※この作品はR-18です。

変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決   作:shpfive03

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旧pixiv版では血車党くノ一牡丹はこの後もしばらく物語中でいろんな動きをみせるのですけど

本作では…

思いきった内容変更を行いました。


服部律、逃亡!、そして残された血車党くノ一牡丹は?

 

「はい、百地千秋様は、今や伊賀の内部で力を持ちすぎた藤林の一党を亡きものとするためなら手を組みましょうと、自ら進んで我ら血車党に話を持ちかけてきたのです」

 

血車党くノ一牡丹は、自らに剣の切っ先を向けている、伊賀藤林組の上忍代行である朧に対して、血車党の機密事項であるはずのことを、いともたやすく、すらすらと話しはじめたのだ。

 

本当だろうか?

 

さすがに朧は疑問を感じざるを得なかった。

 

それに、この血車党くノ一、これが本当だとしたら、あまりに口が軽すぎる。

 

朧は疑問を感じつつも、まずは話を聞こうと、更に剣の切っ先を牡丹に向けて

 

「それは本当の話なのですか?」

 

と問いただそうとする。

 

そこへ彼女の背後から

 

「隙あり!」

 

という女性の鋭い声。

 

そして棍棒が朧に向かって降り下ろされる。

 

朧は素早くかわそうとするが、避けきれず、右腕を強打されてしまった。

 

「ああっ!!、ううっ…」

 

思わず剣をその場に落とし、背後からの敵に強打された右腕を押さえる朧。

 

それを見た牡丹がニヤッと笑うと、朧が落としてしまった剣をその手に取り、逆に朧に向かって突きつける。

 

「形勢逆転ね、伊賀の上忍さん」

 

血車党くノ一牡丹は朧に向かって、冷笑するかのような笑みを浮かべた。

 

そして

 

「はははっ、朧、あんたってやっぱりバカよね」

 

と、朧を嘲笑するかのような笑い声をたてて、棍棒を持った女性が近づいてくる。

 

その女性は、確かに奥女中としての服装をしてはいたのだが…

 

朧は、その棍棒を持った女性を見て、思わず強い痛みを感じたままの右手を震わせながら、それでも強い怒りと共に彼女を指差した。

 

「律さんっ!、あっ、あなたという人は……」

 

朧に指差された女性、いや、三代目服部半蔵の長女、律は、いかにも嬉しそうに声をたてて彼女のことを嘲笑した。

 

「はははっ、ええ、その通り。服部律は、あなたの想像通り、血車党と手を組んだのさ」

 

腕を強打され、傷ついた朧を『ざ、ま、あ、み、ろ』と言わんばかりに嘲笑の笑みを浮かべていたのは

 

他ならない伊賀服部組の中忍、服部律であった。

 

「ふふっ、どうして『正義の味方』って、こうも泣き落としに弱いのかしらね」

 

朧に剣を突きつけた牡丹も勝ち誇るかのように言う。

 

「この私が血車党を裏切って『命乞い』なんかするわけないじゃないっ!、それにしても、こんな安っぽい芝居に引っかかる人がいるなんて、本当に驚きだわ!」

 

その牡丹に対して、服部律は嬉しそうに言う。

 

「牡丹さん、言った通りでしょう。こいつは偉そうなことを言っていても、本当は『人を信じやすい』お人好しなのよ」

 

そう言って律はケラケラと笑った。

 

「律さん、あなた…、仮にも徳川家譜代である服部一門の長女という立場がありながら、徳川家を裏切り、こともあろうに血車党なんかにつくなんて…」

 

朧は悔しそうにいう。

 

「あら、私は徳川家に対する裏切り行為なんてしていないわよ」

 

楽しそうに律は言う。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「私たちは現在、将軍家世子として朝廷より右近衛大将に任じられている徳川家光様よりも、駿河におわす大納言忠長様に次期将軍になっていただきたいと思い、こうして尽力しているだけのこと。いわば、これも徳川家の御為。そのための協力をしていただけるのであれば、例え血車党といえども拒む理由はないだけの話」

 

「何を…、バカな…」

 

朧は、律のその言葉に愕然となる。

 

そして

 

だとしたら、この度の律の行動も到底本人の一存によるものとは思われない。

 

必ずや、大納言忠長擁立のために徒党を組んでいる一派があるはずであり

 

それには忠長本人はもとより、当然、幕閣のものや、有力大名なども絡んでいるに違いない。

 

