【悲報】異世界風俗、嬢の平均年齢が500歳を超えている 作:フレキシブルコーギー
交尾の余韻がようやく収まった頃。
ミレーネはベッドからするりと降りると、尾びれで器用にぴょんぴょん跳ねながら洞窟の隅へ向かった。
そこには小さな珊瑚の棚や机、椅子があり……羊皮紙や羽ペン、封蝋の道具などが並んでいる。どうやら彼女の仕事場らしい。
「さて、と。じゃあやりますか」
彼女は羽ペンを手に取り、羊皮紙を広げた。その動作は無駄がなく、様になっている。
さっきまで「お゛お゛~~~♡♡♡」と汚い喘ぎ声を上げていた女と同一人物……じゃなくて、同一人魚とは思えない。
俺もベッドから起き上がり、彼女の背後に立った。仕事をする人魚の姿を眺めるというのもなかなか貴重な体験だ。
「それで?」
ミレーネは羽ペンの先を舐め、くるりと振り返った。
「相手は誰? どういう関係? どういう想いを抱いてる? ぶっ殺したい? それとも孕ませたい?」
「物騒な選択肢と変態的な選択肢が混ざってるんですけど」
「あら、そう? 手紙を書くには、相手への強い想いが必要なんだけど」
「殺意と孕ませ願望以外の想いも世の中にはあると思いますけど……」
「そうかしら」
ミレーネは首をかしげた。本気で疑問に思っている顔だった。彼女の脳内は殺意か性欲の二択で構成されているらしい。
「えぇっと……相手はエゼルディア家のラミアの令嬢で……思春期で、俺の雇い主の娘で、別にぶっ殺したいとも孕ませたいとも思ってないです、はい」
「なぁんだ。つまんないの」
ミレーネは心底残念そうに言った。つまんなくて結構だ。
「もっとこう、燃え上がるような激情はないの? 二度と会えなくても、君の鱗の輝きを俺は忘れないみたいな」
「まだ会ったこともないんで」
「あら、そうなの」
彼女は何かを考えるように首をかしげ、それから羽ペンを走らせ始めた。さらさらさら、と羊皮紙の上をペン先が滑っていく。筆跡は流麗で長年の経験を感じさせる。
(……すごいな)
さっきまで乱れていた姿とは打って変わって、完全にプロの顔だった。彼女が昔、港で代書屋として活躍していたのは本当らしい。
「あ、それとね」
ミレーネはペンを止めずに言った。
「おちんぽの長さとかザーメンの濃さを書くのはやめておきましょうか。いいアピールポイントだと思ったんだけど」
「何を書こうとしてるんです!?」
俺は思わず彼女の肩を掴んだ。マジでやめてくれよ、俺の社会的信用がゼロになる。
「え~、だって男のアピールポイントって言ったらそれしかないじゃない」
「ありますよ、他にも! 誠実さとか、優しさとか!」
「誠実? 優しさ? そんなので女は濡れないわよ」
「濡れさせようとしてない! 相手は雇い主の娘なんですよ!」
ミレーネは心底残念そうに舌を出した。さっきまで職人の顔をしていたのに、やっぱり中身はドスケベババァだった。
もしかして価値観が数百年前なのか?だとしたら彼女に頼むのは間違い──
「はい、できた」
「えっ、もう?」
十分とかからなかった気がする。手際が良すぎる。
「ちょっと中身を──」
俺が手を伸ばすより早く、ミレーネは羊皮紙を器用に折り畳み、封筒に入れ、封蝋を垂らした。慣れた手つきでスタンプを押し、ぎゅっと押さえる。
「えっ……見せてくれないんですか? 中身」
「こういうのはね、見るのは無粋ってもんよ。分かる?」
ミレーネは得意げに言った。
「いや、分からないですけど……。俺が依頼者で、あなたは代筆者ですよね。なんで依頼者が中身を確認できないんです?」
「手紙ってのはね、出してみないと分からないものなの。書いた人の心がちゃんと伝わるかどうかは、読み手が決めることだから」
「もっともらしいこと言ってごまかそうとしてません?」
俺の好みを完璧に把握した手紙を書いてくれるとは思えないが、手紙のプロであることは間違いない。
どうせ俺が添削しても、出来が悪くなるだけだし……まぁいいか……。
俺がそんなことを考えていると、ふと気づいた。
「あの……」
「なに?」
「この封筒、滅茶苦茶凝ってません?」
封筒は羊皮紙製だが縁には金の箔押しが施された上等なものだ。
なにより……。
封蝋。封をするために垂らされた赤い蝋に押された紋章が、明らかにやばい。
獅子と鷲と蛇が絡み合った複雑な意匠。王冠を戴き、周囲には古い字体で何かの銘が刻まれている。
見るからに「高貴なものです」という風格が漂っていた。
(……これ、ただの封蝋じゃなくね?)
