変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決 作:shpfive03
後の春日局です。
千恵が血車党くノ一桐から奪い取った『七色の狂い毒粉発射用の木製短筒』を託されたカスミは
それを処分するために江戸城の不用物集積場に急いで持って行くところで、自身の背中に差してある剣が鈍く光を放ったことに気づいた。
「ハヤテさんからだわ!」
そして、それによりカスミは
変身忍者嵐が空駆けの術により今、江戸城に向かって飛んで来ており
天守閣最上階の高窓さえ開けてもらえば、そこから入ることが出来るから、それをお願いしたい
という変身忍者嵐、つまりハヤテからのメッセージを確認することが出来た。
現代でいうテレパシーが剣を通じて伝わったというところであろうか?
「待っててね、ハヤテさん」
カスミにとって、ハヤテのこういう時の『お願い』というのは、何にもまして最優先なのだ。
カスミは急いで階段を駆け下りると、江戸城天守閣の一階に当たる不用物集積場に着き、問答無用でいきなり扉を開ける。
中にいた担当の役人を含む係の者たちは、突然、いきなり入ってきた桃色の忍び装束を着たくノ一の姿に驚く。
が、それに対して、カスミは問答無用で懐から取り出した書状をバッと見せつける。
その書状には、この江戸城の主である征夷大将軍徳川秀忠の署名と花押が目立つように入っていた。
一刻の時間が惜しかった。
「伊賀同心カスミ、上様の特命によりお願いにあがりました」
いうなり、その手に持っていた木製短筒を、ちょうど焼却炉の前にいた係りの者に強引に渡す、というより押しつける。
「これを必ず、今すぐ焼却処分してください、お願いします!」
係りの者は目を白黒させながらも、押し付けられた短筒をさっと焼却炉に投げ込む。
この時代、一から火をつけるのは意外に困難であり、多少遠い場所であっても、既に火が燃えている場所で処分する方が、結果的には早く処理できるのだ。
カスミは木製短筒が焼却炉に投げ込まれたのを確認すると
「ありがとうございます、では、失礼します!」
と礼をし、そのまま急いで、今度は天守閣の最上段に駆け上る。
カスミは並みの人間ではない。
厳しい修行を乗り越え、ちゃんとした伊賀の免状を持つ『忍びの者』なのだ!
常人には考えられない早さで天守閣の一階から、あっという間に最上階に駆け上った。
ここにも何人もの警護の武士たちがおり、いきなり入ってきたカスミに対して警戒心を隠さず、直ぐに身構えるが
カスミは問答無用で懐から取り出した書状を見せつけると
「伊賀同心カスミ!、緊急にこの窓を開けたし、ごめんっ!!」
叫び、そこにいた武士たちを押し退け、大きな高窓を開けると、大声で
「ハヤテさあーーーんっ!!!」
と叫び、そして勢いよく手を振った。
そして、カスミの目に
空を駆け、こちらに向かって飛び込んでくる変身忍者嵐の姿が大きく見える。
それを確認したカスミは身を避けると、嵐がすんなりと入ってこれるように場所を空ける。
そして、直ぐに
変身忍者嵐が江戸城の中に飛び込んできたのだ!