ことによると上様御正室にあらせられる小督(おごう)の方の意向もないとは限らず…

 

だとすれば、公儀隠密として上忍代行という責任ある立場にある藤林朧としては、到底座視できる話ではない。

 

が、今はそれどころではない。

 

「朧さん、死んでもらいます」

 

牡丹は朧に突きつけていたその剣を振り上げた。

 

その時である。

 

いきなり手裏剣が飛んできて、今、まさに朧を斬ろうとしていた牡丹の剣を握りしめた両手を直撃する。

 

「つっ、痛うっ!!!」

 

思わず剣を落としてしまう牡丹。

 

「何奴っ!」

 

それを見た服部律が叫ぶ。

 

すると、どこに隠れていたのか、物陰から三人の男性が姿を現した。

 

一人は、まだ元服前と思われる可愛らしい少年で、緑色の忍び装束の下に鎖帷子を着込んでいる。

 

髪も少年のものらしく、まだ整えられていないが、それがかえって初々しさを感じさせる。

 

一番年配と思われる男性は茶色の忍者装束の下に鎖帷子を着込んでいる。

 

そして

 

長髪に濃い青色忍び装束を着た青年のみは、身軽さを重んじてか、下には鎖帷子を着用していない。

 

その両手には長い手甲をはめている。

 

どうやら手裏剣を放ったのは、茶色の忍び装束を着た年配の男性らしい。

 

三人は服部律と、手を傷つけられ、思わずしゃがんだ血車党くノ一牡丹、そして捕らわれた状態の朧に向かって並ぶと

 

「名張のタツマキ、参上!!」

 

まず年配の男性が進み出て、その名乗りをあげた。

 

「夜叉丸、見参!」

 

続いて長髪の青年が名乗りをあげ

 

「伊賀の少年忍者ツムジ様だい!、おいらたちが来たからには好き勝手はさせないぞ!」

 

と言葉だけは勇ましく、少年が名乗りをあげた。

 

「タツマキ殿、夜叉丸、ツムジ!、なぜ、ここへっ?」

 

驚きもあってか、無意識にタツマキにだけは敬称をつけてしまった律だが、すぐに冷静さを取り戻すと、今度は素早く自分が朧の頭上に棍棒を振り上げると

 

「動かないで!、さもないと、この棍棒が朧の頭を叩き割るよ!」

 

と、脅しの声を張り上げた。

 

が、三人は動じない。

 

そして夜叉丸がいきなり

 

「伊賀忍法、黒縄!!」

 

と声をあげると、彼にとり必殺技である黒縄を投げる。

 

夜叉丸が操る黒縄は女性の髪をより合わせ、獣油を塗り込んだ特製であり、まるで糸のような細さであるものの、岩石や土塀さえ切り裂くことができる鋭い切れ味である。

 

夜叉丸は自らの指先で、この黒縄を数十メートルの範囲で操ることが出来るのだ。

 

夜叉丸は、この黒縄を棍棒を持つ服部律に向かって投げつけた。

 

さすがに律は軽々と大きく黒縄から飛び退いたが、その隙に朧は立ち上がると、素早く逃げ出し、タツマキ、夜叉丸、ツムジ三人のところへ駆け込んだ。

 

「夜叉丸、すまない!」

 

朧は顔を赤面させ、まずは夜叉丸に感謝の言葉を述べる。

 

「ったく、朧様は『実戦向き』じゃないんだから、こういう無茶はされない方が…」

 

舌打ちしながらも夜叉丸は

 

敬愛する上忍代行、朧の無事にホッとするとともに、その髪を優しく撫でる。

 

朧は続けて

 

「タツマキ様、そしてツムジ様もありがとうございます」

 

と、タツマキとツムジに対して謝意を述べた。

 

「いや、なに」

 

とタツマキが応じ

 

「よかったね、朧さん!」

 

とツムジが明るく返事をする。

 

そして

 

「律殿、こともあろうに名門服部家の長女で中忍の地位にある貴女が、こともあろうに悪党、血車党につくなど、言語道断!、この上は我らとしても放置するわけにはいかぬこと心得よ!」

 

とタツマキが律に向かって、大声でいう。

 

それを聞いて律はふっと笑うと

 

「いいだろうタツマキ、この私もだてに忍術の修行はしておらぬ!、多勢に無勢なれど、この場は切り抜けて見せよう!」

 