俺は異世界に来てまだ日が浅いが、それでも分かる。この紋章は、ちょっとした貴族が使っていいレベルのものじゃない。
「そりゃそうよ」
ミレーネはこともなげに言った。
「五百年くらい前に滅びたとっても偉い王族のシーリングスタンプ使ったし」
「は?」
俺は絶句した。
五百年くらい前に滅びた。王族。シーリングスタンプ。
さっき、彼女がこのスタンプを取り出した場所を思い出す。そうだ、彼女は珊瑚の棚から取り出した。もっと正確に言うと、珊瑚の棚の上に無造作に置かれた洗濯物のブラジャーの下から、だ。
(ブラジャーの下……)
五百年くらい前に滅びた王族のシーリングスタンプが、人魚のブラジャーの下から出てきた。歴史的遺物が下着以下みたいな扱いだった。
「そんなもの使っていいんですか……?」
「いいんじゃない? だってもう五百年も前だし、誰も文句言わないわよ、多分」
「多分て……」
歴史的価値とか、そういう観点からしてどうなんだ。
「なんでそんなもの持ってたんです?」
俺の質問にミレーネは羽ペンを置き、遠い目をした。尾びれがゆらゆらと揺れ、彼女は小さく息を吐いた。
「若い頃にねぇ、貰ったのよ」
「誰に?」
「こう見えても、若い頃は超モテモテ人魚だったんだから♡」
「はぁ」
「信じてないわね、その顔」
「いや、信じますよ。だって今も十分綺麗ですし」
「……っ♡」
ミレーネは一瞬、言葉に詰まった。頬がほんのり赤らむ。
「……そういうこと言うから、おばぁさん、惚れちゃうでしょ……♡」
彼女はにんまりと笑った。さっきまでの遠い目はどこへやら、急に語りたがりの顔になっている。
「じゃあ、特別に教えてあげる。昔々──」
(昔話が始まるのか……)
俺は覚悟を決めて、椅子に腰を下ろした。
「あれはね、私がまだ数百歳くらいの頃だったの」
数百でまだと言うあたり、人魚の時間感覚は人間と違う。まあ、この世界ではいつものことだ。
「その頃の私はもう、そりゃあモテたのよ。陸の男も海の男も、みんな私の尾びれに見惚れてね。求婚なんて毎日十件は来てたわ」
尾びれに見惚れるという感覚が俺には理解できないが……とにかくモテモテだったらしい。
「へぇ……」
「で、ある日、海で泳いでたら……大きな嵐が来てね」
話が急に海難事故の方に飛んだ。
「大きな船が沈没してて、必死に泳いでる男がいたのよ。冬だったから海は冷たくて、放っておいたら凍え死んじゃう。だから私、助けたの」
「それは、まあ……いい話ですね」
「そうそう。それでね、船から助けた男を浜辺まで運んで、介抱してたら、男が言うの。『ありがとう、お礼に何でもする』って」
「なるほど……」
「それでセックスして、お礼にこれ貰ったのよ」
「……なるほど……って、え?」
