※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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23話 最終回 愛人<ミストレス>

ルシエルが、その古い市街邸(タウンハウス)を自分のものにしたのは、公爵位を継いで、数年経った頃だった。

 

その家は、彼が出仕するサタン王宮から離れた、瘴気の薄い外れの街並みにひっそりと佇み、使用人は最小限だった。

 

屋敷内のごく一部の者——ルシエル卿の個人的な従者たち、そして彼らから引き継いだ新しい従者——ずっと後にはレジナルドやナサニエルしか、その存在を知らなかった。

 

普段はほとんど通わない。

 

公務に追われ、魔界の貴族たちとの駆け引きに明け暮れる日々の中で、魔力が烈しく昂り、感情が抑えきれなくなった時だけ、ルシエルはそのタウンハウスを訪れた。

 

苛立ちが頂点に達し、胸の奥で何かが爆発しそうになる時だけだった。

 

従者は、外で待たせた。

 

彼らは門の外、馬車の影に佇み、決して中には同行させなかった。

 

口数の少ない女中が扉を開け、ルシエルは薄暗い廊下を進む。

 

短い時は一時間ほど、普段は二、三時間。

 

中では、ルシエルが"囲って"いる女が待っている。

 

歩けない体を車椅子に預け、窓辺で外を見つめている。

 

ルシエルが入ると、ただその冷たい、紅い瞳を彼に向けた。

 

かつて彼の女従者だったクラレンス……今は本名のクララと呼ばれていた。

 

言葉は、ほとんど交わさない。

 

女従者時代、短く切り揃えていた赤い髪は、今は艶やかに美しく結いあげられ、胸当てに押し込んでいた胸の豊かさが、今はドレスの上からはっきりと判る。

 

クララは……今も変わらず、ルシエルの所有物だった。

  

ルシエルは無言で近づき、クララの顎を掴んで顔を上げさせる。

 

クララは無言で、ゆっくりと、主人の前をほどいた。

 

部屋に足を踏み入れた時から、ルシエルの陰茎はすでに固く、痛いほどに反り返っていた。

 

クララがその赤い唇を開き、甘い唾液を絡めた舌で、ねっとりとルシエルの陰茎を呑み込んでいく。

 

(……半血の坊ちゃま、また来たんですね。もうすっかり大人になられて、ご立派なお立場だというのに、まだ私の肉体(カラダ)でわ(・)か(・)ら(・)せ(・)て欲しいなんて……。

今日もたっぷり、貴方のとことん甘えきった、情けないおちんぽを、苛めて差し上げます)

 

ルシエルは、自身を咥えたまま残酷に彼を見つめるクララを……ただ見下ろしていた。

 

(今日はどうしたいんですか、公爵様。疲れ切って、欲望の疼きに悶え苦しむ、なんとも情けないお顔です。

 

お口だけなら、このまま抜いて差し上げます。おまんこまで使いたければ、ベッドまでどうぞ)

 

クララは喉を鳴らして受け入れ、舌を絡めながら、以前と変わらずまったく感情を込めない声で、念を送ってくる。

 

ルシエルは、一瞬迷った。

 

「口だけでいい。今日は、時間がない」

 

(そうですね。この時間なら、王宮にご出仕される前に立ち寄られたのでしょう。

どうぞ、クララの口を思い切り犯して……あなた様の高貴なおちんぽ汁を、残らず排泄(はきだ)していって下さい、公爵様)

 

「——今日の俺は、滾(たぎ)っている。はやく、済ませたい」

 

ルシエルの腰が、強引に前後に動き始める。

 

(ルシエル様のおちんぽが、私の喉の奥でどんどん長く、膨らんでいます。

こんなに奥まで突き入れられて、苦しくて仕方ありません。

 

さぁ、もっと腰を振って。

わたしは、あなた様のみじめな精液人形(くちまんこ)です。

あなたが壊しきった、可哀想なクララのおくちに、全部ぶちまけて下さい。

 

私の口に射精して、白くどろどろに……塊まで出して、汚して、復讐なさい。

 

大嫌いな私の口の中に突っ込んで、喉奥にぴったりあなたのおちんぽを当てて下さい。私が悶え苦しむその振動を感じながら、苦い精液を注いで、最後の一滴まで呑ませて——)

 

クララの念話に責め立てられながら、彼女の頭ごとを掴み、欲望のままに烈しく揺さぶった。

 

美しく結い上げられた髪が乱れ、髪飾りが絨毯にこぼれ落ちた。

 

(顔に発射(ぶっかけ)ますか?それでもいいですよ。

半血の坊ちゃまは、そういうのが男らしさだと思ってらっしゃる)

 

残酷に喉奥まで突き入れ、激しく腰を振るたび、クララの念話が苛烈さを増していく。

 

(さあ、もう歩くことも出来ない、壊れた私を犯して。

 

私は、どこにも逃げられない。クララは、あなたのメス奴隷……精液を注がれるだけのおまんこ人形なの。

 

わたしの中に、あなたの好きなだけ、おちんちんからビュッビュッと注いで。あなたを壊した女に飲ませて、たっぷり喉奥に射精(マーキング)して。

 

どうぞ、私をぜんぶ汚して下さい。あなたを怪物(モンスター)にした私を、滅茶苦茶にして)

 

すすり立てる音がさらに激しくなり、ルシエルは天井を仰いだ。

 

「ああ……くそっ!……俺は、いまもお前なんか大嫌いだ……クラレンス……!だが、お前のなかに出したくてたまらない……!!」

 

クララは、ただ冷たく煽った。

 

(ルシエル様、あなた様は今や、七十二柱の魔王の一人で、魔界の公爵なのですよ?

