六月下旬の、茹だるような熱気が残る放課後。
奇跡的な梅雨の晴れ間に恵まれて開催されたクラス対抗球技大会は、ボクたち二年B組の劇的な逆転優勝という、これ以上ない最高の結果で幕を閉じた。
女子バスケットボールの決勝戦。
残り数秒で放ったボクのシュートがネットを揺らした瞬間、体育館の空気を震わせたあの爆発的な歓声は、未だに耳の奥にこびりついて離れない。
『
『
チームメイトだけでなく、同学年の女子生徒までもがボクを取り囲み、熱を帯びた視線と称賛の言葉を浴びせてきた。
ボクはそのすべてに対して、学園の誰もが憧れる完璧な『王子様』としての涼しげな微笑みを返し続けた。
汗に濡れた前髪をかき上げ、荒くなった呼吸を整えながら、誰の目にも非の打ち所のないヒーローとして振る舞い続けたのだ。
けれど、ボクの意識は、その歓声の輪のずっと外側。
ギャラリー席の薄暗い隅に立つ、たった一つの人影にだけ向けられていた。
周囲の熱狂などどこ吹く風といった様子で、静かに、ひたすらに冷酷な独占欲を孕んだ瞳でボクを見下ろしている、ボクの絶対的なご主人様。
ご主人様と視線が交差するたび、ボクの下腹部のずっと奥深く、おまんこの入り口が引き攣るように収縮し、甘く熱い液体がとめどなく出ていたことを、誰も知らない。
コートの上で高く跳躍する瞬間も、相手のディフェンスをすり抜ける瞬間も、ボクの意識の半分は常にハーフパンツの不快な湿り気に支配されていた。
自分が華麗に動けば動くほど、擦れ合う太ももの内側で粘度を増していく自らの体液の感触が、ボクがご主人様に飼いならされたただの雌猫であることを残酷なまでに突きつけてくる。
──そして、放課後の教室を抜け出し、クラスの打ち上げの誘いもすべて笑顔で躱して、ボクは一直線にご主人様のマンションへと転がり込んだ。
重厚な金属の扉が閉ざされ、外界とボクたちを隔てるオートロックのシリンダーが回転する重々しい音が響く。
その瞬間、学校にいる間ずっとボクの精神を縛り付けていた強靭な理性の糸が、音もなく完全に融解した。
「……はぁっ、はぁっ。ご主人様っ……」
「お疲れ、
玄関のタタキにへたり込んだボクは、荒い息を吐きながら自分の衣服に手をかけた。
汗の匂いが染み付いた体操服のシャツを乱暴に引きはがし、胸の膨らみを限界まで押し潰していた分厚い布の拘束を解き捨てる。
空気を求めて弾け出たおっぱいが、重力に従って揺らした。
冷房の効いた室内の空気に触れるだけで、過敏になりきった乳首が自ら刺激を求めるように硬く縮み上がり、赤い熱を持つ。
ボクはさらに、汗で肌に張り付くハーフパンツと、下着を、忌々しい汚物を捨てるかのように床へと蹴り飛ばした。
「みんなの前で、ずっと王子様を演じてたけど……ボクの頭の中、ご主人様のことでいっぱいだったんだよ。走ってる時も、シュートを決めた時も、ずっと、ずっと……」
衣服をすべて剥ぎ取り、一糸まとわぬ全裸となったボクは、ゆっくりと立ち上がり、服を着たままのご主人様の前に歩み寄ってその大きな手を取った。
いつもなら、ここで床に這いつくばって「早くめちゃくちゃにして」と懇願し、ご主人様に力ずくで組み敷かれるのを待つだけだ。
けれど、今日のボクは違った。
大観衆の前で浴びた熱狂の余韻と、一日中極限まで焦らされた飢餓感が、ボクの中にある『支配されたい』という被虐的な欲望とは別の、ある種の攻撃的な衝動。
つまりは、ボクがご主人様を『攻めたい』という歪な欲求を呼び覚ましていた。
「今日はね、ご主人様。ボクが、ご主人様をいっぱい気持ちよくしてあげる」
「……ほう? お前がボクを?」
ご主人様は、予測していなかったボクの言葉に少しだけ目を細め、興味深そうに眉を上げた。
