半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~ 作:古弥須 凱
ルシエルが、その古い
その家は、彼が出仕するサタン王宮から離れた、瘴気の薄い外れの街並みにひっそりと佇み、使用人は最小限だった。
屋敷内のごく一部の者——ルシエル卿の個人的な従者たち、そして彼らから引き継いだ新しい従者——ずっと後にはレジナルドやナサニエルしか、その存在を知らなかった。
普段はほとんど通わない。
公務に追われ、魔界の貴族たちとの駆け引きに明け暮れる日々の中で、魔力が烈しく昂り、感情が抑えきれなくなった時だけ、ルシエルはそのタウンハウスを訪れた。
苛立ちが頂点に達し、胸の奥で何かが爆発しそうになる時だけだった。
従者は、外で待たせた。
彼らは門の外、馬車の影に佇み、決して中には同行させなかった。
口数の少ない女中が扉を開け、ルシエルは薄暗い廊下を進む。
短い時は一時間ほど、普段は二、三時間。
中では、ルシエルが"囲って"いる女が待っている。
歩けない体を車椅子に預け、窓辺で外を見つめている。
ルシエルが入ると、ただその冷たい、紅い瞳を彼に向けた。
かつて彼の女従者だったクラレンス……今は本名のクララと呼ばれていた。
言葉は、ほとんど交わさない。
女従者時代、短く切り揃えていた赤い髪は、今は艶やかに美しく結いあげられ、胸当てに押し込んでいた胸の豊かさが、今はドレスの上からはっきりと判る。
クララは……今も変わらず、ルシエルの所有物だった。
ルシエルは無言で近づき、クララの顎を掴んで顔を上げさせる。
クララは無言で、ゆっくりと、主人の前をほどいた。
部屋に足を踏み入れた時から、ルシエルの陰茎はすでに固く、痛いほどに反り返っていた。
クララがその赤い唇を開き、甘い唾液を絡めた舌で、ねっとりとルシエルの陰茎を呑み込んでいく。
(……半血の坊ちゃま、また来たんですね。もうすっかり大人になられて、ご立派なお立場だというのに、まだ私の
今日もたっぷり、貴方のとことん甘えきった、情けないおちんぽを、苛めて差し上げます)
ルシエルは、自身を咥えたまま残酷に彼を見つめるクララを……ただ見下ろしていた。
(今日はどうしたいんですか、公爵様。疲れ切って、欲望の疼きに悶え苦しむ、なんとも情けないお顔です。
お口だけなら、このまま抜いて差し上げます。おまんこまで使いたければ、ベッドまでどうぞ)
クララは喉を鳴らして受け入れ、舌を絡めながら、以前と変わらずまったく感情を込めない声で、念を送ってくる。
ルシエルは、一瞬迷った。
「口だけでいい。今日は、時間がない」
(そうですね。この時間なら、王宮にご出仕される前に立ち寄られたのでしょう。
どうぞ、クララの口を思い切り犯して……あなた様の高貴なおちんぽ汁を、残らず
「——今日の俺は、
ルシエルの腰が、強引に前後に動き始める。
(ルシエル様のおちんぽが、私の喉の奥でどんどん長く、膨らんでいます。
こんなに奥まで突き入れられて、苦しくて仕方ありません。
さぁ、もっと腰を振って。
わたしは、あなた様のみじめな
あなたが壊しきった、可哀想なクララのおくちに、全部ぶちまけて下さい。
私の口に射精して、白くどろどろに……塊まで出して、汚して、復讐なさい。
大嫌いな私の口の中に突っ込んで、喉奥にぴったりあなたのおちんぽを当てて下さい。私が悶え苦しむその振動を感じながら、苦い精液を注いで、最後の一滴まで呑ませて——)
クララの念話に責め立てられながら、彼女の頭ごとを掴み、欲望のままに烈しく揺さぶった。
美しく結い上げられた髪が乱れ、髪飾りが絨毯にこぼれ落ちた。
(顔に
半血の坊ちゃまは、そういうのが男らしさだと思ってらっしゃる)
残酷に喉奥まで突き入れ、激しく腰を振るたび、クララの念話が苛烈さを増していく。
(さあ、もう歩くことも出来ない、壊れた私を犯して。
私は、どこにも逃げられない。クララは、あなたのメス奴隷……精液を注がれるだけのおまんこ人形なの。
わたしの中に、あなたの好きなだけ、おちんちんからビュッビュッと注いで。あなたを壊した女に飲ませて、たっぷり喉奥に
どうぞ、私をぜんぶ汚して下さい。あなたを
すすり立てる音がさらに激しくなり、ルシエルは天井を仰いだ。
「ああ……くそっ!……俺は、いまもお前なんか大嫌いだ……クラレンス……!だが、お前のなかに出したくてたまらない……!!」
クララは、ただ冷たく煽った。
(ルシエル様、あなた様は今や、七十二柱の魔王の一人で、魔界の公爵なのですよ?
