※この作品はR-18です。

【悲報】異世界風俗、嬢の平均年齢が500歳を超えている   作:フレキシブルコーギー

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22.七百五十二歳は産卵期

ポンコから教えられた店を探して、人魚専門店の並ぶ通りまでやってきた。

 

「おにいさぁん♡遊んでかない?」

 

「水の中でふやけるまで交尾できまぁーす!」

 

「陸上種族さん大歓迎!♡二本足でも四本足でもね~♡」

 

水の音があちこちから聞こえる。

 

通りには綺麗な水路があちこちに張り巡らされて、エメラルドグリーンの水のなかを半裸の人魚たちが優雅に泳いでいる。濡れた髪が光を受けてきらきらと輝き、色とりどりの尾びれがゆらゆらと水を掻いていた。

 

(何度見ても綺麗だな……人魚……)

 

俺が水路をぼんやりと眺めていると、水路の縁に両腕をかけて一人の人魚が上半身を乗り出してきた。

 

青みがかった銀髪。健康的な小麦色の肌。貝殻のブラジャーが、豊かな胸を辛うじて隠している。

 

「はいはい、そこのお兄さん!」

 

彼女の背後にある看板を確認する。ポンコの紹介状に書かれていた店名と同じだ。

 

彼女はにっと唇の端を持ち上げた。

 

「人魚に興味があるんだよねぇ? あるよね、だってさっきから私の尾びれ見まくってたし♡ いゃん、エッチ♡」

 

「いや、別に尾びれは──」

 

「人魚のエッチなところ見るだなんて、これはもう遊んで行かなきゃだめだよね♡ 犯罪だよね♡ 責任とって遊んでいってよね♡」

 

ものすごい勢いで捲し立てられた。

 

別に尾びれなんか見てない。というか、尾びれってエッチなところなのか。魚の下半身だぞ。

 

人魚の性感帯に詳しくないので分からない。

 

「あのー」

 

「はい一名様ごあんなーい!!」

 

俺が何か言う前に、彼女は水路から飛び上がった。尾びれで器用に地面を跳ね、水しぶきを撒き散らしながら俺の腕をがっしりと掴む。握力が強い。ドワーフ受付嬢ほどではないが、それなりに痛い。

 

「人魚ガチ交尾妊娠&タマゴ孕ませコースでーす!」

 

「まだ何も言ってないんですけど!?」

 

「え~、でも入ってくれるよね~?♡ 入ってくれなかったら私、この通りで泣き叫んじゃうよ~?♡『このお兄さんに尾びれをじろじろ見られたのに無視された~!』って」

 

尾びれなんて見てねぇし、なんだその恐喝は。

 

彼女はにこにこ笑顔のまま、俺の腕に自分の胸をぎゅっと押し付けてきた。貝殻ブラジャー越しに柔らかな膨らみの感触が伝わってくる。

 

「お兄さん、おっぱい当てられて嬉しそ~♡ 緊張して身体硬直してるよ?♡」

 

「いや、これは……」

 

(どっちかと言うと、人魚が普通に地上で跳ねてるのに驚愕して硬直してるんだが……)

 

胸のことは否定しない。嬉しいから。

 

人間で言うところの、両足を揃えたまま飛び跳ねるような移動方法だ。人魚の陸上移動能力は想像以上に高いらしい。

 

「もう、じろじろ見ちゃって~♡ 私の尾びれ、そんなに気になる?♡」

 

「だから尾びれは見てないです」

 

「嘘つき~♡ さ、入った入った~♡」

 

俺は有無を言わさず、店のなかに引きずり込まれた。

 

♢   ♢   ♢

 

「おぉ……! これが人魚の風俗店か」

 

一歩足を踏み入れて、俺は思わず声を漏らした。

 

店内の床は半分が水だった。いや、正確には店内を水路が縦横に走っていて、そこを人魚たちが泳いでいる。

 

水路の水は透き通ったエメラルドグリーンで、底には白い砂と貝殻が敷き詰められ、壁には珊瑚のオブジェ。

 

真珠を模した照明が水中を漂い、揺らめく光が幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

「お兄さん、水棲種族の風俗店は初めて?」

 

腕を組んだままの客引き人魚が、俺の顔を覗き込んできた。

 

「はい、初めてです」

 

「へぇ、水棲童貞なんだぁ」

 

「水棲童貞ってなんですか……?」

 