ボクはご主人様の手を引いてリビングを通り抜け、西日の差し込むベッドルームへと導きながら、ご主人様のシャツのボタンを一つずつ外していく。
「うん。でも、ボクもご主人様も、体育祭で疲れてるでしょ? だから……今日はボクのおまんこに『挿れる』のはダメ。セックスは、なし、だよ」
「……僕に、お預けを食らわせるつもりか。随分と強気だな」
ご主人様は呆れたように低く笑いながらも、ボクのされるがままに衣服を脱ぎ捨て、全裸になった。
ボクは柔らかなシーツの上に仰向けに寝転がり、両膝を深く曲げて、限界まで大きく足を開く姿勢をとった。
隠すものは何もない。
激しい運動の後の微かな汗と、抑えきれない発情の証である透明な蜜で濡れそぼったボクの最も脆く卑しい粘膜が、ご主人様の視界に向かって完全に開帳されている。
対するご主人様は、ボクの大きく開かれた足の間、すぐ目の前の特等席であぐらをかくようにして腰を下ろした。
ご主人様の下腹部には、ボクの無防備な全裸を見ただけですでに赤黒く充血し、太い血管を怒張させたおちんぽが、空を突くように反り返っている。
「さあ、ご主人様……今日は、お互いにオナニーしよ? ボクが今、どんな風に気持ちよくなってるか、ご主人様に全部教えてあげるから……」
ボクの挑発的な提案に、ご主人様の瞳の奥で、静かだが確実に、獲物を狙う猛禽類のような暗い炎が揺らいだ。
「いいだろう。……お前のその生意気な態度がいつまで保つか、見せてもらおうか」
ご主人様の大きな右手が、自らのおちんぽを根本から力強く握りしめ、ゆっくりと皮膚を滑らせ始めた。
同時に、ボクも自分の右手を、自らのおまんこへと這わせる。
指先が、たっぷりと蜜を含んだ柔らかな粘膜の襞に触れる。
粘性の高い体液が指の腹に絡みつき、皮膚と粘膜が擦れ合う生々しい音が、静寂の寝室に微かに響いた。
「あぁんっ……ご主人様……見てる? ボクの指、ボクのクリトリスに触れてるよっ……」
ボクは指の腹で、一番敏感に腫れ上がったクリトリスを、押し潰すように円を描いて撫で回した。
体内に蓄積されていた熱が、指先の刺激によって一気に神経回路を駆け上がり、背筋に甘い痺れをもたらす。
「ああ、見ているよ。学校ではあんなに涼しい顔をしていたお前が、今は涎を垂らすようにだらしなく濡れている。……僕のちんぽも、お前のその顔を見ているだけで、痛いくらいに硬くなっていくよ」
ご主人様の手首の動きが、少しずつ速度を増していく。
ご主人様が自らのおちんぽを根本から先端へと扱き上げるたびに、行き場を失った体液が溢れ出し、それが潤滑油となっておちんぽと手が擦れ合う重たい摩擦音を立てる。
その視覚的な情報が、ボクの脳髄を直接刺激する。
自分の指でオナニーをしているのに、まるでご主人様がボクの身体に直接触れているかのような、強烈な錯覚に陥っていく。
ご主人様の指が動くたびに、ボクの腹の奥が熱く疼くのだ。
「はぁっ、あぁっ……ご主人様の、すっごく太くて……先端のところが真っ赤に充血して、反り返ってるっ……ねぇ、ボクのクリも、ご主人様に見られながら擦ってたら、おまんこからお汁が止まんないよぉっ……!」
「声だけじゃ足りないぞ、
ご主人様の低く掠れた声に促され、ボクは中指と薬指の二本を揃え、おまんこの入り口から、一気に奥へと突き入れた。
「んぁぁっっ‼」
自らの指先が、中を抉り、奥深くまで到達する焼け付くような感触。
おまんこの中が、侵入してきた異物を絡め取ろうと、意思を持つ生き物のように脈打ちながら締め付けてくる。
ボクは視線をご主人様のおちんぽに固定したまま、自らの指を激しく出し入れし始めた。
「ああっ、はぁっ! ご主人様っ、指が入ったっ……! 中、すっごく熱くてっ、おまんこが、指にギチギチに擦れてるぅっ……!」
「いいぞ、
ご主人様の息遣いが荒くなり、ご主人様のオナニーのスピードが加速していく。
