変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決 作:shpfive03
「どうだい?、上手く化けただろ!」
と、男の子のような声でいうカスミ。
「ほら、太郎、早くいくわよ」
と、中年女性(?)のような声で太郎、いや男装したカスミを急かしているのはタツマキである。
それにしてもカスミの男装はまだしも、タツマキがそれっぽく女装しているのを見ると‥‥
見ていたハヤテは堪えきれなくなって、とうとう吹き出し
クックックッ!
と笑い出してしまった。
千恵は千恵で、二人の『変装』を見て、ひたすら呆気にとられている。
呆然としている、そんな千恵の肩をツムジがそっと叩いた。
「千恵お姉ちゃん、気にしないで。二人とも、あれで楽しんでるんだから」
そう言ってツムジはニコッと笑う。
さすがに家族だけあって、慣れたものである。
そんな紅葉の髪を、千恵は優しく撫でる。
「紅葉ちゃん、心配いらないわよ。タツマキさんも、カスミさんも、ちゃんとやってくれるから」
それを聞いて安心したのか、紅葉は
「お姉ちゃん、ありがと!」
そう言って、更に千恵にギュッと抱きつく。
紅葉は千恵にしがみつくことで、自分の不安を解消しようとしているように見える。
「紅葉ちゃん、心配要らないから元気出しなよ」
とツムジは紅葉を励ます。
「きっと紅葉ちゃんのお父さん、助け出すから」
「うん!、お兄ちゃん、ありがとう」
紅葉は笑顔になった。
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変装したタツマキとカスミが川岸の渡船場の方へ歩いていくと、ちょうど手前の方に人だかりが出来ていた。
「どうなっているのかしら?」
と『女装したタツマキ』が、手前にいた通行人の男に尋ねる。
「何でも血車党とかいう凶賊の一味が変装して川を渡ろうとしているということで、御公儀の方で川を渡ろうとするもの全員に対する臨時の検閲をするということで役人の皆さんが渡船場に集まって、仮の番所で旅人の身元あらためをしているんだそうだ」
通行人の男は釈然としない様子で、旅の『母子連れ』に教えてくれた。
「おいらたちは向こう岸のおとっつあんのところに行くだけなんだよ」
と『男装したカスミ』がいう。
「そうか、坊っちゃん気をつけてな」
心配そうに通行人の男は声をかけた。
「早くこんなこと終わるといいんだがな‥‥」
通行人の男と分かれるとカスミはタツマキに
「お父さん、臨時の検閲なんて嘘よね?」
と小声で聞く。
「ああ、代官所の方にもそんな動きはなさそうだし」
と、これも囁くような小声のタツマキ。
「恐らくは役人に化けた血車党の仕業だろう」
そして二人は再び『旅の母子連れ』を装い
『御公儀の方で臨時の検閲を行っている旨を告示した立て看板』の案内に従い、通行人の男の言っていた臨時の番所の前に着いた。
(勿論、立て看板、番所が偽物であることは御公儀の様式を知る二人にはすぐに分かったのだが)
「よし、通れ!」
役人らしき扮装をした男が『旅の母子連れ』を見て、番所のなかへ入るように促す。
「御苦労様です」
『女装したタツマキ』が、役人らしき扮装をした男に恭しく頭を下げる。
『男装したカスミ』もペコリと頭を下げ、二人一緒に、その場にいた他の人たちと一緒に門をくぐる。
次の瞬間、いきなり門は閉ざされてしまい、『母子連れ』を含む何人かの渡船に乗ろうとしていた人たちは閉じ込められた。
「お役人様、何を、何をなさるのですか!」
『女装したタツマキ』が思わず叫ぶ。
そこへ突然煙と共に現れた男がいた。
「ようこそ、血車党の番所へ」
見ると、その男は頭蓋骨の一部がはみ出たような奇怪な容貌をしている。
そして、その男はニヤリ、と笑うと言った。
「伊賀猿と伊賀娘、いや、タツマキとカスミ、面白い格好をしているな!」
本当におかしいと言わんばかりにフッフッフッと笑って見せる。
「あの、ご無体な!、何をなさるのですか?」
『女装したタツマキ』が白々しいのを承知で、あえて女声で、おろおろした様子を演じて見せる。
「母さん、この不気味な人はおいらたちをどうするつもりなんだろう?」
と『男装したカスミ』。
「ええい、猿芝居は止めろ、タツマキとカスミ!、他のものならいざ知らず、この私は見た目ではなく『魂の形』で、その本当の姿を見抜くことが出来る。そんなちゃちな変装など、この私には通用しないぞ!」
と、頭蓋骨の一部がはみ出たような奇怪な容貌を持った男、つまり骸骨丸は、目の前のタツマキとカスミに言った。
そして、その骸骨丸の合図により数人の血車党下忍も姿を現す。
役人らしき扮装をしていた男たちも、その姿は血車党下忍に変わっていた。
「ばれちゃ、しょうがないな」
と『女装したタツマキ』は言った。
そして
もはや無意味となった女装、男装を脱ぎ捨て、戦闘モードに入るタツマキとカスミ。
そしてカスミは懐から涼風を素早く取り出すと
いきなりそれを吹き、ハヤテたちに異変を知らせた。
「ほう、そちらからハヤテを呼び出してくれるのか、そいつはちょうどいい」
骸骨丸が笑った。
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女装したタツマキと、男装したカスミを送り出したあと