あまりにも自然に「セックスして」が挿入されていたので、聞き逃すところだった。
助けたお礼なのかセックスのお礼で貰ったのかはっきりして欲しいところだが……。どうでもいいね。
「ちなみにその男が王族だったの。まあ、五百年も前に滅んじゃった国なんだけどね」
スケールが大きいのか、小さいのかよく分からないな。
だが、その大層なお礼が人魚のブラジャーの下に無造作に置かれていたという事実は変えられない。
「あ、でもね」
ミレーネは急に俺の顔を覗き込んできた。
「おちんぽはあなたの方が大きくて気持ちよかったからね?♡」
「いや、そのフォローいらないですから」
何百年前のおちんぽを鮮明に覚えているようだ。物凄い記憶力をしている。人間の何倍も生きている長命種にとって、セックスの記憶というのは鮮明に残るものなのかもしれない。
でも、おちんぽに記憶容量を使っている場合ではないと思う。他に覚えるべきことはないのだろうか。
ミレーネはけらけらと笑った。その顔はやっぱり綺麗で、年齢なんて本当にどうでもよく思えてくる。
「それで、手紙の中身は大丈夫なんですよね? おちんぽの長さとか書いてないですよね?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと真面目に書いたわよ」
「本当ですか」
「本当よ。ね?」
ね?と言われても、俺は中身を見せてもらえなかったので確認しようがない。この不安を抱えたまま手紙を渡すしかないのか。
その時だった。
ざばぁっ。
洞窟の水路から、水しぶきを上げて一人の人魚が顔を出した。来るときに俺を案内してくれた、若い人魚だ。
「はーい、お時間でーす!♡」
彼女は水路の縁に両腕をかけて、にこにこと笑っている。
「あら……もうそんな時間なの」
ミレーネは名残惜しそうに尾びれを揺らした。彼女は完成した手紙を俺に手渡しながら、そっと微笑む。
「はい、これ。ちゃんと届けるのよ」
「……中身、本当に大丈夫なんですよね?」
「大丈夫よ!また返事書いてあげるから、また来てね♡」
俺は手紙をポケットにしまった。不思議と封筒からは微かに潮の香りがした。
「じゃあね、ダーリン。ちゃんと手紙には防水加工もしてあるからね♡」
ミレーネは尾びれをぱたぱたさせながら、俺を見送ってくれた。
「じゃあお兄さんこっち♡ 案内するよ!♡」
送迎役の人魚が水路から手を伸ばし、俺の腕をぐいっと引っ張った。
「うわっ……! がぼがぼがぼ……!」
俺は為す術もなく水路に引きずり込まれ、水中のトンネルを猛スピードで運ばれていった。泡のカーテンの向こうに、ミレーネの姿が遠ざかっていく。
彼女はまだ笑っていた。
手を振りながら。
タライのタマゴをしっかり抱えて。
「……」
──あのタマゴ、孵化しないよな……?
