後頭部を大きな手で押さえられ、逃げ場を奪われるように唇を食まれる。
促されるまま口を開けると、柔らかな銀さんの舌がするりと入り込んでくる。
目を閉じている所為か、触れるものすべてを敏感に拾ってしまう。
銀さんの舌先が上顎をなぞり、そのまま私の舌と絡まる。
頭が痺れるような心地よさに、背中へ回した腕へと思わず力が入った。
着流しの下にある固い背中を、指先が感じている。
後頭部を押さえる手とは反対の手が、あやすように耳をなぞった。
「ん……っ」
思わず声が漏れ、熱に浮かされたように自分からその舌先を追いかけた。
銀さんの口の中はどこまでも熱く、一つ一つのパーツが私よりも大きい。
それを舌先で確かめるように、なぞっていく。
水音が鳴り、だらしなく
息が苦しい。それでも唇を離せず、深く深く求める。
頬に手を添えられ、音を立てて唇が離れる。
熱を奪われた寂しさに、どうして、と唇を追ってしまう。
軽くキスをされる。
けれど、すぐに離され、手のひらで口元を拭われた。
目を開くと、銀さんは愛おしそうに小さく笑った。
そのまま、骨が軋むほど強く私を抱きしめる。
「なぁ、いいか……」
「……シャワー」
熱に飲まれそうになりながらどうにか絞り出した声は震えていた。
「後にしろよ。待てねぇ」
帯に手をかけ、シュルリと解かれる。
「待って……」
「んだよ」
先へ先へと、性急な手つきをどうにか押し留める。
「……香水の匂いが」
誘いに乗ったらいいのにと言った手前、そんなことを気にしている自分が、ひどく情けなくなる。
体温が上がるにつれて、銀さんからうっすら漂い始めた匂いが何なのか、最初は分からなかった。
けれど、それがエリナさんのものだと気付くと、どうしても気になってしまった。
身体を離すと、銀さんがスンッと自分の身体に鼻を寄せる。
「あんときか。悪ィ……」
心当たりがあるのだろう。
銀さんはなんとも言えない顔で頭を掻いた。
その姿を見て、ますます自分の心の狭さが情けなくなる。
「いい。そのままで」と言おうとしたところで抱き上げられた。
「わっ……と。銀さん???」
ふわりと浮き上がり、そのまま抱えられる。
何が起きたのか理解する間もなく、脱衣所へ連れ込まれた。
――どうして?
――何?
混乱が、一気に押し寄せてくる。
「シャワー浴びんだろ?」
「う、うん。私、先に入ってもいいの?」
「待てねぇよ」
帯の下に巻いていた腰紐に手を掛けられる。
そこでようやく、一緒に入ろうとしているのだと気付く。
「銀さんも……?」
「ああ」
短く答えながらも銀さんは手を止めない。
襦袢に手をかけられたところで、恥ずかしくなり押さえる。
「あとは自分で……」
「そうか」
銀さんはそれだけ言って、自分のベルトに手をかける。思わず後ろを向く。
銀さんは恥ずかしくないのだろうか?
きっと気にしてなんかいない。
私はこんなにも恥ずかしいのに。恨めしくすら思う。
衣擦れの音が背後から聞こえてくる。
銀さんが脱いでいるのだと意識した途端、火が出そうになるほど顔に熱が集まる。
思わず逃げ出したくなるほどだった。
けれど、銀さんは「待てない」と言っていた。私だって、先ほど感じていた熱を奪われて寂しいと思うくらいには、銀さんに触れたいし感じていたい。
迷いながら最後の一枚に手をかけて脱ぎ、洗濯籠に入れる。
脱いだはいいけれど、振り向けずにどうしようかと躊躇する。
迷って動けずにいると、不意に手を引かれ、浴室の中に引きずり込まれた。
バランスを崩して銀さんの体にぶつかると、そのまま強く抱きしめられ、唇を塞がれる。
そのままユニットバスに押し込まれ、シャワーカーテンが閉められる。
少しでも距離を取ろうと、狭い空間の端に寄る。銀さんはこちらに背を向け、温度を確かめながらシャワーを出していた。
皮膚の下で緩く盛り上がる筋肉や、がっしりとした腰へ繋がる臀部は、見るからに硬そうだと思った。
温度を確かめるように一度シャワーを身体にかけ、銀さんが振り向いた。
手で身体を隠し、端へびったりと寄ってる私を見ると薄く笑う。
私と違い、銀さんは全てを隠さず堂々としている。思わず視線を逸らしてしまう。
「寒いだろ」
手招きされ、迷いながら近づく。
肩からゆっくりとお湯をかけられる。温かくて気持ちが良い。
十分に身体が濡れたことを確認すると、銀さんは壁のフックにシャワーをかけた。
