※この作品はR-18です。

片想い中の幼馴染と同棲する事になった   作:稲月

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10話 不平等

 

 食卓の上には、湯気を立てるクリームシチューと、妙な沈黙だけが並んでいた。

 碧依の大好物のはずなのに、彼女は黙々とスプーンを口へ運ぶばかりで、その表情が綻ぶことはない。

 視線は一度として交わらず、彼女の瞳はどこか遠くを彷徨っていた。頬にはまだ淡い朱が残り、何か言いたげに唇だけがかすかに動いては閉じる。

 

 一体、何だというのだ。

 俺が風呂から上がって以来、碧依はずっとこんな様子だった。

 さっき俺を出迎えた時の様子が嘘みたいな態度だ。

 

「…………」

「…………」

 

 食器の触れ合う小さな音と、互いの咀嚼だけが静かな部屋に響いていた。

 どうにも、この気まずさだけは誤魔化しようが無い。

 先に耐えきれなくなったのは、俺の方だった。

 

「……碧依」

「……ん」

 

 返事はある。でもそれだけだ。

 彼女の視線は未だ俺に向かず、ただひたすらにシチューを口に運び続ける。

 そんな彼女の様子を俺は、見たことがあるようで、無い。

 

「シチュー、口に合わなかったか?」

「ううん、おいしいよ。普段よりコクが深いね」

「ああ、今日の部活でハンバーグを作ったんだけど、先輩が隠し味に味噌を入れててさ。コクが増して味が丸くなるらしい。シチューにも応用してみたんだ」

「へえ……奥が深いんだ」

 

 会話も普通に続く。

 碧依はもともと多くを喋る性格じゃない。言葉だけを拾えば、いつもと何ひとつ変わらなかった。

 でも、その表情や目線だけが、拭いきれない違和感を食卓に落としていた。

 

 言いようのない居心地の悪さを覚えながら食事を続けていると、ようやく碧依の方から静かに口を開いた。

 

「……どうして、今日はシチューなの」

「え? 気分じゃなかったか?」

「ううん、そうじゃなくて。……勇雄がシチューを作ってくれるのはいつも、良いことがあった日とか、特別な日とか……そういうのが多いから」

 

 一瞬だけ、言葉に詰まる。

 

「あ、ああ……今日は別に、理由は無いよ。隠し味を思いついたからってだけかな」

 

 嘘だ。確かに碧依の言う通り、クリームシチューは特別な時にしか作らない。

 先週だって、互いの入部を祝うつもりで鍋を火にかけたのだ。

 

 そして今日これを選んだのは、俺が碧依のオナニーを目撃できたからだ。

 この一週間、ずっとそれが見たかったから。作戦がうまく行った自分への褒章みたいな気分でこれを選んでしまった。

 当然、そんなことを碧依に言えるはずがない。

 

「……ふぅん」

「な、何だよ。理由が無いと作っちゃダメか? 好物だろ」

「ううん、作ってもらって文句なんか言わないよ。ただ、気になっただけ」

「おう、そうか……」

 

 会話はそこで途切れた。

 胸の内に小さな引っ掛かりだけを残したまま、食卓には再び静寂が満ちていく。俺たちは互いに口を開かぬまま、やがて食事を終えた。

 

「俺はもう風呂にも入ったし、片付けは俺がやるよ」

「え、でも…………うん、ありがと」

 

 碧依は静かに席を立つと、そのまま脱衣所へ向かって歩き出した。

 どうにも様子がおかしいままだ。風邪でも引いたのだろうかと、そんな考えまで頭をよぎる。

 

 その時だった。

 脱衣所の手前で足を止めた碧依が、ゆっくりと半身だけ振り返った。

  

「……勇雄はね。嘘を吐く時、右手でほっぺたを掻くんだよ」

「え?」

「シチューの理由は、教えてくれないんだね」

「え、あ、いや……」

 

 そこで初めて、碧依と俺の目が合った。

 耳朶まで真っ赤に染めたまま、ためらうように口を開いた。

 

「お風呂()、覗いちゃダメだよ?」

 

 それは明らかに、意趣返しだった。

 

 俺が風呂に入る時に碧依に言った冗談を、やり返しただけ……じゃない。

 その裏にはきっと、俺が彼女を覗いていたという事実も含められている。

 

「……へっ、え……お、おま、気付いて……!」

「…………っ!」

 

 たちまち真っ青になる俺と、対照的に真っ赤になる碧依。

 俺が言葉を詰まらせているうちに、彼女はさっさと風呂へ向かってしまった。

 

 ば、バレてるッ! なんでだ!? どこで気付かれた!?