と、タツマキに対して敬称をつけるのはやめ、戦闘姿勢をとった。

 

この場で彼女の味方と言えるのは手負いの血車党くノ一牡丹だけなのだが…

 

律は闘志をみなぎらせていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

タツマキは、あくまでも抵抗の意思を示したままの服部律に対して

 

「律殿!、無駄な抵抗は止められよ。我が方はわしと夜叉丸殿、ツムジの男三人、それに怪我をしているとは言え朧殿もおられる、対するそちらの方は律殿の他には、手負いの血車党くノ一が一人いるばかり、とても勝負にはなりませんぞ!」

 

と降伏勧告とも言える呼びかけをする。

 

だが律はふふっ、と笑うと

 

「この私は、そこまで単純じゃないよ!」

 

と言うなり懐から何やら玉のようなものを取り出すと、それをいきなりタツマキたち四人に向かって投げつけたのだ。

 

ズカァーン!!

 

そして、あたりにはもうもうと凄い量の煙が立ち込める。

 

「ごほっ、ごほっ!」

 

これはタツマキ。

 

「はっくしょーんっ!」

 

ツムジがくしゃみをすると

 

「ちっくしょう、けむーいっ!」

 

と鼻をぐずつかせる。

 

いち早く夜叉丸が煙そうにしながらも

 

「どうやら律殿は煙玉を爆発させて、そのまま逃げたようだな」

 

と手で煙を払い除けながら言った。

 

「律さん、逃げ足だけは『早きこと風のごとく』ですね」

と、これは朧。

 

そう言う彼女も煙そうに顔をしかめている。

 

だが、ということは…

 

さっさと逃げ出した服部律に置いてきぼりにされた、手負いの血車党くノ一牡丹が、やはり煙を吸い込んだのか、咳をしながら、そこにうずくまっていた。

 

彼女の手は、先にタツマキが投げた手裏剣によって傷つけられており、どうやら剣を握ることすら出来なさそうだ。

 

そんな彼女を取り押さえることは、タツマキ、夜叉丸、ツムジ、そして怪我をしているとは言え朧も含めて、四人の手練れの伊賀忍には容易いことである。

 

「律殿はさっさと自分だけ逃げ出したし、残されたのはお主だけじゃぞ」

 

タツマキが手負いの血車党くノ一牡丹に向かって声をかける。

 

だが

 

あらためて見ると、彼女もなかなか美人ではないか。

 

それに年の頃はカスミと同じくらいであろうか?

 

そう思うと、彼女を斬るのはしのびないような気にもさせられる。

 

ふとタツマキがそのようなことを思っていた時である。

 

ビュッ!!

 

異質な風を切る音が、頭上の物陰から一直線に牡丹の背中へと伸びた。

 

「お姉さん、あぶないっ! 伏せて!」

 

勘を働かせたツムジが、咄嗟に牡丹へ飛びかかり、彼女を押し倒すように庇った。

 

だが、間に合わない。

 

ドスッ…!!

 

「ぐあっ……!?」

 

鈍い衝撃音と、血車党くノ一牡丹の苦痛の呻き。

 

ツムジが庇おうとしたものの、残念ながら一歩及ばなかった。

 

どこからか放たれた一本の飛苦無が、彼女の背中に深く突き刺さっていたのだ。

 

その刃には、禍々しい毒が塗られていた。

 

「く……そ……服部、律……うら、ぎり、もの……」

 

牡丹の口から鮮血がこぼれ落ちる。

 

「お姉さん! しっかりして!」

 

ツムジが必死に声をかけるが、強力な毒は瞬く間に牡丹の全身を駆け巡った。

 

もはや断末魔の牡丹だが、それでも自分を抱きかかえるツムジの顔を呆然とした目で見つめる。

 

「……甘い……小僧……敵を……助けるなんて……」

 

薄れゆく意識の中、牡丹は空ろな目で天井を見つめ、掠れた声で呟いた。

 

「血車……党……ばん…ざ……い……」

 

息絶え絶えに発せられたその言葉に、ツムジは思わず叫んでいた。

 

「お姉さん、何をバカなこと言ってるんだよ!! そんなことことよりもしっかりしなよ! おいら、今すぐ血を止めるから……!」

 

必死に傷口を押さえ、彼女を介抱しようとするツムジ。

 

だが、牡丹の瞳から光が消え、その体から完全に力が抜けるまでに、そう時間はかからなかった。

 

