※この作品はR-18です。

変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来第2編・江戸での血車党との対決   作:shpfive03

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毒蛾くノ一楓と四人の血車党くノ一、江戸に現れる

江戸の夜。

 

早川から鳩により届いたタツマキからの文書を受け、あるいは早川同様に、江戸にも血車党の一味が密かに潜入しているのではとの可能性から、公儀隠密の一人、伊賀忍者天馬は黒装束で、密かに、音もなく、江戸市中の見回りを行っていた。

 

その天馬の背後に、ふいに怪しい気配。

 

「何者だ!」

 

だが、そこにいたのは天馬にとっても顔見知りの、だが、本来はそこにいないはずの人物であった。

 

天馬はその人物に声をかける。

 

「楓ではないか、なぜ北九州の有馬にいるはずのお主が、今、ここにいるのだ?」

 

その天馬に対して、楓と呼ばれた、総髪を後ろでまとめた、着物姿の美しい少女はニッコリと微笑む。

 

その美しい少女の妖艶な微笑みに、まだ年若の天馬は、思わずドキッとしてしまった。

 

伊賀くノ一である『はず』の楓は答える。

 

「天馬さん、実は私、江戸に直接伝える必要のある、急な知らせをしなければならなくなり、有馬の件は又八さんたち三人に任せ、本当に急遽、江戸に戻ってきたんです。なので、こんなに夜遅くになってしまいました」

 

本当は楓の言う『又八さんたち三人』は、すでにこの世にはいないのだが、勿論、楓はそんなことは言わない。

 

まだ江戸に、その報は届いていない。

 

楓はそれを確信しており、そして、それは事実でもあったのだ。

 

天馬は驚く。

 

「それほどまでに急な知らせとは‥‥」

 

さすがに北九州から伝書鳩を通じて連絡をとることは出来ず、江戸から九州方面への連絡は、当時は江戸幕府の九州における天領を統括する西国筋郡代、もしくは長崎奉行より、大阪を経由し、文書を通じて行う以上の方法はなかった。

 

楓が公儀隠密として江戸への報告を行っていた当時も、いちいち西国筋郡代まで報告を行った上で、そちらから飛脚を日数をかけて走らせていたのである。

 

そして、今の楓は内心では

 

なんてバカバカしいことをしていたんだろう!

 

と思っている。

 

今の血車党に入った自分なら、北九州から江戸までだって、それこそ一瞬で飛んでいけるのだ。

 

最初に江戸から選抜されて、又八たち三人と共に有馬に向かったとき、一体、どれだけの日数と時間を費やしたのかをあらためて思う。

 

骸骨丸様はおっしゃっていた‥‥

 

「楓、もし血車党の天下になった時、民衆の暮らしが、どんなに便利になり、皆が幸せになるのか考えてみろ」

 

公儀隠密として、単純に『血車党は悪』と思い込んでいた自分に、骸骨丸様は、いろんなことを教えてくれた‥‥

 

彼女は、今では骸骨丸のことを心から尊敬していたのだ。

 

が、楓は、そんな今の自分の心境を、目の前にいる天馬に話す気など、さらさらない。

 

今の自分にとって、血車党に敵対する伊賀忍者は敵てしかないのだ。

 

まずは目の前の天馬である。

 

「ええ、そうです」

 

楓は大胆不敵にも、天馬に対して、そう答える。

 

「それにしても、いくら手練れとはいえ、女子(おなご)である、そなたが一人で戻ってくるとは、あまりにも不自然‥‥」

 

納得できない天馬は、目の前にいる楓に対して疑問を口にする。

 

「フフッ、一人じゃありませんよ」

 

楓は笑うと、指でパチリと合図をする。

 

たちまち天馬のまわりを四人のくノ一が取り囲んだ。

 

天馬は何ごとかを叫ぼうとする。

 

だが、次の瞬間には彼はこの世の人ではなくなっていた。

 

