変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決 作:shpfive03
「清兵衛様、いやドクダヌキ様」
化身忍者毒蛾くノ一は千恵を指差すと、やんわりと隣にいる清兵衛に向かって言った。
「あいつに対する、その『前の毒蛾くノ一』という言い方は止めていただけないでしょうか?、血車党の毒蛾くノ一は、この私一人です!」
それを聞いた清兵衛は
「頼もしいことよ、ならば、このわしも奴のことは『出来損ないの裏切者』と呼ぶことにしよう」
そこまで言うと清兵衛も
「化身!」
と叫び、両手をクロスさせ、上に大きく回し、再びクロスさせる。
みるみるうちに
「ギョワーッ!、ギョワッギョワーッ」
不気味な叫び声をあげる化身忍者ドクダヌキ。
一方で千恵もそれを見るや、自らも両手をクロスさせると
「変身!」
と叫び、両手を上に向かって大きく回す。
千恵の姿もまた、かつての毒蛾くノ一の面影を残しつつも、より優美で豊かな表情を持ち、女性らしい体型の『変身忍者千恵』に変わった。
そしてハヤテも変身しようとしたのだが
ここで突然、煙と爆音と共に骸骨丸が姿を現す。
そして、いきなり化身忍者毒蛾くノ一の方を見て言った。
「ハヤテと伊賀忍どもが、ついにここまで来たのか。ならぼ、一気に決戦というのもいいかもしれぬが‥‥」
そこでいったん言葉を切った骸骨丸だが、次の瞬間には
「毒蛾くノ一、お前には明日からの『毒蛾作戦』の指揮をとる重要な任務がある。そしてドクダヌキ殿」
と、骸骨丸はドクダヌキに対しては敬意を見せて言った。
実は清兵衛ことドクダヌキは魔神斎の直属であり、骸骨丸の指揮する『戦闘班』には所属していない。
なので骸骨丸も、あまり命令口調にはなれないのだ。
「この西屋には、我が血車党も随分稼がせてもらったが、こうなってしまっては見切り時であろう。ハヤテたちと無駄な消耗戦をすることはない。いったんここは菖蒲たち下忍に任せ、引き上げた上で次の拠点を立ち上げるのがよいように思う」
骸骨丸のこの言葉に化身忍者毒蛾くノ一が反発する。
「骸骨丸様!、それでは菖蒲たち下忍の皆を見殺しにして我らのみ引き上げよとおっしゃるのですか?」
その化身忍者毒蛾くノ一の異議に対して、骸骨丸は事も無げに頷く。
「そうだ。そして、そのことは菖蒲もよく分かっているはずだ。そうだな、菖蒲」
言われた菖蒲は唇を噛み締めつつも、健気に答える。
「はい、骸骨丸様。元はと言えば今回の事態は私の不始末が招いたこと。この上は残されたものたちで最後の一人までハヤテたちと戦い、血車党の意地を見せる所存です!!」
そして菖蒲は直接の主である化身忍者毒蛾くノ一を見つめ、キッパリと言った。
「毒蛾くノ一様、そしてドクダヌキ様も、お逃げください。そして明日からの作戦、必ずや成功させてください。それが私たちこの場に残るものの願いです」
「菖蒲‥‥」
化身忍者毒蛾くノ一の声には嗚咽がまじっていた。
が、ドクダヌキはというと
「まあ、骸骨丸殿、そこまでいうこともあるまい」
と淡々と骸骨丸に向かって答える。
「明日からの作戦がある毒蛾くノ一殿はともかく、この西屋が明日より店仕舞いするのであれば、しばし、ワシの仕事もごさらぬゆえ」
「ドクダヌキ殿?」
骸骨丸は意外といった表情を見せる。
「ここはワシもこの場に残り、ハヤテたちと戦いましょうぞ。菖蒲たち下忍どもだけでは必敗、全滅は確実。ワシが残れば少しは勝てる見込みもあろう。もっとも」
ここでドクダヌキはは
「このワシとて、流石に変身忍者嵐と『出来損ないの裏切者』二人と同時に戦って勝てる自信は正直ないが、まあ、よかろうて」
そのドクダヌキに対して、菖蒲は心から嬉しそうに言った。
「ドクダヌキ様、本当にありがとうございます!」
まず、自らこの場に残る意思を示したドクダヌキに礼をのべると
「ハヤテこと変身忍者嵐は、この菖蒲が、この命にかえ、刺し違えてでも討ち果たします。あとの雑魚どもさえ何とかしていただければ!」
と決意を述べる。
それを聞いた変身忍者千恵、そして夜叉丸もムッとした。
それでは自分たちも含めて『雑魚』ということか‥‥
それ以前に私たちは『雑魚』などではない!