俺はそんな不安を抱えながら、洞窟を後にした。
♢ ♢ ♢
俺は手紙を胸に抱え、夜の屋敷の廊下を歩いていた。
封筒には五百年前の印章で押された封蝋がどっしりと鎮座している。
獅子と鷲と蛇が絡み合った王族の紋章。歴史的にも文化的にも超一級の美術品。博物館ものだ。
(こんなん使っちゃってよかったのかな……)
よかったわけがない。でも、もう使っちゃったものはしょうがない。
それにしても遅くなってしまった。もう夜中だ。深夜に食事するとは聞いていたが……流石にこんな夜中ではセリメラの食事はとっくに終わっているだろう。
今日のところは諦めて、明日の食事に手紙を添えよう。
そう思って曲がり角を曲がったときだった。
「おや、タクミさん」
静かな声が聞こえた。
廊下の先から、食事のカートを押したアゼルがこちらに向かってくる。
「アゼルさん? 今からお嬢様の食事を届けるんですか?」
「えぇ。セリメラ様はお昼夜逆転されておられますので」
なるほど。お引きこもりのお陰キャはお夜行性でもあったか。ちょうどよかった。
「無事にお手紙は用意できたようですね」
アゼルは俺の手にある封筒を見て、微かに微笑んだ。
「まぁ、なんとか……」
俺が書いたわけじゃないけど。人魚の風俗嬢に代筆してもらったなんて、口が裂けても言えない。
「手紙をお食事のトレーに乗せておけば、そのうちお嬢様から返信がくることでしょう」
「それじゃあ、俺のもここに……」
俺はトレーに手紙を乗せようとして……トレーの料理を見て、手が止まった。
「……これ、料理ですか?」
トレーの上には、生タマゴだけを使った様々な料理が並んでいた。
生タマゴのスープ(冷製)。生タマゴのサラダ(タマゴを割っただけ)。生タマゴの盛り合わせ(黄身と白身を分けただけ)。生タマゴのデザート(タマゴに砂糖をかけただけ)。
「えぇ。ラミアは火を通したものをあまり好みませんので」
「いや、分かりますよ。ヴェーラ様も毎朝生タマゴ飲んでますし。でも、これは料理と言うより、ただの……」
「ただの?」
「……いや、なんでもないです」
異世界の料理にケチをつけるのはよくない。文化の違いだ。ラミアにとってはこれが美食なのかもしれない。多分。
トレーにはすでに、アゼルの手紙が一枚添えられていた。俺も自分の封筒をその隣にそっと置く。
「アゼルさんも毎日手紙を?」
「えぇ、欠かさず書いております」
なんて健気なラミアメイドなんだ。毎日手紙を書いて、たまに「うるさい」「消えろ」「飯はまだか」と返事をもらう。それが何年も続いている。もはや信仰の域だ。
「以前は『お嬢様、そろそろ部屋から出てきてください。みんなお待ちしています。お嬢様が出てきたら、屋敷中でパーティを開こうと使用人一同、首を長くしてお待ちしております。今日も素敵な一日になりますように。頑張ってください、頑張ってください』……と、書いていたのですが」
「……」
「中々、反応が良くなくて……最近は別の表現にはしておりますが」
それは思春期の女の子には逆効果なのではないだろうか。
引きこもりの陰キャに「みんな待ってるよ! パーティしようぜウェイ!」は、たぶん一番言ってはいけない言葉だ。プレッシャーでしかない。むしろ部屋の奥に引きこもらせる効果がある。
(まぁ、最近は別の表現に変えてるならいいか)
「しかし、タクミさんの手紙は豪華ですね」
アゼルが俺の封筒をじっと見つめた。
「封蝋も、やけに古風で豪勢な印が押されてますし」
「そ、そうですかねぇ?普通では?」
俺は適当に笑ってごまかした。
そうしてお嬢様の部屋の前に来た。
彼女はトレーをセリメラの部屋の前にそっと置いた。重厚な扉の前。明かりの漏れない、無音の部屋。
そして、そっとノックを三回。
「セリメラ様、本日の夕食をお持ちしました。本日は生卵盛りでございます。どうぞお召し上がりください」
返事はない。
でも、アゼルは気にしていないようだった。毎度のことなのだろう。
彼女がトレーを整えているとき、ちらりと彼女の手紙の文字が見えた。
羊皮紙いっぱいに、達筆でこう書かれていた。
『頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ』
文字の羅列が紙面を埋め尽くしていた。
(……)
俺は無言で天井を見上げた。
大丈夫か。いや、大丈夫じゃねぇ。これ、もはや手紙じゃなくて呪いだろ。純粋な善意がここまで恐怖に転じる例を、俺は初めて見た。
もしかしてこれが別の表現とやらか?