くだされた四人のくノ一の剣により、彼は斬られ、絶命したのだ。

 

楓は、少女とは思えない威厳のある口調で

 

「菖浦(あやめ)、牡丹、菊、桐、ご苦労!」

 

と、四人のくノ一を労った。

 

今の自分にとっては、この四人こそが『大切な同志』なのである。

 

四人の中のリーダー格である菖浦が、代表して楓に尋ねる。

 

「毒蛾くノ一様、この者の死体はいかがなされますか?」

 

楓は凄絶な笑みを浮かべた。

 

「勿論、再利用させてもらうのさ。そのために殺したのだから」

 

その言葉を聞いた四人のくノ一は一様に頷く。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ここは江戸の四谷にある『公儀隠密を統括する中枢』にあたる『伊賀組屋敷』である。

 

『権現様』と呼ばれる江戸幕府の始祖、徳川家康の任命により、長い間、公儀隠密としての伊賀忍者たちを統括してきた『鬼半蔵』以来の服部家は、この時期には旗本・服部家の改易などによって影響力を落としており、今の伊賀忍者たちは、実力者としての上忍三家(服部、百地、藤林)の合議体制に服することとなっていた。

 

なお、変身忍者嵐ことハヤテと行動を共にする伊賀忍者、名張のタツマキは公的には百地姓であり、上忍三家のうち、百地家の分家筋にあたっている。

 

が、現場における最長老であり、御公儀、なかんづく現在の征夷大将軍である徳川秀忠の直接的な信頼もあるタツマキは、この上忍三家による合議体制に対しても一定の発言力を持っていた。

 

なお、タツマキ自身の立場は(下忍に対する指揮権を持つ)中忍であり、カスミとツムジは伊賀忍者の序列の上ではタツマキに従う『下忍』ということになる。

 

それと別に公儀直参の立場も持つカスミは、実は微妙な立ち位置であり、以前から彼女と同年代の伊賀くノ一の中には

 

同じ下忍のはずなのに‥‥

 

のような目で見るものもいた。

 

それはともかくとして

 

江戸における公儀隠密は形としては、御公儀からの下知を受け、この『上忍三家の合議』が指示を行うことになっていた。

 

現在、この伊賀組屋敷には上忍として、百地家の当主である百地源太夫、服部家当主の服部正龍、藤林家の当主長門の三人のほか、江戸勤めの有力な中忍たち六名が集まり、現在見回り中の天馬の報告を待つことになっていた。

 

百地一族を代表する立場である源太夫から

 

「それにしてもタツマキたちの江戸到着が遅れている。血車党に対する本格的な対策をたてるにも、まず、その報告がなくては」

 

との発言が出ると、それに対抗するかのように、今度は藤林長門の方から

 

「いや、タツマキ殿云々に関係なく、江戸の治安を守るのは我らのつとめ。そのために交代で江戸市中の見回りも行い、今は天馬の報告を待っているのではないのか?」

 

との意見が出る。

 

ここで、元々は祖父の『鬼半蔵』以来、伊賀忍者を統括する立場だった服部家の当主である正龍の方から

 

「タツマキ殿から、現在、我が伊賀組の客分となっているハヤテ殿に加えて、新たな客分として『血車党からの抜け忍』を一名受け入れたいとの報告がある。我々も異端の忍軍血車党についての情報は必要。最終的には上様のご判断を仰ぐにしても、我々としては、やはり、その受け入れも含めて考えたいところ」

 

との発言が出る。

 

『血車党の抜け忍』というのは、言うまでもなく千恵のことである。

 

そうした合議が進められているうちに

 

「皆様、天馬、今、戻りました」

 

との声。

 

「ご苦労であった、入れ!」

 

この場では一番の年長者である藤林長門が返事をする。

 

そして戸を開け、天馬が入ってきた。

 

が、次の瞬間、さすがに、いずれも経験を積んだ忍者の棟梁たち、天馬の異変に、直ぐに気づいた。

 

