変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決 作:shpfive03
「さて、源太夫殿」
藤林長門はあらためて源太夫に向けて問いかけた。
「今、ここにいらっしゃるハヤテ殿と、先ほどまでいらっしゃった千恵殿のお二人が早馬にてここに到着する、それならば我らも承知していたこと。されど」
そこまで言ったところで藤林長門は、皮肉っぽく源太夫とハヤテの方を見る。
「千恵殿が術により瞬時に相模の国まで移動し、しかもタツマキ殿はじめ、なぜ、そちらにいらっしゃるのかわからぬ、ご息女の千秋殿までを連れて、再びここまで戻ってくるという面妖な話は聞いておりませぬが、これはどうしたことかな?」
ここで服部正龍も
「それはわしも不思議に思うこと。だいいち瞬時に相模の国と江戸を往き来出来るのであれば、早馬の意味がないのではござらぬかの?」
と疑問を述べる。
それに対して、横からハヤテが答える。
「藤林殿、服部殿、早馬の意味ならある!。まず千恵さんが『転移の術』を使えるのは『一度行ったことがある場所』に限られる。だから千恵さんも、そのままでは相模の国から、一度も来たことがない江戸の伊賀組屋敷まで瞬時に移動することは出来ない」
それを聞いた服部正龍は
「なるほど、その件はわかり申した。では、ここからが重要になるのだが」
と言うと
「その移動の術は千恵殿だけが使うことが出来る技なのですかな?、それとも血車党のものは、皆、使うことが出来るのですかな?」
と疑問の核心を口にした。
藤林長門も、この服部正龍の指摘に呼応する。
「もし、血車党のものたちが皆、その術を使うことが出来るというのであれば、ことは重大。我々は江戸防衛の方策を根本から練り直さなくてはいけなくなる」
伊賀の上忍二人からこのような話を聞かされて、ハヤテは
何を今さら‥‥
と、ウンザリさせられた。
骸骨丸にしろ、化身忍者たちにしろ、そのような術を用いて遠距離の移動を行うのは、今になってわかったことではない。
そもそも現将軍である徳川秀忠公主催による鷹狩りの時に血車党が襲撃してきた件にしても、彼らがどこからどのように移動してきたのかさえ、未だにわかっていない。
あの時は骸骨丸はじめ、三人の化身忍者たち、そして二十人近くの下忍たちが、本当に『どこからともなく現れた』のだ。
「ほう?、藤林殿も、服部殿も、タツマキ殿からの報告書をちゃんと読まれていないのですかな?」
ここで百地源太夫が皮肉っぽく、藤林、服部の二人に言葉をかえす。
「化身忍者と呼ばれる血車党の超人たちが、そのような術により、どこからともなく現れることが出来るのは、既にご存じのことと思いましたぞ」
藤林長門は、この源太夫の言葉にムッとしたような表情を浮かべる。
が、服部正龍は冷静だった。
「拙者が聞いているのは『血車党のものは、皆、使うことが出来るのですかな?』ですぞ。我らの掴んでいる情報では、血車党の化身忍者の数は、さほど多くないはず。せいぜい数人程度。まあ、一人倒されれば『補充』したりするようだが」
これに対してはハヤテが答える。
「『転移の術』は化身忍者、それと血車党の三人の上忍しか使えない。ただし、これは千恵さんもそうだが、一回に、その体に掴まっているもの五人までと、同時に移動することが出来る」
三人の上忍というのは、言うまでもなく魔神斎、骸骨丸、風華のことである。
服部正龍は、そのハヤテの言葉に頷くと
「ハヤテ殿、わかり申した。では、その『転移の術』は、我々伊賀忍者にも習得可能なものですかの?」
