※この作品はR-18です。

天国には理想郷がありまして、その後   作:空飛ぶ鶏゜

24 / 28
[注意]このお話はR-18相当です。


千夜一夜の姫物語(3) **

 膝を立てた銀さんの足の間に挟まり、背中に手を回されていた。

 逃げ場はなく、優しい牢屋に閉じ込められている気持ちに陥りながら、身を乗り出してキスを強請(ねだ)った。

 

 銀さんが少し顔を傾けると、自然に深くなる。開いた唇の隙間から舌が入り込み、口の中を探るようにゆっくり動いた。

 上顎をなぞられる感触に、背中から力が抜ける。銀さんの首に腕を回すと、それに応えるように背中へ回された手がゆっくりと撫で上がった。

 思わず漏れた声が、銀さんの口の中に消えていく。

 

 銀さんの舌に合わせるように舌を差し出す。

 触れた舌が絡み、お互いの唾液がびちゃびちゃと音を立てた。

 

 コクリと銀さんの喉が動いた。唾液を飲まれたのだと気付いた瞬間、一気に熱が上がった。

 身体の芯から痺れるような、どうしようもない情動に突き動かされ、銀さんを掴む手に力が入った。

 銀さんは私の後頭部を支えながら、舌先で確認するように端から端までを丁寧に探っていく。

 舌を差し出せば吸われ、絡んだままさらに深く差し込まれる。

 繰り返すうちに境界線が曖昧になり、舌先でさえ自分のものか分からなくなっていく。

 息は乱れ、互いの呼吸が近すぎる距離で混ざり合う。

 何度も身体が震え、溢れ出る熱が内側に溜まっていった。

 

 唇を離すと細く糸を引いた。銀さんの胸に手をついて身体を離す。

 

「銀さん……暑いんだ。脱がせてほしい」

 

 執拗に繰り返され、強請らずにはいられなかった。

 

 足りない。その手で触れて欲しい、この手で触れたい。

 そんな思いで銀さんを見つめる。

 銀さんの手が帯に触れ、解かれていった。

 

 シャワーのあと、少し迷ったがブラはつけなかった。身につけたのはショーツだけだ。

 緩んだ浴衣の合わせが左右へ開かれる。洗ったばかりの素肌が冷えた空気に触れ、隠すもののない胸元が銀さんの目に晒された。

 銀さんは無言のまま、じっと私の身体を見つめていた。しばらくして目元がわずかに緩み、唇に薄い笑みが浮かんだ。

 とたん、恥ずかしくなる。膝立ちになり、隠すように銀さんの胸元へ身体を預ける。

 

「電気、消すか?」

 

 身体を支えながら、銀さんは聞く。

 

「……そのままがいい。銀さんが見えなくなるのが怖い」

「そうか」

 

 合わせ目から銀さんの手が入ってくる。

 脇腹を確かめるように二度撫で、そのまま背中へ回る。浴衣は肩から滑り落ち、腕を抜くと腰元で丸まった。

 

「少しくすぐったい」

「そうか」

「『そうか』って、さっきと同じ返事」

「余裕ねぇの! いっぱいいっぱいなの!」

「銀さんも?」

「そうだよ、悪いかよ」

「悪くない。私もいっぱいいっぱい。ねぇ、私も、銀さんに触りたい」

 

 銀さんの胸元に手を這わせて、上着のチャックをカリッと爪で引っ掻く。

 銀さんは一瞬目を見開き、チャックにかかる私の指を見下ろした。

 それから困ったように目を細める。歪んだ口元は、それでも嬉しそうだった。

 ジジッと、金属のこすれる音と共に胸元がはだけていく。

 チャックを最後まで下ろしたあと、銀さんの肩から上着を抜こうと手を伸ばす。

 銀さんの視線が気になった。

 

「見すぎじゃないですか」

 

 とっさに手で隠しながら抗議する。

 

「そりゃ見るだろ、お前だって俺の見てたじゃねぇか」

「だって……。そりゃ見ますよ」

 

 薄く残った古い傷跡。ひきつれた肌。筋肉の筋一つまでもが愛おしく、目が離せなかった。

 胸を隠したせいで手が足りない。しかたなく、口を使う。

 

「銀さん脱いでよ」

「どこまで?」

「どこまでって……」

 

 問われて思わず視線を逸らす。

 どこまで見て、触れていいのだろうか。全部脱いで、私にも全部触らせてほしいと強請(ねだ)ったら、許してくれるだろうか?

