※この作品はR-18です。

かっこいいボクの、かっこわるくて淫らな秘密   作:斑目朔

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王子様の夏支度と、僕の太もも(後編)

 清掃作業も終盤に差し掛かっていた。

 

 プールの底は、男子たちが撒き散らした強力な洗剤の泡と、剥がれ落ちた苔、そして雨水が混ざり合い、スケートリンクのように非常に滑りやすい状態になっていた。

 

「しっかり洗剤を洗い流せ!」

 

「「はーーい」」

 

 体育教師からの怒声が飛ぶ中、生徒たちはホースの水をかけながら、モップで必死に泡を排水溝へと追いやっている。

 

(ひいらぎ)くん、こっちの水もお願い!」

 

「わかった、今いくよ!」

 

 志穂(しほ)は女子生徒の声に応え、大きく一歩を踏み出した。

 

 しかし、その足元は、洗剤の原液がたっぷりと残っているタイルの上だった。

 

 雨水で濡れた靴底が、洗剤のヌメリに完全に足を取られる。

 

「あっ」

 

「「危ない!」」

 

 志穂(しほ)の足が、ツルンッと嫌な音を立てて滑った。

 

 バランスを崩し、彼女の長身が宙に浮く。

 

 周囲の生徒たちが悲鳴を上げた。

 

 クソっ……間に合え。

 

 僕は、放り出されたデッキブラシの柄から手を離し、倒れ込んでくる志穂(しほ)に向かって、瞬時に両腕を伸ばした。

 

「わぁっ……!」

 

 志穂(しほ)の身体が、真っ直ぐに僕の正面に激突する形で倒れ込んでくる。

 

 僕は踏ん張りを利かせ、彼女の体重をしっかりと受け止めた。

 

 しかし、床の滑りやすさと彼女の勢いが相まって、僕たちはそのままの姿勢で、プールの壁面に背中をぶつける形で密着した。

 

 ドンッ。

 

 鈍い衝撃とともに、僕の胸板に、志穂(しほ)の身体が強く押し付けられる。

 

「ぐぇっ……」

 

 ジャージとサラシ越しでもはっきりとわかる、柔らかさと質量が、僕の胸でむにゅりと形を変えて押し潰された。

 

 さらに、志穂(しほ)の長身ゆえの絶妙な体格差が、偶然の密着状態を作り出した。

 

 倒れ込んだ勢いで、志穂(しほ)の右足が僕の両足の間に深く入り込み、彼女ジャージの股の合わせ目の部分が、僕の右太ももに強烈な力で乗り上げるようにして密着したのだ。

 

「ひゃうっ……‼」

 

 衝突の瞬間、志穂(しほ)の口から、王子様としては絶対に出してはいけない、甘く、高く、そして完全に無防備な悲鳴が漏れ出た。

 

 過敏になりきった胸を強く押し潰された刺激と、僕の硬い太ももの筋肉にダイレクトに打ち付けられたことによる、反射的な声だった。

 

「大丈夫か、志穂(しほ)。床が滑るから気をつけろよ」

 

 僕は、周囲の生徒たちの視線が集まっていることを意識し、あくまで冷静な、クラスメイトを助けただけの口調で声をかけた。

 

 しかし、僕の太ももには、志穂(しほ)のおまんこから伝わってくる熱と、ジャージ越しにでもわかる布地の感触、そして、彼女の身体がびくびくと微かに痙攣している振動が、はっきりと伝わっていた。

 

「あ、あぁっ……ご、ごめんっ……」

 

 志穂(しほ)は僕の胸に顔を埋めたまま、肩をガタガタと震わせている。

 

 密着したおまんこが、僕の太ももに押し付けられたまま離れない。

 

 腰の力が抜け、自立することすらできなくなっているのだ。

 

 雨水に濡れた志穂(しほ)の顔がゆっくりと上がり、至近距離で僕と視線が交差する。

 

 真っ赤に染まった頬、完全に焦点の合わなくなった瞳、だらしなく半開きになった唇。

 

 志穂(しほ)は、この大勢のクラスメイトが見ているプールの中で、僕の太ももに押し付けられたという事故の刺激だけで、完全に理性を飛ばしかけていた。

 

「おい、(ひいらぎ)! 大丈夫か⁉」

 

(かける)、ナイスキャッチ! 怪我ねえか⁉」

 

 (れん)や他の生徒たちが、慌ててこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえる。

 

 マズいな。

 

 このままでは、志穂(しほ)が完全に崩れ落ちてしまうのが周囲にバレる。

 

「……立てるか? 志穂(しほ)

 

 僕は、志穂(しほ)の腰を掴み、強引に僕の太ももから引き剥がすようにして身体を起こさせた。

 

「ひんっ……!」

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

 引き剥がされた瞬間、志穂(しほ)の口から再び情けない声が漏れたが、周囲の生徒たちには雨音とプールの反響音にかき消されて聞こえなかっただろう。

 