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「カスミ、ありがとう」
高窓から入ってきた変身忍者嵐は、そのまま着地すると、まずはカスミに礼をいう。
そして嵐なりに
「皆さん、この江戸城内に血車党の化身忍者が転移の術で侵入してきています!、私たちは急ぎ、その場所に行かなくてはいけない!」
と、取り急ぎの説明をするのだが、この場にいる者たちは目を白黒させ、右往左往するばかり。
「皆さん、話は後でします、まずは私たちのために道を開けてください!」
カスミが大声で叫ぶ。
そして
「ハヤテさん、行きましょう!、今、千恵さんが血車党のくノ一たちと戦っているところです」
と変身忍者嵐の手を取り、急ぎ、この場から大奥へと向かおうとする。
嵐は、そんな気持ちがはやるカスミに
「血車党くノ一くらいなら、千恵さん一人でも十分以上とは思うのだが、化身忍者が…」
と話はじめた。
カスミはそれを聞き
「えっ、でも転移の術って、一度行ったことがある場所でないと、そこまで飛んで移動することはできないんじゃ?」
と、嵐に対して、当然の疑問を述べる。
「それが、実際に転移の術で江戸城に移動すると言っていたんだ」
と答える嵐。
「とにかく急ぎましょう!」
カスミは嵐の手を取ると、目を白黒させ、右往左往するばかりの周囲の者たちを尻目に
まるで台風のように突然、この場所に現れたカスミは、いきなり飛び込んできた変身忍者嵐を引っ張るように連れて、脱兎のごとく、下階の大奥へと向かった。
カスミと共に走りながら嵐は
「カスミは楓さんという伊賀のくノ一を知っているか?」
と尋ねる。
「ええ、私が伊賀での修行時代の友だちよ。とっても優しくて、しっかり者で、よく私を、ええ、修行の厳しさに気持ちが折れそうだった私を励ましてくれたわ。大切な友だちよ!」
そのカスミの返答を聞いた上で、嵐は
「その楓さんが、『今の毒蛾くノ一』の正体だ!」
と、さっき自分の目で確認したばかりの事実を、あえて、カスミに対して告げる。
カスミはビックリしたように立ち止まった。
そして
「うそ……」
と愕然としたのがありありと分かる様子で声を震わせた。
「私とツムジと、それに夜叉丸殿と螢火さんが、実際に見たんだから間違いない!」
嵐は、そんなカスミに対して、キッパリと言い切ったのだ。
「そんな………」
それを聞いたカスミは、思わず呆然とする。
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変身忍者千恵の異形の姿を見て、ざわざわと動揺した様子を見せる大奥女中たち。
だが、そんな大奥女中たちの中から四十代と思われる落ち着いた感じの、しかし、威厳をあわせ持つ女性が姿を現すと
「皆の者、うろたえるでない。こちらの千恵様は、今、我らをお守りせんと、こうして自らの姿を変え、戦おうとしているのじゃ!」
と狼狽する大奥女中たちを大きな声で一喝する。
そして、その女性は
「千恵様、私はこの大奥にて上様より将軍様御局代行を命じられ、ここの公務を取り仕切る斎藤福と申すもの!」
と大きな声で自己紹介し
「本来なら、我ら大奥女中一同、率先して千恵様に加勢すべきもの、武門に生まれた女子として、共に戦いましょうぞ!」
と変身忍者千恵に向かって言った。
気持ちは嬉しいんですけどね…
変身忍者千恵は内心でそう思いつつ、だが
「斎藤福様、ありがとうございます」
と一応は礼をしつつも
「ですけど、ここは皆様、ひとまずは安全なところへお下がりください!!、この場は私、千恵一人で防ぎます!」
そう必死の形相で叫ぶと、抜刀し、薙刀を持ち構える大奥女中たちを庇うようにして前に立ち、そして
抜刀し、今にも襲いかかろうとするくノ一二人を含む血車党下忍たちに抗すべく、自分達もその手に持つ薙刀を大きく振りかぶり、構えをとっている背後の大奥女中の皆に向かってあらんかぎりの大音声で呼び掛けた。
頼むから血車党を甘く見ないでくれ!
変身忍者千恵は本音では悲鳴をあげたいくらいだった。
もし、大奥女中の誰かが、うっかり奴らの人質にされでもしたら
こちらは連中に向かって手出しが出来なくなってしまうではないか!
いや、血車党の化身忍者だった頃の千恵なら、相手にそんな人質などとられても、構うことなく必殺の『七色の狂い毒粉』で、その相手を人質もろともに攻撃していたであろう。
今の自分はそんなことは出来る立場ではないのだ。
これは綺麗事ではなく、利害得失からいっても、である。
今の千恵は、今朝、伊賀上忍の娘、千秋からもらった徳川家への仕官の話に悩みつつも、やはり心を動かされていた。
それなのに、もし、この場で自分がいながら、大奥女中の中から血車党による少なからぬ犠牲者を出してしまったら…
そんな仕官の話どころか、今現在、自分が居候させてもらっているタツマキ一家にだって、どんな迷惑がかかるかしれたものではない
少なくとも千恵は、そう考えていたのだ。
せめて、この場にカスミさんさえいてくれたら…
斎藤福をはじめとする大奥女中の方々にもうまく話をつけてくれただろうに…
ハヤテとの関係で微妙な感情を抱きつつも、やっぱり、このような場面ではカスミを精神的に頼りにしてしまう千恵だった。
その変身忍者千恵の大きな声に、血車党の下忍たちも、薙刀を構えた大奥女中たちも、双方とも一瞬立ち止まったが
「イーッ!、ヨーウゥゥー」
と化身忍者毒蛾くノ一が叫び声をあげると
「ふん、『出来損ないの裏切者』、お前の相手など、この私一人で十分以上さ!」
そう言い切って剣を大きく持ち振りかぶると、早速、変身忍者千恵に向かって斬りかかろうとする。
そして
「何をしている!、たかが大奥女中ごとき、お前たちなら草でも刈るように一刀の元に斬り伏せられるはず、構うことはない、やれっ!」
と、一瞬、変身忍者千恵の大声に攻撃の手を止めてしまった菊と桐、そして自分の連れてきた下忍二人を大声で叱咤する。
あらためて薙刀を構えた大奥女中たちに斬りかかろうとする血車党の下忍、くノ一たち。
もはやなりふり構ってなどいられない!