柔らかい雨のように降り注ぐお湯が二人の身体に当たって弾ける。
おずおずと手を下ろし、銀さんに抱きつく。濡れた肌と肌が密着し、心の底から愛おしさが溢れる。
「ねぇ、銀さんのこと洗ってもいい? 手届かないから、そっち向いて座って欲しい」
シャワーを手に取り、背を向け座った銀さんの頭からお湯をかける。
「お客様~。かゆいところないですかー」
「ち◯こ。ちょっといい感じに触ってくんねぇ?」
「病気が頭に届く前に切り落とそうか?」
「やめろよ」
足元にシャワーを置き、シャンプーをつけワシャワシャと泡立てる。
いたずら心で角を作ってみる。可愛い。ばれる前に洗い流し、トリートメントをつけた。
「洗い流したあともなんかヌルヌルするし、これ嫌いなんだよ」
「銀さんの髪ごわつくじゃん。ちゃんとした方がいいって」
そんなことを言いながらアカスリを手に取り、背中を洗う。首や腕まで洗ったところで、手を止める。
それ以上はセンシティブ判定に引っ掛かってしまう。
「残りは自分でお願い」
「サービス悪くねぇ? 全部洗えよ」
「こっから先は有料になるんで」
「身体で払ってやるからさ、サービスしてよ」
立ち上がり、銀さんが振り返る。
アカスリを持った手を押さえられ、銀さんの胸に押し付けられる。
「ちゃんと洗わねぇと匂い落ちねぇだろ?」
そう言って銀さんは私の手を使い、身体を洗う。
「自分でできるでしょ……?」
苦し紛れの言葉は先細る。
自身の身体を銀さんの視線から隠すこともできず、手を引こうにも抑えられている。
何より銀さんの目がいやらしく細められているのが恥ずかしかった。
「して欲しいから頼んでんの」
アカスリを取り上げられ、直接銀さんの肌に手が触れる。
胸から腹、その下と手が落ちていく。
暴力的な程にそそり勃ったソコへ手が触れる。両手で挟み込むように抑えられる。
ぬるりとした触感の間で、ピクリと反応するのが分かった。
反射的に手を引く。
「無理っ」
しゃがみこんだ私に銀さんが笑う声が響く。
銀さんが自分の身体を洗い、足元で流れっぱなしだったシャワーを拾って全身を洗い流すまで、私はそのまま視線を上げられずにいた。
「洗ってやるよ」
その言葉に視線を上げると、手を掴まれ、立ち上がるよう促される。
銀さんは私の身体にお湯をもう一度かけ、シャワーをフックに掛けた。
そのままユニットバスの縁に置いてあるボディソープをプッシュし、手のひらに広げる。
嫌な予感がして、反対の壁まで寄った私を許して欲しい。
「じ、自分で洗うから」
そう断ったにもかかわらず、わきゃわきゃと手を動かし銀さんが近寄ってくる。
うっかり視界の隅に入った銀さんの銀さんは臨戦態勢を維持しており、今から行われることが命の洗濯なんかじゃないことを示していた。
「さっき、身体で払ってやるっつったじゃねぇか」
ぬるりと、肩に銀さんの手が触れる。それだけでビクリと身体がはねた。
「いい!!」
「声、響くから静かにな」
私の言葉を無視して、しーっと合図し、銀さんは正面から抱きすくめるように背中に手を回し、泡を広げていく。
背中から腰、そして腹へと回った腕が、胸を隠していた私の手の隙間を強引にこじ開けて割り込んでくる。
そのまま両手で胸を柔らかく揉み解しながら、隅々まで洗っていく。
やがて親指と薬指で先端をつままれ、人差し指でくるくると刺激を与えられた。
「んっ!!」
止めたくても両手で固く口を塞いでいなければ外まで声が響いてしまいそうで、銀さんに好き放題にされてしまう。
「やりずれぇな」
そうつぶやいた銀さんは、私の前後を反転させる。
たたらを踏んだ私を背後から抱えて、片腕で胸を揉みしだき、反対の手で太ももを撫で上げてくる。
「だめっ……!」
声が漏れるのも構わず、足と足の間を割って入ろうとする手を右手で止める。
壁に縫い付けられるように押し付けられ、止まらない刺激に息が乱れる。
そんな状態で、"ソコ"を触られたら——想像しただけで、ゾクゾクと全身に鳥肌が立った。
「ちゃんと気持ちよくしてやっから」
銀さんは意地悪くそう囁くと、ぬるりと私の拘束から逃れ、ダイレクトに手を滑り込ませる。
「んっ、んんっ――!!」
壁に押し当てた自分の左腕に噛みつくようにして、悲鳴を殺す。
肉芽が擦れ、腰の奥に響くような強い快楽が襲いかかる。ぬるりと足と足の間を行き来する手は、洗浄以外の意図を持って動いていた。