 彼女の態度がおかしくなったのは俺が風呂に入っている間だ。きっとその時に何か証拠を掴まれたんだ。

 

(おっ落ち着けっ、慌てるな……!)

 

 碧依はずっと気付いていながら、食事が終わるまで言ってこなかった。

 それに、さっきのあの表情も、怒りや悲しみの色はどこにも無かったはず。

 だから……たぶん、嫌われてない。軽蔑されてもいない……と思いたい。

 

 そうだ。碧依が俺から離れていく事態には、きっとならない。

 彼女は顔から火が出そうなほど恥じらっていたけど、拒絶はしていなかった。

 

(え……てことは、何だ……?)

 

 俺が碧依のオナニーを覗いたことを知ってなお、あいつは俺を許したってことか?

 いや、碧依だって俺のオナニーを散々覗いていたんだから一方的に怒られるのはおかしいと思うが、え?

 ……覗きが、赦された?

 

 それってつまり、もうほぼ合意の上なんじゃ……。

 

 風呂場からシャワーの音が響き出した。思考が一旦落ち着きを取り戻す。

 だけど、次に取るべき行動はいつまで経っても正解が分からなかった。

 

 

 

 

 自室に逃げ込んだ俺がようやくリビングに戻る頃には、碧依も就寝準備を終えていた。

 俺が扉を開く瞬間に、ソファでくつろいでいた碧依の肩が跳ねたのを目撃する。

 

「…………」

 

 碧依はこちらを見ないまま手元のスマホにだけ目を向けている。

 でも、彼女が画面なんて見ておらず、ひたすら俺の気配にだけ集中しているのは明らかだった。

 

「……それ、上下が逆さまだぞ」

「!?」

 

 ——ゴンッ!

 

 慌てた碧依がスマホを取り落とし、ソファ下の床へと鈍い音を立てて落っこちた。

 そしてその音には、確かに聞き覚えがある。

 

 俺が初めてあのエロ漫画を読んで、碧依によく似たヒロインで自慰をした日。

 扉の外から聞こえたあの物音とおんなじだった。

 やっぱりあの時も、見ていたんだな。

 

 俺はソファの前まで歩み寄って、碧依のスマホを拾ってやる。

 挙動不審な碧依にそれを手渡すと、ゆっくりと彼女の隣へ座った。

 

「……碧依」

「ひゃいっ…………な、なに?」

「ごめん。……帰ってきた時。俺は、お前を覗いてた」

 

 ピク、と碧依の指先が跳ねる。俺が正直に謝ってくるとは思っていなかったのか、どこか驚いたような横顔だった。

 やや長い沈黙の後、碧依は首まで真っ赤に染まりながら、消え入りそうなほど小さい声で返してくる。

 

「その、怒っては、無いよ。ただほんとに、恥ずかしいだけで。そもそも勇雄の部屋だし……」

「今日だけじゃ無いんだ。先週も見た」

「え゙!? ……うぅ……消えたい……」

「悪いとは思ってたけど、やめられなかった。黙っててごめん」

「……幻滅してない?」

「? そんなのするわけ無いだろ。誰だってオナニーくらいする」

「っ! そ、そっか」

 

 俺の唐突な懺悔や直接的な単語に碧依は何度も肩を跳ねさせるが、それでも俺への怒りは無いらしい。

 とにかく恥ずかしそうに縮こまるリンゴ娘がそこに居た。

 

 そして碧依も、とても言いにくそうに罪を告白しようとする。

 

「……そ、その、私も実は……」

「だから俺も、碧依に見せてやるよ」

 

 俺がその懺悔を遮った。

 

「……え?」

 

 何を言おうとしていたのかは分かった上で、明かさせない。

 彼女の方が俺を何度も覗いていたという強力なカードは、まだ俺の手元に残しておきたい。

 

 ここまできてなお、俺の脳内では打算的な思考が広がっていた。

 主導権は、俺が握る。

 

「碧依だけ見られるのも不平等だろ。いいよ、俺がしてるところを見せても」

「え、え、いや! なんかその理屈は変な気がするっ」

「どこがだよ。このあいだ俺が見せるか聞いた時、碧依も言ってたろ? "今度にする"ってさ」

「……言った、けどっ! 私が言ってたのは違くて」

「じゃあ見なくて良いんだな? もう二度とこんな提案しないぞ」

 

