※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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22話 理想の女性

「いいよ、じゃあやろう。

時間はかけないよ。どうせそんなに持たないだろ?

出したくなったら合図はいらない。ただ、出せばいい」

 

そう言ったローレンスは、彼の目の前で腰を落としていった。

 

ルシエルの先端が、彼女の温かく湿った割れ目に触れた瞬間、ルシエルは息を詰めた。

 

ローレンスは焦らず、優しく自分の指でそっと肉襞を押し開いた。

 

角度を調整しながら、自分の体重を使って、ゆっくりとルシエルを飲み込んでいく。

 

少女の濡れた粘膜が、ルシエルの敏感な先端を包み込み、根元まで滑り降りるように沈んでいく。

 

「ん……くっ……」

 

ルシエルは喉を詰まらせ、体を震わせた。

 

最後に女の身体に入ったのは、もうずっと昔のことのように思えた。

 

味わう内部の圧迫感と熱さに、頭が麻痺したようだった。

 

ベアトリチェの濃厚な……絡みつくように残酷な動きとはまるで違う、少女らしい柔らかさと温かさが、彼を包み込んだ。

 

ローレンスは腰を完全に落としきると、ルシエルの肩に両手を置いて、軽く息を吐いた。

 

「……続けていいか?」

 

ルシエルは、快感を押し隠して、ただ小さくうなづいた。

 

ローレンスは「ふん」と小さく鼻を鳴らし、そのまま腰を上下に動かし始めた。

 

動きは決して激しくなく、ルシエルが感じやすい場所を確かめるように、丁寧で優しい。

 

「出したいときは、出せよ……我慢しなくていいぜ。……あたしが受け止めてやる」

 

ルシエルはローレンスの腰の動きに合わせて、無意識に腰を波打たせた。

 

「ローレンス……ああ……お前は、すごくやわらかい…」

 

ローレンスはルシエルの肩を優しく押さえ、リズムを少しだけ速めた。

 

「いいぞ……そのままでいい……もっと気持ちよくしてやる……」

 

内部がルシエルを締め付け、ぬるぬるとした摩擦が快楽を増幅させる。

 

「あんた、感じ方がうまいじゃん。悪くないよ、あたしも気持ちいい」

 

抽送(ピストン)が、早まった。

 

汗がにじみ、唾を飲み込むだけで喉が痛んだ。

 

女のように声をあげて喘ぎたくなるのを、必死でこらえた。

 

これまでずっと、女たちの欲望のままに、肉体を奪われ、犯されてきたルシエルは、男としてどのように振る舞うのが正しいのかがわからなかった。

 

目の前で、ローレンスの制服の胸元がはげしく上下する。

 

彼女の身体には触ることができない、というルールが余計に欲望を燃え立たせた。

 

「触りたい……ローレンス」

 

制服を引き裂いて剥ぎ取り、その膨らみを揉みしだいて、桃色の乳首を吸い立てたかった。

 

上下する白い尻を、きつく指で掴み、はげしく振り立てたかった。

 

しかしそれは、ローレンスのルールでは許されなかった。

 

「ばかだね、あんた。

もう、あたしの……いちばん深いとこに触ってるんだ。

今は、あんたの場所だ。そこで、出したいときに出していい」

 

さらに動きが早まり、ルシエルを固く締めつけた。

 

「出る……ああ、もうっ……ローレンス……出る……!!」

 

ルシエルは、もう耐えられなかった。

 

「言わなくていいってば。出せよ……いいから……」

 

ルシエルは体を固くこわばらせ、ああ、と息を詰まらせながら、熱い飛沫をローレンスの中に勢いよく放った。

 

何度も脈打って、大量の白濁が彼女の奥に注がれる。

 

ローレンスは最後まで腰を落としたまま、ルシエルの射精を静かに受け止める。

 

その半ば閉じかけた瞳で、ルシエルはローレンスと一瞬、静かに見つめ合っていた。

 

「……いいね、泣くほど良かったかい。

可愛い顔だ、あたしの女心ってやつがくすぐられる」

 