残ったハヤテ、ツムジ、千恵、紅葉の四人はそれぞれ、この先のことについて考えていた。
「てやんでえ!」
とツムジ。
「おいらだって一緒に行きたかったのに」
ハヤテがそんなツムジを
「ツムジ!」
と、たしなめる。
「留守番で紅葉ちゃんを守るのも大切な『お役目』だぞ」
ツムジは頭をかきながら
「そりゃ、そうかもしれないけどさ‥‥」
と言いつつ
「でも、おいらだって、もっと『経験』を積みたいんだ!」
と率直な思いを口にした。
ハヤテがわかっている、という仕草で頷きながら
「千恵さん」
と、今度は千恵の方を振り返る。
「はい」
と千恵。
「タツマキとカスミの『変装』、相手が血車党だった場合、あれで通用すると思うか?」
とハヤテが問う。
千恵は少し小首をかしげると
「率直なところを言いますね」
と思うところを口にする。
「例えば、もし、その場に骸骨丸が居合わせたら、絶対に見抜かれると思います。また、そこにいる化身忍者が私だったとしても、やはり見た目の姿形に騙されることはありません」
やはり、と思ったのか、ハヤテが頷く。
千恵は
「もっとも、私の場合にはタツマキさん、カスミさんのことを『それなりによく知っています』。タツマキさんやカスミさんがどのような変装をして、姿形を変えたとしても、お二人の持つ『気配』は私には直ぐに分かりますので、だから決して騙されることはありません」
と、キッパリと言い切った。
「逆に言えば、例えば化身忍者なりがタツマキさんやカスミさんの姿形に化けて目の前に現れたとしても、多分、私はそれに騙されることはないと思います。相手が『気配』までを含めて化けることが出来るのでない限り」
ここでツムジが
「じゃあ、せっかくの変装も、声色まで真似ても、意味ないってこと?」
と千恵に聞く。
「いいえ」
千恵はツムジに向かって微笑んだ。
「そこに骸骨丸ないし、それに相当する者がおらず、いるのが、せいぜい新しく作られた化身忍者で、タツマキさん、カスミさんと、まだ対面したことがないという相手なら」
タツマキの女装、カスミの男装を思い浮かべながら千恵は言う。
「十分通用すると思いますよ」
ツムジが嬉しそうに
「なら、おいらが変装して行っても、やっぱり通用するよね?」
と千恵に聞く。
「相手によってなら」
慎重に千恵は答えた。
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ハヤテは急に険しい顔つきになる。
「だが、今回の相手はそうではなさそうだぞ!」
言いざま、ハヤテは背中の速風を抜き、目前に突き出している折れ曲がった木の枝に向かって、その剣を一閃させる。
「キイッ、キィ、キッ、キィーッ!」
明らかに、その木との枝に姿を消して隠れていた怪人が、悲鳴と共にその姿を現し、そのまま地面に転落する。
ツムジが叫ぶ。
「こいつ、血車党化身忍者の不死身マシラだ!」
「うむ!」
と剣を構えるハヤテ。
強敵だった不死身マシラが復活したなら、勿論、この程度で殺られるはずもなく、すぐに立ち上がって攻撃してくるに違いない。
「こわい!」
紅葉は震えて、側にいる千恵にしがみつく。
だが千恵は
「ハヤテさん、この化身忍者ですけど、もう絶命していますよ」
とあっさりと言った。
実際、枝から落ちて倒れた不死身マシラの体は、そのままグズクズと崩れていき、ボロボロになっていったと思うと、やがて塵となっていった。
「この化身忍者は自爆しないんですね」
と千恵。
実のところ、千恵はハヤテたちが過去に戦った化身忍者たちのことをよく知らない。
知っていると言えるのは、先に自分自身が叩き斬ったガマドクロと、伊豆田方で変身忍者嵐と共に戦った毒蛇くノ一(あざみ)、それに早川で対戦した血吸いコウモリ(こずえ)くらいである。
あとは新たに作られたらしき『化身忍者毒蛾くノ一』がいるが‥‥
千恵が『化身忍者毒蛾くノ一』になったとき、それ以前にいた化身忍者たちは、すべて変身忍者嵐と戦い、敗死した後だった。
そして血車党、その総指揮をとる骸骨丸は「自分にとって都合の悪い情報」は、配下のものに決して教えない人物であることは、千恵も理解できている。
「うむ」
とハヤテは短く答えると
「だが、過去に対戦した不死身マシラは、いくらなんでも、こんなに弱い相手ではなかった‥‥」
と首をかしげる。
「この間、血車党は、千恵お姉ちゃんと別に、新しい『毒蛾くノ一』を用意してきたけど」
とツムジ。
「あいつも、やっぱり弱いのかな?」
これに千恵は答える。
「いいえ、実際に対戦した私が言いますけど、あいつは十分に強い相手ですよ」
「ううむ‥‥」
ハヤテは考え込む。
一体、この復活したらしき化身忍者不死身マシラの呆れるほどの『弱さ』は一体、なんなんだろう‥‥
そこへ、ふいに速風が何かに共鳴し、光と共に点滅し、ブルブルと震える。
カスミが涼風を吹いている!
ハヤテには、それがすぐに分かった。
「千恵さん!、ツムジ!」
千恵とツムジは直ぐに頷く。
「予想通りとも言えるが、やはりタツマキとカスミの正体はわかってしまったようだ、私たちもすぐ、渡船場に向かおう!」
「はい!」
と千恵。
「がってん承知!」
とツムジ。
「紅葉ちゃんは?」
と聞くハヤテに、紅葉は
「一緒に行きます。早くお父さんに会いたい!」
とキッパリと答えた。
こうしてハヤテ、千恵、ツムジ、紅葉の四人は渡船場に急いで向かうことになった。