ベアトリチェ様に甘く嬲られ、しごかれて、泣きながら情けなくどぴゅどぴゅっ♡してた、半血のガキではないのです。
さぁ、ルシエル公爵、こう言いなさい。
「姉上……見てくれ……俺のちんちん……こんなに惨めにイッてる……」
惨めに射精しながら、おちんぽ汁を垂らして……最高にみっともないですね)
彼の姉の名を出す事で、ルシエルの歪んだ昏い快楽を倍増させることを知っていた。
引き結んだ口から、悲痛な呻きを漏らしながら、ルシエルは腰を動かした。
ベアトリチェの残酷な……美しい瞳に見つめられながら、身も世もなく果てた、あの少年の日の昏い快楽が蘇ってきた。
(そろそろ切り上げなければ、ルシエル様。
王宮に遅れるわけには参りません。
クララは……いえクラレンスはこんな身体になっても、貴方様の
きちんと貴方様をスケジュール通り動かすのが、私の仕事です)
「だめだ、クララ……もう少し——もう少しだけ頼む……もっとはげしく……強く吸ってくれ……!!」
(ルシエル様は、本当に仕方のない子ですね。
はやく、
私に犯され続けたあの時のように、頭を真っ白にして、腰まで震えて、おちんぽピクピクさせてイキたくて……
こそこそと人目を忍んで、私のところへやって来る……そうでしょう。そうだと言いなさいな)
「そうだ……言ってくれ……
ああ、イキたい……頼む……クララ……
俺を、苛めてくれ……」
クララの口元で、じゅるじゅると唾液が泡立つ。
その赤い唇から、てらてらと濡れたペニスが抜き差しされる、生々しく卑猥な音が響いた。
眉根を歪めて、ルシエルが堪えきれずに喘いだ。
「クララ……頼む……はやく……!!」
クララの瞳に、あの時と同じ残酷な光が宿った。くすっと内心で笑った。
(どこまでも、呆れたガキですね、あなた様は。私がお仕えしていた頃と、まるで何も変わっていない。
それで公爵気取りだなんて、恥ずかしくないんですか。
私に絞り取られて、泣きながら何度もイッていたわね。
ベアトリチェさまに見られながら、私にクポクポ吸い出されるのは気持ちよかったでしょう。
みじめで、可哀そうな——半血のルシエル坊ちゃま。
こんな情けない声をあげて喘いでいるあなた様は、男とはとても呼べません。ベアトリチェ様はきっと、いまのルシエル様に失望なさるでしょう)
また、最愛の姉君の名前を出されて、さらに恥辱の感情が昂った。
(もう時間ですし、許可いたしましょう、半血の坊ちゃま。
あなた様がパンパンに溜め込んだ——濃ぉいちんぽミルクを、私の口でしぼり出すお時間です)
その言葉に反応して、焦らし抜かれたルシエルの身体が、快楽の期待に震えていた。
「……クラレンス…………!!」
少年の日の屈辱を、快楽としてもう一度味わうために、ここにいた。
「頼む……言ってくれ!!」
堪えきれず、首を振って哀願した。
クララが嘲り笑うのが、念で伝わった。
(……さぁ、いい子ね。
今日は思う存分、クララのお口にどくどく出しなさい♡
ぜーんぶ、おちんちんの中身を、
ほぉら、ルシエル坊ちゃま♡
貴方の大嫌いな……クラレンスお姉さんのお口まんこに、いーっぱい♡、しーしー出してね♡)
甘くとろかすように、クララが発した"射精を許可"する言葉に、ルシエルの
女のように声をあげながら、ルシエルは体を反らし、クララの喉奥深くに、おびただしい精液を放っていた。
「あっ……お゙お゙お゙お゙……ッ!!!」
どくどくと脈打つ感覚が、ルシエルの感覚をすべて白く塗りつぶし、絶頂の中で果てた。
ああ、ああと言葉に出来ず、舌先が自分の荒い呼気に晒されて、渇いた。
ルシエルの腿裏が、快楽の余韻に震えている。
(………………)
クララは冷たい瞳のままで、すべてを受け止め、ごくごくと音を立てて白濁を飲み干した。
くすりと笑って、彼女が求められる役割の念を送った。
