「これ、性研ゼミでヤったところだ!」 恋の駆け引きから挿入まで、ドスケベ教育講座【性研ゼミ】で完全習得! キミ専用のオ○ホ先生と一緒に、最高の学校性活を手に入れよう! 作:ダザリアン
電車に乗ってすぐ、拓海くんから連絡。
水嶋たちはご学友らによって完全に制圧され、他に仲間はいないと確認できたらしい。
間もなく警察も到着。俺たちを恫喝する様子が撮影されていたこともあり、皆さんが変に疑われることも無かったそうだ。迷惑にならず一安心。
ただ、傷害事件の一歩手前まで至ってしまったので……後日警察から事情を聞かれるかも、とのこと。ゴールデンウィーク中に片付けば良いが。
「奏音。大丈夫?」
「……っ」
車内が空いていたのは幸い。
しかし、声を掛けれど返事は無く。
意図せず繋ぎっぱなしの手から伝わるのは、収まらない震えと恐怖ばかり。この様子では駅から自宅まで歩くのも辛いかもしれない。
「タクシー呼ぶね。お金は心配しないで……俺もビビっちゃってさ。脚が震えて大変なんだ」
「……ありがと」
そこで何を伝えれば良いのだろう。
どう謝れば、この苦しみを癒せるのか。
テキストには載っていなかった。
早く答えを見つけなきゃ。
初めての乗車だったが、これもユメ先生の『デート』科に載っていた解説コーナーのおかげで、やり取りもスムーズに進めることができた。元の予算では足りなかったので、美桜にも改めて感謝だ。
厚い仕切りで運転席には会話が漏れないようになっている。プライベートが確保された環境だから、彼女も落ち着いて喋りやすい筈。
なんて、思ってるのは俺だけか。
「絡んで来るかもって、予想はしていたんだ。だったら最初から、出掛けるべきじゃなかった」
奏音は俯いたまま、ジッと膝の辺りを見つめている。でも考えていることは同じだろう。そもそもデートを強行したのが間違いだった。
「俺も焦ってたんだ。先にデートして、早く想いを伝えなきゃって、独りよがりで……結局、奏音に怖い思いをさせて……本当にごめん」
己の不甲斐なさ、そして浅はかさに呆れるばかり。性研ゼミであれだけ学んで来たのに、俺の根っこは何一つ変わっちゃいなかった。
男女の関係は、一方的な執着だけじゃ成立しない。教わるまでもない単純なことなのに。
ちっとも理解できていなかったのだ……。
「……だめ」
「えっ?」
「手……離さないで」
終わりの見えない自己嫌悪。
改めて深く首を垂れた、その時。
俯いていた奏音がゆっくりと顔を上げる。瞳はまだ微かに潤んでいたが、握られた右手には一層強い力が籠められる。離そうにも離せない。
「さっきのことは、こわかったけど……悪いのはアイツらだもん。望月くんが謝っちゃ、だめっ」
幼子のように拙い声色。
一方、絞り出した震え交じりの言葉には、揺るぎない信念のようなものが透けて見えるようだった。
「だって、危ないことが起きても大丈夫なように、ちゃんと準備してくれたんだから。ずっと冷静でいてくれて、すっごく頼もしかった」
「……そう、かな」
「そうよっ。ちゃんと大人に相談していたの、とっても偉いと思う。独りよがりなんかじゃないわ……あたしのために、考えてくれたんでしょ?」
罪悪感に染まった左胸へ、優しい言葉がじんわり染み込んでいく。泥臭くて見栄えしない方法だったけど、彼女は真っすぐに称えてくれた。
嗚呼、駄目だ。また泣きそう。
優し過ぎる。その優しさに甘えて、俺は何度も勘違いして来た。でも、それが勘違いじゃなかったと気付いて……また泣きそうになる。
「あの状況で、あんなに堂々としていられるなんて……簡単じゃないわ。勇気が無いとできない。とっても立派で、誇り高い行動だったと思う」
