膝を立てた銀さんの足の間に挟まり、背中に手を回されていた。
逃げ場はなく、優しい牢屋に閉じ込められている気持ちに陥りながら、身を乗り出してキスを
銀さんが少し顔を傾けると、自然に深くなる。開いた唇の隙間から舌が入り込み、口の中を探るようにゆっくり動いた。
上顎をなぞられる感触に、背中から力が抜ける。銀さんの首に腕を回すと、それに応えるように背中へ回された手がゆっくりと撫で上がった。
思わず漏れた声が、銀さんの口の中に消えていく。
銀さんの舌に合わせるように舌を差し出す。
触れた舌が絡み、お互いの唾液がびちゃびちゃと音を立てた。
コクリと銀さんの喉が動いた。唾液を飲まれたのだと気付いた瞬間、一気に熱が上がった。
身体の芯から痺れるような、どうしようもない情動に突き動かされ、銀さんを掴む手に力が入った。
銀さんは私の後頭部を支えながら、舌先で確認するように端から端までを丁寧に探っていく。
舌を差し出せば吸われ、絡んだままさらに深く差し込まれる。
繰り返すうちに境界線が曖昧になり、舌先でさえ自分のものか分からなくなっていく。
息は乱れ、互いの呼吸が近すぎる距離で混ざり合う。
何度も身体が震え、溢れ出る熱が内側に溜まっていった。
唇を離すと細く糸を引いた。銀さんの胸に手をついて身体を離す。
「銀さん……暑いんだ。脱がせてほしい」
執拗に繰り返され、強請らずにはいられなかった。
足りない。その手で触れて欲しい、この手で触れたい。
そんな思いで銀さんを見つめる。
銀さんの手が帯に触れ、解かれていった。
シャワーのあと、少し迷ったがブラはつけなかった。身につけたのはショーツだけだ。
緩んだ浴衣の合わせが左右へ開かれる。洗ったばかりの素肌が冷えた空気に触れ、隠すもののない胸元が銀さんの目に晒された。
銀さんは無言のまま、じっと私の身体を見つめていた。しばらくして目元がわずかに緩み、唇に薄い笑みが浮かんだ。
とたん、恥ずかしくなる。膝立ちになり、隠すように銀さんの胸元へ身体を預ける。
「電気、消すか?」
身体を支えながら、銀さんは聞く。
「……そのままがいい。銀さんが見えなくなるのが怖い」
「そうか」
合わせ目から銀さんの手が入ってくる。
脇腹を確かめるように二度撫で、そのまま背中へ回る。浴衣は肩から滑り落ち、腕を抜くと腰元で丸まった。
「少しくすぐったい」
「そうか」
「『そうか』って、さっきと同じ返事」
「余裕ねぇの! いっぱいいっぱいなの!」
「銀さんも?」
「そうだよ、悪いかよ」
「悪くない。私もいっぱいいっぱい。ねぇ、私も、銀さんに触りたい」
銀さんの胸元に手を這わせて、上着のチャックをカリッと爪で引っ掻く。
銀さんは一瞬目を見開き、チャックにかかる私の指を見下ろした。
それから困ったように目を細める。歪んだ口元は、それでも嬉しそうだった。
ジジッと、金属のこすれる音と共に胸元がはだけていく。
チャックを最後まで下ろしたあと、銀さんの肩から上着を抜こうと手を伸ばす。
銀さんの視線が気になった。
「見すぎじゃないですか」
とっさに手で隠しながら抗議する。
「そりゃ見るだろ、お前だって俺の見てたじゃねぇか」
「だって……。そりゃ見ますよ」
薄く残った古い傷跡。ひきつれた肌。筋肉の筋一つまでもが愛おしく、目が離せなかった。
胸を隠したせいで手が足りない。しかたなく、口を使う。
「銀さん脱いでよ」
「どこまで?」
「どこまでって……」
問われて思わず視線を逸らす。
どこまで見て、触れていいのだろうか。全部脱いで、私にも全部触らせてほしいと
許してくれるのだろう。即答だ。際限なく、銀さんは私を受け入れてくれる。そんな確信があった。
「……パンツ残して。フェアでしょそれなら」
吹き出すような声を睨みつける。
チキンと言わないで欲しい。許してくれたとて、段階というものがあると私は思うのだ。
衣擦れの音に意識が持っていかれる。
続いて、ズボンのチャックが下りる音がした。絶対にそちらを見ないよう、首を限界まで横へ向ける。
「いいぜ」
用意が終わったのだろう。深呼吸をして心を落ち着かせる。ゆっくりと正面を向き、また首を戻した。
「無理」
「流石に傷付くんだが」
「そういう意味じゃなくて」
分かってる癖に。声が嬉しそうに跳ねていた。
銀さんは胡座をかいてこちらを向いて座っていた。銀さんの身体なんて見慣れてるとは言わないけれど、別に見たのは初めてじゃない。
