変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決 作:shpfive03
「待って!」
変身忍者千恵、そして様子が気になって手当てをしようと急いで駆け寄ったカスミに介抱されていた朧だが、二人にペコリと頭を下げると、自力でヨロヨロしながらも立ち上がった。
そして朧は、立ち上がるその瞬間に
近くにいた夜叉丸に、一瞬だけ
夜叉丸は周囲にそれとわからぬよう、微かに頷いた。
そして朧は自分達に向けて狂い毒粉発射用の特製短筒を向けている化身忍者毒蛾くノ一の分身と、手鏡を持ったままの化身忍者毒蛾くノ一に向かって、大声で問いかける。
「私の『破幻の瞳』は、私のこの目で見たあらゆる『超常の力』を打ち消し無効化するはずのもの。なのに、なぜ、その手鏡は、その私の視線を跳ね返すことが出来るのですか?、教えていただきたいものですわ」
化身忍者毒蛾くノ一は手鏡を持ったまま「ハハハッ」と、愉快そうに笑う。
「ならば、冥土の土産に教えてやろう!、鏡が光を跳ね返すこと、それ自体は『超常の力』でもなんでもない
そして変身忍者嵐の『影うつし』も、朧、お前の『破幻の瞳』も、いったんは『光』という形で相手を攻めるという点では同じものだ。だから、その『光』自体を跳ね返してしまえば、後は跳ね返された『光』それ自体が、今度は術者にそのまま返ってくるということなのさ!」
そう得意気にいう化身忍者毒蛾くノ一に対して朧は
「わかりました、今後の参考とさせていただきますわ」
と皮肉っぽく返事をかえす。
だが、その朧の返事が終わらないうちに、もう夜叉丸は動いていた。
「伊賀忍法、黒縄!!」
夜叉丸にとり必殺技である黒縄を投げる。
夜叉丸が操る黒縄は女性の髪をより合わせ、獣油を塗り込んだ特製であり、まるで糸のような細さであるものの、岩石や土塀さえ切り裂くことができる鋭い切れ味である。
夜叉丸は自らの指先で、この黒縄を数十メートルの範囲で操ることが出来るのだ。
夜叉丸はこの黒縄を、化身忍者毒蛾くノ一の分身が持つ七色の狂い毒粉発射用の特製短筒に向かって、一直線に投げつける。
「しまったっ!」
化身忍者毒蛾くノ一が気づいた時には、もう遅い。
夜叉丸が放った黒縄は、あっという間に化身忍者毒蛾くノ一が持つ木製短筒に、まるで生き物のように巻きつくと、それを強い力で巻き上げてしまう。
「イーッ!、ヨーウゥゥー!!」
悲鳴をあげる化身忍者毒蛾くノ一の分身。
だが、夜叉丸の黒縄の前ではなす術もない。
そして木製短筒に巻きつき、それを縛り上げた黒縄は、スルスルと主である夜叉丸の元へと戻っていく。
「残念だったな、『伊賀の裏切者、楓殿』、俺はやられたらきちんとやり返す!」
夜叉丸は手鏡を持ったままの化身忍者毒蛾くノ一に向かって大声でいう。
「お前さんは、その手鏡を持ったままだし、分身の方も両手で短筒を持っているから、この間のように羽ばたきで黒縄を跳ね返すことは出来ない。そして朧様が上手く、お前の注意をそらしてくれた!」
夜叉丸のその言葉を聞いて、思わず朧は微笑んだ。
「ふふっ、『楓さん』、冥土の土産なんてことは、あんまり言わない方がいいと思いますよ。この通り『一発逆転』がありますので」
夜叉丸と朧のその言葉を聞いた化身忍者毒蛾くノ一は
「お、おのれえっ!」
と怒りをあらわにする。
ここで
「夜叉丸さん!」
変身忍者千恵が叫ぶ。
「その毒粉は火で燃やせば、ただの灰となって浄化されます。直ぐに処分してください!、毒蛾くノ一が次の短筒を用意するのには時間がかかります!」
毒蛾くノ一、それは、かつての千恵の名前でもあった。
そして、この狂い毒粉と木製短筒のことは、千恵は誰よりもよく知っている。
「千恵殿、わかった!」
夜叉丸は大声で千恵に向かって返事をする。
「夜叉丸殿、その木製短筒、こちらへお寄越しくだされ!」
今度は齋藤福が叫ぶ。
「我ら、人数だけはおります。その短筒を燃やすくらいなら、我らでも出来ること!、お任せくだされ」
「福様、承知した!」
夜叉丸は福に向かって、そう返事をすると黒縄を使って、そのまま化身忍者毒蛾くノ一の分身から奪い取った短筒を福に向かって投げ渡した。
がっちりと木製短筒を受け取る福。
直ぐに三人の奥女中が福から木製短筒を渡されると、それを処分するために部屋から出る。
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「さあて、と」
