※この作品はR-18です。

ドットアビスを1ミリも知らない転生者さんヒロインをうっかり寝取ってしまう   作:国語が苦手なオオムラ

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ヒマリ1

 

 転生した。元日本人で、テンプレファンタジー。これだけ言えば僕の事は特に問題ないだろう。

 

 

 「……ほう。なるほど、これは分かりやすくていいな」

 

 僕が作成した履歴書と職務経歴書を読み、司令官は興味深そうに笑った。ファンタジー世界では珍しい試みではあるだろう。

 僕は面接が得意ではない。自分の良さをプレゼンなんて、日本人はだいたい苦手だと思う。過剰に期待されて後で落胆されるのが怖いんだ。

 

 この世界は長く戦乱が続いていて、戦災孤児としてド貧乏な孤児院で育った僕は13で傭兵団の荷物持ちになるが、1年経たずに団が壊滅し解散となった。その後各地を転々とし、色々な事をして生き延びてきた。幸いと言っていいかわからないが、戦場で敵兵を殺す以外の悪事はまだ、していない。

 

 そんな最中、大国の国境ど真ん中に【大穴】と呼ばれるダンジョンが発生した。各国は休戦し、大穴の攻略に乗り出す。その一環でこの前線基地が作られ、英雄の血筋を持つ司令官が赴任してきた。

 根なし草として生きてきて将来に不安を抱える僕は、複数の国家が資金を出すこのプロジェクトのいわゆるオープニングスタッフ的なポジションで老後の生活をどうにかしようとやってきたのである。将来性は、多分ある。

 

「フロントもバックもアシストもできるか」

「は。いえその、経験があるだけで突出した能力もなく……」

 

 言ってからしまったと思った。この世界、謙遜するとそのまま評価される。しかも1度ついた評価はずっとそのままで、使えない半端者、という烙印が付いて回る。貢献しても手柄は奪われるか認識されないか、どちらにせよ長く働くならロクな事にはならない。

 

「立ち回りを知っているだけでも充分だ。字も綺麗だし料理までできるのは中々居ないぞ。どこで働いてもらうか悩ましいな」

 

 しかし返ってきたのは困ったような苦笑い。見下すでもなく、威張るでもなく、友達の進路を一緒に考えるような気さくな表情だった。

 

「街に貢献できるならどこでも!どれだけでも働けます!」

 

 多少ブラックでも構わない、というか、黒さのない職場なんてないのでここが勝負どころとアピールした。

 

「俺の部下にそんな無茶な働き方はさせん。だが、能力を遊ばせる余裕もない現状だ……給与は保証する。助けてくれるか?」

 

 え?しゅき……♡

 いい上司に恵まれた経験のない元日本人はチョロいんだぞ!

 ともあれ、こうして僕は昼は兵士、夜は娼館の料理人として就職が決まったのである。

 

 

 半年が経った。

 ほぼ原っぱだった基地はそこそこの規模の街になり、手練れの傭兵や高名な商人、腕の良い職人など、優秀な人材が多く集まってきている。

 それでも僕は、司令官からいまだ高い評価を貰えていた。

 敵の攻撃を受ける前衛(フロント)、火力で蹂躙する後衛(バック)、そしてマッピングや採取など様々な支援を行うアシスト。これら3種の役割での分担が大穴攻略の最適解と言われるなか、僕はその日その時で一番脆い陣にサポーターとして入っている。

 

 今日は少ない後衛での参戦である。

 傍らにはヒマリちゃんが銃からぶっといビームをぶっ放して戦っている。僕は溜めが必要な彼女が集中できるように前衛のお漏らしや横湧き、飛行種の処理をメインに弓を使っている。どう頑張っても火力は出せないしな。

 

 ヒマリちゃんは大穴の不思議現象で日本から転移してきた、ちょっと気弱でおとなしそうな小動物系の、けれど半端ない巨乳が特徴の元女子高生だ。

 何度か挟んで貰った事があるが、本番中出し原理主義を自認する僕がおっぱいだけで満足してしまえる破壊力を誇る気持ちいい巨乳だ。基地の新米兵士と話す時も黒髪おっぱいの子でだいたい通じてしまうほど。

 彼女は娼館で働いている。ヒマリちゃんに限らず、前衛で刀を使うあの娘も、拳で戦うメイドさんも、後ろで採掘しているウェイトレスさんも、みんな司令官が大好きで、高級娼館のオーナーの司令官のために客を取り春を売っていた。