「言い過ぎだって……うん、ありがと」
「ホント望月くん、進級してから急に大人っぽくなり過ぎ……でも、カッコよかった。あたしのために、いっぱい勉強したおかげ?」
「そうだよ。奏音のためだ」
「……合格っ」
ほんの少しだけ、奏音はくすぐったそうに小さく微笑む。ずっと張り詰めていた緊張の糸と、残っていた恐怖もようやく解けたようだ。
悪い予感こそ当たってしまったが……それも含めて、いつか思い出になれば良いな。
「こないだは気付かなかったけど……ごめん適当なこと言っちゃってた。腕とか脚とか、結構ガッチリして来てる。昔とは別人ね」
「全然、まだまだだよ」
「そうねっ。もっと身長も伸ばさなきゃ……でも、見た目だけよ。中身は変わらないでね……優しくて、すぐ人を甘やかすところとか」
重苦しい空気は一掃され、穏やかな時間が流れ始める。胸焼けするくらいだ。隣から伝わる汗交じりの香りは、不思議なまでに甘い。
僅かにぶつかる肩と肩。
そして、ピタリと収まった。
「デートしない方が良かったなんて……言わないで。あたし、ちゃんと楽しかったから。今日のこと、やっぱり無しなんて、いやっ」
「……奏音」
「だって、怖かったけど……でもっ、同じくらい嬉しかったから。守ってくれて、カッコいいなって思ったことも……絶対に、忘れたくない」
座席の上で絡んだ指先を、彼女は痛いほど結び直す。簡単には外れそうにない……そして昂る感情のまま、俺を真っすぐ見上げる。
「公園で……何か言い掛けてたでしょ?」
「う、うん。途中だったね」
「……続き、聞きたいっ」
またも微かに震える声。
同じくらい、喜びに潤んだ瞳。
答えは勿論決まっていた。
「あの~お客さん……着きましたよ?」
ちょっ。タイミング。
精算を済ませ車を降りると、すっかり夕暮れ時だった。家まで送り届けるミッションは果たしたが、だからと有耶無耶にするつもりはない。
これ以上、彼女から言わせるものか。
「奏音、さっきの話」
「家、上がって。夜まで誰もいないから」
「分かった……えっ、あ、うん?」
すぐ伝えるつもりだったが、先手を取られる。
ばかりか、室内へ案内されてしまった。
お邪魔したのは初めてだ。長年クラスメイトと言えど、やはり男女間では遊びに行く機会も……そもそも先日まで場所すら知らなかったし。
「あの、そこまで長居するつもりは」
「二階に上がって。あたしの部屋」
「ちょっ、ま、待って奏音!」
先を行く手を思わず掴んでしまった。奏音は少し肩を震わせるが、振り返ろうとはしない。
あんな目に遭った直後で、男の俺が部屋に入って良いものか不安だったのだ。
たった一瞬でも、もう怖い思いはさせたくない。
「ここで伝えちゃ駄目かな? そのっ、俺の事情にはなっちゃうんだけどさ。部屋まで行っちゃうと、変に緊張し過ぎるって言うか……」
「……だめっ」
あらゆる要素を詰め込もうとして、上手く言葉を選べない。すると返って来たのは、こちらも緊張と縁の深そうな、少し意地っ張りな声色。
奏音はようやく振り向いた。
唇を尖らせ、居心地悪そうにムズムズ。
「準備……したいから」
「な、なんの?」
「色々。今日いっぱい泣いちゃったし、目元とか腫れてたら嫌だから……顔も洗いたいの。だから部屋で待ってて。ねえ、お願いっ」
苦し紛れに視線をプイっと逸らし、階段の手摺か壁か、どこともつかない箇所を見つめている。
そして、絞り出したように。
「こっ……ここまで来たんだから、もうちょっと雰囲気とか、そういうの気にしなさいよ……!? 途中で宅配なんて来たら、台無しじゃない!」
雰囲気……台無し?
