男性も女性と同じように気持ちよくなるのかは分からない。それでも、銀さんがしてくれたことを返したかった。
やり方が分からず、舌先でぺろりとひと舐めする。銀さんは何も言わなかった。
嫌ではなさそうだと判断し、もう一度、今度は続けてぺろぺろと舐める。唇で胸先を挟み、そのまま吸いついてみた。
反対側は指でつまみ、転がす。
私にも同じ物があるはずなのに、なんだか凄く悪いことをしている気持ちになる。
頭を撫でられた。なんだか嬉しくなってしまい、一生懸命に舌を動かす。
反対側も、と口を移して舐めていると、髪を撫でていた手が頬へ滑った。顔を上げさせられ、銀さんと目が合う。
「俺もお前に触りたい」
「私も銀さんに触りたい」
困った。正面衝突事故だ。
「じゃあ、お前もそのまま触ってていいから、俺も触っていいか?」
そう聞きながらも、銀さんの左手は胸へ伸び、下から掬い上げるように包んでいた。
触りたいのだろう。凄く。そんな顔をしている。
「あまり酷くしないでね」
困りながら、そう答えた。
横になって向かい合ったまま、銀さんは片方の腕を私の脇の下へ差し入れ、背中をなでる。
もう一方の手は、胸を優しく揉むように動いている。
私は左手を、銀さんの胸元へ伸ばした。
胸元を触りながら鎖骨に舌を這わせてみる。
鎖骨から辿り首筋へ。
しょっぱかった。銀さんの汗だと思うと、なんだか身体が火照ってくる。
そのまま首筋をぺろぺろと舐めてみる。
「くすぐってぇよ」
「私も銀さんをもっと気持ちよくしたい」
銀さんは私の胸から手を離し、代わりに私の手を取った。
その手を自分の胸に当てると、脇腹を通って、さらに下へ滑らせていく。トランクスの縁まで辿り着いたところで、ぴたりと止めた。
顔を上げると、「どうする?」と問いかけるように銀さんが笑っていた。
触ってしまってよいのだろうか? 迷っていると、今の誘いを取り消すように、重ねられた手が再び脇腹へ戻される。
だから、重ねられた手から抜け出し、銀さんに触れた。
「……っ!?」
銀さんの眉が寄る。そのまま布越しに二度、優しく擦ってみる。
まるで下着の中に、別の生き物を隠していたようだった。
温かく、不思議な弾力をもつ。そう――水族館で触ったナマコのような。
なんだか可愛く思えてくる。
「触り方あってる?」
「あってねぇけど、あってる」
「どっち?」
「手ぇ動かしながら聞くのやめてもらっていいですか?」
なんだろう。楽しい。
手を動かすと、銀さんの眉間のシワが深くなり、口が薄く開く。
形を確かめるように指を回し、ゆっくり前後させると、背中に回された腕にわずかに力がこもった。
先端を親指で軽く押してみる。加減がわからず、潰さないよう恐る恐る触る。
撫でてみたり、軽く握ってみたり。
一通り触ってみるが、顔だけを見れば、銀さんは余裕を取り戻したようだった。最初ほど分かりやすい反応は見せてくれない。
代わりに私の胸を触ったり、腰やお尻を撫でたりと、好き勝手に手を動かしている。
「どうしたら、気持ちよくなる?」
しかたなく、手を止めて聞いてみる。
「触ってりゃあそれなりに気持ちいいよ」
「全然そうは見えない。もっと強く触っても大丈夫? 擦った方がいいの? それとも先を触った方がいいの? 握るのは違うよね?」
「お前な……じゃあ、俺も聞くけど、ここどうやって触って欲しい?」
「や……っん」
両腿のあいだへ指を滑り込ませ、ショーツ越しに割れ目を軽く撫でられた。
思わず漏れた声に、自分でも顔が熱くなる。
「……ずるい」
銀さんは知っていて、私は知らないのに。
どうしたら教えてくれるのだろう。
「お前も教えてくれたら教えるよ」
「銀さんが触ってくれたら全部気持ちいいよ」
「俺も、お前が触ってくれりゃ全部気持ちいいよ」
「意地悪。私も……銀さんをちゃんと気持ちよくしたい。一方的なのは嫌だ」
するりするり逃げる銀さんを掴まえ、訴える。
銀さんばかりずるいじゃないか。
そんな思いが通じたのか、銀さんは観念したような表情を浮かべた。
「……分かったよ。手ぇ貸せ」
そう言って、銀さんは私の手を取り、再び自分へ触れさせた。その上から自分の手を重ねた。
重ねた手に、ゆっくりと力が加わる。形がはっきりと分かるほど、強く握る。親指の位置をずらされた。
ここなのだろう。
そのまま二人の手が、布越しにゆっくりと往復する。