 許してくれるのだろう。即答だ。際限なく、銀さんは私を受け入れてくれる。そんな確信があった。

 

「……パンツ残して。フェアでしょそれなら」

 

 吹き出すような声を睨みつける。

 チキンと言わないで欲しい。許してくれたとて、段階というものがあると私は思うのだ。

 衣擦れの音に意識が持っていかれる。

 続いて、ズボンのチャックが下りる音がした。絶対にそちらを見ないよう、首を限界まで横へ向ける。

 

「いいぜ」

 

 用意が終わったのだろう。深呼吸をして心を落ち着かせる。ゆっくりと正面を向き、また首を戻した。

 

「無理」

「流石に傷付くんだが」

「そういう意味じゃなくて」

 

 分かってる癖に。声が嬉しそうに跳ねていた。

 銀さんは胡座をかいてこちらを向いて座っていた。銀さんの身体なんて見慣れてるとは言わないけれど、別に見たのは初めてじゃない。

 それなのに、そういう対象として目を向けてしまうと……。

 顔はいつもの銀さんなのに、卑猥物に銀さんの顔がついたというか。

 

 鎖骨の窪み。胸板に走る薄い古傷。前腕に浮かぶ血管。糖分ばっか取ってるくせに筋肉質な身体。

 胸板は厚く、そこにある薄く色づいた部分が、男性なのにひどく色気を持っていた。

 

 全然、無理。

 

 なんで星柄のトランクスなんて穿いてるのだろう。少し可愛いと思ってしまった。

 夢の中では曖昧にぼやけていたものが、鮮明になるとこうも勝手が違うのか。

 このまま逃げ出すのはありなのだろうか? なしだろう。

 

「触っていいか?」

 

 胡座をかいたまま銀さんは距離をつめる。

 いつまでも黙っていたせいか、肩に手が触れる。冷えた肌を温めるように、腕から背中へゆっくりと撫でられた。

 恥ずかしくて、そのまま胸元に顔を埋めた。

 それだけでは足りず、顔を伏せたまま腰を浮かせ、膝立ちになる。頬を肩口へずらし、両腕を銀さんの背中へ回す。

 銀さんは足を開き、もっとというように私を抱き寄せる。

 

 腰で丸まっていた浴衣が完全に落ちる。

 

 銀さんとの身体の間で胸が潰れるのが分かった。恥ずかしかったが、素肌と素肌が密着するのが気持ちよく、首筋へ頬を寄せる。

 太ももに銀さんの手が触れ、下から上へと撫で上げられた。

 

「銀さんあったかい」

「お前は冷たいな」

「冷える?」

「いんや、ちょうどいい」

 

 答えと一緒に、太腿を撫でる手がもう一度往復する。

 

 顔を上げると、待っていたように唇が重なった。

 

 太ももから腰へ移る。両手が腰に回り、親指が腹の筋をマッサージするようにゆっくりとなぞった。

 次いで手のひらが背中へと滑り、全身が少しずつ温められていく。

 息を継ぐたびに唇は離れ、またすぐに重なる。銀さんの手に翻弄されて、キスまでせわしなくなっていった。

 肌寒ささえ感じていたのに、今は全身が熱かった。

 

 手が肋骨(ろっこつ)をなぞる。緊張で肩が震えた。

 軽いリップ音と共に唇が離れ、銀さんと目が合う。

 

「死にそうな顔してんな」

 

 そういう銀さんは口元が緩んでいた。

 