襞をつままれ、穴の縁をなぞられる。
銀さんの指がそんなことをしていると意識した途端、もう駄目だった。
止めようと伸ばす手は泡で滑り、まったく用をなさない。
「やっ……んーっ、んん……!」
ごりごりとお尻に銀さんのモノが押し当てられている。
もう何も考えられず、私はただ必死に声を殺すことしかできなかった。
「なぁ、素股って知ってるか?」
弱まる刺激に、深く息を吐く。スマタ……。すまた……。音が耳から抜けていく。
素股と漢字が当てはまったときには、ヌプリとお尻側から股の間を通して、固いモノが差し込まれた後だった。
どういう事をされているのか認識したとたん、ゾワゾワと背筋が反り返る。
「ぎ、ぎんさんっ!?」
「こーいうの知らねぇ?」
ゆっくりと腰が振られる。あまりにも卑猥な行為に、恥ずかしさで死んでしまいたくなった。
両手で胸を掴まえられながら腰が前後に振られる。生々しく、酷い行為に逃げようとすると、お腹に腕が回り止められる。
「もっと太もも締めてくんねぇ」
劣情を隠すことなく、銀さんは耳元で囁く。身体を曲げてこういう風にと、太ももの位置を直される。
私のモノと銀さんのモノがますます密着し、たまらず悲鳴を上げる。
「変態っ!」
「ちげーよ。大人のコミュニケーションつーんだよ」
言いくるめる言葉は何一つ信がおけるものではなかったが、抜き差しされる銀さんのモノが肉芽をかすめた。
「ふぁっ……やっん」
慌てて口を抑える。太ももを開けば刺激からは逃げられるが、そんなみっともない姿を晒したくなく反射的に閉じてしまう。
腰の位置を銀さんは微妙に修正し、私が快楽を拾う場所を探していた。
「ぎんさっ……」
「んー。この辺か?」
「そこっ、やぁああ」
石鹸以外のものでヌメっているのが銀さんにもきっとバレている。それがとても恥ずかしくて、気持ちよくて泣きそうになる。
胸の先をつまみながら銀さんは腰を振っていた。肌と肌がぶつかる音が響くたび、誰に、どんなふうに快楽を与えられているのかを、身体に教え込まれているようだった。
気がつけば銀さんのモノに腰を押し付けている。
「気持ちいいか?」
「んん……」
首を振るが、「嘘つき」と耳たぶを齧られる。濡れた舌が耳の凹凸を舐め回し、ジュッと音を立てて強く吸う。背筋が跳ね上がった。
それをきっかけに、滞留するような熱が段階をあげて押し寄せてくる。
「あっ、やぁ……ん、んっ——!!」
全身を銀さんに包まれている。そう思うほどに肌の一片一片が銀さんから与えられた
ちり積もった快感が弾け、背筋を駆け抜け、頭の天辺まで全身が反り返る。
「ぎん……んんっ!!!」
けれど、銀さんは止まらない。
強すぎる刺激に全身で抵抗するが、ピンで止められた蝶のように抑えられ、熱を注ぎ込まれる。
耳元で、獣のような荒々しい息遣いが聞こえていた。
身体を支えていられない私を抱え込みながら、銀さんが腰を打ち付ける。
訳も分からないまま、もう一度、身体が大きく跳ねた。
遅れて、銀さんの身体が強く震えるのを感じた。
ぱたぱたと飛び散ったものに、銀さんも達したのだとぼんやりとした頭で考える。
やがて、ずるずると二人で崩れ落ちる。
狭いバスタブの中で石鹸や、お互いのものでごちゃごちゃになりながらしばらく抱き合っていた。
「銀さん……キスして」
抱き合いながら
お互いの体温と肌が触れ合う感触が心地よくて、全身で甘えるようにすり寄る。
「二ラウンド目突入されたくなかったら気をつけろよ」
「その際はおかえり願っても?」
「無理に決まってんだろ」
言葉の割りには背中に回る手は優しく、抱き上げるように身体を支えられ、ゆっくりと立たされる。
そのまま銀さんはシャワーを手に取り、私の身体に優しくお湯をかけはじめた。
けれど、下半身に手を伸ばされ、思わず身構えてしまう。
「洗うだけだよ」
力を抜くと銀さんは言葉通り、優しく洗っていく。
不思議とそういう意図がないことが分かるとあまり恥ずかしさを感じなかった。
「……介護みたい?」
「老人介護かこれ? ババアになっても洗ってやろうか?」
「じゃあ、私も銀さんがジジイになっても身体洗ってあげるね」
「なんだそりゃ。ババアとジジイで身体洗い合うのか? 酷い絵面だな」
「ふふっ、本当に酷いね。……でもいいよ、銀さんだから」
もう一度キスをすると、そのまま抱きつき互いの熱を感じ合っていた。