「水棲種族とエッチしたことないんでしょ? だから水棲童貞♡」

 

なるほど。異世界に来てまで童貞を量産されるとは思わなかった。

 

エルフ童貞、ドワーフ童貞、ラミア童貞、アラクネ童貞、そして水棲童貞。

 

俺はあと何回童貞を失えばいいんだ。

 

「じゃあ今日は、おちんぽが水でふやけるまで楽しんでいってね」

 

「おちんぽが水でふやけるのは嫌なんですけど……」

 

ふやけたチンポって、なんかもうダメな気がする。戦闘力が落ちそうだ。

 

「大丈夫大丈夫、ふやける前に出るでしょ」

 

「俺が早漏みたいに言うのやめてくれません?」

 

そんな会話をしているうちに、受付に到着した。

 

「じゃあ後はよろしく~♡」

 

客引き人魚は俺を受付に引き継ぐと、外に通じているであろう水路に飛び込んで泳ぎ去っていった。尾びれが水面を打つ音が、ぱしゃんと小気味よく響く。

 

受付カウンターもまた、水路に面した半水没型の造りだった。カウンターの向こうには、若い人魚の受付嬢が尾をゆらゆらさせながら座っている。

 

ピンクがかった金髪に、そばかすの散ったあどけない顔。歳は人間でいうと二十歳前後だろうか。

 

……実際は何歳かは全く分からないが。

 

「いらっしゃいませ、人間のお兄さん♡ 今日はどの娘にしていきますか?」

 

彼女はにっこりと笑い、水槽の中から一冊の名簿を取り出した。

 

分厚い冊子だ。何故か水の中に入っていたのに、紙がふやけていない。魔法の紙かなんかだろうか。

 

「へぇ……沢山いますね」

 

表紙には貝殻の装飾が施され、人魚娘名鑑♡(タマゴ孕ませOK娘には★マーク)と書かれている。

 

「ほら、うちの娘たちはみーんな若くて可愛いでしょ?♡ エルフやドワーフの店と違って、写真詐欺も年齢詐称もなし! これが本当の優良店ってやつだよ♡」

 

名簿をめくる。

 

たしかに、どの娘も美人で若々しい。みずみずしい肌に輝く尾びれ。笑顔も初々しくて、年齢詐称の匂いがしない。

 

(でも……)

 

写真ちょっと盛ってないか。可愛すぎるというか。

 

肌の質感が妙に滑らかすぎるし、尾びれの色も実物より鮮やかに見える。

 

……まぁ、写真修正くらいなら許容範囲か。

 

しかし──。

 

今日の俺の目的は、ただ人魚とセックスすることじゃない。

 

手紙を書いてくれる人魚を探さなければ。

 

「……ミレーネ……ミレーネ……」

 

俺は名簿を一枚一枚、丹念にめくっていった。

 

「お客様、あまり後ろの方に行くと年齢が高い嬢に……」

 

受付嬢が何か言いかけたが……その時、俺はポンコさんから紹介状を貰ったことを思い出す。

 

割引されるんだから渡さないとな。

 

「あ、そうだ。ポンコさんから紹介状を預かってまして」

 

「ポンコ様から?」

 

受付嬢は紙を開き、そこに書かれた名前を見た途端、顔を引きつらせた。

 

「まさか、ミレーネ婆さん狙い……?」

 

「婆さん?」

 

「あ、いや、なんでもありませんよ。ギョギョ……」

 

声が裏返っている。動揺しまくって変な笑い声になってるし……。

 

俺は無言で名簿をさらにめくった。後ろへ進むほど紙そのものが古くなり、黄ばみが目立ち始めた。

 

そして最後の数ページ。

 

「いた!」

 

そこには、淡い水色の長髪を優雅に棚引かせた、それは美しい人魚の顔写真が貼られていた。

 

瞳は深い海の底のような濃紺。肌は真珠のように白く透きとおり、唇は薄く、けれど確かな色気を帯びている。

 

若作りしている感じはない。どう見ても二十代後半から三十代前半にしか見えない。

 

写真の下には、几帳面な筆跡でこう書かれていた。

 

【ミレーネ(752)】★★★★★★★★★★★★★

 

めっちゃ★マーク付いてんじゃねぇか。どんだけタマゴ孕ませOKなんだよ。

 

しかも名前の後ろの数字は一体……?