「胸……小さいから。そんな期待しないで欲しい」

 

 あまりにも嬉しそうな顔をするものだから、恥ずかしくなってそんなことを言ってしまう。

 

「そうは思わねぇけどな。まぁ小せぇと感度高けぇって……あー、今のなし」

 

 自分で口にしたくせに、銀さんは隠れるように私の肩に顔を埋めた。

 

「そうなの?」

「なしつっただろ。頼むから、聞き返さないでください」

「いっぱいいっぱい?」

「いっぱいいっぱい」

 

 切実な声に思わず笑ってしまう。

 肩口に小さな震えが伝わり、銀さんも笑ったのが分かった。

 

「ねぇ、触ってよ」

 

 そっと銀さんの両手を持ち上げ、自分の胸に重ねた。

 最初はまるで壊れるのを恐れるかのように、優しく揉んだ。

 恥ずかしいけれど、銀さんが触れてくれることが嬉しかった。

 

 顔を上げると、銀さんは目を細め、嬉しそうに口角を上げていた。

 私がそうさせてるのだと思うと、それがとてつもなく嬉しかった。

 

 銀さんの首に腕を回し、身体を預ける。首筋へ頬を擦り寄せ、その手に胸を押しつけるように、さらに身体を近づけた。

 持ち上げたり、中央へ寄せたり、その感触を楽しむように銀さんは何度も何度も触れる。

 ドキドキしながら私はそれを感じていた。

 

「銀さん、好き」

 

 胸に触れていた銀さんの指先に、力が入るのが分かった。

 

「好きだよ、銀さん」

 

 この気持ちをどう伝えたらいいのか、繰り返すことしかできない。

 胸の先端に指がかする。それだけでビクリと身体が震えた。

 あやすように親指で優しく押し込まれ、縁をなぞられる。

 声が漏れそうになる。銀さんの首筋へ口元を押し付け、必死で堪える。

 胸を揉んだり、親指だけで先端を弾いてみたり。

 

 背骨に液体を注射器で注ぎ込まれるように、熱が蓄積していく。

 親指と人差し指が先端をつまみ、コリコリと擦る。

 

「ぎんっ」

 

 強すぎる刺激にたまらず身体が跳ねる。

 爪の先で引っかき、弾く。かと思えば、手のひら全体で優しく包み、撫でる。

 繰り返される刺激に膝から力が抜け、腰が落ちた。

 息は自力で制御できず、内部の熱を逃がすように、荒い呼吸を繰り返すばかりだった。

 

 限界を察した銀さんが、背中と腰を支え、私の身体をゆっくりと布団へ横たえる。

 

 膝立ちになった銀さんの視線が、頭のてっぺんからつま先まで、じっくりと辿っていくのが分かった。

 恥ずかしくなって、膝が寄る。そこがどうなっているかなんて、言われなくても分かっている。

 銀さんのも――思わず視線を落とし、確かめたことを後悔する。だって、その、男性の生理現象だということは知ってはいる。

 星柄のトランクスに皺が寄り、中心が……その、なんというか。

 

「やーらしい」

 

 ほんの一瞬、視線を落としただけなのに、銀さんはそれを見逃さず笑う。

 そういう銀さんは私の胸元を見ていた。思わず両手で隠す。

 

「銀さんも、十分いやらしいよ」

「いやらしいこと、してますからね」

 

 悪びれもせず、あっさりと認める。

 

「なぁ、舌も触る範囲?」

 

 いやらしく、銀さんは舌を出しながらそんなことを言った。

 

「どこ……を?」

「その尖って舐めてほしそうにしてる乳首」

 

 あまりの直接的な言い方に一気に羞恥が募る。

 全身から汗が噴き出し、コクリと喉がなる。

 指先だけであんな、それなのに柔らかそうな舌先が触れたら……。

 唾液で滑る舌先から目が離せず、太ももに力が入る。

 

 私の脇へ右手をつき、体重をかけないように身体を支えながら、覆いかぶさった銀さんが、ダメ押しのように舌先で唇をなぞる。

 