 隣でわたわたと焦る碧依を、じっと見つめる。

 穴の開くほど強い俺の視線にたじろぐ彼女は、最後に一瞬だけ横目でこちらを見て。

 

 ごく僅かに、首を縦に振ったのだった。

 

 

 

 

 狭い俺の部屋の中にテーブルランプの柔らかい光が反射する。そして素っ裸の俺が仁王立ち。

 そのすぐ目の前では、パジャマ姿の碧依がベッドに腰掛けて俺を見上げていた。

 

 恥じらうことすら忘れた彼女の視線の先には、これまでで一番高らかに屹立した肉棒がある。

 それは太い血管を身にまとい、ピクピクと震えて碧依を威嚇していた。

 

「……す、すごい……ね」

「前にもちょっと見たろ?」

「前よりもっと……ビキーンって感じ」

 

 思わずと言ったように呟く碧依。普段はあれほど眠そうな瞳が、丸く大きく見開かれている。

 俺はさらに一歩進んで、彼女の吐息を感じるほどの距離まで肉竿を近づけた。

 

「じゃあ、始めるぞ。ちゃんと見てろよ」

「う、うん……」

 

 好奇心と性欲に呑まれた碧依は、もうこの倒錯的な状況に疑問も抱かなくなっているようだ。

 そのまま俺は、昂る肉棒をゆっくりと扱き始めた。

 

「……へんなかたち」

「うぐ……ふっ……名前は知ってるか? この先っぽの部分が亀頭だ」

「ちょ、ちょっとだけなら。なんかすごく赤っぽいけど、痛くないの?」

「いや……ここが一番気持ちいい……ぐ」

 

 あまりにも、エロすぎるシチュエーションだった。

 小さい頃からずっと片想いしていた美人の幼馴染。その目の前で、俺は今オナニーを見せつけているんだ。

 

 視線を少し下に向ければ、彼女の切れ長な瞳や桜色の唇がすぐそこにある。

 ぐいと腰を突き出すだけで、亀頭が彼女の顔に触れてしまうほどの至近距離。

 俺はもう、とにかく興奮が高まりすぎて目も眩みそうだった。

 

 必然、あっという間に先走り液が指先を覆っていく。

 一定のリズムで動く手の中から、粘着質な水音が生まれ出した。

 

  にっちゃ、にっちゃ、にっちゃ、にちゅっ

 

「わっ。()()透明なのが出てき……あっ」

「はっ……ふっ……これが先走りってやつだよ」

「……そ、そうなんだ」

 

 まるで普段と違うとでも言うような碧依の失言には、あえて気付かないフリをする。

 潤滑剤に覆われたペニスからは、たちまち恐ろしいほどの快感が生み出されていく。

 これ以上ない性感に、限界はすぐに訪れることを予感した。

 

 むわりと性臭が広がる。俺よりも肉棒に顔が近い碧依にだって、それは届いているはずだ。

 しかし彼女は顔を不快に歪めることはなく、ただ顔を赤らめて息を荒くしているのだった。

 

「勇雄のこれ、さっきよりおっきくなってる」

「ぐ、う……もう少しで、出そうなんだよ……っ」

「えっ、で、出るのっ? 私はど、どうしたら」

 

 俺は、最大限の期待を込めて言ってみた。

 ずっとずっと夢に見た、俺の願いを。

 

「あ、碧依っ! く、口の中に出していいかっ」

「え!? それはっ……」

 

 びっくりして俺の顔を見上げてくる碧依。

 その目と鼻の先で、俺の肉棒が今にも爆発しそうに膨らんでいた。

 

 真っ赤になってパクパクと言葉を失う彼女は、やがて覚悟を決めたように頷く。

 

「……わ、わかった。でも出す時は言ってね」

「! ああ、もうすぐだ……ッ」

 

 ……やった。本当にいいんだ。これをずっと待ち望んでいたッ。

 

 いつだって俺の料理を幸せそうに食べる碧依の、薄い桜色の唇。

 そこを俺の精子で穢してみたくて仕方がなかったんだ。

 

 興奮がマッハで加速する。心臓も高速で鳴動しだす。

 肉棒を握る手の前後運動を一層激しくすると、うるさいほどに水音が弾け出した。

 

  ちゅこ ちゅこ ちゅこ ちゅこ ちゅこッ!