彼女はがくりと首を垂れ、二度と動かなくなる。

 

洗脳と呪縛に囚われたまま息絶えた血車党くノ一と、それを救おうと必死に手を伸ばした少年忍者……

 

その光景を見ながら、あまりの冷酷さに、タツマキ、夜叉丸、そして朧は慄然とした。

 

律は足手まといになったと判断した血車党くノ一という味方を、余計な証言をさせないため、その口を封じる目的で一瞬で消し去ったのだ。

 

だとしたら…

 

その冷酷さに、思わずタツマキ、夜叉丸、そして朧も慄然とするしかなかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

そこへ、ふいに

 

「ふっふっふっふっ!」

 

と、その場に姿を見せないままの服部律の声が聞こえてくる。

 

「律殿か?」

 

と叫ぶタツマキ。

 

「律さん、卑怯ですよ、出てきなさい!」

 

と、これは朧。

 

そんな朧に向かって、夜叉丸は無言で首を振る。

 

律のような『卑怯者』に対して、そのようなことを言っても馬の耳に念仏ですよ…

 

夜叉丸は暗にそう言っているのだ。

 

「此度のことは、この私、律が一存でやったことであり、父上である半蔵正龍はもとより、弟の小弥太には無関係のこと!、まして駿河の大納言様やお歴々もご存じなきこと、それは申しておく」

 

嘘だ!

 

タツマキ、朧、夜叉丸はすぐに思った。

 

律の父である半蔵正龍が術によって操られていたのは、既に夜叉丸らによって確認済みであり、律の弟で、服部家の嫡男である小弥太は、現在は伊賀の地で修行中の身である。

 

だから、この二人が律の企みに直接関与していないのは、多分、間違いないところだろうが…

 

駿河の大納言忠長や、それに関係する有力者たちが、こうした律の企みと無関係であるはずはない。

 

だからこそ、逆に律は言質をとられないために、あえて、このように言っているのだ。

 

それにしても

 

仮にも服部家の当主である半蔵正龍が、娘である律の企みを見抜けぬまま、操り人形と化していたのだとしたら…

 

少なくとも正龍の『監督責任』はまぬがれようはないだろうし

律自身の行動も含めて、今後、服部家は無事では済まないだろう。

 

そうなれば服部家は最低でも伊賀の上忍三家にとどまることはできなくなり

 

鼎の足の一本がなくなれば、残りの二本、百地家と藤林家との対立は今後、表面化するかもしれない。

 

そうなれば…

 

早くもタツマキと朧は、それぞれに思いをめぐらせていた。

 

一方で律の声は

 

「私は伝えるべきことは確かに伝えたぞ!、いずれにしても、私は一先ず姿を消す。では、さらばだ!」

 

と、一方的に宣言すると、それっきり聞こえなくなった。

 

その場に残されたのは

 

タツマキ、朧、夜叉丸の三人、そして少年忍者ツムジ。

 

「いずれにしても、既に大奥の方で事は起きている。我々も直ぐに駆けつけねば!」

 

と、これは夜叉丸。

 

だが

 

「このお姉さんは?」

 

とツムジが泣きそうな顔をしながら牡丹の亡骸を指差して尋ねる。

 

「それについてはツムジ様の方でお願いします」

 

と朧が恭しく頭を下げた。

 

ツムジは朧の真剣な表情を見つめると

 

「うん、分かった!、おいらが何とかする」

 

彼女に向かって力強く頷くのだった。

 

「私と夜叉丸は早速、カスミさんと千恵さんのいる大奥の方へ行き、そこで暴れる血車党のものどもに対しなければいけません!」

 

「朧殿、しかし怪我の方は大丈夫ですかな?」

 

タツマキが朧に向かって当然のことを問いかけるが

 

朧は

 

「これしきのこと、大したことではありません。元々今回の事は私が言い出したこと、なれば、私には責任があります!」

 

キッパリとタツマキに向かって、そう答えたのだ。

 

こうしてツムジ一人をこの場に残し

 

朧とタツマキ、そして夜叉丸は、現在カスミと千恵がいるはずの大奥へと向かうことになった。

 




血車党くノ一牡丹が落命したことで、旧作と比べて話数は少なくなりますが(pixiv版10作分くらい)、いろいろ考えた上での事です。

ご判断は読者の皆様にお任せいたします。
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