 そして僕も、休みの日には客の一人になって彼女達とセックスしていた。それがこの基地の、普通の日常だ。

 

「よし、総員休憩だ!アシストから食事を貰え!」

 

 司令官の良く通る声。きゅんきゅんするんじゃー♡

 2グループ編成で交代で昼休憩に入る。反省会や打ち合わせも兼ねて皆同じポジション同士で固まり、代表が後方のアシストに携帯食を貰いに行く。

 

「じゃあ、わたし受け取りにいきますね」

「あ、待って待って!」

 

 ヒマリちゃんが荷物を降ろして立ち上がりかけたところで呼び止める。首を傾けて『?』を浮かべた彼女に、僕は荷物から魔石水筒とバスケットの包みを出した。

 

「今日僕、夜の仕事休みでまかない作れないからさ」

「あ……」

「だから別でお弁当作ってきました。後衛二人だけだし」

「わあっ!」

 

 わかりやすく絶望から希望に変わる表情。本職に比べたら全然及ばない力量のはずなんだが、僕程度の料理はなぜか結構評価されている。それぞれ体調や好みに合わせて多少調整したり一品足したりするからか。いやでもその程度だしなぁ。

 ともあれ、バスケットを開ける。気に入ってくれたらいいが。

 

「これ……!」

「前に話してくれたハンバーガーを再現してみました」

 

 僕にとっては遠い昔の話で、帰る場所も意志もないが、口下手な彼女との話のネタにとヒマリちゃんとよく日本の話をしていた。いつか帰りたいと願う彼女に言ってもお互いメリットもないから、僕が転生者であることは伏せていた。

 お手拭きを渡し、目をキラキラさせる彼女にどうぞと頷く。

 

「んっ……んっ!これ、モスだ……!」

 

 野菜盛り盛り、マ○ドとは違うのだよマ○ドとは。

 ポテトも細長くカットして揚げてあり、バスケットの下段の底には砕いた火魔石と水魔石を適度な配分で敷き詰めてある。時間が経っても暖かく、且つ乾燥しない工夫である。

 

「ちょっと風情がないかもだけど」

 

 言い置いて、さらに水筒とコップを用意。中身を注ぐと、もぐもぐしてるヒマリちゃんの目が見開かれた。

 

「……コーラだ」

 

 僕は前世の小学校時代、世界未発表のコ○コーラのレシピを暴いてやると意気込んで自由研究をやったことがある。炭酸水に調味料やスパイスを闇鍋のようにぶち込んで、結局ドク○とルー○ビアのパチモンみたいのができただけだったが、その経験は今もポーションの調合で活きている。

 今なら、あの頃よりもっと上手に再現できているはずだ。まぁ元の味が記憶の彼方にあるんだが。

 

「不味かったら無理しないで。普通の水もあるから」

「ん……」

 

 ドキドキする。味見では不味くはなかったと思う。けれど僕より記憶の新しい彼女に通じるか。下手すると今の良好な関係が壊れてしまわないか。

 コップに唇がついた。僅かに首が反る。

 舌に炭酸が乗る刺激。びっくりした顔。口元を手が塞ぎ、小さく喉が鳴り、涙が……って!

 

「ヒマリちゃん、ごめん!不味いなら吐いて!」

「ちが、ちがうの」

 

 慌てて背中をさすって口元にハンカチを当てて吐くよう促すが、違う違うと首を振るのみで涙がぽろぽろとこぼれていく。

 

「うぅ……うわあぁぁ」

 

 しまいには声をあげて胸に飛び込んできた。周りを見渡してみるが、前衛もアシストも遠くで話し込んでいて誰もこっちを見ていない。どうすれば良いか分からなくて、僕はただずっと泣きじゃくる彼女の背を抱き、頭を撫でていた。

 

「……落ち着きました?」

「はい……ごめんなさい」

「いや、こっちが謝る方で」

「そうじゃなくて、懐かしくて……」

 

──学校帰りに、友達と寄った駅前のファーストフード店。流行のバンドの話、アイドルの話、誰かの愚痴、好きな人の話、将来の事。中身なんてほとんどない、取り留めのない話。

 そういう日常があった事を、いつの間にか忘れていた事。

 異世界に来て、大切な人たちに出会って、戦って、恋をして、働いて。目まぐるしい日々の中、少しずつ過去が風化していく。覚えていたつもりで、空気や温度、そういう当たり前のものが消えていくのが怖い。いつか帰れたとき、自分が異物になっているんじゃないかって。