 

「ふぅッ……あ、碧依ッ! 出るッ! 口に出すぞッ……ぐぅッ!」

 

 碧依が恐々としつつも口を開き、俺は肉棒をぐいと近づける。

 今にも触れそうな距離。瞳の奥で快感が爆発した。

 

 そして、穢れなき彼女の狭い口腔へ。

 俺の子種が怒涛の勢いで噴き出した。

 

  どびゅうううううううッッ! びゅううううッッ! びゅッ!

 

「ぐ……!!」

 

 腰ごと持っていかれそうな快感。凝縮された濃い白濁が尿道を通るたび、あまりの気持ちよさに脚がガクガクと震えた。

 肉棒もぶるると揺れてしまって、精液が飛び散る。

 

「わぷッ!? あ……んぁ……!」

 

 碧依は必死に口を開けて、俺の精子を受け止める。

 小さな舌がみるみる白に染まり、ドロリと彼女の口を犯していく。

 俺自身でも信じられないほど大量に噴き上がる精液は、彼女の額や頬にすら容赦なく飛びかかっていく。

 

 すると碧依は、精液が目に入ることを恐れたのか。はたまた興味本位か。

 全く予想外のとんでもない行動に出た。

 

「ん……はむ……——ッ! んむぅっ!」

「碧依ッ!? うぁ、それヤバ……うっ!」

 

 彼女はなんと、俺の亀頭をパクリと咥えてしまったのだ。

 薄桜色の唇の中へ、カリ首までが間違いなく呑み込まれてしまっている。

 ニュルリとした温かくて柔らかい感触が伝わってくる。俺は驚きと興奮で荒く呼吸した。

 

 びゅくん、びゅくん、と何度も脈動する肉棒。

 碧依はそれを無我夢中で受け止めていく。時々咳き込みそうになりながらも、決して口は離さない。

 思わず俺は、両手で碧依の頭を握った。まるでオナホにでも注ぎ込むように、がっしりと。

 

「はっ、やばっ……気持ちよすぎ……!」

「んむっ……ん……むぅぅ」

 

 長い長い射精が、ようやく落ち着いた。

 俺の魂まで吸い尽くされたような心地だ。もう全身に力が入らない。

 俺はバサリとベッドに倒れ込んだ。碧依が驚いて場所を空けてくれる。

 

 ふと彼女の顔を見上げれば、夥しい量の白濁液によってすっかり汚されてしまっていた。

 あんなに清楚で美しかった白い顔。それが今や、淫らな粘液をまとって歪められている。

 

 そして、碧依の探究心は俺の想像を上回った。

 

「ん……んぐ…………ごっきゅ……けぷ」

「え!? あ、碧依、飲んだのか?」

「うぅ〜、おいしくない……」

「そりゃそうだろ! 嬉しいけどそこまで無理しなくても」

「勇雄の作ってくれたものは、絶対残さないもん……うぇ」

「お、おいおい、何だよそれ……」

 

 言葉では呆れたように返したが、俺はニヤつく口角を止められなかった。何だよ、その献身的な姿勢。

 喜びと征服感と達成感が、俺の胸の内で暴れ狂う。思わず抱きしめたくなるのを全力で我慢した。

 

 碧依がティッシュで顔を拭き取っている。しつこい白濁に苦戦しているようだ。

 

「……うー取れない。もう顔に出すのはなしっ」

「そ、そんな殺生な……」

「ぜ、全部飲むからっ。それでいいでしょ?」

「まじかっ! 最高!」

 

 思わずガッツポーズをしてしまった。いけね、俺は余裕を見せておきたかったのに。

 だけど碧依は素直な俺の反応に気をよくしたらしい。僅かに表情が明るくなった。

 

 というか、次回があるのが当たり前みたいな会話だ。

 碧依もそれに気づいたのか、頬を赤らめて気まずそうに目を伏せた。

 

 ……ああ。俺、ついにやっちゃったのか。

 碧依の目の前でオナニーを見せつけて、彼女の顔にぶっ掛けた。

 しかも最後にはちょっと口に咥えさせて、俺のを飲ませたんだ。

 

 感慨深さを抱きながら碧依を見ると、彼女は俺の萎びた相棒に視線を向けていた。

 

「な、なんかどんどん萎んじゃった……!」

「すごいだろ。普段はこうなんだ」

「それでもやっぱり先輩たちよりおっき……あ」

「え? え、今なにを」

「ち、違うよ! 水着の時の話だから! 他の人のは見たことないからッ!」

 