すべて見透かされて、ソファにぐったりと倒れかかった。

 

「お前もかよ、ローレンス。

世の中ってやつは結局、顔(ツラ)がいい男が総どりってことだ。

まったくもって、がっかりだ。俺たちの友情も、もうおしまいだな」

 

雑誌から顔もあげずに、マルコが茶化した。

 

ルシエルはまだ、温かく包み込むような快楽の余韻に浸っていた。

 

その感覚は、かつての女従者クラレンスの冷たい搾精行為とも、ベアトリチェとの激しくお互いを奪い合う快楽とも、全く違っていた。

 

はじめて、お互いを与え合うような体験だった。

 

ローレンスはゆっくりと腰を上げた。

 

「これっきりの卒業祝いで……おかわりなしだ。

またしたいくらい良かったけど、これじゃキリがないからね」

 

ルシエルは何も答えられず、ただ震える息を吐いた。

 

ローレンスは小さく笑って、ルシエルの唇にそっと、自分のそれを重ねた。

 

ルシエルは目を閉じて、味わった。

 

彼の中に小さく、胸の中でなにかが疼くような気持ちになった。

 

さすがに気が付いて、マルコが雑誌から顔をあげて抗議した。

 

「おーい、ローラ……!キスはだめだ!!」

 

ルシエルの見ている前で、彼女を抱き寄せてキスをし(・)直(・)し(・)た(・)。

 

「お前は、俺の婚約者(フィアンセ)なんだ。

こいつの顔(ツラ)なんかに騙されんなよ?……こんなのに惚れたら、一生泣きをみるハメになるぜ」

 

「ああ、わかってるさマルコ。

あたしには、あんたレベルの男がお似合いだ、わが君(マイロード)」

 

呆然としているルシエルを見ながら、ローレンスは微笑んだ。

 

「逆に、この公爵さまに合うような、理想の女ってのは、なかなか見つけるのが難しそうだ。

なぁ、あんた。——きっと将来、苦労するぜ」

 

 

 

*

 

 

  

ローラに突然投げつけられた「理想の女」、という言葉に……ルシエルはふと考え込んでいた。

 

親同士がきめた婚約者であろう、マルコとローレンス…いやローラの関係は、学友同士そのままにこざっぱりしたものだった。

 

二人の間に流れる雰囲気には、はっきりとお互いを尊重し合うものが感じられた。

 

ルシエルが、彼らの"ほほえましい、健全な愛"をうらやましく思ったのは、事実だった。

 

しかし——ルシエルにとって、"理想の女性"とは、まさに彼の美しい姉君であった、ベアトリチェその人のことだった。

 

その愛が破滅を迎えたとき、彼女はためらう事なく、自ら死を選んだ。

 

理想の女性は、永遠に失われていた。

 

そして、ルシエルだけがただ独り、この世界に残された。

 

全ての責任が、魔界で最も旧い名家の後継者となったルシエルに、すでに重くのしかかっていた。

 

たった一人で、全てに向き合わなければならなかった。

 

彼を愛し、認めてくれる存在は、もうどこにもいなかった。

 

かつて、「いつかお前には、誰か、ほかの女性(ひと)を愛してほしいわ」と、ルシエルを愛した姉君は言った。

 

その時、そんな日は来ないと、ムキになって彼が答えたように。

 

——今のルシエルには、誰かほかの女性(ひと)を愛することが出来るとは、とても思えなかった。

 

また誰かが、彼の冷たく凍てついた魂ごとを愛し、すべてを優しく受け入れてくれるとも思えなかった。

 

だからこそ、自分の感情を、心を押し隠し、ただ快楽に溺れた。

 

それでいて、決して得られない愛をひたすらに渇望し、執着し続けた。

 

ルシエルは、死んだ黒猫に泣きすがる少年の日の、その本来の自分からは、もうはるか昔のうちに変わっていた。

 

美しく冷酷で、どこまでも孤独な魂を抱えた、黒き貴公子としてしか、生きられなくなっていた。

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