 思い出すのは怖くない。忘れてしまうのが、忘れたことすら分からなくなるのが怖いんです。

 

 泣き止んで、落ち着いたヒマリちゃんはそう締めた。僕は彼女の顔を拭いて、頬を挟んで目を合わせた。まだ少し赤いけど、ひとまず大丈夫そうだ。

 

 僕はもう手遅れなくらいに忘れた。親の顔どころか自分の事すら曖昧だ。断片的にいくつかの記憶があるだけで、特に不便とは思わないけれど、まだまともな彼女にとってはきっと恐ろしい事なんだろう。

 行きつけの店の娼婦で、同じ店で働く仲間で、同郷で、命を預ける大事な戦友。

 どうにかしてやりたいと、強く思う。

 

 

 任務が終わり、宿舎でタンスをひっくり返す勢いで服を広げた。基本僕は寝る時と料理する時以外いつも隊服を着ている。任務はもちろん、買い出しに行く時も娼館に行く時も司令官から支給された隊服姿である。

 しかしここへ来る前は平民服も少しあったはずで、今用があるのはそういうのだ。

 狭い部屋に並べた服を眺め、組み合わせを考える。白いワイシャツと、綿のスラックス。鏡を見た。平凡な、冴えない異世界人の男が映っている。

 

「何か……!」

 

 棚の上に薬品の瓶が並んでいた。その中の一つ、防具に対魔加工をするときに使う茶色の薬液に目がとまる。

 流しに頭を向け、躊躇いなく瓶の中身を全て頭にぶちまけた。

 

「あ!あっち!あち、いってええ!」

 

 人体に有害しかなさそうな液体だが、それの特性を僕は知っている。ひーひー言いながら懐中時計を取り出し、針を眺める。時間が引き延ばされたように遅い。

 1分……5分…………10分。鏡を見た。

 僕のくすんだ赤い髪が、真っ黒に染まっていた。

 これならギリギリ、日本人に見えない事もない。

 

 

 

チリンチリン♪

「いらっしゃいませ~♪初めてのお客様ですか~?」

 

 開店時間と同時に娼館のドアを開ける。カウンターテーブルを拭いていたエミリーさんが満面の笑顔で迎えてくれた。

 

「あら、髪染めたのね」

「えっ?髪?」

「どうも、ルディアさん、エミリーさん……僕だって分かりますかね?」

「見た目を変えても魂の色は変わらないもの」

 

 女主人、いわゆる店長のルディアさんは一発で見抜いてきたが、エミリーさんは未だ半信半疑で僕の顔をぺたぺた触っている。この子も娼婦で、挟んだり中出ししたりした仲だ。

 それにしても魂の色か。そのレベルで判別されたらどうにもならん。薄々思っていたけど、このひと多分人外だろうな……それも高位の、僕なんか一瞬で消し炭にするような。敵意はなさそうだし怒らせないように気をつけていればまぁ大丈夫だろうけど。

 そのルディアさんが、常連の僕に聞いてくる。いつものやり取りだ。

 

「本日はご指名はありますか?」

「ヒマリちゃんを3時間。オプション爆盛りで」

「かしこまりました」

 

 昼は兵士、夜は料理人。司令官の信頼もそれなりにある僕は高給取りだ。普通の兵士が週1回手で抜いて貰うくらいの高級娼館で、僕はいつもオプションを盛れるだけ盛る。嬢もその方が稼げるし好感度も上がる。戦友から嫌われたら事故死もありうるし、何より僕が気持ち良くなりたいのである。

 

「お待たせしま……し、た?」

 

 いつもはカウンターだが、座席オプションを使いカーテン越しに西日の差す明るいテーブルについた。

 ヒマリちゃんがコスプレ指定オプションで日本から来た時の制服姿でやってきて、僕の姿を見て目を丸くしている。

 そこで僕はもう一つ、設定指定オプションを使わせて貰う。

 

「先輩」

「えっ?」

「今日は僕の事を先輩と呼ぶこと」

「せん……ぱい?」

「下校デートをしよう、ヒマリちゃん」

 