 とんでもない台詞に賢者タイムも吹き飛んだ。

 てっきりこれが初めてじゃないのかと思って本気で落ち込みかけたぞ。ふざけんな。

 碧依はなおも俺へと言い募る。

 

「ほんとに! 見たのは勇雄が初めてだよっ。うちはお父さんもいないから、嘘じゃなくてっ!」

「わ、わかったわかった。別に疑ってなんかないよ」

「あ……そ、そっか。ごめん」

 

 なんだよ。なんでそんなに必死になるんだ。

 期待しちまうだろうが。お前は性への興味だけじゃなくて、俺にも気があるんじゃないかって。

 モヤモヤと鬱屈した感情が浮かんできてしまい、俺は自分を誤魔化すために碧依を揶揄った。

 

「まさか碧依、水泳部に入ったのは他の男子の股間を見るためだったのか」

「ッ! 違うっ! 私はただ泳ぎたくて……ッ!」

 

 しまった。思った以上に怒らせたらしい。

 まさかそこまで嫌がるなんて思わなかったな。水泳部の男子とは仲が悪かったりするのか?

 

 碧依は本気で怒ると言葉が出なくなるタイプだ。頬をむっと膨らませて睨んでくる。

 正直可愛いとしか思えない怒り顔だが、今は怒らせている場合じゃない。

 

「ごめんごめん、冗談だよ。そんなわけないのは分かってるから」

「むぅ」

 

 不満げな膨れ顔に、つい頬が緩むのを自覚する。俺は身体を起こして碧依の頭を優しく撫でた。

 驚くほどにさらさらな感触が指に伝わる。撫でている俺の方が癒されてしまうほどの。

 恥じらいをみせつつも大人しくなった碧依が、上目遣いで俺に確認する。

 

「……最後まで見たから、これでおあいこ。……だよね?」

 

 不意に見せつけられたその表情の破壊力に、俺は言葉を忘れてしまった。

 

「……勇雄?」

 

 どうにか正気を取り戻して、俺も返事を返す。あるいは狂気の類かもしれない。

 俺の答える内容は、彼女をこの部屋に連れ込む前から決めていたのだ。

 

 

「違うだろ? 碧依。……見せてもらい足りないのは、俺の方だ」

「……え?」

 

 

 この公開オナニーをするにあたって、俺は確かに言ったはずだ。

 "碧依だけ見られるのも不平等"と。そして碧依も暗黙の肯定を示した。

 

 だから、不平等は今もなお残っている。

 ただ、不等号の向きが逆なだけだ。

 

 

「碧依。お前、この一週間ずっと俺のオナニーを覗いてたろ」

「ッ!? な、なんで知ッ!?」

「だから、今度は碧依が俺に見せる番だ。そうじゃないとおかしい」

「そ、え、そんなの」

「否定も言い訳もさせない。……碧依、お前ができるのは肯定か拒否だけだ」

 

 だって、俺はもう正直に罪を告白して、お詫びとしてお前に見せたんだから。

 俺よりもっと罪を重ねた碧依が、俺に詫びないのは道理が通らないよな。

 

「……い、いさお? 顔が、こわいよ」

 

 我ながら最低だ。大好きなはずの幼馴染に、ほぼ脅しみたいに迫っている。

 でもどうしても止まれない。彼女がこの部屋に来てしまった時点で、俺の心の箍はとっくに外れていた。

 ほんの僅かに残った理性が、俺の恋心に言葉を紡がせる。

 

「碧依。俺はお前のオナニーが見たい。ずっと見たかった」

「ふぇ。……え、う」

「嫌なら、もう二度とこんなお願いはしない。前見たことも全て忘れるよ。……けど、頼む。見たいんだ」

「その、私は……えっと」

 

 ベッドに隣り合って座ったまま、じっと彼女を見つめた。

 ああ、ずるいな俺。ここに来てもまだ、一番大事な気持ちは口にできないままなのか。

 

 碧依はしばらく悩んでいた。何度も口の中で言葉にならない何かを転がしては引っ込める。

 待つ時間が永遠にも感じた。俺の中では自己嫌悪だけがどんどん膨れ上がっていく。

 

 

 ——ようやく彼女が顔を上げた時。

 その強張った表情を見た俺は、彼女に嫌われたんだと思った。 

 

 でも彼女の口から出てきたのは、予想と真逆の言葉だった。

 

 

「わ、分かった。……見せる」

 

 

 最後の理性が、音を立てて崩れていく。

 

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