ドットアビスを1ミリも知らない転生者さんヒロインをうっかり寝取ってしまう 作:国語が苦手なオオムラ
「ああ♡旦那様ぁ♡旦那様ぁぁ♡」
「クレハ!」
出てる♡ナカに♡たくさんっ♡
やっぱり私は旦那様が一番好き。旦那様とのえっちが一番気持ち良くて、私にとっての旦那様はこの方以外にありえない。
だからアレはほんのいっときの気の迷いで……。
と、何故か熱くなりきれない私が自分に対して言い訳をしていた。以前は幸せいっぱいで、何か考える余裕なんてなかったのに。
「ぁっ、まだ……」
抜かれる肉槍。栓が抜けて、溢れ出る子種。熱が失われて、かわりに喪失感が入ってくる。
「すまん。仕事が立て込んでいてな。終わったら埋め合わせをする」
「旦那様。私は、クレハの全ては旦那様のモノです……だから、旦那様の望むままに」
求められるなら、いつでもどこでも。忙しいのでしたら、邪魔せずいつまでもお待ちしています。そう告げた。
「気持ちは嬉しいけどな、クレハはクレハのモノだ。誰のモノでもないぞ」
もっとわがまま言っていいんだぞ、と優しく笑いかけられました。それが心地よいと思うと同時に、ほんの少しだけ、物足りないと思ってしまう。
もっと求められたい。執着と独占欲で縛られて、道具のように扱われたい。
……あの人のせいで、私はまた、変な癖が付いてしまった。
そう、まただ。
初めてのお客様に乱暴に犯された日。旦那様から寵愛を頂いて精神は持ち直したものの、私は娼婦というお仕事を続けられる自信を失っていた。
頼まれたわけでなく、旦那様の力になりたいと自分から望んでおいて、たった一夜で辞めたいとは言い出せず。
「……あの方、ですか?」
「ああ、アイツはウチの上客でもあってな。なかなかに好評なんだ。人格は俺が保障する。頼めるか?」
旦那様から相手してほしいと頼まれたのは、入って間もない私にはあまり馴染みのない、暗い赤髪の料理人。兵士でもあると聞くが、特に目立った功績もなく、それなのに旦那様に信頼されていて少し妬ましく思う。
優しくするよう話は通してあるから、ちょっと試してみてくれ。無理はするなよ?
そう言われ、私はカウンターで独りグラスを傾けるその男の席に向かった。
「来たか」
「あ、あの……」
聞いていた話と違う、見るからにトゲのある様子。また酷い目に遭わされるのではと硬直する私の前に、彼は不機嫌そうに濁った液体で満たされたショットグラスを置いた。
「ポッと出の小娘がよォ、どれだけ司令官しゅきか、見せて貰おうじゃねぇか!」
「……はい?」
「司令官しゅきしゅき山手線ゲームだァ!」
闇のゲーム、と彼は言いました。
ルールは以下です。
司令官のしゅきな所を言って、グラスを飲み干す。
交互にそれを繰り返し、先に語彙が尽きた方の負け。
お酒とおつまみの浅漬けは全額向こう持ち。
ペナルティは後で考えるけど酷いことはしない。
ちょっと意味が分かりません。
戸惑う私を前に彼はニヤリと笑うと自分のグラスを手に持った。
「僕から行くぞ!『逆境にも慌てない不屈の精神がしゅき!』」
言って、ひと息に飲み干す。そして手酌でまたグラスを満たすと、クククどうだ?怖じ気付いたか?と私を見る。
「で、では『誰でも平等に救いの手を差し伸べる優しさが好きです!』」
白く濁る液体はこの地域では見かけないお酒で、少し怖かったけれど目を瞑ってひと息に流し込んだ。
あ、これどぶろくですか。鬼族の好物です。私何杯でもいけます。そんなお客様に注いで頂くなんて……どうもどうも。次私がお注ぎしますね。と甘い強めの酒精にすぐに楽しくなる。
「まだまだ行くぞォ!」
「望むところ……!」