 

ベアトリチェ様に甘く嬲られ、しごかれて、泣きながら情けなくどぴゅどぴゅっ♡してた、半血のガキではないのです。

 

さぁ、ルシエル公爵、こう言いなさい。

「姉上……見てくれ……俺のちんちん……こんなに惨めにイッてる……」

惨めに射精しながら、おちんぽ汁を垂らして……最高にみっともないですね)

 

彼の姉の名を出す事で、ルシエルの歪んだ昏い快楽を倍増させることを知っていた。

 

引き結んだ口から、悲痛な呻きを漏らしながら、ルシエルは腰を動かした。

 

ベアトリチェの残酷な……美しい瞳に見つめられながら、身も世もなく果てた、あの少年の日の昏い快楽が蘇ってきた。

 

(そろそろ切り上げなければ、ルシエル様。

王宮に遅れるわけには参りません。

クララは……いえクラレンスはこんな身体になっても、貴方様の第一従者(ヴァレット)。

きちんと貴方様をスケジュール通り動かすのが、私の仕事です)

 

「だめだ、クララ……もう少し——もう少しだけ頼む……もっとはげしく……強く吸ってくれ……!!」

 

(ルシエル様は、本当に仕方のない子ですね。

はやく、あ(・)れ(・)を言って欲しくてたまらないんでしょう。

 

私に犯され続けたあの時のように、頭を真っ白にして、腰まで震えて、おちんぽピクピクさせてイキたくて……

 

こそこそと人目を忍んで、私のところへやって来る……そうでしょう。そうだと言いなさいな)

 

「そうだ……言ってくれ……

ああ、イキたい……頼む……クララ……

俺を、苛めてくれ……」

 

クララの口元で、じゅるじゅると唾液が泡立つ。

 

その赤い唇から、てらてらと濡れたペニスが抜き差しされる、生々しく卑猥な音が響いた。

 

眉根を歪めて、ルシエルが堪えきれずに喘いだ。

 

 

「クララ……頼む……はやく……!!」

 

クララの瞳に、あの時と同じ残酷な光が宿った。くすっと内心で笑った。

 

(どこまでも、呆れたガキですね、あなた様は。私がお仕えしていた頃と、まるで何も変わっていない。

それで公爵気取りだなんて、恥ずかしくないんですか。

 

私に絞り取られて、泣きながら何度もイッていたわね。

 

ベアトリチェさまに見られながら、私にクポクポ吸い出されるのは気持ちよかったでしょう。

 

みじめで、可哀そうな——半血のルシエル坊ちゃま。

 

こんな情けない声をあげて喘いでいるあなた様は、男とはとても呼べません。ベアトリチェ様はきっと、いまのルシエル様に失望なさるでしょう)

 

また、最愛の姉君の名前を出されて、さらに恥辱の感情が昂った。

 

(もう時間ですし、許可いたしましょう、半血の坊ちゃま。

あなた様がパンパンに溜め込んだ——濃ぉいちんぽミルクを、私の口でしぼり出すお時間です)

 

その言葉に反応して、焦らし抜かれたルシエルの身体が、快楽の期待に震えていた。

 

「……クラレンス…………!!」

 

少年の日の屈辱を、快楽としてもう一度味わうために、ここにいた。

 

「頼む……言ってくれ!!」

 

堪えきれず、首を振って哀願した。

 

クララが嘲り笑うのが、念で伝わった。

 

(……さぁ、いい子ね。

今日は思う存分、クララのお口にどくどく出しなさい♡

ぜーんぶ、おちんちんの中身を、射精(ドピュドピュ)していいのよ。

 

ほぉら、ルシエル坊ちゃま♡

貴方の大嫌いな……クラレンスお姉さんのお口まんこに、いーっぱい♡、しーしー出してね♡)

 

甘くとろかすように、クララが発した"射精を許可"する言葉に、ルシエルの肉体(からだ)がただ、反射を返した。

 

女のように声をあげながら、ルシエルは体を反らし、クララの喉奥深くに、おびただしい精液を放っていた。

 

「あっ……お゙お゙お゙お゙……ッ!!!」

 

どくどくと脈打つ感覚が、ルシエルの感覚をすべて白く塗りつぶし、絶頂の中で果てた。

 

ああ、ああと言葉に出来ず、舌先が自分の荒い呼気に晒されて、渇いた。

 

ルシエルの腿裏が、快楽の余韻に震えている。

 

(………………)

 

クララは冷たい瞳のままで、すべてを受け止め、ごくごくと音を立てて白濁を飲み干した。

 

くすりと笑って、彼女が求められる役割の念を送った。

 