私が触っていたのが遊びだったかのような、生々しい動きだった。
銀さんの顔を見上げると、耐えるように表情を険しくしていた。
私が見ていることに気付くと、銀さんは隠すように唇を重ねてきた。
舌を差し入れられ、そのまま絡め取られる。
私の手を導いていた銀さんの手が離れ、再び胸へ戻ってくる。優しく揉みながら、指先で胸先を擦り、転がした。
漏れかけた声は重なる唇のあいだに消え、銀さんへ触れる手のリズムが乱れた。
ふいに、重ねていた手を掴まれ、動きを止められた。
唇が離れる。
「このままこれ以上やると、色々酷くなる」
「痛い?」
「そうじゃねぇけど……脱いでも大丈夫か?」
思考は本題から逸れ、なぜなのか、そこが気になってしまう。
「先走り?」
「引っかかるところそこじゃねぇだろ」
「違う?」
「違わねぇけど。口に出して確認するなよ……。で、大丈夫なのお前。この状況でやっぱ無理でしたって言われたら流石にくるもんがあるんだが」
銀さんは口ごもり、悩むように言った。
大丈夫かと聞かれたら大丈夫……だと思うのだけど、勢いできて欲しかったという気もする。
改めて聞かれると凄く恥ずかしい。
「銀さんのでしょ? 見たい……よ?」
どういうものか、上手くイメージできていないのだけど、銀さんの身体の中で一番性的な部分だと考えると……凄く見たい。
淫乱なのだろうか。でも知りたいと思う。
「そのまま受け取ると、変態にしかならねぇから気をつけろ」
「銀さんのだから見たいって思うんじゃダメかな?」
「余計駄目になってるからな、自覚しろよ」
銀さんは姿勢を少しかえ、腰に手をやる。
「あんま見ないでくれると助かるんだけど」
「ごめん」
まじまじと見てしまった。横に視線をずらす。
「脱いだよ」
言われて視線を戻すと、寝転がり、銀さんは片腕を枕にしていた。
はっきりと見えた。
銀さんの隠されてた部分があらわになり、ヘソから腰骨の膨らみその下。
銀さんは全部が白いんだなと、場違いなことを思った。
それから、ネオアームストロング砲は意外と写実的だったのだと、さらに場違いなことを思った。
「黙って見んのやめてくれませんかねぇ」
「だって……なんか強そう」
「やっぱ黙って」
綺麗だとすら思った。
反り返り血管が浮き出る男根が、まっすぐ感情を示しているようにも思えた。
「興奮してるんだ」
「この状態で何もなかったら、それはそれで問題だろ」
欲しがられている。
それが実感できるとぐずりと、お腹の中が重くなった。
「私も脱いだほうがいい?」
「急に思い切りがいいな」
「だって……銀さんが脱いだから。欲しがってくれる?」
恥ずかしくないわけじゃない。今も銀さんを目の前にしてドキドキしている。
「ずっと欲しいよ」
怖いぐらい真剣に銀さんはそう言った。
わずかに腰を浮かせ、ショーツの縁に手をかける。ちらりと見ると、銀さんは目を逸らしてくれていた。
ドキドキしながら下へ滑らせ、片足ずつ引き抜く。脱いだものは、そっと後ろ手で布団の下へ隠した。
何も身に付けていないだけで、こんなにも心細くなるなんて知らなかった。
「いいよ」
そう伝えるには、とてつもない勇気が必要だった。
銀さんがこちらを向き、視線がいやらしく下がる。
嬉しそうに口角が上がっていた。
その顔を見た途端、鼓動が一段うるさくなった。
脱ぐ直前、クロッチについた染みが目に入ってしまった。
そのことが銀さんにばれるんじゃないかと思うと、恥ずかしくなる。
「触っていいか?」
そういう銀さんの声は少し掠れていた。
脇から下に手を差し込まれ、背中を引き寄せられる。
銀さんのものがひたりと腹についた。
それだけで、腹の中がきゅっとなった。
反対の手が腰を通り、太ももを揉むようにさわっていた。
最初は手の甲でなでた。次に、人差し指が割れ目へ軽く差し入れられた。
「あっ……ん」
一際甲高い音が漏れてしまい、一気に頭が沸騰する。
自分で触れたのとは全然違う。指が動く度に鋭い刺激が襲ってくる。
銀さんの肩に口を押し付けながら、銀さんのものに触れる。
ツルリとしていた。まるで芯のある求肥のような感触。先端にふれるとぬるりと滑った。
単語しか知らなかった言葉に色が付く。
男性も女性と同じだろうと、ぬめりを広げ擦る。その方がきっと気持ちいいだろうと思った。