基地の皆が旦那様をお慕いしているのは存じておりますが、こうやって飽きもせず延々と語り合えるほど仲の良い人はまだ居なくて。
「風を受けて物憂げに立つ姿が格好良くて好きです!」
「あっ、それ分かるぅ!」
カチンとグラスが当てられる。トゲトゲしさはいつの間にか無くなっていて、友達同士のような気安さで笑いあう。
私はこれで、それなりにいい家の出なので、こういった気の置けない友人というものに憧れがあった。
だからこの夜は、色々とあったものの、私にとって今も大切な思い出です。
いつまでも続けばいいのに、なんて思っても終わりは来るもので。
「あんたたちねえ……いつまで遊んでんの?」
「げえっ!ルディアしゃん」
あきれ顔のルディア様に叱られて椅子から転げ落ちた彼は、ゆらゆらと身体を揺らし真っ直ぐに立てないでいました。ホウライ酒は急にクる、とは有名な話です。鬼族には関係ありませんが。
改めて見渡せば、空の酒瓶がごろごろ転がっています。指名料も最高額だし、いくら使ってるのか心配です。
「あんたもうフラフラじゃない。2階使っていいから休みなさい……クレハさん?」
「ひゃい!」
「怒らないわよ……コレ、水あげて面倒みてくれない?」
鉢植えか何かでしょうか?
私は腕の下から肩を支えると、めんぼくねえ、めんぼくねえと繰り返す彼を2階の手近なベッドに運び込みました。
備え付けの水差しからコップに移します。
「はい、お水。飲めますか?」
「むりぃ~」
面倒な酔っ払いだなと思いつつも、頭を支えて座らせ、横抱きするようにコップを口元に寄せます。
「ゆっくり飲んでくださいね」
「ふぁい」
幼子のように喉を鳴らすのを見て、ちょっと可愛いなと思う。
上手に飲めましたね、と頭を撫でてあげると、猫のように擦り寄ってきます。
「そんなに甘やかされたらしゅきになってしまうぅ」
「いいですよ、私も、あなたのこと、好きですよ」
旦那様とは違う意味ですが、長くお付き合いしたいと思えるくらいには。
「クレハさぁん」
「きゃっ、んっ!?」
そうして優しい気持ちで撫でていると、彼は急に抱き付いてきて、唐突に奪われる、唇。理解が遅れて、追いつく。
「んんっ!んっ、だめっ、んぁっ」
口付け。キス。接吻。何度も甘噛みされる。
身体を重ねても、まだ、していなかった旦那様のための私のはじめてが……。
「だめっ、んんっ!んああっ♡」
押し退けようと力を込めた私のツノを彼の指が掠め、力が抜ける。キスしたまま、髪を撫でられていた。私がしていたように、優しく、角ごと。
鬼族の角は敏感で、強い衝撃には不快感しかないが、柔らかい刺激には弱い。あまりに鋭敏すぎて、触れた相手の感情まで読み取ってしまうほど。
「ふあ、ん♡んちゅ、ちゅる♡」
直接脳を揺さぶられるような好意の濁流。酸素を求めて口を開けば、すぐに舌が入ってきて口内をなぞりはじめた。酩酊したようにフワフワして、抵抗する意志が霧散する。受け入れて、気持ち良くしてもらいたくなる。
興味本位で自分で触るのとは桁違いの快楽。角は夫婦になってから、なんて言われる風習も、今なら理解できます。
「クレハさん……クレハさん」
「あっ♡あ、ツノ、だめぇ♡」
「こんな良い子が、酷い目に遭わされるなんて」
「うあ♡あっ、あっ、や、んちゅ♡ちゅ、んんんっ♡」
ようやっと解放される頃には、思考はぐずぐずに蕩けていて、私のほうが彼の胸に抱かれていました。
「クレハさん」
「……はい」
「優しくするから、僕に、慰めさせてください」
「……っ♡」
そう言って角に口付けをする彼に、逆らう気など起きるはずもなく。いっそ暴力的とも言える好意に、私は溺れました。