一方でタツマキはというと
「やい骸骨丸!、またいつものように逃げるのか?」
と骸骨丸を挑発するのだが
「伊賀猿、何とでも言え」
骸骨丸は笑うと
「毒蛾くノ一、いずれにしてもお前はこの私と引き上げるのだ、いいな!」
と、目の前の化身忍者毒蛾くノ一に命令する。
「わかりました‥‥」
化身忍者毒蛾くノ一は悔しそうにしながらも、骸骨丸に返事をする。
そして
「ドクダヌキ様、この場はお願いします。そして菖蒲!」
と菖蒲に声をかける。
「生きて戻れ!」
と声をかけた。
「はい!、毒蛾くノ一様」
菖蒲は気丈に答える。
「この手で必ずや裏切者のハヤテを討ち、再びお会いします」
菖蒲にそんなことが出来るとは、この場にいる骸骨丸、化身忍者毒蛾くノ一、そしてドクダヌキすらも思ってはいなかったが、彼女は本気だった。
自分は小次郎の訃報を聞いて以来、この日のために自らの剣の腕を懸命に磨いてきたのだ。
「ドクダヌキ殿、頼みますぞ」
骸骨丸はまずドクダヌキに声をかけると
「菖蒲、心行くまで戦うがよい!」
と菖蒲を励まし、そして
化身忍者毒蛾くノ一共々、煙と共にこの場から姿を消した。
菖蒲は、まず、あえてこの場に残ったドクダヌキに
「ドクダヌキ様、では、参ります!」
と声をかけると、周囲の下忍たちに
「みんな!、命惜しまぬ私たち血車党の意地を二人の裏切者と伊賀忍どもに見せてやろうぞ。いくぞ!」
と声をかけ、そして自ら剣を大きく振り上げて、目の前のハヤテに向かって突進した。
他の下忍たちもそれに勇気付けられ、一斉に目の前の敵たちに向かって
「クエェー!!」
と大声で雄叫びをあげながら気合いをこめて斬りかかる。
菖蒲に斬りかかられたハヤテは
「菖蒲さん、よせ!」
と言いながらも、否応なしに応戦の構えに入る。
千恵はその様子を見てハヤテと菖蒲の前に割って入ろうとするのだが
「おっと『出来損ないの裏切者』、お前の相手はこのワシだ!」
とドクダヌキが抜刀し、その千恵の前に立ちふさがった。
タツマキ、カスミ、ツムジ、そして夜叉丸も
気迫をこめて斬りかかってくる血車党下忍たちに対して、一斉に応戦する。
決戦である。
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菖蒲の鋭い剣先を素早くかわしたハヤテは、あらためて菖蒲に対して大声で言った。
「菖蒲さん、こんなことは止めるんだ!、少なくともこずえさんを無慈悲に殺した血車党などに義理立てする必要はないはず!」
ハヤテのかつての親友であり、菖蒲の許嫁でもあった山彦小次郎の妹、こずえ。
当然ながら、小次郎の妹こずえと菖蒲は旧知の間柄でもあった。
だが、菖蒲はハヤテのその言葉を聞いてふふん、と鼻で笑う。
「こずえが『血の掟』により処刑されたことは私も知っている。けど、それはこずえ自身が一度は血車党を裏切ったのみならず、再び裏切って貴方につこうとしたのだから、残念だけど魔神斎様のご判断は当然だわ」
ハヤテは、菖蒲のその言葉を聞いて愕然とした。
「菖蒲さん‥‥」
フフッ、と菖蒲は不敵に笑う。
「この私だってそうよ」
言いながらも菖蒲は再び剣を大きく構える。
「私の母である
ハヤテは、菖蒲のその言葉にショックを受けていた。
なんの反論も出来ない‥‥
「弟の草太は、今、血車の郷で一生懸命、まず、いい下忍として働くことが出来るようにと忍術の修行を頑張っている。まだ年少だから、今すぐ実戦の場に出てくることはないけど」
菖蒲はそこでいったん言葉を切ると
「今、ここにいる私の仲間たちの多くは、そうやって血車の郷から来ているのよ。その仲間たちを貴方は、今までどれだけ斬り捨てたの!!