毎日これを受け取っているセリメラお嬢様の気持ちを想像すると、なんだか泣けてきた。プレッシャーの塊みたいな手紙だ。
でも、アゼルは満足げだった。
「今日はお手紙が二つもあるから、お嬢様は喜ぶに違いありません」
「そ、そうですかね……?」
俺はそこはかとなく嫌な予感がした。
ミレーネが何を書いたか分からない封筒。アゼルの「頑張れ」無限地獄の手紙。
(大丈夫か、この組み合わせ……)
でも、もうどうしようもない。
手紙が正解だったかどうかは、セリメラの反応を待つしかない。
♢ ♢ ♢
自室に戻ったのは、それからすぐのことだった。
疲れた。今日は本当にいろいろあった。人魚の風俗に行き、タマゴにザーメンをかけられ、手紙を書いてもらい、そして帰ってきた。
(もう寝よう……)
そう思って部屋の扉を開けた。
そこには──。
全裸のラミアがいた。
「……」
俺はゆっくりと扉を閉めた。
(……幻覚かな)
目を閉じ、深呼吸し、もう一度扉を開ける。
やっぱり全裸のラミアがいた。
俺のベッドの上で、とぐろを巻いている。鱗が照明を受けて艶やかに輝き、上半身には何も身につけていない。
おっぱいが丸出しだった。形のいい乳房が俺を誘惑している。
「……あのー、なにをしてるんですかね、メディさん」
「待っていました」
彼女は無表情のまま、ちろりと二又の舌を出した。
「夫の帰りを待つのは、妻として当然のことですので」
「いつ夫になったんですか俺は」
「私の処女膜を破った瞬間からです」
マジかよ。
「……ところで、タクミさん」
メディはベッドからするりと降り、這うように俺に近づいてきた。
その目が、据わっている。
「他の女と寝てきましたね」
「……え」
心臓が跳ねた。
「ど、どうしてそれを……?」
「磯の香りがする」
メディは俺の胸に顔を近づけ、すん、と匂いを嗅いだ。
「これは……人魚……しかも、とんでもないババァ……!」
(匂いだけでそこまで分かんのかよ!!)
俺は動揺を隠せなかった。風俗に行くこと自体は黙認されているはずだ。メディだって、俺が風俗好きなのを知っている。
でも──。
「七百……いや、七百五十歳前後……しかも、三回は射精してる」
「当てすぎでしょ!! 怖い!! 怖いから!!」
「タクミさん」
メディは無表情のまま、俺の胸ぐらを掴んだ。
「私という妻がありながら、他の女に三回も射精するとは、どういうことですか」
「いや、まだ妻じゃないし、そもそも俺はあなたと結婚した覚えが──」
しゅるるるるるっ!!
彼女の尾が俺の胴体に巻きついた。
「ぐえっ!!」
「他の女の匂いを付けて帰ってきた夫には、それ相応のお仕置きが必要です」
「お仕置き……?」
「えぇ」
メディは尾を巻きつけたまま、俺をベッドまで引きずっていった。
「ちょ、待っ――」
背中がシーツへ沈む。
「今夜は寝かせませんから」
拘束が強まる。
ぎゅるるるる……っ。
「覚悟はよろしいですね、あなた……」
俺の言葉は、彼女の唇に塞がれた。
♢ ♢ ♢
それからどうなったかは、まあ、言うまでもない。
他の女の匂いは、ラミアの怒りと嫉妬を増幅させるらしい。そしてそれは絡みつく尾の締め付けとキスの深さに直結する……。
俺は一晩中、メディに搾り取られた。
叱られながら。説教されながら。それでいて、途中からは彼女のほうが夢中になって。
「もう……浮気しないでください……♡」
「浮気って……メディさんは俺の妻じゃ……」
「妻です」
らちがあかなかった。
結局、いつまで続いたのか覚えていない。気がついたら俺はぐったりとベッドに沈み、メディは満足げに俺の胸に頬を寄せて寝息を立てていた。
(……俺、このままだと本当にメディの旦那にされるな)
天井を見上げながら、ぼんやりと思う。
尾をゆるく巻きつけられ、冷たい鱗の感触を足に感じながら、俺はそっと目を閉じた。
そのうちセリメラお嬢様からの返事が来るかもしれない。
楽しみでもあり、怖くもあり。
でも──いまは、少しだけ、眠ろう。