触れられていない場所がないくらいに撫でられ、角の先から足の指先まで舐められ、前戯というには濃密すぎる愛撫になんども絶頂させられて。
「ん♡……あ、あああっ♡」
待ちわびたおまんこに、硬いおちんぽが挿ってくる。
ぐちゅぐちゅに濡れたナカがゴリゴリ削られ、奥に当たる。気持ちいい。
労るように、ゆっくりと動き出す。前髪を撫でられ、また角に指が触れる。気持ちいい。
重ねられた手のひらが、絡み合う舌が、ふれる吐息が、気持ちいい……けど、どこか物足りない。
好意を抱く相手にこれほど思われても、私はやはり、旦那様でないと満たされないのだろうとどこか上の空で思っていた。
「──さん」
ふいに聞こえた誰かの名前。聞いた瞬間だけ認識できて、次の瞬間には忘れてしまう、聞き慣れない響き。
今にも泣き出しそうな顔。視線は私を通り抜けてずっと先、届かないどこかを見ていた。
「俺、ちゃんと、できてる?」
不安そうな声音で、私ではない誰かに問いかけている。
あまりにも辛そうに見えて、とっさに応えた。
「大丈夫です、ちゃんと、気持ちいいから」
「……今だけ」
「はい」
「今だけでいいから、全部忘れて」
「……はい」
きつく抱きしめられる。頬に当たる熱が、流れる涙だと分かった途端、急にこの人が愛おしくなる。
腰が勝手に動き出す。合わせるように、彼もまた動く。
「あっ、あっ、あんっ♡」
身体には古傷がたくさんあった。つらいことがたくさんあって、さみしさを抱えていて、悲しみで立っているのもやっとで。そんなになっても誰かのために在りたいと願っている。
「やっ、だめっ、すごい……気持ちいいっ♡」
そんな人を守りたい。助けたい。救いたい。支えになりたい。自分の中でそんな欲が溢れてくる。
「──さん!──さん!」
「いいっ♡いいのっ♡もっとぉ♡」
ナカで、大きくなる。出される。
……それで、この人が癒されるなら、それでもいいと思えた。
「ああぁぁああっ♡……っ♡……はっ♡……っっ♡」
全部、中に出し切って。そのまま、繋がったまま、糸が切れたように眠ってしまった彼の頭を撫でた。
安らかな顔を見て、満たされる。私は誰かを甘やかすのが好きなのかもしれない。つらさと戦う人、悲しさを抱える人、さみしさを隠している人、そういう人を癒やせるなら、続けられるかもしれない。
娼婦という仕事も、そう悪いものでもない。もしかしたら天職なのかもと、そう思えた。
……でも、キスと角は禁止にしなければ。気持ち良すぎて、何もかも許してしまうから。
「……ん」
いつの間にか寝ていたらしい。かたわらの熱はすでになくて、旦那様の残り香だけが微かにそこにあった。
シーツに顔を埋めた。包み込まれる。守られている。
旦那様は強い人で、たくさんの人に頼られている。追い込まれても慌てずに戦況を変えてしまう。弱さを見せない、昔から、ずっと私のヒーローだ。
……ほんとうは、私が、守りたい。頼られて、包み込んで、癒したい。
「……ぁ」
自然と手が伸びる。微睡み、夢と現の境目で、まだあの人が中に居る気がした。旦那様の匂いのするシーツにくるまって、違う人を想って慰める。はんぶん夢の中にいて、歯止めがきかない。
「あ……ん♡」
ぼさぼさの髪で、やつれていて、だけど目だけは隠しきれない欲望が灯っていた。
大切な友人が困っている。弱っている。
「はあっ、はっ、あ、あっ♡」
私が、私だけが助けられる。
だって、あの人には、頼れる人が私しかいない。
「ぃく……イクっ♡」
背徳に脳が灼ける。他人に言えない願望が溢れてくる。
助ける。守る。私のぜんぶ、ささげて、甘やかしたい。支配されたい。執着されて、壊されたい。
あの人なら、きっと、全部満たしてくれる。