「だめか?」

「……手加減してくれるなら」

 

 真っ赤になって、そう答えるのが精一杯だった。

 

 胸を抑えていた手を銀さんが掴み、ゆっくりと下ろされる。

 銀さんの頭が胸元へ近づく。

 わざとらしく、舌先を出しながらこちらを見ていた。

 すごく卑猥で、見ていられなくて、横を向いた。

 

 ピトリと右胸の先端に濡れた感触がした。

 なじませるように、舌先が縁を描く。その中心に意識が行くような舐め方だった。

 同時に、空いた左手で反対側の胸に触れる。

 こりっと先端をつままれる。腰が跳ね、逃げるように身を捩る。それでも舌も指も、追いかけるようについてくる。

 声が漏れないよう、右手で口を押さえる。

 

「声、聞かせてくんねーの」

 

 わざとらしく先端をつまみながら銀さんはそんな事をいう。

 胸先に息を吐きかけるような位置だった。

 

「距離がちかっ……んっ!」

 

 抗議に合わせるように刺激が加わり、嬌声が漏れる。行き場をなくした脚が布団の上でばたついた。

 絶対ワザとだ。

 肋骨や、鎖骨、関係のないところを舌先が這い回る。

 「胸と言ったのに!」という抗議をあげれば先程の二の舞になるだろう。

 声を抑えながら身体を跳ねさせる。

 べろりと音が聞こえそうなほど大げさに、舌先で先端を舐め上げた。

 もうそこからは嵐のようだった。

 

 左胸の先端をつままれながら、右の先端を吸われ、押さえる手なんて関係なく声が漏れる。

 何度も舐められ、しゃぶられ、強い刺激を与えられたと思えば、今度はあやすように優しく揉まれる。

 ふいに銀さんの身体が離れ、終わったのかと思った。けれど、身体を支える腕を替えただけらしい。今度は左胸へ口が近づいてくる。

 たまらず頭を押して止める。

 

「まっ……て」

 

 じんじんと胸が余韻を残し、身体も頭もぐちゃぐちゃだった。

 これ以上されたら――弾けてしまう、という予感があった。

 

「限界?」

「ちょっと……」

 

 煽るでもなく、確認するように銀さんは聞く。

 私の右隣へごろりと寝転ぶと、そのまま抱き寄せ、背中をゆっくりと撫でた。

 呼吸が落ち着くまでそうしてくれた。

 

「銀さん」

「ん?」

「私も銀さんを触りたい」

 

 一方的過ぎるじゃないか。そういう意味での抗議だった。

 

「止めた記憶はねぇけどな」

「それでも!」

 

 睨みつけると少し笑い、私の手を取り首筋に触れさせる。

 

「どうぞ」

 

 どうぞと言われても、という気分だが、銀さんに触れられるのは素直に嬉しい。

 銀さんも汗をうっすらとかいているのか、手のひらが肌に吸い付く。

 

「頻脈ですね」

「成人男性として正常だよ」

 

 とくとくと首筋から鼓動が伝わる。鎖骨へ親指を滑らせ、その窪みに沿ってゆっくりとなぞった。

 指で辿った場所へ順に口づける。大切だという思いが伝われば良いと思った。

 銀さんの手を取り、指先から手の甲、手のひらへと唇を落としていく。頬ずりすると、指先だけで応えてくれる。

 

「銀さんが好きだよ。全部、好きだよ」

 

 そう告げ、前腕から上腕、肩へ口づけを繰り返す。最後に、心臓の上へ長く口づけた。

 大好きで大切な宝物であるとそんな気持ちが伝われば良いと、それだけを願った。

 

「銀さん、舌は触れる範囲に入る?」

 

 見上げると、銀さんは顔を横へ向けていた。

 

「銀さん?」

「……好きにしろよ」

「照れてる?」

「直接聞くのやめてくんない」

 

 拗ねたような言い方に少し笑い、ドキドキしながら胸先へキスをする。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。