(……こんなに苦くなるまで、たっぷり溜め込んでたのね、坊ちゃま♡
すごく濃くて、ドロドロに濁りきっている。喉の奥にまだ残っていて、とても飲み込めないくらい。
——また苛立ちが爆発したら、いらっしゃい。
私がいつでも、ベアトリチェ様の代わりに、根元までしゃぶってあげるわ……♡
次はまた、ルシエル坊ちゃまの大好きな
昔通りの、嘲るような口調だった。
そしていつも、彼女がそう嘲ることを、ルシエルは望んでいた。
普段は、冷酷な魔王として振る舞い、女たちを組み伏せ、貫いて容赦なく犯す、その快楽に耽りながら——
ルシエルは、この部屋を訪れた時だけは、この女従者に罵られ、屈服させられ、絶頂までの時間を管理され、最後にはただ惨めに、屈辱的に射精させられることを望んだ。
それは、クラレンスが女従者として少年の日の彼を"しつけ"たやり方、そのものだった。
自分を恥じながら、この場所を訪れることを、ずっとやめられないでいた。
彼の中に黒く滾りつづける欲望を、こんな歪な性愛の形でしか、放ち切ることが出来なかった。
元従者として、クララは……その歪みを受け入れていた。
彼女の主人の求めるままに、その欲望を燃え立たせ、甘くしゃぶり立て、最後の一滴まで吸い尽くした。
彼を支配していたベアトリチェを亡くしたルシエルもまた、クララに依存することでしか、この歪んだ欲望を満たす方法を知らなかった。
*
ルシエルは事を終えると、クララから離れ、ただ無言で、衣服を整えた。
出仕の時間が迫っていた。
「何か……必要なことがあれば、俺の従者に言え」
部屋を出る前に、振り返ったルシエルが言った。
クララは、ただ冷たく微笑んだ。
「いいえ、何も……もう十分に可愛がって頂いております。ルシエル様」
棘を含んだ、言い方だった。
「こんな
ルシエルは魔力の暴走によって彼女の肉体を破壊したが、クララは少年だったルシエルの心を、完膚なきまでに叩き潰した女だった。
憎しみ合いながら、まだ歪んだ快楽のために、この主従は繋がっていた。
ルシエルは、冷たく吐き捨てた。
「そうだな、お前は俺の女従者だ。
——これからも変わらず尽くしてくれ、クラレンス」
最愛の姉君を失い、ぼろぼろになった彼自身の心を罰するために、ルシエルは彼女にすがっている。
そして——
クラレンスもまた、ベアトリチェへの忠義心のために、彼女が愛した半血の弟を、永遠に壊し続けることを決めていた。
ルシエルが、そう望む限りは——
「私は誠心誠意、ルシエル様のために……文字どおり、この身を捧げておりますわ」
クララは、冷たく微笑んだ。
「あなた様がこれから召し抱える、どんな従者の男たちよりも、このクラレンスの忠義は厚い。
それをお忘れにならないで下さい、
【 完 】
【編集部注】
本書、『【ルシエル卿外伝】魔界で一番美しい少年』の原典である、「黒き貴公子と淫欲の
ハデス公爵家の終焉、そして若き魔王の誕生——その後、彼がいかに魔界の覇権争いを生き抜き、残忍かつ冷酷な「魔界の英雄」として称えられるに至ったのか。
その経緯は、彼の息子であるセオドア公の手によって"
側室の子として生まれ、異母姉だけに溺愛され、支配され、壊れていった少年ルシエルが、その後どのようにして「黒き貴公子」と呼ばれる若き魔王になっていくのか。
異母姉ベアトリチェが遺した「沈黙」の代わりに、彼が何を選び取ったのか。
そして、あの十二夜に彼が傷つけた人間の姫君リーザと、彼は再び相見えることになる——
続く物語は、正史として現存するルシエル卿の伝記、『半血魔王の
サキュバスの双子を性支配する、孤独な魔王としての日々。
人間の姫リーザとの再会。
そして、彼が繰り返すことになる過ちの数々——
読者諸氏には是非、ルシエル卿という稀代の傑物、或いは歪んだ英雄、美しき「
「半血魔王の