早くしないと、そんな焦燥に駆られる。
銀さんの手が私を徐々に追い詰めていくのだ。
一番敏感な場所。そこを触られたときは押し当てている口が外れ、自分でも耳に入れたくないような声が漏れた。
全身がぴちぴちと打ち上げられた魚になった気分だった。
人差し指で先端を弄られ、割り広げられる。すっと空気が通る感覚に酷く羞恥が募った。
そんなことなんで――反論はすぐ思いついた。恥ずかしがらせるため。
事実、溢れ出る蜜は量を増やした。
「ぎん……さ、もう……っ」
イきそうだった。でも一人じゃ嫌だった。一緒に上り詰めたい。
けれど、未熟な私の手では間に合わず、先に弾ける。
「ぎん、さ……っ、あ、ぁあ……っ!」
銀さんの手に腰を押し付け、たまらず両腕で首にしがみつく。大きく身体が跳ねて制御を外れた。
「大丈夫か?」
銀さんが掠れた声で聞く。
荒い息をつき、しがみついた姿勢のまま、銀さんへしなだれかかっていた。
イッた後の倦怠感で腰が重く、じゅくりと漏れ出すものに身が震える。
「銀さんも一緒がいい」
キスをしながら、必死でもう一度手を伸ばす。
力が入らず、ともすれば手からすっぽ抜けそうになる。それでも、ガチガチに硬くなった銀さんのものを擦った。
足りない。そんな気がした。銀さんを気持ちよくできない。
「銀さん、助けて」
何も言わず、銀さんは手を重ねる。指先が濡れているのが分かった。
それがなんだか嬉しくて、何度も何度も銀さんの名を呼んだ。
「銀さん、好き」
「……くっ」
銀さんから苦しそうな声が漏れたかと思うと、私の手だけをそこへ残し、自分の先を掌で覆った。
握ったモノが何度もびくびくと脈打ち、銀さんも達したのだと分かった。
荒い息をつき、私の肩に頭を預けていた。その頬に触れるだけのキスをする。
「タオル」
少し落ち着くと、銀さんはそう言いながら身を起こす。握り込んだ手の中のものを処理するつもりなのだろう。
私は這いずり、落ちていたタオルを拾い、銀さんの手を取る。
「させて?」
そういうと少し迷っていたが、手のひらを広げこちらに預けてくれた。
半透明の液体がべっとりとくっついていた。少し生臭く、どこか塩素を思わせるような独特の匂いがした。
ペロリと舐めてみる。
「おいっ」
銀さんは手を引いたが間に合わず、口の中に銀さんのものが残る。
「ぺってしなさい」
「もう飲み込んじゃった」
焦る表情を浮かべる銀さんにそう言えば、頭を落とす。
「急に変な好奇心発揮すんなよ……」
「んー、まぁ。でも、あまり美味しくはなかったよ」
残りの体液はタオルで拭き取った。
落ちていた浴衣をとり帯を結ぶ。
「水、飲む?」
酷く喉が乾いていた。銀さんにも聞けば「ああ」と短く返事が返ってきた。
二人分、ガラスのコップに水を入れ一つを手渡すと、喉を鳴らし一気に飲み干していた。
空になったコップを二つテーブルに置く。
暑いのだろう。銀さんは後ろ手をつき、裸のまま身体を冷まそうとしていた。
申し訳なく思いながらも胡座をかく銀さんに甘えると、抱きかかえられるようにその膝の中へ座らされた。
「何か変わったか?」
「実感としてあまり。治ったのかな? でも、改めて銀さんが好きだなぁ~って思ったよ」
見下ろしてくる銀さんは心配そうな表情を浮かべていたが、私の解答に「んなこと、聞いてねぇよ」と照れたように言葉を落とした。
「なんだか眠くなっちゃった、一緒に寝たいんだけどどうかな?」
「いいけどよ。服着るから少し降りろ」
銀さんは、退けるように私の腰を抱き上げ下ろそうとする。
それに抵抗する。
「そのままがいい。駄目かな?」
触れていたい。体温を感じていたい。傍にいることを感じたい。
布一枚もその間に挟みたくはないのだ。
帯を解き、生まれたままの姿で布団に誘うと銀さんは困ったような顔をしながらも伸ばした手を取ってくれた。
肌と肌が触れ合い、体温を分け合う。少し高い銀さんの体温と、少し低い私の体温が混じり合いどちらのものか分からなくなる。
「気持ちいい」
「そりゃ良かったな」
「銀さんは?」
答えはなく、黙って抱きよせられた。
睡魔はすぐに訪れた。元々足りていなかったのだ。
「おやすみ、銀さん」
とても幸せな夢が見れそうな気がした。
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