「これ、性研ゼミでヤったところだ!」 恋の駆け引きから挿入まで、ドスケベ教育講座【性研ゼミ】で完全習得! キミ専用のオ○ホ先生と一緒に、最高の学校性活を手に入れよう! 作:ダザリアン
「……よしっ」
玄関先の全身鏡で最終チェック。
軽く消臭スプレーを掛け、準備は整った。
肌の調子も悪くない。むしろ目覚ましが鳴る前にスッキリ起きられた。メグル先生との朝ランが無い分、ちょっと違和感がある程度。
忘れ物も心配無し。
ただ、
(結局、確認テストで一回も使っていないんだよな……着け方もちょっと教えて貰っただけだし)
一応は4月号の付録らしい。
起きたら枕元に置いてあって、持って行けと言わんばかり。機会があるとは思えないが。
そりゃまぁ究極の理想を言えば、山田さんの家へお邪魔して、そのまま……でも流石に高望みだ。付き合って即なんて彼女も引いちゃうだろうし。
はあ、やっちまった。余計な考え事をしたせいで、せっかく収まっていた緊張が……ん?
「もう出掛けるの? 早いね」
「みっ、美桜?」
階段からヌルっと降りて来た。取り出す寸前だったので、慌てて鞄にしまい平静を装う。
昨日も母さんにお小遣いを懇願する姿を目撃されてしまったし、きっと茶化しに来たに違いない。
「……ホントに行くんだね。デート」
「お、おう。まぁな」
「ふぅ~ん……まぁ、頑張ってね」
コーディネートをぐるりと一瞥し、ポツリ。
冷やかす素振りも無く踵を返してしまった。
あれ? それだけ? いつもの軽口は?
と思ったら、また戻って来た。
部屋へ何か取りに行ったらしい。
「はい。貸してあげる」
綺麗に折り畳まれた三枚の千円札。ぷいっと視線を逸らしつつ、半ば無理やり押し付けて来る。
「絶対に返してね。利子つけて。言っとくけど応援とかじゃないから。女の子にジュースの一杯も奢れないとか、マジでダサいし……それだけっ!」
バタバタと大きな足音を立て、慌ただしく二階へと駆け上がる。えっ、じゃあまさか、この為にわざわざ、日曜の早い時間に起きたのか?
生意気な上に、俺にだけ反抗期の、あの妹が?
(……でも、そう言えばアイツ)
赤シートで本音を覗いた時、俺のことを……。
ここ最近の努力を、美桜なりに認めてくれている、ってことで良いのかな。良いんだよな?
なら、有り難く受け取っておくとするか。
「ありがとな、美桜。行って来ます!」
返事は無かったが、きっと聞こえた筈だ。
帰ったら改めてお礼を言わなきゃ。
思い掛けないエールに、脚も心も軽くなる。
出掛けよう。一刻も早く彼女に逢いたい。この弾み切った気持ち、すべてぶつけなきゃ。
待ち合わせは山田さん宅の玄関先。
昂る鼓動をそっと掌で抑え、暫し待機。
最寄り駅での合流を予定していたが、エミリー先生の助言を受け変更させて貰った。
俺と山田さんの最寄り駅。つまり、多くのクラスメイトにとってもそれは同じ。知り合いに目撃されると、出鼻を挫かれてしまう可能性がある。
それこそ、先日の件を根に持った水嶋。
駅で待ち伏せして、しつこく着いて来たりなど。あらゆる事態を想定した結果、最初から一緒に行動するのがベストという結論へ至った。
(あっ……来るぞ!)
とは言え、今は余計なお世話。
楽しいことを考えよう。例えば今日の服装。
他でもない俺とデートするため、あの山田さんが選んでくれたファッション……非常に気になる。
「――ごめん望月くんっ、ちょっと待たせちゃった……! 映画の時間、まだ間に合いそうっ!?」
少し焦った声色で駆け寄る。
胸元がいつもに増して弾みまくり。
クッ。違う意味で出鼻を挫かれた。
「あぁっ、大丈夫。俺も来たばっかだから……ワンピース姿、初めて見たよ。似合ってるね!」
「そっ、そう? ありがとっ……」
頬をほんのり染め、山田さんは頷く。
淡い色合いのワンピース。肩に引っ掛けた薄手のカーディガンはシンプルだが清楚さ満点。
真新しい白のパンプスもお洒落で可愛い。大きめの鞄には何が入っているのだろう。
にしても、短い丈。
普段の制服より太ももがハッキリ見えて心臓に悪い。そもそもの生地が薄いので、胸元も大胆に強調されている……ちょっと股間に来るコーデかも。
(おっ、落ち着け。教わった通りに……!)
全体を把握したら、主観を交えて褒める。そこから話題を広げるのだ。メグル先生とチカ先生にコンビで叩き込まれた、お喋りの応用術。
予習しておいて本当に良かった。少しでも油断したら『エロ過ぎてどこを見たらいいか分からない』なんて、ポロっと零れちゃいそう。
「山田さん背が高いしスタイルも良いから、こういう格好だとシルエットが綺麗に映って、凄く良いなって。前から持ってた私服なの?」
「ううん。昨日お母さんと一緒に買いに行って……ちょっと大胆過ぎかなって思ったけど、絶対にこれが良いって……本当に変じゃない?」
「すっごく可愛いよ。見惚れちゃった」
「~~~~っ……!」
よしっ、言い切った。
たぶん顔は真っ赤だけど、目を逸らさず伝えてみせたぞ。反対に山田さんは、膝まで真っ赤に染め俯いてしまう……先制パンチが決まった!