と、重ねて聞いてくる。
何やらハヤテに対する対抗意識のようなものを感じさせる藤林長門や夜叉丸たちとは異なり、服部正龍の場合は、それなりに真面目な意図からハヤテに対して問いかけているようにも見える。
が、いささか認識のずれは感じざるを得ない。
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「三人の上忍は別として、原則として化身忍者以外には、その術は使えない」
いささかウンザリしながら、ハヤテが答えた、その時である。
いきなり五人の忍び装束の男たちが姿を現すと、その代表と思われる、やや年配の男が
「服部様、それにこの場の皆様、忍兵衛、他四名、ただ今、戻りました」
と名乗りをあげる。
辻占いの女に化けて、血車党との関係についての疑いがある西屋を見張っていたはずの螢火のところへ向かったはずの、服部組の忍者である忍兵衛たち五人の姿がそこにあった。
「忍兵衛、遅かったではないか!」
彼らの組頭である服部正龍が返事をする。
だが、次の瞬間、この場にいる誰もが、今現れたばかりの忍兵衛たち五人の異変に否応なしに気づかざるを得なかった。
五人の瞳はいずれも虚ろであり、少し前に伊賀組屋敷に現れた天馬と同様に、明らかに何者かに操られている。
とすると‥‥
だが、ここでのハヤテの動きは迅速であった。
次に何が起こるのか直感的に理解したハヤテにとり、躊躇などしている余裕はない。
素早く変身するため、すぐに両手をクロスさせ、右手を上に挙げる。
「吹けよ、嵐!、嵐!、あ、ら、し!!」
言いながらハヤテは右手をおろして、再度両手をクロスさせる、そして抜刀の姿勢を取ると、背中の刀の鍔をカチッと鳴らした。
ハヤテは、愛刀「速風」のその時の特殊な振動により、脳神経が異常活動を始め、体の細胞配列を変えて「変身忍者嵐」に変身するのだ。
たちまちハヤテの周囲が大量の羽毛に囲まれたかと思うと、次の瞬間には「荒鷲の変身忍者である嵐」が、その場に出現していた。
「嵐、見参!」
その次の瞬間には忍兵衛たち五人は一斉に倒れ、その場で自爆する。
大きな爆発音と共に、大きな炎が勢いよく燃え広がろうとしていた。
が、嵐は
「嵐、旋風斬り!!」
言うなり、変身忍者嵐は素早く愛刀速風を物凄い勢いで旋風回転させ、そのまま燃え広がらんとする炎に向けて突っ込む。
そして、旋風回転の威力で、あっという間に燃え広がらんとする炎を消し去ってしまったのだ。
これには、その場の一同驚きを隠せない。
特にハヤテに対して対抗意識を隠そうともしていなかった藤林長門と夜叉丸は、大きな衝撃を受けていた。
一体、そんなことが人間業で可能なのだろうか?
変身忍者嵐は、あっという間に炎を消し去ると、皆の前で
「皆さん、もう大丈夫てす」
と、何ら飾ることもなく謂った。
恐るべし、変身忍者嵐!
『螢火』、いや、その正体は血車党くノ一菖蒲なのだが、内心で恐怖すら感じた。
実は血車の郷で生まれ育った彼女にとって、ハヤテは以前からの旧知である。
が、ハヤテが変身忍者嵐に生まれ変わったこと自体は知っていても、その実力を目の当たりにしたのは初めてであった。
変身忍者嵐がこれほどの実力の持ち主であるなら、『あの』山彦小次郎が、そしてこずえが敗けたのも無理はない‥‥
菖蒲は心の中で『小次郎の無念』を思うと共に、現在の自分の主であり、尊敬の対象でもある化身忍者毒蛾くノ一のことを強く思った。
毒蛾くノ一様、どうか、この菖蒲に力を御貸しください!!