「お母さんだって早めに帰って来るかもしれないし……とにかくっ、もう邪魔されなくないの。だから、あたしの部屋じゃないと、だめっ!」
「邪魔って、何をさ?」
直後、これは良くないと気付く。
考えれば分かることだったからだ。
初めて訪れた彼女の自宅。そして二人の間に漂う、駆け引きとも呼び難い雰囲気。
あらゆる要素に判断力を削がれた。
油断し過ぎた。見てくれや振る舞いがスマートに見えるだけで、奏音は割と緊張しいの泣き虫だし、思ったことはすぐ口に出てしまう性格。
この
「だ、だからっ……! 告白は、二人きりで絶対に邪魔されない、落ち着ける場所が良いのっ!? ちゃんと言うから、部屋で待ってて!!」
……………………。
「……ぁ」
凄まじい自爆を見た。
彼女の力無い呟きを最後に、玄関は痛いほどの静寂に包まれる。ハッと両手で口元を覆う奏音。みるみるうちに頬が深紅へ染まっていく。
「ちちちちっ、ちがっ……!? 今の、なし、無しッッ!? だめっ、だめなのぉ! 忘れてぇ!?」
ようやく声を取り戻したかと思えば、パニック状態に陥った奏音は階段前でジタバタと足踏み。
両手を振り回し、徐々に後退して行く。
ついに脚を躓かせ、そのまま階段にペタッと座り込んでしまう。短いスカートの丈から隠れ見える太ももまで、真っ赤に染まっていた。
「ふっ……あははっ!」
「わ、笑わないでよぉっ!?」
「ごめんごめんっ! なんかもう、急に力が抜けちゃって……いやでも、忘れるのは無理だよ」
なんとなく分かっていた、気付いていたとしても。いざ突き付けられると我慢できなかった。
ずっと同じだったんだ、俺たち。
お互い背伸びし合ったまま気付かないで、今日まで辿り着いて……不格好だけど、一番ちょうど良いところに収まった。そんな気がしている。
「顔、見せて。奏音」
「うぅっ……ヤだぁ……!」
「えぇ。なんでさ?」
「だって今、すっごいブスだもんっ……!」
すぐ傍まで近付き、必死に顔を隠そうとする彼女の掌を少し退ける。確かにちょっと情けない顔をしていた。だけど、それが良いんだ。
「大丈夫だって。変な顔はお互い様だから……それにさ。告白する時くらい、目を見て言わせてよ!」
「……ぁ。あっ、え、えっ!?」
「奏音だって悪いんだからね。俺から言おうと思ってたのに、あんなの予想できないって」
笑顔が溢れて止められない。バカにしているでしょ、なんて意地を張られる前に、早いとこ伝えよう。肩を優しく掴み、正面から見据える。
「山田奏音さん。貴方のことが、大好きです」
「……むぅ!」
「小学生の頃から、ずっと好きです。俺と付き合っ……ねえちょっと、目を逸らすのは反則だろ!」
「だって、だってぇぇ……っ!」
なんとも締まらない、グダグダな告白。
昨日チカ先生と予習した、ロマンチックな台詞の数々も、まるで使う余地が無かった。
初デートにハプニングは付き物とは言え、こうも思い通りに行かないとは……きっと先生たちも、テキストの中で泣いているに違いないな。
「それで……返事とか貰える?」
「……あたしも、好きっ!! 好きだからっ、お願い見ないでぇ! 今ほんとにブスだからぁぁ……!」
「分かったって。ほらっ、顔洗っておいで」
「ううぅぅ……望月くんのばかぁぁ……!!」
ぐしゃぐしゃの泣き顔を幾度と拭ったり、頷いたり、ポロっと悪態を付いたり。どれも愛らしくて、いつまで経っても階段から離れられない。
流石に失礼だろうか。
これまで見たどんな笑顔よりも、今の奏音が一番可愛い、なんて言ったら……やっぱり怒るかな?