(……こんなに苦くなるまで、たっぷり溜め込んでたのね、坊ちゃま♡

すごく濃くて、ドロドロに濁りきっている。喉の奥にまだ残っていて、とても飲み込めないくらい。

 

——また苛立ちが爆発したら、いらっしゃい。

私がいつでも、ベアトリチェ様の代わりに、根元までしゃぶってあげるわ……♡

 

次はまた、ルシエル坊ちゃまの大好きな遊び(プレイ)……

 

獣(ケダモノ)みたいに抜かずに何発も何発でも、クララお姉さんのおまんこに中出ししましょうね♡)

 

昔通りの、嘲るような口調だった。

 

そしていつも、彼女がそう嘲ることを、ルシエルは望んでいた。

 

普段は、冷酷な魔王として振る舞い、女たちを組み伏せ、貫いて容赦なく犯す、その快楽に耽りながら——

 

ルシエルは、この部屋を訪れた時だけは、この女従者に罵られ、屈服させられ、絶頂までの時間を管理され、最後にはただ惨めに、屈辱的に射精させられることを望んだ。

 

それは、クラレンスが女従者として少年の日の彼を"しつけ"たやり方、そのものだった。

 

自分を恥じながら、この場所を訪れることを、ずっとやめられないでいた。

 

彼の中に黒く滾りつづける欲望を、こんな歪な性愛の形でしか、放ち切ることが出来なかった。

 

元従者として、クララは……その歪みを受け入れていた。

 

彼女の主人の求めるままに、その欲望を燃え立たせ、甘くしゃぶり立て、最後の一滴まで吸い尽くした。

 

彼を支配していたベアトリチェを亡くしたルシエルもまた、クララに依存することでしか、この歪んだ欲望を満たす方法を知らなかった。

 

 

*

 

 

ルシエルは事を終えると、クララから離れ、ただ無言で、衣服を整えた。

 

出仕の時間が迫っていた。

 

「何か……必要なことがあれば、俺の従者に言え」

 

部屋を出る前に、振り返ったルシエルが言った。

 

クララは、ただ冷たく微笑んだ。

 

「いいえ、何も……もう十分に可愛がって頂いております。ルシエル様」

 

棘を含んだ、言い方だった。

 

「こんな身体(からだ)の私でもまだ……あなた様を第一に支える従者のつもりでおります。我が君(マイロード)」

 

ルシエルは魔力の暴走によって彼女の肉体を破壊したが、クララは少年だったルシエルの心を、完膚なきまでに叩き潰した女だった。

 

憎しみ合いながら、まだ歪んだ快楽のために、この主従は繋がっていた。

 

ルシエルは、冷たく吐き捨てた。

 

「そうだな、お前は俺の女従者だ。

——これからも変わらず尽くしてくれ、クラレンス」

 

最愛の姉君を失い、ぼろぼろになった彼自身の心を罰するために、ルシエルは彼女にすがっている。

 

そして——

クラレンスもまた、ベアトリチェへの忠義心のために、彼女が愛した半血の弟を、永遠に壊し続けることを決めていた。

 

ルシエルが、そう望む限りは——

 

「私は誠心誠意、ルシエル様のために……文字どおり、この身を捧げておりますわ」

 

クララは、冷たく微笑んだ。

 

「あなた様がこれから召し抱える、どんな従者の男たちよりも、このクラレンスの忠義は厚い。

それをお忘れにならないで下さい、わが君(マイロード)」

 

 

【 完 】

 

 

 

 

 

 







【編集部注】


本書、『【ルシエル卿外伝】魔界で一番美しい少年』の原典である、「黒き貴公子と淫欲の血絆(きずな)」の草稿は、ここで途切れている。

ハデス公爵家の終焉、そして若き魔王の誕生——その後、彼がいかに魔界の覇権争いを生き抜き、残忍かつ冷酷な「魔界の英雄」として称えられるに至ったのか。

その経緯は、彼の息子であるセオドア公の手によって"年代記(クロニクル)"として編纂されたと言われている。(※諸説あり)

側室の子として生まれ、異母姉だけに溺愛され、支配され、壊れていった少年ルシエルが、その後どのようにして「黒き貴公子」と呼ばれる若き魔王になっていくのか。


異母姉ベアトリチェが遺した「沈黙」の代わりに、彼が何を選び取ったのか。

そして、あの十二夜に彼が傷つけた人間の姫君リーザと、彼は再び相見えることになる——

続く物語は、正史として現存するルシエル卿の伝記、『半血魔王の年代記(クロニクル)』にて、詳細に語られている。

サキュバスの双子を性支配する、孤独な魔王としての日々。

人間の姫リーザとの再会。

そして、彼が繰り返すことになる過ちの数々——

読者諸氏には是非、ルシエル卿という稀代の傑物、或いは歪んだ英雄、美しき「怪物(モンスター)」の行く末を見届けて頂きたい。

「半血魔王の年代記(クロニクル)」と名付けられたこの書物は、ある意味で、彼の人生の象徴である魔族と人間——その「半分ずつの血」によって描かれた物語だと言えるだろう。

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