本当に祈るような気持ちだった。
だが、それを表には出さない冷静さも菖蒲は持ち合わせている。
菖蒲、いや、この場の『螢火』は
「嵐様、お見事でございます。この『螢火』、見ていて感服させられました!」
と、手放しで変身忍者嵐を誉める『ふりをする』。
「螢火!」
夜叉丸が、目の前の『螢火』に不満そうな声をあげるが
「あら、夜叉丸。嵐さんの実力は、私たちも率直に認めるべきだと思うわ。実際、今、この場で、私たち二人にどれだけのことが出来たかしら?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
夜叉丸は思わず押し黙る。
「これは螢火の言う通りだ!」
藤林長門もまた、これに同意する。
「ハヤテ殿、いや、今は嵐殿と呼ぶべきか!、この長門、貴殿の今の離れ業、本当に感服申した!、まずは本当に忝ない」
変身忍者嵐は愛刀速風を鞘に納めると
「藤林殿、螢火殿、そして夜叉丸殿、今は我ら一致協力して血車党に当たるべき時と思います。まずはここにいる皆で大同団結しましょう」
と静かに言った。
これには藤林長門も頷かざるを得なかった。
一方で、忍兵衛たち五人を西屋へ差し向けた当人である服部正龍は忸怩たるものがあり、俯きながら、思わず声を震わせていた。
「忍兵衛、黒丸、喜一、鬼六、火綱、すまぬ‥‥‥‥」
服部正龍は自らが血車党を軽く見すぎていたことを認めざるを得なかった。
それを見て夜叉丸は、ぼそっと
「螢火、無事でよかったな」
と言った。
『螢火』は微かに笑う。
その内心では
夜叉丸さん、あなたの恋人は今、私たち血車党の手の中にあるのよ
と、密かに思っていたのだが‥‥
一方で百地源太夫は
「各々方、あれを」
と指差す。
その先には煙が立ち込めていた。
そして、間もなく
変身忍者嵐と同じく異形の姿をした『蛾の変身忍者千恵』、そして、それに掴まっている
タツマキ、カスミ、ツムジ、そして源太夫の娘である千秋が姿を現した。
千秋としては、本当は姿を現す場所は、ここから少し離れたところにしてほしかったのだが
変身忍者千恵は、堂々と皆の前に姿を見せるべきと譲らなかったのだ。
お父さん、ごめんなさい
千秋の顔にはそう書いてあったのだが、源太夫は破顔した。
「千秋、お帰り!」
そして、まずはタツマキが代表して発言する。
「上忍の皆様、そして伊賀組屋敷の皆様、タツマキ以下四名、千秋殿と共に参りました。これよりご報告などさせていただきます!」
三人の上忍、そしてハヤテをも含む、この場の皆は一斉に頷く。
血車党について、まずはもっと知る必要がある
この場の皆は、それを感じていた。
ただ一人
『螢火』、いや菖蒲を除いてではあるのだが‥‥
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「以上がとりあえずの報告となりまする」
タツマキは、元々は血車党の化身忍者だった千恵が、血車党により裏切者として処刑される寸前たったところを間一髪でハヤテに命を救われ、以降は血車党と共に戦う『仲間』として行動を共にしてきたことを主に、伊豆田方、早川城下、あるいは相模川西岸の渡船場付近などでの血車党との衝突を経て、今、こうして江戸に戻るまでの出来事などについての報告を行った。
そんなことは何度かの鳩でとっくに報告書も送ってあることなのだが‥‥
その上でタツマキは
「当面、千恵殿については当家に滞在いただいた後、以前のハヤテ殿同様、上様と直接御面談いただいた上で、今後のことを考えるということでご了解いただいておりますが、上忍の皆様のお考えは如何?」
と言い切ると、あらためて百地源太夫、藤林長門、服部正龍、三人の上忍の表情をうかがう。
タツマキは、自分たちの本家筋に当たる百地源太夫と、藤林とは先代服部半蔵以来の対立関係にある服部正龍の二人からは、恐らく異議はないだろうと踏んでいた。
異議申し立てをしそうなのは‥
「タツマキ殿、上様との御面談というお話は、ちと勇み足ではないですかな?」
やはり、と言うべきか、藤林長門が発言する。
「ハヤテ殿の場合には、まず鷹狩りの一件が先にあり、少なくとも上様としても初対面ではないばかりか、むしろ、ハヤテ殿に対しては恩人として此方から積極的に話を聞かなければいけないという面もあったと認識しておりまする。しかるに千恵殿の場合はそうではない」
藤林長門としては、やはり先ほどの『螢火』の報告を無視することは出来なかった。
実際の千恵の様子を見て、やや、その報告に疑問は感じたものの、それでも、当然ながら千恵のことを手放しで信頼するということもない。
もし千恵に、御公儀に対する『何らかの害意』があり、その機をとらえて何らかの行動を起こした場合、タツマキは、それに対する責任はとれるのだろうか?
