだ濡れたジャージ姿のままの
見上げられたその顔は、雨に濡れた子犬のように情けなく、そして熱を帯びて真っ赤に染まっていた。
「……どうした。女子更衣室はあっちだぞ」
「
その声は、泣き出しそうに掠れていた。
「さっきの……転んだ時っ……
「……」
「布が擦れて、痛くて、気持ちよくて……ボク、頭おかしくなりそうっ……」
彼女の限界は、もうとっくに超えていた。
「その前に心配しろよ……仮にも激突したんだぞ」
「そ、そっか。ご、ごめん。大丈夫だった?」
僕は無表情のまま、掴まれた自分の袖を優しく振り払った。
「大丈夫なわけあるか」
「えっ……
僕は
「また夜に、たっぷりと教育してやる。……だから今は、大人しく教室に戻って、王子様を演じていろ」
その言葉は、彼女の身体に最後の一撃を加える劇薬だった。
瞳が完全に蕩けきり、口元が緩む。
「っ……! は、はいっ……ご主人様ぁっ……♡」
梅雨のジメジメとした空気の中、僕の胸の奥にも、静かな欲望の炎が燃え上がっていた。