入ってきた天馬の瞳は虚ろであり、明らかに何者かに操られている。

 

「天馬、どうしたのだ!」

 

百地源太夫が叫ぶ。

 

虚ろな瞳の天馬は言った。

 

「伊賀忍者たち、よく聞くがいい!」

 

その天馬の言葉に、この場の皆が騒然となる。

 

「伊賀忍者たちって、天馬、お前も伊賀忍者だろう!」

 

中忍の一人が叫ぶ。

 

虚ろな瞳の天馬は続ける。

 

「血車党は、お前たち伊賀忍に挑戦する!、心して待つがよい」

 

次の瞬間には、さすがに熟練の忍びたち。

 

「皆、伏せろ!」

 

一斉に皆が待避する。

 

次の瞬間には天馬は倒れ、自爆した。

 

伊賀組屋敷の皆が総動員で、あわてて鎮火に追われる。

 

明らかな血車党による伊賀組に対する挑戦状である。

 

大変なことになったぞ‥‥

 

その意識が、この場の皆が共有していた。

 

いずれにしても

 

タツマキ親子、客分のハヤテこと変身忍者嵐、そして、まだ見ぬ新しい協力者と思われる『血車党の抜け忍』

 

その一日も早い江戸到着ということについては

 

鎮火に追われる伊賀組屋敷の皆の考えることでもあった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

夜の江戸市中を騒がせた伊賀組屋敷を突然襲った火災もようやく鎮火し、一時は大勢集まった野次馬たちも徐々に引き上げていく。

 

その野次馬の中には、当然のように楓率いる血車党のくノ一、菖浦(あやめ)、牡丹、菊、桐の四人も紛れ込んでおり、四人は『いかにも町娘』といわんばかりの姿をしていた。

 

なお、彼女たちを率いる立場である楓は、この場には姿を見せていない。

 

勿論、今はまだ、伊賀組屋敷の誰かに『北九州の有馬にいるはずの自分の顔』を見られたくないからである。

 

ここでは牡丹が口を開く。

 

「伊賀忍ども、慌てふためている様が小気味良いこと」

 

彼女は小声でそう言うと笑った。

 

「しぃっ!、牡丹」

 

と菊が、その可愛らしい唇に人差し指をたてる。

 

「誰が聞いているかわからないわよ、一応、相手は伊賀忍者」

 

その菊に対して、今度は桐が

 

「でも、あの様子じゃ伊賀忍も大したことないな、と思っちゃう」

 

と、一応は小声ながら、あっけらかんと言った。

 

「まあ、私たちのこの会話は、普通の人間には聞こえないはず。毒蛾くノ一様が結界を張ってくださっていますからね。だからと言って油断は禁物」

 

と、四人のまとめ役である菖浦が、他の三人に釘を指す。

 

「骸骨丸様、毒蛾くノ一様のお話では、伊賀忍者にも特殊能力を持つ手練れがおり、『変身忍者』などと自称する、あの二人の裏切者には及ばないとしても、決して侮れないもの達がいるのは確かなこと」

 

菊が、その菖浦の発言を受け

 

「その伊賀忍の手練れを、我が血車党に引き込む、それが今回の目的の一つでしたね」

 

そう言った菊の本音は

 

伊賀忍者など引き入れるくらいなら、私を化身忍者にしてほしい

 

である。

 

四人の中では彼女は一番上昇志向が高く、いつかは自分も化身忍者となり、中忍として『下忍たち』に対する指揮権を持ちたいと思っていた。

 

が、勿論、今はそんなことは言わない。

 

ここにいる四人は『血車党の下忍』という意味でなら対等な立場である。

 

「そう」

 

菖浦が頷く。

 