 

いや、分かるけれども。

 

(752……)

 

現状、俺が抱いてきた中で最高齢の嬢だ。でも……見た目は若い。問題ない。

 

「じゃあ、この娘でお願いします!」

 

受付嬢の目が点になった。

 

「正気ですか? この写真、百年前のやつですけど……」

 

「百年前!?」

 

流石長命種だ。詐称するスケールもデカい。

 

「何故百年前の写真を……?」

 

「ご本人が七百歳を超えてからの写真を載せるのを拒否しまして。あぁ、ちなみにこれが今現在の写真です」

 

そう言って受付嬢は今現在とやらの写真を見せてくれた。

 

「変わらねぇ……」

 

全く変わらなかった。間違い探しとかじゃなくて、マジで何にも変わらない。

 

「どこが違うんですか?」

 

「えぇ!?更にババァになってるじゃないですか!ほら、こことここ!」

 

受付嬢が尾びれで写真のある部位を指すが、俺には理解できなかった。

 

もしかしてこの世界で生きてる奴ならなにかが分かるのだろうか。

 

「ミレーネ婆さん、最後に指名されたの三十二年前ですけど……いいんです?」

 

「三十二年前!?」

 

「人魚にとっては、ちょっと暇だった程度ですけど……人間にとっては長いのでは」

 

今のは長命種ジョークだよな?

 

そうであってくれ。

 

「ま、まぁ……お客様がいいと言うのなら……後でクレームは入れないでくださいね」

 

受付嬢は慌てて笑顔を作り直した。だが、その目は完全に「こいつマジもののババァ専だ」という目だった。

 

もういい。いまさら否定しない。ババァ専でもなんでもいい。手紙が書ければそれでいいんだ。ついでに人魚ともエッチできれば万々歳だ。

 

「人間のお兄さん、一名様ご案内でーす! ほら、連れてって~!」

 

「はーい!」

 

その瞬間、受付横の水路から、別の若い人魚が勢いよく飛び出してきた。

 

「それじゃあ行くよ、お兄さん! しっかり捕まっててね!」

 

「え、捕まるって──」

 

俺が言い終わる前に彼女は俺の手首を掴み、水路のなかへと引きずり込んだ。

 

「うわ!? がぼがぼがぼ……!」

 

視界が水で満たされる。水のなかを、若い人魚が俺の手を引いてぐんぐん進んでいく。水路は店内を縦横に走り、時折他の人魚や客とすれ違う。

 

(酸素が……!)

 

俺が必死に口を押さえていると、人魚が水中で振り返り笑った。

 

「少し呼吸を我慢してねお兄さん!♡ あ、苦しくなったらキスして酸素交換していいからね♡」

 

水のなかでも声が聞こえるのは、魔法か、あるいは人魚の発声器官が水中用なのか。

 

(マジか!)

 

キスサービスが無料とは。人魚、いい種族だな……!

 

でも、よく考えたら、酸素交換ってなんだ。口移しで酸素が補給できるのか?

 

いや、魔法かなんかで出来るんだろう。異世界だし。多分。

 

 

♢   ♢   ♢

 

 

 

そして水のなかを進むこと数分。

 

「ん……♡♡ ちゅう……♡♡ んぅ……♡♡」

 

(めっちゃキスされた……!)

 

道中、俺がちょっと息苦しそうな顔をするたびに、彼女は「しょうがないなぁ」みたいな顔をして唇を重ねてきた。

 

三回くらい。いや、五回か。数えてないけど、とにかくたくさん。

 

人魚の唇はひんやりとしていて、それでいて柔らかく、ほのかに潮の香りがした。

 

ちゅぽっ……♡ ちゅっ……♡ ちゅぱっ……♡♡

 

(人魚、いい……)

 

初めての人魚風俗、なかなか悪くないぞ。

 

そのとき、ぐんと上昇する感覚に襲われる。

 

「ぷはぁ! 着いたよお兄さん!♡」

 

俺は水面から顔を出し、大きく息を吸った。

 

そこは──。

 

「……すごいな」

 

洞窟だった。

 

でも、ただの洞窟じゃない。壁面には無数の貝殻や珊瑚が飾られ、天井からは淡い青白い光を放つ魔導灯が吊り下げられている。

 

床は滑らかな石で舗装され、中央には天蓋付きの大きなベッド。枕元には真珠をあしらったランプ。壁の一角には小さな棚があり、酒瓶とグラスが並んでいた。

 