それなのに、そういう対象として目を向けてしまうと……。
顔はいつもの銀さんなのに、卑猥物に銀さんの顔がついたというか。
鎖骨の窪み。胸板に走る薄い古傷。前腕に浮かぶ血管。糖分ばっか取ってるくせに筋肉質な身体。
胸板は厚く、そこにある薄く色づいた部分が、男性なのにひどく色気を持っていた。
全然、無理。
なんで星柄のトランクスなんて穿いてるのだろう。少し可愛いと思ってしまった。
夢の中では曖昧にぼやけていたものが、鮮明になるとこうも勝手が違うのか。
このまま逃げ出すのはありなのだろうか? なしだろう。
「触っていいか?」
胡座をかいたまま銀さんは距離をつめる。
いつまでも黙っていたせいか、肩に手が触れる。冷えた肌を温めるように、腕から背中へゆっくりと撫でられた。
恥ずかしくて、そのまま胸元に顔を埋めた。
それだけでは足りず、顔を伏せたまま腰を浮かせ、膝立ちになる。頬を肩口へずらし、両腕を銀さんの背中へ回す。
銀さんは足を開き、もっとというように私を抱き寄せる。
腰で丸まっていた浴衣が完全に落ちる。
銀さんとの身体の間で胸が潰れるのが分かった。恥ずかしかったが、素肌と素肌が密着するのが気持ちよく、首筋へ頬を寄せる。
太ももに銀さんの手が触れ、下から上へと撫で上げられた。
「銀さんあったかい」
「お前は冷たいな」
「冷える?」
「いんや、ちょうどいい」
答えと一緒に、太腿を撫でる手がもう一度往復する。
顔を上げると、待っていたように唇が重なった。
太ももから腰へ移る。両手が腰に回り、親指が腹の筋をマッサージするようにゆっくりとなぞった。
次いで手のひらが背中へと滑り、全身が少しずつ温められていく。
息を継ぐたびに唇は離れ、またすぐに重なる。銀さんの手に翻弄されて、キスまでせわしなくなっていった。
肌寒ささえ感じていたのに、今は全身が熱かった。
手が
軽いリップ音と共に唇が離れ、銀さんと目が合う。
「死にそうな顔してんな」
そういう銀さんは口元が緩んでいた。
「胸……小さいから。そんな期待しないで欲しい」
あまりにも嬉しそうな顔をするものだから、恥ずかしくなってそんなことを言ってしまう。
「そうは思わねぇけどな。まぁ小せぇと感度高けぇって……あー、今のなし」
自分で口にしたくせに、銀さんは隠れるように私の肩に顔を埋めた。
「そうなの?」
「なしつっただろ。頼むから、聞き返さないでください」
「いっぱいいっぱい?」
「いっぱいいっぱい」
切実な声に思わず笑ってしまう。
肩口に小さな震えが伝わり、銀さんも笑ったのが分かった。
「ねぇ、触ってよ」
そっと銀さんの両手を持ち上げ、自分の胸に重ねた。
最初はまるで壊れるのを恐れるかのように、優しく揉んだ。
恥ずかしいけれど、銀さんが触れてくれることが嬉しかった。
顔を上げると、銀さんは目を細め、嬉しそうに口角を上げていた。
私がそうさせてるのだと思うと、それがとてつもなく嬉しかった。
銀さんの首に腕を回し、身体を預ける。首筋へ頬を擦り寄せ、その手に胸を押しつけるように、さらに身体を近づけた。
持ち上げたり、中央へ寄せたり、その感触を楽しむように銀さんは何度も何度も触れる。
ドキドキしながら私はそれを感じていた。
「銀さん、好き」
胸に触れていた銀さんの指先に、力が入るのが分かった。
「好きだよ、銀さん」
この気持ちをどう伝えたらいいのか、繰り返すことしかできない。
胸の先端に指がかする。それだけでビクリと身体が震えた。
あやすように親指で優しく押し込まれ、縁をなぞられる。
声が漏れそうになる。銀さんの首筋へ口元を押し付け、必死で堪える。
胸を揉んだり、親指だけで先端を弾いてみたり。
背骨に液体を注射器で注ぎ込まれるように、熱が蓄積していく。
親指と人差し指が先端をつまみ、コリコリと擦る。
「ぎんっ」
強すぎる刺激にたまらず身体が跳ねる。
爪の先で引っかき、弾く。かと思えば、手のひら全体で優しく包み、撫でる。
繰り返される刺激に膝から力が抜け、腰が落ちた。
息は自力で制御できず、内部の熱を逃がすように、荒い呼吸を繰り返すばかりだった。
限界を察した銀さんが、背中と腰を支え、私の身体をゆっくりと布団へ横たえる。
膝立ちになった銀さんの視線が、頭のてっぺんからつま先まで、じっくりと辿っていくのが分かった。
恥ずかしくなって、膝が寄る。そこがどうなっているかなんて、言われなくても分かっている。