そして、数えきれないくらい、私たちの仲間を斬り捨ててきた貴方が、なぜ以前からの知り合いだと言うだけで、私にだけ、そんな綺麗事をいう!!」
菖蒲の表情は真剣そのものであり、気迫に満ちていた。
そして菖蒲は、すぐそばでドクダヌキと対峙している変身忍者千恵を指差すと
「私はその女みたいに血車の郷に係累さえいない根無し草なんかじゃない!、郷で生まれ育ち、小次郎様をはじめとする郷の仲間たちと苦楽を共にしてきたんだ!、それから見ればお前は!!」
菖蒲のハヤテに対する表現が『貴方』から『お前』に変わっていた。
「郷の皆を裏切り、小次郎様のみならず、私たちの仲間を無慈悲に斬り捨ててきた、徳川につく単なる『郷に対する裏切者』じゃないか!、私がそんなお前の説得に応じて郷を裏切るとでも思うのか!!」
そこまで言うと菖蒲は構えていた剣をいきなり縦横無尽に旋風回転させる。
「血車流、逆旋風!!」
菖蒲は叫ぶと
「どあっ!!」
と剣を旋風回転させながらハヤテに向かって襲いかかる。
ハヤテも、もはやこれまでと菖蒲に対する説得を諦め、まずは変身するため、すぐに両手をクロスさせ、右手を上に挙げた。
「吹けよ、嵐‥‥」
だが、そこで変身忍者千恵と対峙したままのドクダヌキが、ハヤテに向かって、思わぬ罵声を浴びせる。
「ハヤテ!、分かっていると思うが菖蒲は生身の人間だぞ!、その菖蒲に対して、お前は変身で圧倒的能力差を得た上で捻り潰そうというのか!、随分と『男らしい』奴だな!」
ハヤテは、ドクダヌキのこの言葉に思わず動揺し、変身を中断してしまった、その間に菖蒲に斬りかかられた。
「死ねっ、裏切者!!」
ハヤテは菖蒲の旋風回転する剣先を何とかかわす。
旋風斬りの恐ろしさを知っているのは、他ならぬハヤテ本人である。
「ハヤテさん!」
思わず叫ぶ変身忍者千恵。
「おっと、さっきもいったがお前の相手はこのワシだぞ、『出来損ないの裏切者』!」
ドクダヌキはいうと
「血車忍法、五輪固め!」
と叫び、その瞬間に突如現れた五つの大きな輪を、まるで輪投げでもするかのように変身忍者千恵に向かって投げつける。
「きゃあっ!」
変身忍者千恵の体は、ドクダヌキの投げつけた五つの輪によってがんじがらめにされてしまった。
「千恵お姉ちゃん!」
思わず悲鳴のような叫び声をあげるツムジ。
そのツムジも、タツマキ、カスミ、夜叉丸と、下忍たちとの対戦に追われていた。
「悪いが、同じ化身忍者と言えども、お前とワシでは『格が違う』!、そのことを今、思い知らせてくれるわ!」
不敵に笑うドクダヌキ。
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一方でツムジたちも下忍たちとの対戦に追われていたのだが
「親父、カスミ姉ちゃん!、夜叉丸さん、こいつら半端でなく強い!」
と、自分たちに斬りかかる下忍たちのかつてない強さに驚かざるを得なかった。
ツムジにしても、かつては一人で五人の血車党下忍と戦い、自力だけで四人を斬ったことがあるのだ。
そのツムジが、今は一人の下忍との斬り合いにすら苦戦している。
それはタツマキ、カスミも同じだった。
が、夜叉丸は血車党との対戦は初めてであるだけに、むしろ冷静だった。
「タツマキ殿、カスミ殿、ツムジ殿、一瞬だけでいいので、下忍たちを食い止め、私を自由に動けるようにしてくれないか?、私なら千恵殿にかけられた、あの輪の拘束を解くことが出来る!」
その言葉を聞いたツムジが
「夜叉丸さん、わかった!」
と言うなり、いきなり斬りかかってきた目の前の下忍の剣先を素早く交わすと、ヒラリ、と飛び上がって宙に舞った。
そして、夜叉丸の前に立つと
「少年忍者ツムジをなめんなよ!」
と大声で叫ぶと
「伊賀の八方投げ!!」
と叫び、どこから取り出したのか、巧みに数多くの方向に伊賀特製の手裏剣を四方八方へと投げつける。
これには剣を構える下忍たちも迂闊に近づけず、とりあえず遠巻きにせざるを得なかった。
ツムジ、なかなかやるな!
