半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~ 作:古弥須 凱
「いいよ、じゃあやろう。
時間はかけないよ。どうせそんなに持たないだろ?
出したくなったら合図はいらない。ただ、出せばいい」
そう言ったローレンスは、彼の目の前で腰を落としていった。
ルシエルの先端が、彼女の温かく湿った割れ目に触れた瞬間、ルシエルは息を詰めた。
ローレンスは焦らず、優しく自分の指でそっと肉襞を押し開いた。
角度を調整しながら、自分の体重を使って、ゆっくりとルシエルを飲み込んでいく。
少女の濡れた粘膜が、ルシエルの敏感な先端を包み込み、根元まで滑り降りるように沈んでいく。
「ん……くっ……」
ルシエルは喉を詰まらせ、体を震わせた。
最後に女の身体に入ったのは、もうずっと昔のことのように思えた。
味わう内部の圧迫感と熱さに、頭が麻痺したようだった。
ベアトリチェの濃厚な……絡みつくように残酷な動きとはまるで違う、少女らしい柔らかさと温かさが、彼を包み込んだ。
ローレンスは腰を完全に落としきると、ルシエルの肩に両手を置いて、軽く息を吐いた。
「……続けていいか?」
ルシエルは、快感を押し隠して、ただ小さくうなづいた。
ローレンスは「ふん」と小さく鼻を鳴らし、そのまま腰を上下に動かし始めた。
動きは決して激しくなく、ルシエルが感じやすい場所を確かめるように、丁寧で優しい。
「出したいときは、出せよ……我慢しなくていいぜ。……あたしが受け止めてやる」
ルシエルはローレンスの腰の動きに合わせて、無意識に腰を波打たせた。
「ローレンス……ああ……お前は、すごくやわらかい…」
ローレンスはルシエルの肩を優しく押さえ、リズムを少しだけ速めた。
「いいぞ……そのままでいい……もっと気持ちよくしてやる……」
内部がルシエルを締め付け、ぬるぬるとした摩擦が快楽を増幅させる。
「あんた、感じ方がうまいじゃん。悪くないよ、あたしも気持ちいい」
汗がにじみ、唾を飲み込むだけで喉が痛んだ。
女のように声をあげて喘ぎたくなるのを、必死でこらえた。
これまでずっと、女たちの欲望のままに、肉体を奪われ、犯されてきたルシエルは、男としてどのように振る舞うのが正しいのかがわからなかった。
目の前で、ローレンスの制服の胸元がはげしく上下する。
彼女の身体には触ることができない、というルールが余計に欲望を燃え立たせた。
「触りたい……ローレンス」
制服を引き裂いて剥ぎ取り、その膨らみを揉みしだいて、桃色の乳首を吸い立てたかった。
上下する白い尻を、きつく指で掴み、はげしく振り立てたかった。
しかしそれは、ローレンスのルールでは許されなかった。
「ばかだね、あんた。
もう、あたしの……いちばん深いとこに触ってるんだ。
今は、あんたの場所だ。そこで、出したいときに出していい」
さらに動きが早まり、ルシエルを固く締めつけた。
「出る……ああ、もうっ……ローレンス……出る……!!」
ルシエルは、もう耐えられなかった。
「言わなくていいってば。出せよ……いいから……」
ルシエルは体を固くこわばらせ、ああ、と息を詰まらせながら、熱い飛沫をローレンスの中に勢いよく放った。
何度も脈打って、大量の白濁が彼女の奥に注がれる。
ローレンスは最後まで腰を落としたまま、ルシエルの射精を静かに受け止める。
その半ば閉じかけた瞳で、ルシエルはローレンスと一瞬、静かに見つめ合っていた。
「……いいね、泣くほど良かったかい。
可愛い顔だ、あたしの女心ってやつがくすぐられる」
すべて見透かされて、ソファにぐったりと倒れかかった。
「お前もかよ、ローレンス。
世の中ってやつは結局、
まったくもって、がっかりだ。俺たちの友情も、もうおしまいだな」
雑誌から顔もあげずに、マルコが茶化した。
ルシエルはまだ、温かく包み込むような快楽の余韻に浸っていた。
その感覚は、かつての女従者クラレンスの冷たい搾精行為とも、ベアトリチェとの激しくお互いを奪い合う快楽とも、全く違っていた。
はじめて、お互いを与え合うような体験だった。
ローレンスはゆっくりと腰を上げた。
「これっきりの卒業祝いで……おかわりなしだ。
またしたいくらい良かったけど、これじゃキリがないからね」
ルシエルは何も答えられず、ただ震える息を吐いた。
ローレンスは小さく笑って、ルシエルの唇にそっと、自分のそれを重ねた。
ルシエルは目を閉じて、味わった。
彼の中に小さく、胸の中でなにかが疼くような気持ちになった。
さすがに気が付いて、マルコが雑誌から顔をあげて抗議した。
「おーい、ローラ……!キスはだめだ!!」
ルシエルの見ている前で、彼女を抱き寄せてキスを
「お前は、俺の
こいつの
「ああ、わかってるさマルコ。
あたしには、あんたレベルの男がお似合いだ、
呆然としているルシエルを見ながら、ローレンスは微笑んだ。
「逆に、この公爵さまに合うような、理想の女ってのは、なかなか見つけるのが難しそうだ。
なぁ、あんた。——きっと将来、苦労するぜ」
*
ローラに突然投げつけられた「理想の女」、という言葉に……ルシエルはふと考え込んでいた。
親同士がきめた婚約者であろう、マルコとローレンス…いやローラの関係は、学友同士そのままにこざっぱりしたものだった。
二人の間に流れる雰囲気には、はっきりとお互いを尊重し合うものが感じられた。
ルシエルが、彼らの"ほほえましい、健全な愛"をうらやましく思ったのは、事実だった。
しかし——ルシエルにとって、"理想の女性"とは、まさに彼の美しい姉君であった、ベアトリチェその人のことだった。
その愛が破滅を迎えたとき、彼女はためらう事なく、自ら死を選んだ。
理想の女性は、永遠に失われていた。
そして、ルシエルだけがただ独り、この世界に残された。
全ての責任が、魔界で最も旧い名家の後継者となったルシエルに、すでに重くのしかかっていた。
たった一人で、全てに向き合わなければならなかった。
彼を愛し、認めてくれる存在は、もうどこにもいなかった。
かつて、「いつかお前には、誰か、ほかの
その時、そんな日は来ないと、ムキになって彼が答えたように。
——今のルシエルには、誰かほかの
また誰かが、彼の冷たく凍てついた魂ごとを愛し、すべてを優しく受け入れてくれるとも思えなかった。
だからこそ、自分の感情を、心を押し隠し、ただ快楽に溺れた。
それでいて、決して得られない愛をひたすらに渇望し、執着し続けた。
ルシエルは、死んだ黒猫に泣きすがる少年の日の、その本来の自分からは、もうはるか昔のうちに変わっていた。
美しく冷酷で、どこまでも孤独な魂を抱えた、黒き貴公子としてしか、生きられなくなっていた。