天然の洞窟を人為的に整えた、ラブホテルのような空間だった。

 

「ここは地下の海底洞窟なの! ちゃんと陸上種族向けに酸素も通ってるから安心してね!」

 

運んできてくれた若い人魚が水のなかから説明してくれた。尾びれをぱしゃぱしゃと揺らしながら、にこにこ笑顔だ。

 

「すごいな……こんな部屋があるなんて」

 

「でしょ~? 人魚の風俗はこういう水棲と陸棲のハイブリッドルームがウリなんだよ。水のなかでも出来るし、ベッドでも出来るし、お好きなほうでどうぞ♡」

 

「はぁ……」

 

「じゃあ、時間が来たら迎えに来るからね~、楽しんでいってね♡」

 

そう言うと彼女は水のなかに潜り、尾びれをひらめかせて水路の奥へと消えていった。水音がだんだん遠ざかり、やがて洞窟は静寂に包まれる。

 

俺は一人、取り残された。

 

「……えーっと」

 

辺りを見渡す。

 

ラブホみたいな洞窟。これはこれで風情がある。人魚の文化を感じる内装だ。貝殻の装飾、珊瑚のオブジェ、そしてほのかに潮の香りが漂う空気。

 

さて、問題はここからだ。

 

(ミレーネさん……七百五十二歳の人魚……)

 

どんな人物なのか。代書屋をやっていたというからには文字に詳しいはずで、手紙の書き方も教えてくれるだろう。

 

そのときだった。

 

「あら……」

 

背後から声が聞こえた。

 

深くて、落ち着いた、それでいて妙に艶のある声だった。

 

振り返るより早く──。

 

「あらあらあら!!!」

 

どんっ。

 

俺はベッドに押し倒されていた。

 

「!?」

 

見上げると、そこには水色の長髪を振り乱した人魚が覆いかぶさっていた。写真で見た顔だ。

 

でも、写真よりずっと実物のほうが生々しくて、そして──。

 

「お客さん!? お客さんなのね!? 久しぶりのお客さん!」

 

「んむぅ!?」

 

返事をする間もなく、彼女は俺の唇に自分の唇を押し付けてきた。

 

ディープキス。それも、ものすごく濃厚な。

 

冷たくて、ぬめる舌が俺の口のなかに侵入してくる。人間の舌より少し長くて、細い。水棲種族だからか、わずかに塩味がした。

 

(す、すごい……)

 

舌が、ねっとりと俺の舌に絡みつく。上顎をなぞり、歯列をなぞり、舌の裏側をくすぐる。彼女の唾液が混ざり合い、唇の端からだらりと垂れた。

 

ちゅぱっ……ちゅるるる……んぢゅ……っ♡♡

 

「ん゛っ……! んむ……っ!」

 

十秒。二十秒。もしかしたら三十秒以上。

 

ようやく唇が離れたとき、俺はもう息が上がっていた。

 

彼女はというと、まったく息を切らしていなかった。人魚だからかな。

 

肺呼吸もするけど、長時間潜っていられる種族だ。息継ぎなんてお手のものだろう。

 

「しかも若い男! 百歳もいってないショタ!♡」

 

(ショタだって? 俺が?)

 

「あの、俺もう大人ですけど……」

 

「百歳未満はみんなショタよ。 人間なんて特にね」

 

その理論だと人間の八十歳のお爺さんもショタになるんだが。

 

「あ、そうだ!ちょっと待っててね!」

 

ミレーネは突然、俺の上から飛び退くと、尾びれでぴょんぴょん跳ねながら洞窟の隅へと消えていった。

 

(なんだ……?)

 

俺が起き上がろうとした瞬間、彼女は戻ってきた。

 

両手に重そうなタライを抱えて。

 

「じゃーん!」

 

タライのなかには……。

 

(……なんだこれ?)

 

無数の小さな粒が、ぷるぷると光を反射しながら山盛りになっていた。透き通ったオレンジがかったピンク色。一粒一粒が小指の先ほどの大きさで、表面はつるりと濡れている。イクラにしては粒が大きい。キャビアにしては色が淡すぎる。

 

(魚の卵……?)