「じゃあ、行こっか。チケットはもう予約したから、後でQRコード送るね。忘れ物とか無い?」
「んっ……たぶん、大丈夫」
「オッケー。楽しみだね。映画とか、色々」
「ふぇっ……!?」
わざと含みを持たせた言い方に、山田さんはますます激しく動揺する。慌てて後を着いて来る姿は、なんだか小動物みたいで可愛らしかった。
そう、今はこれくらい強気で良い。
『少し日が空いたとは言え、先の一件を意識せずにはいられない筈でしょう。最初のアプローチにこそ力を入れ、トモヤ様が主導権を奪うのです』
『Good luck! 例のライバルを思い出す暇も無いくらい、積極的にリードするのよ。余裕たっぷりのエスコートで、最後まで圧倒しなさい!』
恐らく彼女にはまだ、今回のデートに『水嶋から助けてくれたお礼』という認識が多少なりとも残っている。簡単には覆らないだろう。
ならば、その感情も利用してみせる。
難しいことは一つも無い。ずっと抱いて来た大切な想いを、ただ真っすぐ伝えるんだ。
「あっ、あの……! 望月くん!」
そして、油断だけはしないように。
先生たちの指導とアドバイスを持ってしても、デートに予想外のハプニングは付き物。何もかもテキスト通りには運ばない……今だって。
「あたしも……たっ、楽しみにしてた! 望月くんも、すっ、すっごく、似合ってる……っ!」
「……ありがとう。カッコいいかな?」
視線がちっとも重ならない。
返事も曖昧。会話は一旦そこで止まった。
でもまぁ、良いや。
おかげで喉が渇かずに済む。
日曜の午前とあって、目的地までの電車内は酷く混み合っていた。しかしここでも、性研ゼミで学んだ知識と先生たちの協力が光る。
「良かった、なんとか座れたね」
「望月くんは?」
「俺は良いよ。最近鍛えてるからさ。ほらっ」
「……んふふっ。もう、転ばないでね?」
普段なら乗らない最後尾の車両。
前方は立つスペースすら無さそうだったが、こちらは驚くほど空いていて簡単に席を見つけられた。おかげで痴漢に狙われる心配も無い。
『二つ前の駅で快速が止まるんで、階段から遠いこの車両なら座れる可能性が高いっス。んでもって、トモヤ氏が前に立てばパンチラも阻止!』
れんれんが導き出した最適な位置取り。彼女の顔の前に股間が来てしまうのと、ユメ先生が『デート』科の仕事を奪われ拗ねていた以外は完璧。
観に行く映画の話題をはじめ、会話もなるべく途切れないように。緊張気味だった山田さんも、少しずつだが笑顔が増えて来た。順調だ。
目的地のターミナル駅へ到着。
長いエスカレーターがあり、ここでも後ろに立ちスカートを死守。しかし服装もさることながら、やはり美少女は人混みでも目立つ。
「ごめん。ちょっと近かったかも」
「ううんっ……平気よ、全然っ」
すれ違いざまに大学生くらいの男二人が、彼女を見上げるよう覗いて来た。慌てて段を一つ登る……長髪からシャンプーの良い匂いが。
最上階にある映画館のフロアへ。厳しい戦いだった。シアターに入るまで気が抜けない。
さて、ここでも一つ作戦を。
『飲み物は別々でも、ポップコーンは大きめのサイズを一つ買って、シェアして食べるのが鉄則! 手と手が触れ合う大チャンスだよ!』
『座席は出口から一番近い場所にしましょう。お手洗いへ行きやすいですし、他のお客さんからも見つかりにくい筈……つまり、チカ!』
『だめだめっ!? イタズラは我慢だよ!』
仲良し先生コンビのアドバイスは覿面だった。
まだ公開開始から日が浅く、シアター内は大変な混み具合。なのに、隣の席が空いている。
やがて照明が少し落ち、本編前の長い予告が始まった。既にだいぶ暗い。カップルはイチャつき放題だろうな。俺たちは違うけど。
「っ……ポップコーン、食べても良い?」
「勿論。俺の分も残してね」
「そんなに食べないわよっ……ばか」
ここに来て口数が減り始める。その代わり、態度はかなり柔らかくなって来ていた。昔から知っている、少し気の強い素面の彼女だ。
騒がしい空間で、暫し無言の二人。
まるで教室での俺たちのよう。真剣な面持ちで授業を受ける彼女を、いつも横目に眺めていたな。
どんなことを考えているのか、気になって仕方なかった。今はれんれん秘伝の赤シートで、その気になれば本音を覗き見れるけど……。
(……本当だ。手、当たりやすいな)
席の間に置いたポップコーンが役立つ。
お互い腕を動かそうとしない。
もう片方の手を、そっとポケットから外した。
赤シート、必要無かったかも。