銀さんのも――思わず視線を落とし、確かめたことを後悔する。だって、その、男性の生理現象だということは知ってはいる。
星柄のトランクスに皺が寄り、中心が……その、なんというか。
「やーらしい」
ほんの一瞬、視線を落としただけなのに、銀さんはそれを見逃さず笑う。
そういう銀さんは私の胸元を見ていた。思わず両手で隠す。
「銀さんも、十分いやらしいよ」
「いやらしいこと、してますからね」
悪びれもせず、あっさりと認める。
「なぁ、舌も触る範囲?」
いやらしく、銀さんは舌を出しながらそんなことを言った。
「どこ……を?」
「その尖って舐めてほしそうにしてる乳首」
あまりの直接的な言い方に一気に羞恥が募る。
全身から汗が噴き出し、コクリと喉がなる。
指先だけであんな、それなのに柔らかそうな舌先が触れたら……。
唾液で滑る舌先から目が離せず、太ももに力が入る。
私の脇へ右手をつき、体重をかけないように身体を支えながら、覆いかぶさった銀さんが、ダメ押しのように舌先で唇をなぞる。
「だめか?」
「……手加減してくれるなら」
真っ赤になって、そう答えるのが精一杯だった。
胸を抑えていた手を銀さんが掴み、ゆっくりと下ろされる。
銀さんの頭が胸元へ近づく。
わざとらしく、舌先を出しながらこちらを見ていた。
すごく卑猥で、見ていられなくて、横を向いた。
ピトリと右胸の先端に濡れた感触がした。
なじませるように、舌先が縁を描く。その中心に意識が行くような舐め方だった。
同時に、空いた左手で反対側の胸に触れる。
こりっと先端をつままれる。腰が跳ね、逃げるように身を捩る。それでも舌も指も、追いかけるようについてくる。
声が漏れないよう、右手で口を押さえる。
「声、聞かせてくんねーの」
わざとらしく先端をつまみながら銀さんはそんな事をいう。
胸先に息を吐きかけるような位置だった。
「距離がちかっ……んっ!」
抗議に合わせるように刺激が加わり、嬌声が漏れる。行き場をなくした脚が布団の上でばたついた。
絶対ワザとだ。
肋骨や、鎖骨、関係のないところを舌先が這い回る。
「胸と言ったのに!」という抗議をあげれば先程の二の舞になるだろう。
声を抑えながら身体を跳ねさせる。
べろりと音が聞こえそうなほど大げさに、舌先で先端を舐め上げた。
もうそこからは嵐のようだった。
左胸の先端をつままれながら、右の先端を吸われ、押さえる手なんて関係なく声が漏れる。
何度も舐められ、しゃぶられ、強い刺激を与えられたと思えば、今度はあやすように優しく揉まれる。
ふいに銀さんの身体が離れ、終わったのかと思った。けれど、身体を支える腕を替えただけらしい。今度は左胸へ口が近づいてくる。
たまらず頭を押して止める。
「まっ……て」
じんじんと胸が余韻を残し、身体も頭もぐちゃぐちゃだった。
これ以上されたら――弾けてしまう、という予感があった。
「限界?」
「ちょっと……」
煽るでもなく、確認するように銀さんは聞く。
私の右隣へごろりと寝転ぶと、そのまま抱き寄せ、背中をゆっくりと撫でた。
呼吸が落ち着くまでそうしてくれた。
「銀さん」
「ん?」
「私も銀さんを触りたい」
一方的過ぎるじゃないか。そういう意味での抗議だった。
「止めた記憶はねぇけどな」
「それでも!」
睨みつけると少し笑い、私の手を取り首筋に触れさせる。
「どうぞ」
どうぞと言われても、という気分だが、銀さんに触れられるのは素直に嬉しい。
銀さんも汗をうっすらとかいているのか、手のひらが肌に吸い付く。
「頻脈ですね」
「成人男性として正常だよ」
とくとくと首筋から鼓動が伝わる。鎖骨へ親指を滑らせ、その窪みに沿ってゆっくりとなぞった。
指で辿った場所へ順に口づける。大切だという思いが伝われば良いと思った。
銀さんの手を取り、指先から手の甲、手のひらへと唇を落としていく。頬ずりすると、指先だけで応えてくれる。
「銀さんが好きだよ。全部、好きだよ」
そう告げ、前腕から上腕、肩へ口づけを繰り返す。最後に、心臓の上へ長く口づけた。
大好きで大切な宝物であるとそんな気持ちが伝われば良いと、それだけを願った。
「銀さん、舌は触れる範囲に入る?」
見上げると、銀さんは顔を横へ向けていた。
「銀さん?」
「……好きにしろよ」
「照れてる?」
「直接聞くのやめてくんない」
拗ねたような言い方に少し笑い、ドキドキしながら胸先へキスをする。