なにしろ、例えば
殿中で刃傷沙汰があっただけで、当事者が大名であろうと切腹させられ、お家取り潰しになる
そのような体制が確立しているのが、今の御公儀である。
千恵がまかり間違って、何らかの害意ある行動を起こしたとしたら
伊賀忍者全体の過失にもなりかねない‥‥
タツマキは少しばかり、現将軍秀忠との個人的な関係を過信しているのではないのか?
しかも藤林長門は、どうやらもう一人の当事者であるハヤテの方は、この話に気乗りしていないことも見抜いている。
長年、曲者揃いの忍術集団の棟梁を勤めている藤林長門は、ハヤテの個人主義的ともいえる性格を理解していた。
ハヤテは、むしろ『自由』を重んじ、上様、大老などの『権力者』からは距離を置きたがっている。
個人としての上様には、むしろ好意を持っているようだが‥‥
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そこへ
「タツマキ殿に、あえて申し上げます」
藤林長門の発言に機をつかんだ『螢火』が口を開いた。
「私、『螢火』は、この二、三日ほど血車党との関係が噂される西屋についての調査を行っておりましたが、そこで聞き込みしましたところ、江戸に入った毒蛾の化身忍者が西屋に出入りし、血車党のために様々な画策を行っているとの情報を得ました。しかも、その特徴が青い目の複眼、赤い触覚、白い羽、そして黄色っぽい長靴のようなものを履いているなどといったものであり、確かにその毒蛾の化身忍者なるものが、即ち、今、ここにいらっしゃる千恵殿であるとは言えないにしても」
そこで『螢火』は、あえてハヤテやタツマキたちを直視する。
「そうした話があるのに、急ぎ上様との面談を進めるのも、いささか性急ではないでしょうか?、私にはそのように思われます」
変身忍者千恵はこうしたやり取りを見ていて、いささかウンザリしていた。
が、確かに藤林長門や螢火というくノ一の言うことにも理はあると感じる。
何しろ自分は、つい最近まで正真正銘、公方様(徳川将軍)を本気で暗殺したいと思い、血車党にいた当時に『毒蛾作戦』を提案した本人なのだから‥‥
勿論、今はむしろ
タツマキ、カスミ、ツムジたちとの、これからはじまる筈の同居生活を密かに楽しみにしているのみならず
ハヤテに対する『愛しい』と思う気持ちを抑えきれずにいるのだが‥‥
それ以外の伊賀の人たちとの関係など、正直、どうでもいいように思えてしまう。
今の千恵にとっては『上様との面会』など、むしろ煩わしささえ感じるものになっていた。
人というのは、変わるものなのである。
一方でタツマキは『螢火』の発言にも動じる気配はない。
「螢火殿、言いづらかろう空気の中で、あえて発言してくれたこと、むしろ敬意を表しまする」
と、まずは『螢火』を持ち上げる一方で
「ですが、その西屋に出入りする毒蛾の化身忍者なるものは、間違いなく千恵殿とは別ものですぞ」
と断言した。
「なぜ、そのように思われますか?」
内心では事実関係を百も承知していながら、菖蒲、いや、この場では『螢火』は、あえて反論する。
「私もいい加減な気持ちでこのようなことを言っているのではありませぬ。実際、私は西屋にいた複数の血車党の手先と思われるものに催眠の術をかけ、血車党に我ら伊賀忍者の結束を乱さんとする画策があること、それを指揮するのが『毒蛾の化身忍者』であることを聞き出しているのです」
やや激したような身振り、手振りで、『螢火』(菖蒲)はあくまでも任務に誠実なくノ一を演じて見せる。
「千恵殿、もし私の間違いであり、ご不快であれば、本当に申し訳なく思います。ですが、私としては、これから先のことを考える上でも、千恵殿の方から直接、ご説明をいただきたく思うのです」