 まずは一緒にご飯を食べる。食べながら、日本の話をする。合間合間で今日のプレイの打ち合わせ。

 僕の性癖は面倒臭くて、どんなに美人でも会ってすぐは勃たない。たくさん話をして、キャラを設定して、シナリオを作って、はじめて興奮する。ドロドロに疲れてたらナシでも勃つけど、あまり記憶が残らないんだよなぁ。

 いつもは会話しながらストーリーを作るけど、今日は設定済みだ。これもオプションで通す。ほんとにイヤだったら拒否してくれていいけれど、ヒマリちゃんは受け入れてくれた。

 

 以下本日の設定だ。

 僕は受験のために部活を引退した上級生、ヒマリちゃんは下級生。付き合って半年。キスはしたけどセックスはまだ。今日限り転移前、処女と童貞とする。

 下校時に示し合わせて合流後、ちょっとお高いお店でご飯を食べてからラブホに行く。あとは流れに任せてエッチする。

 ルールは一つ。どちらかが『おしまい』と言ったら行為をやめる事。

 

「先輩……」

 

 肩を抱いて2階の個室に入る。ラブホを想起させる、窓のない大きなベッドの部屋。照明は薄暗く紅い。

 ヒマリちゃんの肩は少しだけ震えていた。緊張か、やや強張っている。

 

「ヒマリちゃん」

 

 目を合わせた。膝を曲げて、顔を近くする。拒絶はない。

 唇を当てた。そのまま動かず、じっくりと待つ。 

 やがて、震えが収まった。僕は舌を伸ばし、彼女の唇をつついた。開かれた隙間にそっと差し込む。舌先が触れ合い、やがて絡み合う。

 

「ん……ふぁ……」

 

 離れた。ほんのりと赤みを帯びた顔。薄く開いた唇に、まだ舌先が覗いていた。

 僕はふと、自分が薬品臭い気がした。水洗いだけして他の客に指名されないよう急いで来たので、開店まもなく身ぎれいなヒマリちゃんとは雲泥の差だ。

 

 

◇◇◇

 

 備え付けのシャワールームから水音が聞こえる。

 わたしは制服姿のまま、不思議な気持ちでベッドに座って彼を待っている。

 いつも隊服に胸当ての人がワイシャツを着ていた。

 キスをした時、彼から薬品の匂いがした。ツンとする刺激臭。任務を終えてからほとんど時間は経っていないのに、赤い髪が真っ黒になっていた。きっと、ちゃんとした染料を使っていない。危険な薬品を使ったのかもしれない。

 

 何のために?

 

 たぶん、わたしのためだ。わたしが帰る場所を忘れないために。

 ご飯を食べながら、たくさん話した。他愛のない話を彼は好んで聞いてくれる。こっちの人には全然伝わらない事を、彼は全部覚えている。再現しようとする。

 ……日本に対する解像度が高い。

 でもそれは、理由じゃない。ただの従業員仲間で、お客さんで、戦友で……それだけの人がやってくれる範疇じゃない。

 

 どうして?

 

 わたしは、しれーかんが好き。守ってくれたし、支えてくれたし、初めても貰ってくれた。その後もたくさん抱かれた。けれど。

 

「……先輩」

 

 口に出してみると、なぜかすごくドキドキする。

 今日はそういうプレイをする。それだけなのに。

 

 ドアが開く。

 バスローブ姿の彼が出てきた。何度も裸を見たはずなのに、襟の合わせから見える鎖骨に恥ずかしくなる。

 彼が息を吸った。吐いた。

 

ヒマリ(・・・)

 

 名前を呼ばれた。

 わたしは、自分が自分でなくなる気がした。

 

 

 

◇◇◇

 

 めちゃくちゃ愛撫に時間かけてしまった。

 キスして、脱がせて、おっぱい揉んで、反応がいちいち可愛かった。腕に触れても、おへそに触れても、耳をつまんでもビクンビクンする。おまんこはグチャグチャに濡れてるけど、表情は生娘のように初々しい。

 身体は今のまま、心だけ過去にいる。

 

「せん……ぱい」

 

 息も絶え絶えに、僕を見上げる。

 挿れていい? 