飛び散る液体の滴。
大きく波打つ胸の筋肉。
そして、苦悶と快楽が入り混じったご主人様の表情。
それを見ているだけで、ボクのおまんこに落雷のような快感が走り、狂ったように収縮を始めた。
自分が攻める側だと言い張ったくせに、視覚から入ってくる情報だけで、ボクの身体は完全にご主人様に支配されている。
「ご主人様っ……! ご主人様の熱いの見てたらっ、ボク、もうイッちゃうっ! おまんこが痙攣してるのぉっ‼」
「……イケ。僕を見ながら、みっともなく果てろっ……僕も、出すぞっ……」
ご主人様の手首の動きが、最高潮に達っし、口から、獣のような低い唸り声が漏れた。
しかし、その切羽詰まった声を聞いた瞬間、ボクの中で支配欲が鎌首をもたげた。
ボクは絶頂の波が押し寄せてくるのを歯を食いしばって必死に堪えながら指の動きを止め、ご主人様を強く睨みつけた。
「ダメっ、ご主人様、まだ我慢してっ……! ボクと一緒に……一緒にイくのっ……!」
「くっ……
「お預けだよ……ご主人様っ。ボクが良いって言うまで、イっちゃダメっ……」
ボクの鋭い言葉に、ご主人様は苦悶の表情を浮かべ、ギリギリのところで手の動きをピタリと止めた。
張り裂けんばかりに膨張したカリが、小刻みに震えている。
あのご主人様が、ボクの命令に従って、極限の快感を前にして我慢している。
「あはぁっ……ご主人様、苦しそうっ……すごく、いい顔してるっ…………ボクが、カウントダウンしてあげる。ゼロになったら、一緒に果てよっ……?」
ボクは再び、自分のおまんこに突き入れた指を激しく動かし始めた。
今度は、自分の快感のためだけではない。
ご主人様を焦らし、極限まで追い詰めるための、残酷なリズムで。
「十っ……、九っ……」
数字を刻むたびに、ボクの指がおまんこの最も熱い部分を抉り取る。
「八っ……、七っ……あぁっ、ご主人様のおちんぽ、ピクピク跳ねてるっ……」
ご主人様の額に玉のような汗が浮かび、ご主人様の手の甲に浮き出た血管が破裂しそうに隆起している。
「六っ……、五っ……ボクも、もうっ……」
ボク自身の身体も、限界を迎えていた。
視界が白く明滅し、指の動きと連動して全身の筋肉が痙攣しそうになる。
「四っ……、三っ……ほら、もうすぐ……すぐだよっ!」
ご主人様が、耐えきれずにおちんぽを強く握りしめ、ゆっくりと上下させ始めた。
もう、ご主人様の手首の動きを止めることは誰にもできない。
「二っ……、一っ……イく……イくイくっ‼」
ボクもまた、自らのおまんこに対する刺激を限界速度まで引き上げた。
そして。
「ゼロっ……‼ イってっ! ご主人様と一緒にっ、イってぇぇぇっっ‼」
「っっっ……‼
叫びと同時に、ボクのおまんこから、透明な体液が間欠泉のように噴き出し、自らの太ももや腹部を濡らしながら空中に弧を描いた。
それと完全に同調するように、ご主人様の先端からも、白濁した熱い液体がすさまじい勢いで放たれ、ご主人様自身の腹筋やボクたちの間の空間に激しく降り注いだ。
お互いの身体に一切触れていないにも関わらず。
視覚と聴覚、そして言葉による支配の共有だけで、ボクたちの神経は完全に混ざり合い、完璧な同時絶頂を迎えたのだ。
「あはぁっ……! あ、あへぇぇっ……! はぁっ、はぁっ……」
強烈すぎる絶頂の余韻で全身が痙攣し、手足の指先までが意思を持たずに引き攣る。
ボクは大きく開いた足の間に指を突き刺したまま、ベッドの上に力なく崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……」
乱れた呼吸を繰り返し、焦点の合わない瞳で虚空を見つめるボクに対し、ご主人様もまた、荒い息を吐きながら、シーツの上に散らばった自らの精液を見つめていた。