と夜叉丸が舌なめずりせんばかりに本体と分身、『二人の化身忍者毒蛾くノ一』に向かってキッパリと言い切った。
「此方は朧様に、この夜叉丸、そして嵐殿に千恵殿、カスミ殿と五人、対するお前さんは辛うじて分身がいるだけで、実際にはたった一人でしかない。いかに血車党の化身忍者が特別な力を持っているとはいえど、もはや勝ち目はないと思うがな!」
だが、化身忍者毒蛾くノ一は
「イーッ!、ヨーウゥゥー!!」
と叫ぶと
「ならば、五人まとめてかかってくるがよかろう、一人残らず道連れにしてくれるわ!」
と強気に返し
「言っておくが、カスミと手負いの朧など戦力のうちには入らぬぞ!、ならば夜叉丸、お前を数のうちに入れてやったとしても、実際にはせいぜい二対三にもならぬ!」
と夜叉丸に向かって強気に言った。
「何を!」
それに反発した夜叉丸が化身忍者毒蛾くノ一に向かって黒縄を投げようとするのを、しかし、変身忍者嵐はハッキリと手で制した。
「嵐殿っ!」
嵐の予期できなかった行動に驚く夜叉丸。
だが嵐は夜叉丸に向かって、首を横に振る。
実際問題としては、変身忍者嵐と変身忍者千恵が二人がかりで戦っただけでも、恐らく化身忍者毒蛾くノ一を倒すことは出来るだろう。
だが……
変身忍者嵐は、化身忍者毒蛾くノ一を正面から強い視線で見つめると、これ以上なくキッパリと宣言した。
「血車党化身忍者毒蛾くノ一っ!、この私、変身忍者嵐は、この私の命と名誉をかけ、お前に対して、血車党古来の作法にのっとり、一対一の決闘を申し込む。受けてもらうぞ!」
これには夜叉丸のみならず、その場にいる全員が驚き、どよめく。
が、その場の皆の驚きをよそに、変身忍者嵐は構わず続ける。
「言っておくが、この『対決』に際して、私は一切の手加減などせず、文字通り生死を賭けた戦いをする!」
「………………」
「場所は余人の邪魔の入らぬこの江戸城天守閣の屋根の上、お互いに飛行術を得意とするもの同士、問題はあるまい。どうだ?」
変身忍者千恵とカスミが、それぞれ何か言いたそうに嵐の方に視線を向けるが、嵐はそれに対して首を横に振る。
「カスミ!、千恵さん、それぞれ私に言いたいことはあるとは思うが、これは私なりに考えた上でのことだ!、この場は私の我儘を聞いてくれ!」
「ハヤテさん!」
カスミが何が言いかけるが、変身忍者千恵がそれを手で制した。
「カスミさん、ここは嵐さんの納得のいくようにしてあげましょう」
それを見た夜叉丸もいったんは手にした黒縄を不承不承ながら引っ込める。
嵐はさらに言う。
「どのみち、お前たちの今回の作戦の失敗は既に明らか!、ならば、この場は血路を開いて切り抜けたとしても、どのみちお前を待っているのは血車党の「血の掟」による処刑しかなかろう。だが、この私、変身忍者嵐の首を土産に持ち帰れば、あるいは魔神斎に対する申し開きもできるかもしれんぞ。どうだ?」
化身忍者毒蛾くノ一はそれを聞き
「イーッ!、ヨーウゥゥー!!」
と叫ぶと、心の中で、奥女中の松に姿を変え、密かに中奥に潜入しているはずの牡丹のことを思った。
牡丹、私はもう死んでもいい、お前は上手く作戦を成功させてくれ!
そして骸骨丸様に、毒蛾くノ一を含む皆は、最後まで勇敢に戦ったということを伝えてくれ!
化身忍者毒蛾くノ一は心の中で強く、そう願う。
実際には牡丹は既に服部律の手にかかって命を落としているのだが…
真っ正面から嵐を見据えた化身忍者毒蛾くノ一は
「いいだろう嵐、私は決して命を惜しむものではないが、その決闘は受けて立つ!、お前たち裏切者や、伊賀忍者、それに徳川の者たちに血車忍者の誇りというものを見せてやるさ」
何かを思いきったかのように言った。
それを聞いたカスミは
楓ちゃん!、あなたは伊賀忍者だったんじゃないの!
そう言いかけたが、再び変身忍者千恵がそれを止め、そして無言で首を振った。
今は立場は違っていても
変身忍者千恵には、目の前の化身忍者毒蛾くノ一の覚悟と、その気持ちはよく分かるのだ…
そして化身忍者毒蛾くノ一は、印を結び
「血車忍法、二身一体!」
と叫ぶ。
化身忍者毒蛾くノ一と、その分身の姿は重なり、そして一つになった。
そして変身忍者嵐に向かって言う。
「嵐、一対一の決着をつけるぞ!」
変身忍者嵐も、それに応える。
「ああっ、だが、私は必ず勝つ!」
二人はそれぞれ江戸城の外に飛び出すと、そのまま空を飛び、そして天守閣の屋根上を目指す。
変身忍者嵐と化身忍者毒蛾くノ一との
最終決戦である。