 無言で頷く。目が潤んでいた。

 入り口にあてがう。先っちょだけ入れて、もう一度見た。少しの不安とそれ以上の期待。

 

「あ……あ!あ!んん~っ!」

 

 奥まで押し込む。嬌声。こぼれる涙。ナカが熱い。

 

「大丈夫?」

「せんぱい、わた、わたし……はじめてなのに」

 

 気持ちいい。そう言った。

 だから遠慮せず動き出す。

 

「あっ♡あっ♡いい……せんぱい、気持ち、いい♡」

 

 すぐに射精欲がこみ上げる。挿れたばっかりなのに、気付いた時にはすぐそこまで来てる。

 

「ヒマリ、ごめん、もう」

「きて、せんぱい、ナカ、おまんこにだして♡」

「あああ!いく、イク!」

「わたしも、イク!イっちゃう♡」

 

 手を握った。口付けた。二人で夢中で舌を絡ませて、そのまま中で果てた。

 

「んっんっ……んんんん~~っ♡」

 

 ドクドク出てる。童貞になった僕は、はじめての彼女の中に10代の欲情を注ぎ込んだ。

 

「あったかい♡せんぱぁい♡」

「ヒマリ、もっと」

「ん♡して、ください、もっと♡」

 

 まだ萎えない。抜かずにそのまま動き始める。一度目の精子が掻き出されて、二度目を求めて膣がヒクつく。

 

「あっ♡あっ♡……や、おっぱい、だめえ♡」

 

 揺れるおっぱいを掴んで腰を打ち付ける。指先で乳首を転がす。過剰なほどに反応する。

 

「また……出る!」

「だして♡わたしのおまんこで、気持ち良くなってえっ♡」

 

 膝が笑うほど出た。脱力して、彼女の上に身体を預けた。幸せそうな顔で、僕を受け止める。大きなおっぱいが僕の胸で押しつぶされる。僕のか、彼女のか、どちらのか分からない、心音。

 まだ萎えない。溶け合う。混ざり合う。どこまで僕で、どこから彼女か。境界が不鮮明になる。唇を合わせて、ぴったり抱き合って、不自由なまま、僕たちはふたりで動く。

 

「すごい♡気持ちいい♡せんぱい、せんぱぁい♡」

 

「すき♡だいすき♡せんぱいのおちんぽ、すきぃ♡」

 

「ずっと、さいごまで、はなれないで♡なかで、だしてぇ♡」

 

 

 

 

 

 シャワールームから水音が聞こえる。

 抜かずに4発、全部正常位。わけわからんくらい気持ち良かった。

 ぼんやりとした頭が冴えていく。僕はベッドに仰向けで寝転がったまま、サイドボードの懐中時計を引き寄せた。たぶん、そろそろ時間だ。

 

 ドアが開く。バスタオル姿のヒマリちゃんが出てきた。少しふらついた足取りで、僕の隣に寝転んだ。伸ばした腕に頭が乗る。じゃれつくように、すり寄ってきた。石鹸のいい匂いがする。

 

「せーんぱい♡」

 

 なんとなく、恥ずかしくなって目をそらした。

 

「なんで目を逸らすんですか?」

 

 身を乗り出して覗き込もうとする。僕の胸に手を置いて、気付いたようだ。

 

「すっごい、ドキドキしてる」

「うっさい」

「ふふ」

 

 彼女が動く気配。顔を背けているから見えない僕の耳にかかる、熱い吐息。

 

「……おそろい、ですね♡」

 

 これ以上は良くない気がして、僕は懐中時計の蓋を開けた。カチンと乾いた音がした。時間を見せるように掲げた。

 

「ヒマリちゃん、魔法の時間は、『おしまい』です」

 

 再びカチンと蓋を閉じる。僕とエッチした子はだいたい知ってる、終わりの合図だ。もちろんヒマリちゃんも。

 僕たちは、元の関係に戻る。僕は宿舎に帰り、ヒマリちゃんはお客さんに抱かれる。

 彼女は俯いている。目線を合わさず、黙ったままだ。

 

「次に指名する時もこの設定を使います。少しだけ時間を進めて、君と新しい思い出を作ります」

「…………」

「だから、次も僕の彼女になってください」

「…………」

 

 あれ、反応ない。

 いやよくよく考えたら僕キモくないか。

 好きな人がいる風俗嬢に、恋人イチャラブプレイ要求って、かなりやべえのでは?娼館って、もっと割りきって楽しむ場所だったはずだ。

 

「……せんぱい」

「ヒマリちゃん?」

「これからも、お店の外でも……ずっと、先輩って呼んじゃ、ダメですか?」

 

 祈るように、縋るように。

 その切実な願いを断る理由を、あいにくと僕は持ち合わせていなかった。

 

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