 

なんていうか、こう……妙に生々しいというか、生命を感じるというか。

 

俺が困惑してタライを見つめていると、ミレーネは頬をほんのり赤らめて、もじもじと尾びれをくねらせた。

 

「私のタマゴ……♡」

 

「……はい?」

 

「だから、その……私のタマゴ♡」

 

ミレーネはタライを俺のほうに差し出しながら、恥ずかしそうに上目遣いをしてきた。濃紺の瞳が潤んでいる。さっきまでの捕食者の目とは別人だ。

 

「今日ね、ちょうど産卵期で……♡ 今、産んだの……♡」

 

「えっ……ここで産んだんですか?」

 

ミレーネは何でもないことのように頷いた。

 

「ここ、私の部屋でもあるの。客が来ないから、最近は住居として使ってたんだけど……」

 

(客が来なさすぎて、風俗店の個室を自宅化してる!?)

 

言われてみれば壁際の棚には酒瓶だけでなく、読みかけらしい本や脱ぎ散らかされた服まで置いてある。

 

風俗店の一室だと思っていたが、どうやら七百五十二歳の人魚の生活空間でもあったらしい。

 

「だから……その……」

 

彼女はもじもじと尾びれを動かし、そして──。

 

「ザーメンかけて♡」

 

俺は固まった。

 

ザーメンを。

 

このタマゴに。

 

かける。

 

「お兄さんのザーメンを私のタマゴにぶっかけてほしいの!♡ いっぱい! どぴゅどぴゅって!♡」

 

「……」

 

「なんたって久しぶりの客だし、しかも若いし、これはもう絶対孕ませてもらわないと……!♡」

 

俺は即答した。

 

「タマゴ孕ませプレイはなしで」

 

「……えっ」

 

「タマゴにザーメンぶっかけるのはなしで。俺、今日はそういう気分じゃないんで……」

 

「そ、そんなぁ……! せっかくいっぱい産んだのに……! 見てよこのぷるぷる感! 新鮮だよ! さっき産んだばっかりだよ!」

 

「産みたてを強調されても困るんですが……」

 

「じゃあ一個だけでいいから! いや、一粒だけでいいから!」

 

ガチの受精可能なタマゴだった。危ないところだった。

 

ていうか一粒だけ狙ってかけるとか不可能だろ。全部が受精したら、俺はいきなり数百人の父親になる。

 

家族計画が急すぎる……。

 

「なんでよぉ……! 若い男のザーメンかけてほしいだけなのに……!」

 

ミレーネはタライを抱えたまま、うるうると目を潤ませた。さっきまでの肉食系の雰囲気はどこへやら、いまは完全にしょんぼりモードだ。

 

「だって、私もう七百五十二歳だよ? もうそろそろ最後のチャンスなの!子供欲しいの!」

 

子供が欲しい。まぁ、それは理解できるのだが……。

 

「お医者様には、あと千歳までは大丈夫って言われたけど!」

 

「全然最後じゃないですよね?」

 

あと二百年以上は大丈夫じゃねぇか。

 

(でも……)

 

不意に、俺の脳裏に前にガルナから聞いた言葉が過る……。

 

『──人魚の嬢は子供を男に押し付けるから、親権も安心だ』

 

全然安心できない一言が、俺の脳味噌をぐるぐる回っていた。

 

「子孫を残すのは生物の本能なの!一度くらい産んでおきたいの! 」

 

本能と言われても。

 

俺はまだパパになる心の準備ができていないし、子供を押し付けられるのもちょっと……。

 

さらに言えば俺はただ手紙の書き方を習いに来ただけなのだ。

 

「とにかく! タマゴはなしで! 普通のプレイでお願いします!」

 

「けち! ケチンボ! ショタのくせに!」

 

「ショタじゃねぇし、ケチでもねぇ!」

 

ミレーネは唇を尖らせ、タライを洞窟の隅にどんと置いた。

 

「わかったわよ。タマゴはお預け。そのかわり、思いっきり搾ってあげるから覚悟なさい。体内受精で孕んでやるんだから!」

 

まさかの体内受精も可能な種族……だと?どうなってるんだ人魚の構造は。

 

「外に産むのと、体内で孕むのを同時にできるんですか?」

 

「できるわよ。人魚には外卵用と胎内用の卵巣があるもの」

 

人魚の身体、繁殖に特化しすぎでは……。

 

彼女の目は完全に据わっている。

 

これは……俺も本気で彼女の相手をしないとだめらしい。

 

 

 

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