勿論、『螢火』(菖蒲)は、内心では『千恵の失言』を期待して、わざとこんな『挑発』をしているのだ。
他ならぬ彼女の目的こそ、正に伊賀忍軍の結束を乱し、『血車党の裏切者である千恵』に対する不信感を煽ることなのだから。
この際、出来ることならハヤテやタツマキ親子に対する、他の伊賀忍たちの不信感も煽り立ててやりたかった。
だが
「螢火、少し落ち着け!」
藤林長門が『螢火』に対して、嗜めるような言い方をする。
「私も、これでも人物眼はあるつもりだ。今、ここにいる千恵殿を見る限り、そのような裏表のある御方には見えぬ。私が言うのは、あくまでもいきなり上様との面会をいうのは性急すぎるのではないかということ。お前が自分の調査結果にこだわる気持ちもわからなくはないが、いささか千恵殿に対する礼を失しすぎるのではないか!」
「長門様、申し訳有りませぬ」
『螢火』は、あわてて言葉を控える。
「螢火、いつも冷静さを失わないはずのお前らしくないぞ」
夜叉丸も、そんな『螢火』の様子を見て、いささか疑問を持ったようだ。
事を焦りすぎたか‥‥
『螢火』は素直に頭を下げる。
「申し訳ございませぬ、ですが、これも今後のことを真面目に考えた上でのこと」
が、当の千恵はというと
この
『螢火』(菖蒲)の持つ、隠しても隠しきれない『血車党の雰囲気』を直感的に気づいていた。
化身忍者の持つ独特な雰囲気こそないが、似た『何か』を、嫌でも感じる。
あるいは彼女こそが化身忍者、いや、それこそ『新たなる毒蛾くノ一』であり、上手に、その雰囲気を消しているだけなのかもしれないが‥‥
とにかく、彼女は要警戒だと千恵は思っていた。
が、さすがにこの場でそんなことをいきなり言うほどには千恵も軽率ではない。
千恵は、なるべく平静さを保ちながら
「螢火様、今の血車党には、以前の私とよく似た姿をした、別な化身忍者がいます。このことはご存じですか?」
と『螢火』に向かって問いかけた。
『螢火』は内心でドキッとしながら、表面は冷静さを保ちつつ
「いえ、そのような話は、はじめてうかがいましたが」
と、あわてて首を振る。
「その、以前の千恵殿と似た化身忍者は、わしらも早川城下で対決しておりますぞ!」
と、これはタツマキ。
「髪の毛の色など、ハッキリわかる違いはいくつもあり、並べてみれば、今の千恵殿の変身姿と見間違えることは、まず、ござらぬ」
ここでハヤテも
「私はまだ、その化身忍者を実際に見たことはないのだが」
と前置きした上で
「早川城下で私が別の化身忍者と戦っている間に、そいつが骸骨丸と共にタツマキたちの前に姿を現したという話は聞いている。螢火さん、だとすれば、その話、もう一回調べ直す必要があると思う。調べ直すことで、逆に血車党の江戸での企みについての新たなな手がかりがつかめるかもしれない」
と言って、あらためて『螢火』の方を見る。
「螢火、調べ直すなら俺も手伝うぞ!」
と、これは夜叉丸。
「善は急げだ。早速、俺と一緒に取りかかろう」
そんなことになったら、困るのは『螢火』(菖蒲)の方である。
が、この場でそんなことは言えない。
「わかりました、明日より早速調べ直し、その上であらためてご報告をあげることとします。本日は大変失礼しました。ご無礼の段、お許しください」
と殊勝に頭を下げて見せる。
今はこれ以上、事を荒立てるのは得策ではない。
急ぎ、今晩にでも毒蛾くノ一様の今後についてのご判断を仰ごう。
『螢火』(菖蒲)は内心で、そのように思っていた。
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結局、当の千恵はこれといった発言もせぬまま
この場はお開きとなった。
そして千恵は、伊賀組屋敷の皆と別れると
ハヤテ、タツマキ、カスミ、ツムジと共に
江戸のタツマキ邸へと向かうことになる。