思わず、それを見るタツマキも破顔する。
「夜叉丸さん、今だ!」
このツムジの声に夜叉丸が素早く応じる。
「伊賀忍法、黒縄!!」
夜叉丸にとり必殺技である黒縄を投げる。
夜叉丸が操る黒縄は女性の髪をより合わせ、獣油を塗り込んだ特製であり、まるで糸のような細さであるものの、岩石や土塀さえ切り裂くことができる鋭い切れ味である。
夜叉丸は自らの指先で、この黒縄を数十メートルの範囲で操ることが出来るのだ。
夜叉丸は、この黒縄をドクダヌキではなく、五輪の輪に拘束され、身動きが出来なくなっている変身忍者千恵に向かって投げつけたのだ。
夜叉丸の放った黒縄は千恵の体を何ら傷つけることなく、巧みにドクダヌキの放った五輪の輪を切り刻んだ。
変身忍者千恵は輪の拘束から解放され、自由に動けるようになる。
「夜叉丸様、ありがとうございます」
思わず変身忍者千恵は、夜叉丸に向かって大きな声で感謝を言った。
同時に夜叉丸を戦力として期待していなかった自らの思い上がりを恥じる。
「ほうっ、『出来損ないの裏切者』は困ると直ぐに助けを求めるのか?」
ドクダヌキが揶揄するが
「目的のためには手段を選ぶなって、私、他ならない血車党から教わりましたよ」
変身忍者千恵はしれっとやり返す。
そして
「ハヤテさん、嵐に変身してください!、私は菖蒲さんを斬るべきではないと思っていますけど」
そこで言葉を切ると
「もてる全力を出して相手と戦うことは何ら恥ずべきことではないと思います、少なくとも嵐に変身しなければ『秘剣影うつし』を使うことは出来ません」
それを聞いたハヤテは決意を固めた。
「させるかあ!!」
菖蒲が再度斬りかかるが、ハヤテはそれを巧みにかわすと、大きく飛び退き、そして再び両手をクロスさせ、右手を上に挙げた。
「吹けよ、嵐!、嵐!、あ、ら、し!!」
言いながらハヤテは右手をおろして、再度両手をクロスさせる、そして抜刀の姿勢を取ると、背中の刀の鍔をカチッと鳴らした。
ハヤテは、愛刀「速風」のその時の特殊な振動により、脳神経が異常活動を始め、体の細胞配列を変えて「変身忍者嵐」に変身するのだ。
たちまちハヤテの周囲が大量の羽毛に囲まれたかと思うと、次の瞬間には「荒鷲の変身忍者である嵐」が、その場に出現していた。
「嵐、見参!」
変身忍者嵐は菖蒲に向かって宣言する。
「菖蒲さん、私は貴女を斬りたくはない。しかし、今は嵐として全力で貴女と戦う!」
菖蒲はそれを聞いてなお
「望むところだ!」
と嵐に向かって言い放ち、そして、あらためて剣を構える。
変身忍者嵐と、血車党くノ一菖蒲の一騎討ちである。