千恵は決意を固めると
「みんなっ、お願い!!」
千恵はそう叫び、そして、自ら両手を上にあげ、大きく伸ばす。
うわぁぁぁぁーーーんっ!!
変身忍者千恵の声と共に、彼女の周囲には、まるでコウモリほどの大きさを持った毒蛾たちが、わさわさと次から次へと、沢山現れて、変身忍者千恵の周囲で群体となって集まる。
「行けええぇっ!!」
変身忍者千恵の願いのこもった号令一下、その毒蛾たちは血車党の下忍、くノ一たちに向かって襲いかかる。
毒蛾たちは血車党下忍、くノ一たちに向かって大量の鱗粉を撒き散らした。
「うわあっ!」
「ごほっ、ごほっ!、!」
攻撃の手を止め、毒蛾たちの鱗粉攻撃に苦しむ下忍、くノ一たち。
「みんな、何をやっている!」
苛ただしそうに化身忍者毒蛾くノ一はいうと
「此方の方が強力だよ、血車忍法『毒蛾乱舞』!」
と印を切り、やはり両手を大きく上に伸ばす。
すると今度は化身忍者毒蛾くノ一のまわりに大量の大きな毒蛾たちが集まり、やはり群体をなす。
「やれっ!」
の化身忍者毒蛾くノ一の号令のもと、毒蛾たちは変身忍者千恵と薙刀を構える大奥女中たちに向かって襲いかかる。
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変身忍者千恵は大奥女中たちの前にすっくと立つと、彼女たちを庇うようにして構え、そして襲いかかってきた大きな毒蛾たちを前に大きく剣を振りかぶり、そして
「千恵の必殺、十字斬りっ!!」
そう叫び、自らの持つ剣をいったん振り下ろし、そして十字型に回転させて横へ大きく振り払う。
化身忍者毒蛾くノ一が放った毒蛾たちは、たちまち変身忍者千恵によって、次々と斬り伏せられた。
その様子に薙刀を構えた大奥女中たちも、思わず目を見張る。
「へえ、『出来損ないの裏切者』なかなかやるじゃない」
いかにも面白そうに化身忍者毒蛾くノ一はいう。
そして
「だが、この私が直接斬りかかったとしたら、それでもお前はそんなことをしていられるかな?」
といい、そして変身忍者千恵に向かって
「やあっ!」
と斬りかかってくる。
「望むところだ!」
受けて立つ変身忍者千恵。
その人知を超えた変身忍者千恵と血車党下忍たち、そして化身忍者毒蛾くノ一との戦いを見て
大奥女中たちも、ただ、ただ、目を見張り、呆然と注視しているばかり。
そして、その大奥女中のまとめ役たる斎藤福も
これは自分たちが手を出せるようなレベルの『戦い』ではない
そのことを否応なしに悟らされていた。
斎藤福は、かつて現将軍徳川秀忠より直接聞いた『鷹狩りの一件』をあらためて思わずにはいられなかった。
血車党なるものたち
私たち常人の太刀打ちできる相手ではない。
そして、それとたった一人で立ち向かい
この場を守らんとする変身忍者千恵の勇敢さに
あらためて敬意を感じていた。
だが、このままでは…
ちょうど斎藤福がそのように思い始めていたところである。
「嵐、見参!」
力強い男性の声と共に、荒鷲の姿を併せ持つ異形の変身忍者嵐が、まず現れ
そして
「皆様、この場は私カスミと変身忍者嵐、そして変身忍者千恵にお任せください!」
凛とした若い女性の声が響く。
桃色の忍び装束を着た、斎藤福も知る
年少の女子ながら、公儀直参として伊賀同心の身分を併せ持つ
くノ一カスミが、その場に飛び込むようにして現れた。
「嵐さん、カスミさん」
思わず安堵したかのような変身忍者千恵の声。
その声は強い信頼感に溢れていた。
そして、その様子を斎藤福は
密かに注視する。