 志穂(しほ)はフラフラとしながらも、僕の腕に支えられてなんとか自立した。

 

「ご、ごめんね……助かったよっ……」

 

 志穂(しほ)は必死に呼吸を整え、引きつった笑顔で『王子様』の仮面を貼り直した。

 

「すごい滑ったね。(ひいらぎ)くん、どこも打ってない?」

 

「ああ、大丈夫だよ。日向(ひなた)くんがクッションになってくれたから」

 

 女子生徒たちが心配そうに群がる中、志穂(しほ)は爽やかに対応している。

 

 しかし、彼女の太ももは小刻みに震え、内股をギュッと閉じて、今にも崩れ落ちそうな身体を必死に支え続けていた。

 

日向(ひなた)くん、ありがとうございましたわ。(ひいらぎ)様をお守りいただいて」

 

「いや、たまたま近くにいただけだから。間に合ってよかったよ。それより、早く掃除を終わらせよう。雨も強くなってきたし」

 

 僕は西園寺(さいおんじ)さんの言葉を適当に受け流し、拾い上げたデッキブラシで再び壁をこすり始めた。

 

 志穂(しほ)はその後、誰とも目を合わせないように黙々とモップを動かし続けていたが、その動きは完全に機械のようで、意識がどこか別の場所へと飛んでしまっているのは明らかだった。

 

 ◇◇◇

 

 四時間目の授業終了を告げるチャイムが鳴り響き、ようやくプール掃除から解放された。

 

 生徒たちは泥と汗と雨水にまみれたジャージを脱ぐため、足早に更衣室へと向かっていく。

 

 男子更衣室はプールサイドのすぐ横のプレハブ小屋にあり、女子更衣室は少し離れた体育館の裏手にある。

 

 僕は(れん)たちと一緒に男子更衣室で着替えを済ませ、濡れたジャージをビニール袋に突っ込んだ。

 

「あー、マジで最悪。髪の毛バサバサだわ。(かける)、昼飯どうする? 学食行くか?」

 

「いや、僕は弁当作ってきてるから教室で食べるよ」

 

「そっか。さすが、主夫はちげぇわ。俺、先に戻ってるわ」

 

「あいよ」

 

 (れん)は足早に教室へと戻っていった。

 

 更衣室に最後まで残っていた僕は、タオルで髪の雨水を適当に拭きながら、一人で外へと出た。

 

 男子更衣室の入り口から、校舎へと続く細い屋根付きの通路。

 

 そこは、ちょうど女子更衣室へと向かう道と交差する場所だった。

 

 周囲に他の生徒の姿はない。

 

 みんな急いで教室に戻ったか、まだ更衣室の中で着替えている最中だ。

 

 僕はその通路の角で、立ち止まった。

 

 数秒後、予想通り、小走りで近づいてくる足音が聞こえた。

 

「……(かける)

 

 角を曲がってきたのは、まだ濡れたジャージ姿のままの志穂(しほ)だった。

 

 志穂(しほ)は周囲に誰もいないことを素早く確認すると、僕の制服の袖をギュッと強く掴んできた。

 

 見上げられたその顔は、雨に濡れた子犬のように情けなく、そして熱を帯びて真っ赤に染まっていた。

 

「……どうした。女子更衣室はあっちだぞ」

 

(かける)っ……さっきの……」

 

 志穂(しほ)の呼吸は荒く、ジャージの胸元が激しく上下している。

 

 その声は、泣き出しそうに掠れていた。

 

「さっきの……転んだ時っ……(かける)の太ももに、押し付けちゃったの……すごく……熱かったっ……」

 

「……」

 

「布が擦れて、痛くて、気持ちよくて……ボク、頭おかしくなりそうっ……」

 

 志穂(しほ)は、僕の袖を掴んだまま、フルフルと首を横に振った。

 

 彼女の限界は、もうとっくに超えていた。

 

「その前に心配しろよ……仮にも激突したんだぞ」

 

「そ、そっか。ご、ごめん。大丈夫だった?」

 

 僕は無表情のまま、掴まれた自分の袖を優しく振り払った。

 

「大丈夫なわけあるか」

 

「えっ……(かける)……?」

 

 僕は志穂(しほ)の耳元に顔を寄せ、冷え切った言葉で一言だけ言い放った。

 

「また夜に、たっぷりと教育してやる。……だから今は、大人しく教室に戻って、王子様を演じていろ」

 

 その言葉は、彼女の身体に最後の一撃を加える劇薬だった。

 

 志穂(しほ)はビクンッ! と身体を震わせ、両手で自分のお腹のあたりをギュッと押さえた。

 

 瞳が完全に蕩けきり、口元が緩む。

 

「っ……! は、はいっ……ご主人様ぁっ……♡」

 

 志穂(しほ)は恍惚とした表情で小さく頷くと、僕から離れ、フラフラとした足取りで女子更衣室の方へと駆け出していった。

 

 梅雨のジメジメとした空気の中、僕の胸の奥にも、静かな欲望の炎が燃え上がっていた。

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