「勿論、それだけじゃない。が、まずは伊賀の『上忍三家』のお手並み拝見といきましょう。毒蛾くノ一様のお話では、あの『上忍三家』というのは、実は、かなり仲が悪いとのこと。徳川の先代家康の時に引き立てられていた服部は、今の秀忠の代になってから没落し、代わりに若い頃から秀忠と人間関係のあったタツマキのいる百地が今は引き立てられている様子、で、服部はそれを面白くないと思っているらしい」

 

その菖浦の言葉を聞き、思わず牡丹が

 

「うわっ、ドロドロした人間関係ありそう!」

 

と嘲笑する。

 

が、菖浦はそれを無視した。

 

「毒蛾くノ一様は要注意は藤林だとおっしゃっていたけど‥‥」

 

そのような話をしているうちに四人は人気のない川縁の小屋に着いた。

 

そして菖浦がその小屋の戸を開ける。

 

「毒蛾くノ一様、牡丹、菊、桐、菖浦の四名、ただいま戻りました」

 

その小屋の中には、血のように真っ赤な長髪を持ち、青い目の複眼を持つ毒蛾の姿をした化身忍者、『毒蛾くノ一』が四人の帰りを待っていた。」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』は四人を見て声をあげる。

 

「イーッ!、ヨーウゥゥー」

 

彼女は四人のまわりに結界を張るため、この姿でここに籠っていたのである。

 

そして

 

「お帰りなさい、菖浦、牡丹、菊、桐!」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』は、まず四人を労った。

 

そして

 

「大した忍術も使えないくせに、現場にも出ずにふんぞり返っている上忍三人の顔が見てみたかったような気もするけど、どんな感じ?」

 

 

今の自分は空を飛ぶことも出来るし、瞬時に北九州から江戸まで移動することも出来る。

 

あいつらに何ほどのことが出来るんだ‥‥

 

 

彼女の内心の思いだった。、

 

これには牡丹が答える。

 

「ええ、毒蛾くノ一様、連中、本当に慌てふためていましたよ!」

 

「そう」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』は笑ったつもりだが、生憎と彼女の表情から、それをうかがい知ることは出来ない。

 

 

「まだ『伊賀忍軍解体作戦』は、はじまったばかり。お楽しみはこれからよ!」

 

 

そう言って彼女は

 

「ハハハハハハ!」

 

と、哄笑する。

 

彼女は自分を産み、育てたはずの伊賀を、内心ではどれだけ憎んでいたのか

 

それをあらためて思った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

藤林長門は伊賀組屋敷の鎮火が一段落したところで、他の上忍である百地源太夫、服部正龍、それに中忍六名などと別れ、私宅に戻った。

 

そこには既に、長門自らが伊賀の国にある藤林の里から呼び寄せたくノ一がおり、長門の帰りを待っていた。

 

「来たか、螢火」

 

長門は、そのくノ一に声をかける。

 

「はっ!、蛇使いの螢火、参上しました」

 

螢火と呼ばれたくノ一は、目の前の長門に対して、恭しく一礼する。

 

「この度の血車党なる忍軍の反乱、狼藉により、御公儀の権威も傷つけられ、我が伊賀組の面子も潰されておる。挙げ句、上様も『百地の一味となった血車党の抜け忍』に信頼をおき、我ら伊賀忍の実力に疑問もいだかれていられる様子」

 

いかにも悔しそうに藤林長門は言った。

 

百地と並び、古くから伊賀の上忍の家柄である藤林。

 

たまたま三河に流れ落ちたことで徳川家の信頼を得た服部など、本来は藤林と同格など片腹痛い。

 

本来の伊賀忍精鋭を指揮するのは、この藤林

 

その力を見せてくれるわ!

 

「早速、藤林の里の仲間にも声をかける」 

 

そして藤林長門は、目の前の螢火に言った。

 

「頼むぞ、螢火。今こそ我ら伊賀忍の本当の力を見せるとき。まずは江戸市中に潜む血車党の一味をあぶり出せ!」

 

「承知!」

 

螢火は短く、そう答えると

 

次の瞬間には、そこから姿を消した。

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